私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

私的名盤紹介 トップページ

・「私的名盤紹介-真の雑食を目指して」掲載アーティスト一覧
http://grooveisalliwant.blog.fc2.com/blog-entry-539.html

・私的名盤放送放送アーカイブ
https://ssl.twitcasting.tv/privategroove/show/

・ポッドキャスト
(iTunes, Spotify, Apple Musicなど各種ストリーミング、音楽管理ソフトでも順次配信予定です)
https://anchor.fm/nm7groove

・Spotify Playlist
(放送楽曲のうち、Spotifyで聴ける楽曲を集めたプレイリストです、シャッフルして楽しむもよし、ぜひフォローください)
https://open.spotify.com/playlist/1uR6ekHx6NAHnoEy3bvepX?si=wKIqpZEiRD6bHIogAblVuw

・管理人Twitter
@privategroove

・私的名盤紹介ANNEX「東海地方・名古屋市ショッピングモール写真集」
http://grooveisalliwant.blog.fc2.com/blog-entry-550.html

・名古屋 中古レコード・CDショップファイル
http://grooveisalliwant.blog.fc2.com/blog-entry-173.html

この記事をはてなブックマークに追加

関連記事
  1. 2037/01/29(木) 22:30:31|
  2. 初めにお読みください
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

2019年度 私的ベストアルバム 邦楽編

2019年度 私的ベストアルバム

私的名盤紹介をご覧下さっている皆様、ありがとうございます。また明けましておめでとうございます。

最近はもっぱら商業施設巡りや2010年代ベストアルバムの編集に忙しく、
メインのコンテンツである私的名盤放送を更新できておらず申し訳ありません。

その前に、昨年度のベストアルバムを取り急ぎ編集しました。特に邦楽では、
声優ポップスが編曲、演奏、ポップネスとどの面から見ても完成度が高く、多数選ぶ結果となりました。
洋楽では近年注目されているブラックコンテンポラリー、クワイエットストームのリヴァイバルや、
最新のフィーチャーソウル/フューチャーベース、ヒップホップなどからも選びました。
米国その他の一般的なヒット・アルバムから離れたラインナップとなってしまいますが、
私的名盤紹介ならではの個性的なランキングにできたかと思います。

私的名盤紹介管理人が自信を持ってお勧めするアルバムたちです。邦楽、洋楽でそれぞれ15枚を選びました。
まずは邦楽編からです。どうぞ。

2019年度 私的ベストアルバム 邦楽編

15位 cherish/KIRINJI
IMG_0313.png

バンドとしてのKIRINJIの最後のアルバムとなりました。
韓国ソウル出身のDJ, ラッパー、YonYonを迎えたドリーミーでローファイなサウンドが
心地良いブギーM2は、菊地成孔/SPANK HAPPYを思い起こさせるコケティッシュなボーカルが素晴らしい。
そのほかオートチューンのボーカルとジャジーなコード進行が心地よいアーバンディスコM1,
Hiatus Kaiyote以降なテンション感溢れるネオソウル~フューチャーファンクなM3、
ブラックコンテンポラリーなサビ前の展開がどこか懐かしいM8など、
現行ブラックミュージックやジャズを積極的に取り入れながら、
KIRINJIらしい、奇妙でキャッチーで、耳を離れないフックを持った楽曲が詰まった一枚でした。

14位 くつひも/斉藤朱夏
IMG_0318.png
ラブライブ!サンシャイン!!の渡辺曜役で声優デビューを果たした1996年生まれの女性声優による1st EP。
表題曲はVOCALOID系のプロデューサーであるLIVE LABのハヤシケイが手掛けています。
佐野康夫(aiko etc)に負けるとも劣らぬドラムスはschool food punishmentの比田井修によるものです。
イントロのスリリングなストリングスのテーマと少しアンニュイなボーカルにグルーヴィーなリズムが絡みつく、
近年の声優ポップス~シティポップの中でも特筆すべき一曲だと思います。
そのほかにも、太く低域の効いた声で歌い上げる壮大なバラードM1,
ストリングスの精緻な編曲と00sJPOPらしいノスタルジーを感じられるM2など。
音数多くしっかりと作り込まれたトラックでありながら、見事な録音バランスで耳に優しいポップスが並びます。佳作。

13位 Softsoul/Timeless
Timeless.png
ORIGINAL LOVEやFIRST IMPRESSIONのドラマーとして知られる宮田繁男を中心に活動をスタートした
フュージョン、ファンクバンド、Softsoulの結成10年を機に発表された1stフルアルバム。
IncognitoのJean-Paul”Bluey” Maunick(M7、M10)が参加しています。
フィリーソウルなストリングスのイントロと90sのEscalators~SOYSOULを
思い起こさせるアシッドジャズ的なグルーブが心地良いM2は、
どこかTOTO/Georgy Porgyを思わせます。
KIRINJI~北園みなみのような映画音楽的なイントロ、シカゴソウルのリズムパターンを踏襲したミドル
M3は「ジョジョ~その血の運命~」で知られる富永TOMMY弘明をゲストに迎えています。
そのほかSupremesを思わせるようなクラシカルなソウルM5も、フュージョンライクなキメがあり、
オーセンティックなソウルに固執しすぎないバランス感覚が素晴らしい。
Stevie Wonder的な節回しのボーカルと、For Your Loveのような、エモーショナルで壮大な
サビのバラードM6も最高。M7は往年のAl Greenの楽曲のような、オーセンティックなソウル。
M10もリズム隊はモダンなグルーブ感でありながら、コード感はモータウンらしい安心できる展開で、
敢えて最近の流行りのエレクトロ~フューチャーソウル的な要素や、日本人に人気なシティポップ~アシッドジャズ的な
イディオムを使い過ぎず、渋い楽曲で固めているところが憎い。70s-80sのソウルファンに向けた一枚なのだろうと思いました。
ラストを飾るM11は、コケティッシュなボーカルとDavid T. Walkerのようなリズムギター、柔らかいピアノのバッキングが
夢見心地なバラードです。

12位 KISS/THREE1989
KISS.png
1989年生まれの3人で構成された自称アーバンポップバンドによる3rdアルバム。
David Foster以降のAORや、Garry Glennのようなブラックコンテンポラリー、Jam & Lewisのような
マシンファンクなどを得意とするユニットです。
80sソウルのファンには思わずにやりとさせられるオマージュも含まれながら、
それらを見事にJPOPへと昇華させているユニットだと思います。
M1は、The Systemのような鋭いリズムパターンとチルなシンセ、センシュアルなコーラスを組み合わせたマシンファンク。
90sR&Bのような香りがするブギーM2はNJS的な低域の強くサステインの短いスネアドラムが作る、
バウンシーなリズムが堪りません。マイナー7th系のカッティングフレーズは実にAOR的です。
M3はストリングス系のシンセのリフレインと、キャッチーなシンセのフレーズで一気に
引き込まれるアーバンミッド。柔らかいファルセットボーカルとの組み合わせで、
かつてのゴスペラーズやCHEMISTRYのサウンドに負けずとも劣らぬ一曲。
ほかにもAfter the Love Has Goneにクリソツなメロ部分から始まり、2005年前後のEXILEの名曲を
思わせるサビが心地いいM5や、サーフミュージック的な緩さのあるM8, 透き通ったリムショットと、
ジャジーで音数少ないバッキング、シンセリードの哀愁漂うソロが切ないクワイエットストームM9,
George Benson/Inside Love (So Personal)のような中華シンセのイントロから、
高揚感溢れるJPOP的なサビへと繋がるブギーM10などなど、今後の活躍に期待が深まります。

11位 Tropicalica/メロウ・イエロー・バナナムーン
Tropicalia.png
早稲田大学の音楽サークルで2015年に結成された大所帯のバンド。2ndEP。
ゆったりとしたグルーブと、SUGAR BABEの楽曲に負けるとも劣らぬ、
歌謡曲的な聴きやすさのあるメロディなど、今後に最も期待している若手バンドの一つです。
SUGAR BABE/パレードにさらに透明感を与えたようなイントロと、ラフに演奏しているようで、
実は各楽器が緊密にグルーブを共有しているのが伝わってくるM1は特に最高。
アニメソングにしても良いようなキャッチーさを兼ね備えていて、
ブラジリアンフュージョンなリズム、ジャジーなコード感は、どこかブルー・ペパーズ/6月の夢を思わせます。
しかし、それらの構築されたサウンドをサラリと聴かせるだけの編曲が見事です。
ソウルフルなメロディとエレピの白玉の組み合わせが一味違ったアップテンポM3,
枯れたギターソロのイントロから、70sシティポップの香りが漂うM4と、
わずか全4曲のEPですが、
その全てが、若いバンドらしい、人生の一瞬のきらめきを閉じ込めたような一枚だったと思います。
UNCHAINやブルー・ペパーズと並んで、また一つファンになれるバンドが増えたことを嬉しく思います。

10位 Cannonball Running/水樹奈々
CANNONBALL RUNNING
今日の一枚(401)を参照」

9位 Ghost Notes/Kan Sano
Ghost Notes
1983年生まれのマルチプレーヤー、トラックメイカーによる4thフル。僕自身はLucky Tapesとの対バンツアーで
その存在を知りました。J Dilla以降のタイム感を感じさせるレイドバックしたリズムと、70sモータウンの香りがしながらも、
ネオクラシックソウル的なジャジーな上物のバランスが非常にクールなトラックを多数生み出しています。
ウィスパーボイスのボーカルがやや人を選ぶかもしれませんが、都会的で密室感のあるトラックは唯一無二の魅力があります。
基本的には鍵盤奏者の彼ですが、自らドラムも演奏しており、非常にファンキーなプレイを聴かせます。
特に今作はゲストシンガーなど迎えずに制作されており、音数の少ないモノトーンなサウンドで、
ハイハットの細やかな刻みやFender Rhodesのゆらぎのある音色が最大限引き出されています。
リードトラックのM3Stars in your EyesはBCM的なイントロのリフレインと、生ドラムの抜けの良いビート、
普段よりも歌メロをしっかりと聴かせる構造など、新境地だったと思います。JB’sなホーンのイントロから始まる
ネオフィリーな質感のブギーM6My Girlは、背後に流れるチルなシンセな音色と合わせて、
スリリングな一曲に仕上がっています。Shalamarを思わせるような重いビートのM7Don’t You Know The Feeling?や
Robert Glasper以降なハーモニーが前面に押し出されたM9Sit At The Piano、
ヒップホップソウルのスウィング感がそのまま生きているM11Ride On The Back To Backでは
Ronny Jordan〜Tom Misch的なスムースジャズを思い出させるリズムギターが心地良いです。

8位 VILLA/HALLCA
VILLA.png
大阪市堀江にルーツのあるダンスボーカルグループ、Espesiaのリーダー、冨永悠香のソロプロジェクトによる1stフル。
Espesia時代から、リゾートミュージック〜Vaporwaveな雰囲気の楽曲やPVが印象的でした。
HALLCA名義では、ブラックコンテンポラリー〜クワイエットストームな雰囲気が感じられる曲が多く、
アレンジャーにはEspesia時代から協力してきたPellycolo、Rillsoulなどのアレンジャーが参加しています。
ローファイなシンセとガレージなリズムボックスを組み合わせたミッドM1,
ハイパスフィルターの掛けられたハウス的なイントロ、中華メロディで始まるM2,
ワウの掛かったブルージーなギターが70s的なテイストを感じさせるスロウM3,
Espesia時代の楽曲を思わせるアーバンミッドM5は、グラウンドビート的な残響のあるスネア、カウベルの織りなすリズムに
ブラックコンテンポラリー色満載のハーモニーが組み合わさったクールな一曲です。
冒頭の溜めの効いたフィルインからキャッチーなシンセのバッキング、伸びやかなボーカル、全体にもやが掛かったような、
ややローファイな音作りが心地よいフローター/クワイエットストーム、M8は白眉でした。
JPOP的な展開が目立つM9も、Vaporwaveを経由したシティポップリヴァイバルや、
Ella Mai以降のクワイエットウェイブらしいモダンな音作りです。

7位 834.194/サカナクション
サカナクション
私的名盤放送第51話から引用
特に目玉は、2005年から現代に至るまで、常に邦楽ロックのシーンの最前線に立ち続けるサカナクションの最新作です。
エレクトロミュージック、テクノポップやインディーロック、UKロック、歌謡曲など様々な背景を持つフロントマンの山口一郎は、
大衆に広く受け入れられるサウンド=ポップスと、自身が表現したいサウンドを高い水準で融合させる能力に
長けた紛うことなき天才で、アルバムのリードトラックとなった「忘れられないの」は、
杉山清貴&オメガトライブを彷彿させるようなPVも印象的ですが、近年の邦楽のシティポップ/AOR再評価の流れを汲んだ、
80sソウル進行を下敷きにした一曲です。ドラムスの低域が強調されたスネアの音色や、リヴァーブの掛かり方など、
オーディオ面でも、80年代の邦楽へのオマージュを感じさせます。曲間のベースソロも非常にメロウで、
アウトロにはギターソロが入っていますが、そこでフェードアウトしてしまうのが憎い作りです。
サビ前の盛り上げ方などは明らかにEDMを通過した感覚を感じますが、それも違和感なく、80s的なギラギラしたサウンドへ
回収してしまうバランスの良さは唯一無二です。彼らの最高傑作のひとつだと確信します。
「引用ここまで」

そのほかにも、ダンスクラシックス顔負けの重たいグルーブが心地よいM2、
アルクアラウンドを思い起こさせるサカナクションらしいメロディラインのダンサーM3にも、80sファンク的な音色のシンセが
使われていたりと、近年のAOR~シティポップ評価の流れを感じさせる味付けです。
2015年にリリースされた名シングルM5新宝島は、イントロから同じリフを琴のような音色で鳴らしながら、
一度も止めることなく、上物を絶妙に抜き差ししながら、実際のテンポほどの速さを感じさせない一体感のある演奏で聴かせます。
歌謡曲的な大仰なキメから始まり疾走感溢れるM6はジャキジャキとしたトレブリーなカッティングが心地良いです。
4つ打ちのリズムパターンとRhodesのバッキング、太いベースリフで音数少なく作られたディスコM7も、
ウィスパーボイスのボーカルとどこか暗さを感じさせる音作りが不思議です。

6位 今日だけの音楽/坂本真綾
今日だけの音楽
私的名盤放送第59話から引用」
昨年発売された声優/SSWの坂本真綾のニューアルバム、今日だけの音楽から、
the band apartの荒井岳史(Vo, G)作曲、近年では花澤香菜のプロデュースで知られる北川勝利の編曲という
奇跡的な組み合わせによるオールドファッションです。以前のthe band apart提供曲Be Mine!の緊張感あふれる
コード進行からは一変して、ジャジーな造りではありながらも、AOR/シティポップな色合いが増した甘酸っぱい一曲で、
音数は絞られながらも、煌めくエレピのバッキングなどのセンス、ラストサビに掛けて盛り上げていく編曲は
いかにも北川勝利らしさを感じます。少し歪んだギターソロも、敢えて弾き過ぎず、
チョーキングのニュアンスが最高に気持ちいいです。
他にもMondo Grossoの大沢伸一による、ACOの楽曲を思わせるような、暗くミニマルなM3や、
東京事変の伊澤一葉(Key)によるラテンジャズポップスなM5、
キリンジの堀込泰行と、河野伸(ACO, Crystal Kay, 古内東子、ハロープロジェクト、COSA NOSTRA, SPANK HAPPYなど)の
組み合わせによるスケールの大きなバラードM7,
ゲスの極み乙女の川谷絵音によるプロデュースのM4, M9など、豪華な作家陣が多数参加しています。

5位 I Believe in Love/ブルー・ペパーズ
I Believe in Love
「私的名盤放送第59回から引用」

VIVID SOUNDからデビューした福田直木さん、井上薫さんの2人組によるAOR~シティポップユニット、
ブルーペパーズのニューシングルを選びました。M1はあえて少しチープに作られた軽めのドラムス
(生ドラムをサンプリングして構築しなおしたNightfly/Donald Fagenのような音作りにも聴こえます)と
Dionne Warwick/For YouでのJay Graydonの作る音世界を思わせるような、リバーブ感とリズムギターのフレーズに
思わずにやりとさせられます。放送に選んだのは、琴のような音色のシンセが使われ、オリエンタルな響きのあるコード感の
佐々木詩織(山下達郎のサポートで知られる佐々木久美さんの娘)さんとのデュエット、M2です。
数多くのAOR~フュージョン系のアーティストのバックを務めたLeland Sklar
(B, James Taylor, Barbra Streisand, Billy Cobham, 松任谷由実、TOTO, Rita Coolidge, David Sanborn etc),
高中正義のサポートで知られる宮崎まさひろ(Ds)、そしてKinKi Kidsのサポートで知られる若手ギタリストの外園一馬などが
参加しています。後半のハーモニカソロは、Stevie Wonderの吹くそれのような美しさです。
アウトロにかけて、佐々木さんのボーカルはソウルフルとなり、その魅力が堪能できます。
2ndフルアルバムの制作が待たれるところです。近年のシティポップ~AOR系のアーティストの中で、
キャッチーさ、メロディの美しさとフックのあるバックトラック、ジャジーで凝った編曲のバランス、演奏のニュアンスの細やかさ、
その全てにおいて、ブルー・ペパーズがトップにいると確信しています。まだアルバムを聴かれていない方は必聴です。
(最近各種ストリーミングにもアップロードされました)

4位 PopSkip/伊藤美来
PopSkip.png
「私的名盤放送第53回から引用」
BanG Dream!や五等分の花嫁などへの出演で知られる1996年生まれの伊藤美来が
今年発表した2ndソロアルバムから、先行配信されたPearlです。松たか子、坂本真綾への曲提供で知られる
高田みち子による作曲で、北川勝利による花澤香菜の楽曲に勝るとも劣らぬジャジーなトラックです。
シャリシャリしたカッティングで始まるメロ部分の展開は角松敏生的なリゾートミュージックを思わせ、
サビに掛けてダンサブルなリズムセクションに、冨田恵一の編曲を思わせる、
ストリングスの作るテンションが上品に鳴り響きます。
その他にも良質なポップスが詰め込まれており、花澤香菜/Blue Avenueの感覚に近い一枚です。

「私的名盤放送第57回から引用」
以前にも紹介した声優、伊藤美来の2ndフル、PopSkipからとびきりAOR/シティポップ色の強い「守りたいもののために」です。
シタールのオブリガートと細やかなドラムスの作るゆったりとしたグルーブ、
松任谷由実/中央フリーウェイを思わせるサビの展開(いつものわたしさん@karonsenpaiからご指摘頂きました)に、
彼女のキュートなボーカルが載り、ソウルフルなブラスの組み合わせで現代的な音にアップグレードされています。
ラストサビの直前の部分は平井堅/片方ずつのイヤフォンのような90sポップスの香りも感じさせます。
本作は、今年の聴いてきたアルバムの中でも抜群におすすめの一枚です。昨年の早見沙織/Junctionに負けずと劣らぬ傑作。

その他にも、モダンで音圧のしっかりとある音作りがSugar's Campaignを思わせるダンサーM4、
壮大なスケールのバラードM5, フィリーソウルなイントロとワウの効いたカッティングが曲を引っ張るメロウなファンクM6は、
Maze feat. Frankie Beverlyも真っ青の完璧なアンサンブルで聴かせるグルーヴィーな一曲です。
歌謡的な濡れたメロディが合わさることで、JPOPへと昇華されています。かつてのSMAPの楽曲に負けずとも劣らず最高。

花澤香菜〜北川勝利なテイストの強いポップロックM8は少しロリータボイスで歌います。
サビに向かっていく高揚感が堪らないM9に続いて、ハイハットとピアノのリズムをずらすことでポリリズミックに聴かせる導入が
印象的なM10へと続きます。スウィンギーなビートとファルセットのコーラス、メロディアスに動くベースラインが合わさると、
どこかaikoの楽曲のようなジャジーさが生まれていて、聴くほどに味わいのある一曲です。

3位 Catch the Rainbow/水瀬いのり
Catch the Rainbow
1995年生まれ、東京都出身の女性声優の3rdフルアルバム。

「私的名盤放送第59回から引用」
昨年発表された水瀬いのりのニューアルバムから、嵐/Love so sweetのB面、いつまでもでデビューし、
AKB48/ポニーテールとシュシュの作曲でも知られる多田慎也と島田尚のタッグによるM11は、
壮大なアレンジのストリングス、
伸びやかに張り上げる地声と、透明感溢れるファルセットのバランスが素晴らしいボーカルが、
切々と歌うメロディの美しさといい、アルバム(Catch the Rainbow!)の最後を飾るにふさわしい傑作でした。

爽やかなポップロックM1は川崎智哉作で、ライブで盛り上がれるタイトなアンサンブルが心地良い一曲。
前作の名トラックShoo Bee Doo Wap Wapを思わせるディスコ、M2は、スウィングジャズ的なキメが
水樹奈々/Maria & Jokerを彷彿させます。やや歌謡曲的なメロディを加えながらも、ラストサビの前では
徐々にフュージョン的な編曲になっていく目まぐるしさも、非常に面白いです。

RPGを舞台としたアニメ「えんどろ〜る」のEDテーマとなったマーチングバンド風のリズムと壮大な編曲、
全力で張り上げるハイトーンが心地良い先行シングルM4Wonder Caravan!も、
これまでの声優ポップスにあまり見られなかった、水瀬いのりらしい個性を感じる一曲でした。

初音ミク関連の作曲で知られるkz(livetune)の手によるM7は、ぶりぶりとしたシンセの白玉と
イーブンなリズムの音圧感あるトラック。

水樹奈々/Ladyspiker, glitchなどを提供した中野領太はM5, M8を手掛けています。
特にM8は、2006年頃のElements Gardenとタッグを組み始めた頃の水樹奈々を彷彿させる、
爽やかで明るいように聴こえながらも、どこか切ないハーモニーが絶妙です。タオルを振りながら聴きたいところです。

岩里祐穂、加藤裕介のタッグによるモダンハイゲインサウンドなM9でも、
水瀬いのりが歌うとややすっきりとした感じがあります。サビの最後でファルセットに抜くボーカル・ディレクションもなかなか憎い。
テンポも非常に速いですが、分厚いリズムギターの刻みはサビだけにして、ゴテゴテになりすぎないバランスで録音されています。

ピアノ弾き語りのバラードM10は、最新シングル「ココロソマリ」にも繋がっていく雰囲気です。
やや芯のあるファルセットの魅力がたっぷりと伝わってきます。後半にかけて映画音楽的な編曲へと変化していきます。

水瀬いのり自身による作詞の表題曲M12はFirst Call所属の光増ハジメがペンを執っています。
「七色の虹=奈々に追いつく」とも取れる(ややこじつけ?)タイトルで、Angel Blossom, SUMMER PIRATESを手掛けた
光増ハジメらしく、サビ前でやや驚かせる展開を挟んだり、サビで少しWonder Caravan!のようなフレーズを加えたりと、
アルバムの最後として収まりが良いように工夫されています。

アルバムを出すたびに、水瀬いのりらしい独自の個性を持ったサウンドを獲得しており、
今後が最も嘱望される声優アーティストと確信しています。

2位 エクセルシオール/フィロソフィーのダンス
エクセルシオール
私的名盤紹介 2010年代ベストアルバム」を参照

1位 Traveler/Official髭男dism
Traveler.png
鳥取県米子市出身の作詞作曲/ボーカルを務める、藤原聡(1991-)など、「山陰発ピアノPOPバンド」として知られる
4人組JPOP, ポップロックバンド。

2012年から活動を開始して以降、ヒット曲を連発し多数のテレビドラマ、CM曲を輩出、
紅白歌合戦への出演も記憶に新しい、久々のスターグループに成長しました。
90s以降、独自の進化を遂げてきたJPOPは、アイドルポップスとしてのジャニーズ/AKBや、
90sガールポップ(代表的なのは岡本真夜など)、いわゆる「98年組」(宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、
この中だとaikoの影響が大きいように感じられます)、
Mr.Children, スピッツ、いきものがかりなど様々なタイプがありますが、
いわゆるJPOPに象徴的なハーモニーやアレンジなどを築き上げてきました。

彼らの楽曲は、そうしたJPOP特有の楽曲構造を下敷きとしながらも、ハイトーンボーカルを最大限に生かした
高低差のあるドラマチックなメロディラインや、EDM, トラップなど近年のブラックミュージックに特徴的な音色やフレーズ、
そしてJPOPらしい繊細なストリングスのアレンジ、80sのディスコ/ファンク~スムースジャズ、ブラックコンテンポラリーなどの
美味しいところを、完璧なバランスで混ぜ合わせた、非常に個性的な音世界を作り上げました。

壮大なストリングスによるバッキングと絞り出すような歌唱のメロ部分から、
下降していく美しいハーモニーと踊れる重心の低いビートを組み合わせたM1は、
字余り気味な歌詞と合わせて、小林武史プロデュースのMr.Childrenを思わせるような部分もありますが、
やはりブラックミュージック的なグルーブがあるのが髭男らしさです。

M2は、やや訛ったトラップビート的なイントロ、フューチャーベース/ソウル的なブーミーなベースが目立ちながら、
美しいピアノ弾き語りのパート、パワフルなロングトーンで魅せるサビも見事です。

サンプリング元が分かりませんが、フィリーソウルっぽいサンプリングフレーズがみられるイントロ、
ローファイヒップホップな音作りで80sソウル進行に載せた和製クワイエットストームM4は、
いかにも「私的名盤放送」で取り上げられるムーディーなサウンドです。椎名林檎/丸の内サディスティック、
星野源/Snow Menやtofubeats/水星などと並んで必殺の一曲です。

もこもことした音色のメロディアスなベースとディスコビートの心地良いダンサーM6は、
フュージョンライクでスリリングなホーンとキメの多いリズムパターンで、これが日本で一番売れている
現代のJPOPであるというのには、隔世の感があります。
ハーモニーは角松敏生以降のAOR〜シティポップ的な雰囲気であり、
少し歪ませたカッティングも時代を感じさせます。

エレピの白玉のアタックが心地良いバッキング、シンプルでありながらグルーヴィーなリズムを組み合わせた
オールディーズな音作りのM7や、高速ハイハットの作るトラップビート、ブラジリアンなシンコペートしたピアノに
音数少なく作られたM8は、向井太一やSIRUPなど、同じくブラックミュージックを指向する若手の中でもとりわけポップで、
後半にかけてKirk Franklinの楽曲のような、ゴスペルライクなコーラスを合わせてしまうセンスに驚かされます。
00sから日本人の感覚は明かに変わってきているのだと思います。

Scoobie Doやスガシカオを思い起こさせるファンクロックM9も好みです。

そして昨年一番の大ヒットとなったM12は、イントロからチルアウトな音色のシンセが使われていたり、
かすかに鳴っているパッドの細やかさなど、島田昌典が手掛けてきたいきものがかりの編曲の細やかさを彷彿させます。
BメロではMichael McDonaldばりのピアノのバッキングが、AORファンにも堪りません。
飽きさせないように細部に薄くコーラスを配置したり、コーラスのエフェクトが効いたギターのアルペジオで聴かせたりと、
随所随所に徹頭徹尾拘っており、聴くたびに新たな発見があります。
メロディも圧倒的なハイトーンや高低差があって難しいのですが、一度聴いたら忘れられない個性があり、
編曲の面でも、JPOP史上最も丁寧に計算された、正真正銘の名曲と言えるでしょう。

中々聴き込むことができず、2010年代ベストアルバムに入れ損ねてしまったOfficial髭男dismですが、
過去のJPOPの良さを失わずに、新旧のポピュラー音楽の魅力を、圧倒的な密度で凝縮し、
緻密な編曲と高い演奏力でまとめ上げた、正真正銘の奇跡的な名盤でした。

この記事をはてなブックマークに追加

関連記事
  1. 2020/03/22(日) 22:23:49|
  2. 雑記(音楽関連)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

今日の一枚(410)  Cannonball Running/水樹奈々

Album: Cannonball Running
Artist: 水樹奈々
Year: 2019
Genres: JPOP, シンフォニックロック、ヘヴィメタル、アニメソング、ディスコ/R&B


CANNONBALL RUNNING

1980年生まれの女性声優、シンガーの13枚目のオリジナルアルバム。

アルバムを出すことに様々なサウンドに挑戦し続ける水樹さんですが、歌手デビュー20年を迎えた
本作でも、新たな試みが様々に見られています。
リードシングルになったM5は本人もコメントしている通りオールディーズ的なアプローチのトラックで、
強い残響のあるドラムスと、多重コーラス、ブルージーなリードギターなど、生々しく太い音作りで、
これまでの水樹奈々サウンドには見られなかった新境地だったと思います。
山口寛雄(B, 福原美穂、倖田來未、EXILE etc), 吉田太郎(Ds, あさき、DIMENSION etc)、
石成正人(Gt, スキマスイッチ、平井堅 etc)などが参加しています。
これまでのElements Gardenサウンドな、メタリックなシンフォニックメタルM6,
モダンハイゲインなギターと疾走する重厚な音作りのリズム隊(Tatsuya, Ds from Crossfaith)が堪らないM10のような曲も健在です。
間奏ではRage Against The Machine以降なブレイクダウンや、その後はパワーメタル的なキャッチーさもあり素晴らしい。

M1にはマーチングのリズムから始まりデジタルな質感の16ビートの打ち込みドラム(EFFY from FIRST CALL)と、
サビに向かう開放感が堪らないダンサブルな一曲を添えているところも、これまでのアルバムでは
なかなか見られないパターンです。ゴスペルライクな多重コーラスを聴かせるサビ、スーパーヘッドヴォイスで彩るサビの
後半など、水樹奈々のボーカル表現もまた新たな表情を見せます。

悦楽カメリア~純潔パラドックスな歌謡的な遺伝子を感じながら、ジャジーなピアノのバッキングは如何にも
上松範康らしい演奏難度の極めて高いM2は、千本桜~女々しくてのようなイディオムも面白い。
R&B系シンガーへの楽曲提供が多い原一博(BoA, EXILE, 小柳ゆき)によるペンのM3は
どこかゴシックな印象を与えながら、音作りはスペイシーでEDM以降の盛り上げ方を組み合わせた不思議な魅力がある一曲。
弦一徹ストリングスによる豊かなストリングスとデジタルで圧倒的なスピード感で疾走するM4は、
Synchrogazerの流れを順当に汲んだスケールの大きいトラック。

山本隆介(B), 小松シゲル(Ds, NONA REEVES, BONNIE PINK, 堂島孝平 etc)のリズム隊による
ブリブリしたベースラインが堪らないフィリーダンサーなM7も、これまでの水樹奈々楽曲には決してなかったタイプのタイム感の
一曲だったと思います。水樹奈々自身、ラジオなどで「いわゆるR&B系のスウィングの感覚を歌に反映させるのが苦手」と
述べていることから、こういった曲(この曲やアンビバレンスなど)がこれからの
水樹奈々サウンドの試金石になるのではないかと思っています。

佐藤あつしの名前でも知られ、浜崎あゆみの楽曲を数多く手がけたats-によるメタリックでありながら歌謡曲的な
メロディのバランスが最高な先行シングルM8は、ギターやその他のミックスのバランスが極めて良好で、
メタル期を超えてきた今の水樹奈々が演奏する"Trickster"と言える一曲。

星野源の作り出す「細野晴臣風」な弦のフレーズが印象的な、極めて音数の少ないバラードM9は、
AVEXの専属作家であるBOUNCEBACKによる一曲で、アコギのノイズが聴こえてくるほどにクリアな音作りです。
こんなアレンジの楽曲も、これまで全くなかったアプローチであり、以前のライブでの「スタジオミュージシャンと one on oneで
勝負する企画」の影響なのであろうとと思います。

佐々木”コジロー”貴之(G, ゆず、JUJU, Aimer)のピーキーな音色の鋭いカッティングやソロでグイグイとバンドサウンドを
引っ張るM11は90sの邦楽ロック的な魅力があってこれも素晴らしい。
魔法少女リリカルなのは Detonationの主題歌となった先行シングルNever Surrenderも、
シリーズの歴代テーマソングとリンクさせたドラマティックな音作りを踏襲した一曲です。
オートチューンを掛けたボーカルでもあまりケロらない(歌がうますぎるため)のに驚かされるM13、
冴えない彼女の育て方シリーズの楽曲を手掛けたことでも知られる高尾奏之介によるM14も、
シンフォニックロックとしての構成は残しながら、サビ前の音の抜き方を見ると、アンサンブルを聴かせようという狙いを感じます。

水樹奈々自身による作詞作曲と藤間仁の鉄壁タッグによるポップロックM15は、これまで水樹奈々バンドへの参加歴が
おそらくない松永明日斗(Ds)と、須永和弘(B), 山本陽介(G)の組み合わせによる爽快なサウンド。
岩里祐穂(作詞)と吉木絵里子(作曲)の組み合わせというこれまたアニメソング界隈のトップランナーによる
ロックバラードM16は愛の星からの流れを感じる、切々としたストレートなラブソングです。
CHERRY BOYSの松永俊哉(Ds, 渡辺美里、aiko, いきものがかり etc)の溜めの効いた16ビートと派手なシンバルのフレーズ、
弦一徹ストリングスの息を呑むような弦の音と組み合わさったトラックで、これまでのバラードにはない
強い熱情を感じられる一曲。私生活、何かあったのでしょうか。
最後には恐るべきスピードで駆け抜けるFINAL COMMANDERで締めくくる大ボリュームな一枚でした。

オリジナルアルバムを出すたびに、新たな音楽性を取り入れた挑戦的な曲と、人気な楽曲の良い所を取り入れた楽曲を
絶妙なバランスで提示してくる三嶋章夫さんをはじめとする「チーム水樹」の強固な力には驚かされるばかりです。
ナゴヤドームで奈々様にお会いできることを楽しみに待とうと思います。


この記事をはてなブックマークに追加

関連記事
  1. 2020/03/02(月) 23:38:48|
  2. 水樹奈々
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

今日の一枚(409)  笑顔。/安野希世乃

Album: 笑顔。
Artist: 安野希世乃
Year: 2018
Genres: JPOP, 渋谷系, シティポップ

IMG_0298.png

Flying Dog系の女性声優、シンガーによる2nd EP。
表題曲は、オーガニックな味付けでゆったりとしたブラジリアンなリズムに、
岩崎宏美/Street Dancerを思わせるサビと細やかなコーラスが組み合わさったシティポップです。
アシッドジャズ~渋谷系を思い起こさせる軽快なリズムとアイドルポップスなキュートなメロディのM1,
オールディーズなリズムパターンとアレンジに載せて柔らかい声で歌い上げる甘酸っぱいM2,
松木恒秀を思わせるような枯れたギターのバッキングが70年代後半のシティポップ前夜な空気感を湛えるメロが
堪らないM5, 曲ごとに様々に表情を変えるボーカル、全体を通して歌を邪魔しないながら非常に纏まった演奏のバランスなど、
ここ数年の声優ポップスの中でも完成度の高い一枚でした。

この記事をはてなブックマークに追加

関連記事
  1. 2020/03/01(日) 01:06:08|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

社会人になって「自分」を見失ってしまう怖さ、「NPC」になってしまった人たちへ

いつも私的名盤紹介をご覧くださっている皆様、ありがとうございます。
管理人の@privategrooveです。

初期研修の2年間が終わり、4月からはいち内科医として、自分の専門とする診療科の道へ本格的に
進むことになります。

学生時代から、悩みごとがあると、銭湯に友達同士で集まって話し合う習慣がありました。
「裸のつきあい」とはよく言ったもので、働き続けることの意味や、各々の恋愛、結婚観、哲学や、
お互いの家族の悩みまで、隠すことなく開陳できた時間は、自分にとって宝物ですし、
今でも悩んだときは友人と銭湯へ繰り出しています。

20代も後半となり、30歳が近づくにつれて、友人たちも様々なライフステージを迎えています。
そんな中、僕と親友の間でよく話題に出ることととして、
「働きだしてから、「本来の自分」を見失ってしまっている人が多くなっていないか?」
という話題がよく出るようになりました。

社会人が忙しく、自分の好きだった趣味や遊びに取り組めなくなったり、
たまの「飲み会」だけを楽しみにする様子はよく見受けられます。

医師という職業は特殊です。当直や夜勤、待機で家から呼び出されることもしばしばであり、
仕事と病院の中での価値観が、如何にしても人生の中心に据えられがちです。
ICUの患者さんのために何日も泊まり込みで働いたり、睡眠不足の中、救急初療室で働いた記憶をはじめとして、
仕事を通して胸が熱くなったり、あるいは強い自責の念や無力感に苛まされることもあります。

たった3年間の経験ですが、されど3年です。仕事を通した人間的成長というものは、たしかに存在するだろうと思います。

しかしながら、学生時代に輝いていた目に生気がなくなっていたり、個性に富んだエキセントリックな性格の医学生
(医学生というのは変わった性格の人が多く、それがまたいいところでもあります)
が、僕から主観的に見て、「面白み」や「クセ」がなくなってしまう過程を目の当たりにしました。

仕事以外の趣味その他の活動に取り組んでいることが、「自分を見失わないこと」とイコールである、
という短絡的な理論に終止するつもりはありません。医学生の頃思い描いていた生活と、
実際の勤務医の生活にギャップを感じ、進路に深く悩んだり、時には選択を変えたりする人も多いです。
また大抵の場合、優秀な医学生は「与えられた役割をこなす」ことが「出来てしまう」ことが多いので、
本来この仕事がやりたかったのか、自分にとっての仕事の位置づけ、相対化が出来ずに忙殺される人が多いように感じます。

以下では、「自分を見失ってしまった人」をテレビゲームの用語を用いて、NPC(non player character)と定義しようと思います。
ここでは、仕事を始めるにあたってNPC化した人たちについて、銭湯で僕と友人諸氏で話し合った内容を、
纏めてみたいと思います。

あなたは、「NPC化」していないでしょうか?これは、自分にとっての自戒でもあります。
僕も、懐疑的に思索し続ける人間であろうと思います。

Q1 仕事を人生の中心にしている人について、本当にあなたが取り組んでいる仕事は、「進んで取り組みたい」と
思えるものでしょうか?


・人間は、仕事にせよ、家庭や趣味、芸術や友人づきあいにせよ、
何事かに取り組む際には、モチベーションや体力といった「リソース」が必要です。
仕事で失っているリソースがもし、余っていたとしたら取り組みたいことはないでしょうか。
・仕事に人生のリソースをつぎ込むことが血肉化すると、その他のことにリソースを割くことが
「おっくう」になっていきます。最終的には、それまで好きだった趣味や気晴らしが、「興味をそそられないもの」へと
変化してしまいます。やや飛躍した論理ですが、これは抑うつ状態またはその前段階と似通っています。

Q2 あなたは、今の生活を「俯瞰的」に見られていますか?

・自分が内発的感情に基づいて取り組みたいこと(仕事でも、恋愛でも、趣味でも構いません)が、
これといって存在せず、職場や周囲の人間と同様の行為を行っていく(入局、当直、大学院進学、専門医etc)、
あるいは、「常識的なライフステージ」に合わせて日々を送っていませんか?これが、NPC化の過程です。

・今、自分が日々リソースを割いている行動を明文化しましょう。その一つ一つが、自分の自己実現や
モチベーションを伴った行為なのかどうか、社会構造に迫られて「強迫」されていないかをまず考えましょう。

・それをもとに、行動や生活を変えてみるのも、よいかもしれません。一つ言えることは、これまでの習慣や行動を
変更するのはストレスを伴うことなので、強い意志を持つことが大切となるでしょう。

・時には職種や部署を変更することが正解かもしれません。

・いちばん大切なのは、まず現状を見直すことです。その結果、もしこれまでと「リソースを割く内訳」を
変えないとしても、自分が、いわゆる「社会の歯車化」していないかについて自覚的になることが大切です。
(これは、結果として組織の歯車となっていることが悪と断じているのでは決してなく、与えられた役割を、
内発的な感情やモチベーションに基づかないで、ただ「こなしているだけ」になっていないか、問いかけ続けるということです。)

・一言でいうと、「無知の知」を得ることが大切だということです。

・自分がリソースを割く行動を決める際(例えば、絵を描く仕事につきたい、ミュージシャンになりたいなど、何でも結構です)
には、「自分が特別(才能を持った)な存在である」という自覚を捨てることが大切です。
どんな分野でも、そしてそれをどんなに極めたとしても、常に自分より実力が上回る人というのは存在します。
努力することは大切ですが、ある程度、自分の気持ちや自尊心と適切な折り合いをつけることが大切です。

Qあなたは、「余暇」の時間に、何かやりたいことがありますか?
(「余暇」とは、仕事や、ライフステージに合わせたやるべきDuty(家事や子育て、介護なども含まれるでしょう)がない、
あるいは直ちに取り組む必要がないとき)


・休みがあっても特にやることがないので、仮に仕事で忙殺されてもなんとも思わない、という人がいた場合、これは危険です。
あなたがやっているその仕事は、身を削って取り組みたいことですか?一度立ち止まって考えましょう。

・人間にとって、何か新たな行動を起こすためのモチベーションや体力、知識を得るための時間などをリソースと定義すると、
一人ひとりにとって「リソース」は有限のものです。そのリソースを何に割きたいか、を何度も自分に繰り返し問いかけましょう。

・ただ日々を周囲の人やライフステージに流されるがままに過ごし、社会人として与えられた役割を果たし続ける歯車は、
ヒットした=TVアニメAngel Beats!に現れたNPCと同一です。

以下は、さらに僕の主観的な価値観を書きます。

例その1
医師は、同調圧力が強い、いわゆる「体育会系」な価値観を中心に据えている人が一定数いるようです。
つまり、エリートとして大学を卒業し、ハードに働いてキャリアを積み重ねていく流れこそが「正解」であると規定する価値観が
共有されがちであると思います。

例えば「専攻医を途中で辞め、新たな分野へ切り替わる」などの事例では、
「研修をやり通す精神力や責任感がない人間」と評価されることが間々あります。
(実際にこのようにハッキリと述べる人は居ませんが、このように見なされることも多いようです)

しかし、実際本人は、様々な患者さんや人々と、新たな業務を介して人間的成長を得ていたりして、
「本人から見て」(ここが大切)充実した毎日を送っていることもあるでしょう。

この事例では、「彼なりの辞めた理由があるのだろう」「むしろ、その理由は何であろうか、専攻医のシステムに問題がないか、
そもそも、専攻医を続けることの意義は何だろうか」と熟慮する姿勢が、生産的なものの見方ではないでしょうか。

例えば、これが医師以外の世界であれば、転職は比較的一般的なことで、
上記のような考え方の人は相対的に少ないのではないかと思います。

例その2

上司が部下に仕事を振り分ける際に、「勉強になるから、役に立つから苦労してもやっておこう」と発言したとします。

この言葉は、部下が「この仕事は誰かがやらなければならないことであり、そして自分はこの仕事をやりたい、
またやることは自分のスキルアップにつながる、そして私は自分のスキルをアップしたいと心から思っている」
という考えであることを前提していることにはならないでしょうか。

部下は、仕事に対して「食い扶持を稼ぐために行っており、不要な仕事は避けたいなぁ」と考えているかもしれないし、
「スキルアップは望ましいが、今日は仕事をしたい気分ではない」と考えているかもしれません。

この場合、部下のキャラクターをよく知っていれば全く問題ないこともあるでしょう。
しかし、「Aの仕事をお願いしてもいいですか?」に留めるのがよいように思います。

何事においても、他者のある行為に対するモチベーションや姿勢を透視することは出来ないでしょう。

つまり、あなたはやりたい事が無かったのではない、やりたいことに気付いていないだけかもしれない、
或いは、心から100%やりたいことではないにせよ、まずまず取り組んで、折り合いをつけて生きていくというように、
自分の置かれている状況を俯瞰的にみて、謙虚に、自分を過信しないように生きていくことが大切ではないかと思います。
(相手の気持がわかるなどと勘違いをしない、人の気持ちを決めつけない)

この記事をはてなブックマークに追加

関連記事
  1. 2020/02/24(月) 23:38:00|
  2. 雑記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
次のページ

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
https://twitter.com/privategroove
こちらでもおすすめの音楽など情報を流しております!
フォロー下さると嬉しいです。
可能な限りフォローバック、コメントしに参ります。
※放送企画として「私的名盤放送」というラジオを配信しております。
ツイートキャスティングホームページをご覧下さい。不定期に配信、Twitterにて情報を呟いております。ハッシュタグは「#私的名盤放送」です。宜しくお願い致します。
http://twitcasting.tv/privategroove

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

総閲覧者数(ユニークアクセス)

アクセスカウンター(PV数, 2013/12/26より集計)

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

にほんブログ村 CDレビュー

にほんブログ村 音楽ブログ CDレビューへ
にほんブログ村

「私的名盤紹介」管理人Twitterをフォローする

私的名盤紹介トップページをはてなブックマークに登録する

「私的名盤紹介」トップページをはてなブックマークに追加

「私的名盤紹介」管理人によるはてなブックマークを見る

管理人が普段見ている音楽系サイトで、気になる記事について、日々 「はてなブックマーク」を使ってコメントを付け、まとめております。 当サイトであまり取り扱わない音楽ジャンルの記事、年間ベスト、評論など雑多に取り扱っています。フォロー頂けると嬉しいです。

私的名盤紹介はてなブックマーク

「私的名盤紹介」管理人Twitter

にほんブログ村ランキング(CD Review)

もし記事を楽しんでいただけましたら、お手数ですが 下の「このブログに投票」のところをクリックしていただけると大変嬉しいです。 投票はランキングに反映されます。

RSSリンクの表示

Ninja Tools(アクセス解析)

検索フォーム

相互リンク 音楽系レビューサイト

このブログをリンクに追加する

現在の閲覧者数

現在の閲覧者数: