私的名盤放送第58回「歌唱音楽としての90sR&B特集、女性声優特集」
「放送アーカイブはこちらから」M1 ヤングアダルト /マカロニえんぴつ 『season』 (2019)M2 Gorgeous /ZOO 『Gorgeous』 (1992)M3 Up, Down /Jamm 『Jamm』 (1988)M4 BITTER /西恵利香 『Love Me』 (2019)M5 星のステージ /戸松遥 『Sunny Side Story』 (2013)
M6 見えないもの /SMAP 『朝日を見に行こうよ』 (1999)
M7 A Thang for You /A Few Good Men 『A Thang for You』 (1994)M8 パパパ /斉藤朱夏 『パパパ』 (2019)M9 You Lift Me Up /Dayton 『Cutie Pie』 (1981)M10 My Desire /Lo-Key? 『Back 2 Da House』 (1994)M11 More Than You Know /Dunn & Bruce Street 『Official Business』 (1982)M12 A Melody of Hope /福冨英明 『Melodies of Hope』 (2003)
M13 I LOVE YOUR LOVE /Negicco I LOVE YOUR LOVE (2019)M14 Gotta Get Back with You /Mind, Heart & Soul 『Mind, Heart & Soul』 (1995)M15 Baby Come Back /Mosley & Johnson 『Mosley & Johnson 』 (1987)M16 みっつ数えて /彩恵津子 『All I Need』 (1984)M17 MILKY WAY /HALLCA(冨永悠香 ex Espesia) 『VILLA』 (2019)M18 Baby Check Your Friend /Silk 『Tonight』 (1999)M19 Waning Moon /Mellow Mellow 『Waning Moon』 (2019)M20 Come and Get It /Yours Truly 『Truly Yours』 (1991)M21 青空のラプソディ /fhána 『World Atlas』 (2018)M22 Time! /障子久美 『Time!』 (1993)
M23 It's Heaven /駒形友梨 『[Core]』 (2018)
M24 ク・ルリラビー /柊かえ&本城香澄(KiRaRe) 『KiRaRe1stアルバム「キラリズム」』 (2017)
M25 She's Gone /Paul Laurence 『Underexposed』 (1989)【放送後記】
また前回の放送から1か月余りが経ってしまいました。いかがお過ごしでしょうか。
だんだんと日も短くなってまいりました。相変わらず救急科での勤務が続いており、昼夜逆転の日々が続いています。
12月頭からは再び通常の勤務体制に戻り、内科専攻医としての日常が戻ってまいります。
しかし再び病棟主治医としての責任を負う役割になりますので、気が休まらない状態が続きます。
年末も待機、当直などがありますが体調を崩さないように頑張りたいと思います。
さて、久々の放送でしたので、2時間たっぷりと楽曲中心にお届けいたしました。
タイトルの通り、USR&Bが最も輝いていた90年代のバラードを中心に、深夜の時間に合った選曲をしてみました。
1曲目には2012年に神奈川県で結成されたロックバンド、マカロニえんぴつの5thEPから
ザクザクした単音リフと淡々としたリズムから、字余り気味に歌う歌詞は最近のあいみょんのスタイルに近いものを感じる
ヤングアダルトを選びました。かつてのAqua Timez/虹やフジファブリック/若者のすべてを
思い出させてくれるような甘酸っぱいサビが最高です。
EXILEや中西圭三(セルフカバー)などのバージョンで知られる"Choo Choo Train"の一発屋と言われてしまいがちですが、
当時流行のNJSをJPOPに取り入れた代表的なダンスボーカルグループ、ZOOの92年作EPから、
鋭いドラムンベースなイントロと大仰なホーン音色のシンセが多幸感あふれるスウィンギーなトラックです。
クワイエットストームではディスコグループ、Arpeggioのメンバー、Fred Sawyersと
Fredi Grace And Rhinstoneで活動していたKeith Rawlsの2人組ボーカルグループ、Jammの1988年作から
BCMからニュージャックスウィングへと移り変わる時代を感じさせるUp, Downを選びました。
シンセの硬く透き通ったコードバッキング、音数の少なさがこの時代特有の暖かみを与えます。
埼玉県出身のシンガー、タレント、アイドル(AeLL.のメンバーとして活動)の西恵利香(1989-)の
今年発売されたフルアルバムLove Meから、最近はやりのElla Mai/Bod Upを彷彿させる
クワイエットウェイブ、Bitterを。作家にはMONJOE(DATS)、shin sakiura、Mori Zentaro、PARKGOLFなどを迎えています。
最近結婚したばかりの声優、戸松遥の2013年の2ndソロから、flumpoolや、近年ではAimerの楽曲で
主にアレンジャーとして活躍する古川貴浩のペンによる星のステージです。
豪華なホーンのアレンジとフュージョン的なドラム、素朴なボーカルが可愛らしい爽やかな一曲です。
サビの多重コーラスやフィリーソウル的な展開が女性声優のソロアルバムにはなかなかないテイストでした。
SMAPの99年のシングル、朝日を見に行こうよのB面見えないものです。8cmシングルでしか聴けない少しレアな楽曲です。
イントロ部分から非常に生々しいキーボードのリフ、アシッドジャズ的なリズム構成が少し懐かしい。
90年代R&Bを語るうえでは絶対に外すことのできない偉大なプロデューサー、Babyfaceプロデュースにより
94年にLa Faceからデビューしたボーカルグループ、A Few Good Menの1stフルから表題曲のA Thang for Youです。
少しダーティーでヒップホップソウルの影響下にあるビートと、
ゴスペル直系の分厚いコーラスが絡みつく絶品のスロウジャムです。
放送中のテレビアニメ、「俺のこと好きなのはお前だけかよ」のOPテーマとなった女性声優、斉藤朱夏の
ニューシングル、「パパパ」も最高にキャッチーでした。デビューシングルとなった「くつひも」はaikoの楽曲を思わせるような
バックの演奏が印象的でしたが、同じチームで制作されていて、全体の音のバランスは近いものを感じさせます。
4つ打ちのイントロから複雑なフィルインを繰り返し重い8ビートを刻むドラムスが最高に気持ちいいです。
まだフィジカルが手に入っておらずPersonnelが不明ですが、フレーズの組み立て方は佐野康夫さん的だといえると思います。
しかし音作りはもう少し低域の出た重いタッチです。
2番からは部分転調を加えたり、メロディーもトリッキーなリズムでソロデビューしたばかりのシンガーにはかなり難しい
曲かと思いますが、見事に歌いこなしていて将来が楽しみです。
名前の通りオハイオ州デイトン出身のファンクバンド、Daytonの1981年作から、ヘヴィーなリズムに
滑らかなストリングスと柔らかいコーラスが被さったメロウなYou Lift Me Upを選んでみました。
間奏部分のピアノソロはジャジーな感触もあり、ごりごりのファンクが苦手な方でも楽しめるかと思います。
もともとはSunというファンクバンドとして活動しており、David Shawn Sandridge, Chris Jonesらがこの
Daytonを結成したようです。SunのアルバムもLPは高騰していますが良盤揃いです。またお掛けしようと思います。
続いて少し時代を進めて、Lo-Key?はJam & Lewisが立ち上げたレーベルのPerspective Recordと契約し、
デビューアルバムを発表した4人組のボーカルグループです。メンバーのLance AlexanderとTony "Prof-T" Tolbertは
作曲家としても活躍しており、Alexsander O'Neal/Love Makes No SenseやNext, Shanice/I Wish, Smooth/Strawberries
などを手掛けたことでも知られています。彼らの94年作、2ndからポコポコしたリズムマシンと
ぶっとく重低音の太いシンセベースに柔らかいファルセットが絡みつく、ヒップホップソウル以降の感覚がある
スロウジャムです。後半のギターソロや、かすかに聞こえるシンセのリフレインはChris Jasperのようなセンスを感じさせます。
商業的にはヒットしなかった作品ですが、良質なベッドタイムR&Bが数多く収録されています。
ファズの掛かった荒々しいギターソロから始まるブギー、Dunn & Bruce Streetの唯一作、82年作からOfficial Businessを
選びました。Dunn Pearson JrとBruce Grayの2人組で、現在のTuxedoなどにいかにも影響を与えていそうな
B2Shout for Joyや、甘茶ソウル的なこみ上げるメロウ、A1If You Come With Meなど、良質なトラックが並ぶレアグルーブです。
最近、金山のSOUNDBAYで見つけたアルバムでは、1963年生まれのシンガー、キーボーディスト、
福冨英明の2003年作のフルからアシッドジャズ~ジャズボーカルの間を行くファンキーな
M1A Melody of Hopeも素晴らしかったです。Original Love/スキャンダルを思わせる性急な16ビートと
ソウルフルでスモーキーな太いボーカルが圧倒的な存在感を放っています。
新潟県出身のアイドルグループ、Negiccoの最新シングルについては
最近のレビューで書きましたので
そちらをどうぞ。
90年代はMotownにとって不遇の時代でしたが、その中でも「本物の歌唱力」を持った大人のためのグループを
いくつかデビューさせていました。Mind, Heart & Soulはそんなグループのうちの一つで、4人組の
男性ボーカルグループです。唯一作となった1995年作から80sのブラックコンテンポラリーの香りを残したクールなキメから
始まるM1を取り上げました。Jermine Jacksonに才能を見出され、自身もMotownでソロアーティストとして
活躍したMichael Lovesmithがプロデュースを務めています。フロントマンのDaveon Overtonによる
圧倒的な伸びを見せるハイトーンが炸裂しています。
少し時代が前後しますが、91年にMotownからデビューし、Ricky Jonesが所属していた3人組ボーカルグループ、
Yours Trulyも、BCMの流れをくむオーセンティックなR&Bを指向したグループでした。
彼らの唯一作となった1stフルから、16ビートの少しハネたシンセのリフレインが
Remind Me/Patrice Rushen的なグルーブを生み出すメロウなニュージャックスウィング、
Come and Get Itを選びました。ほかにも夢を見るような繊細なファルセットがたまらないクワイエットストーム、
M2I Wanna Make Love To You, 女性シンガーのDionnaをフィーチャーした、Keith WashingtonやFreddie Jacksonの
ソロ作に負けずとも劣らぬM6Gonna Miss The Oneなど、都会の夜にぴったりなバラードが並ぶ名盤です。
Staxの流れを汲み、80年代のサザンソウルレーベルとして知られるMalacoでソングライターとして活動していた
2人組、Mosley & Johnsonの87年作から、George Benson/Turn Your Love Aroundや
Michael Jackson/Baby Be Mineを思わせるブラコン必殺のコード進行なブギー、Baby Come Backを選びました。
いかにもサザンソウルな泥臭いボーカルも、アーバンなトラックと合わさって聴きやすく仕上がっています。
「LIGHT MELLOW 和モノ669 / SPECIAL」、「JAPANESE CITY POP」、吉沢dynamite.jp監修「和モノ A TO Z」に
掲載されたシティポップの人気作、彩恵津子の85年作も東京遠征で手に入れました。
角松敏生のバックコーラスとしても知られる彩恵津子の本作はLAレコーディングで、
Tim Weston(G), Carlos Vega(Ds), Bill Champlin(Chorus)などが参加しています。
桐ヶ谷仁のペンによるキュートなミッド、みっつ数えてをどうぞ。
その他、BUZZの東郷昌和や笹路正徳、岸正之などが参加しています。見つけたら即買いです。
解散してしまった大阪市堀江出身のアイドルグループ、Espesiaは、リゾートミュージック~シティポップリバイバル、
Vaporwaveなどの影響を受けた楽曲を時代に先駆けてリリースしていました。
解散後、ソロ活動で活躍しているメンバーもおり、脇田もなりさんは特にAOR、NJSなどから影響を受けたJPOPを
生み出しており、VIVID SOUNDから数作、作品をリリースしています。私的名盤放送でも何曲かお掛けしております。
Espesiaのリーダーだった冨永悠香さんもソロ活動を続けており、1stフルを発表しています。
HALLCA名義のアルバムから、グロッケンのようなシンセや、フリューゲルホルンのゆったりとした
バッキングが心地よいクワイエットウェイブ、Milky Wayを取り上げました。
アレンジャーではEspesia時代から協力してきたPellycolo、Rillsoulなどのアレンジャーが参加しています。
今年のアイドル系ポップスの中でも特に見事な完成度の一枚だったと思います。
かつてのEspesia時代の楽曲がお好きな方は必聴です。
同じくアイドルポップスでは2018年にデビューしてからグルーヴィーなディスコ~JPOPを生み出している
3人組、Mellow Mellowの最新シングル、Waning Moonも素晴らしかったです。
Jackson 5/I Want You Backな進行を軸にして煌めくJPOPへとアレンジする手法は、
星野源/Sunや亜咲花/Shiny Daysにも通ずるものがあります。
明るくもどこか淋しく切ない香りがする、不思議な一曲です。
前作のDear My Star収録のNJSなC/W, Trap of Loveも見事なトラックでした。(過去回で放送しています)
90年代のR&Bを代表するプロデューサーというと、Jam & Lewis, Babyface, Teddy Riley, R Kellyなどということに
なるでしょうが、Keith Sweatももちろん忘れてはいけません。
アトランタで結成された5人組ボーカルグループ、Silkも彼によって見出されました。
1999年作の3rdから柔らかなコーラスと複雑なメロディを見事に歌いこなす
ダークなスロウジャム、Baby Check Your Friendです。
京都アニメーションの楽曲にはポップ&キャッチーなテーマソングが無数にありますが、
その中から「小林さんちのメイドラゴン」のOPとなったLantis所属のポップロックバンド、fhanaの2017年のシングル、
青空のラプソディです。ドラマティックなストリングスが前面に出るサビ、ディスコビートにぶりぶりとした
ベースラインが目立つイントロ、目まぐるしく展開が変化する、まさにアニソンだからこそ
出来る壮大な名曲です。アニメも最高でした。
フォロワーの@telepath_yukariさんに教えて頂いた、
松任谷正隆に見出されたレアなシティポップ系SSW, 障子久美の93年作のシングル、Time!も素晴らしかったです。
広瀬香美/GROOVY!(本間昭光プロデュース)を思わせるようなディスコからの影響も感じられる楽しげなトラックです。
今聴くと少しチープな録音ではあるものの、古内東子的なジャズ由来のコード進行も適度に加えながらも、
複雑になり過ぎない塩梅が素晴らしい。木村恵子、具島直子などと合わせて是非どうぞ。
最近、アニメソング、アキシブ系、Flying Dog系のアーティストを沢山教えて頂いている
@jamuireijiさんに教えて頂いた、スペースクラフト所属の女性声優、駒形友梨のソロ1stミニアルバム、
[Core]から滑らかな邦楽シティポップ~アシッドジャズなIt's Heavenを選びました。鋭いカッティングとうねるベース、
クラビネットのリフを組み合わせるセンスは、声優さんのソロアルバムではなかなか見られないと思います。
しかしながらメロディは非常にポップで、後半の歌のメロディを変奏したピアノソロも見事です。最高。
その他にも、ブルーペパーズ/6月の夢に負けずとも劣らぬ滑らかなグルーブで満ち満ちたAORのクロックワイズは、
後半のブラジリアンなフルートソロやギターソロも含めて見事な編曲です。
クリスマスソングなストリングスの豪華なオールディーズな香りもするポップス、Talk 2 Nightは、
槇原敬之や竹内まりやの90年代の傑作群を思わせるようなオーセンティックなJPOPです。これも息をのむほど美しい。
2ndEPはまだ配信が解禁されていないようで、早速購入しようと思います。
ポニーキャニオンとコンプティークによる女子中学生アイドルを描いたメディアミックス作品の
Reステージ(アニメは今年の夏放映していたようです)内のアイドルグループ、KiRaReの1stフル、
「キラリズム」から、トランスやハウスに影響を受けた90sJPOPをそのままに蘇らせたような
ク・ルリラビーです。イントロのオリエンタルなシンセリフとコケティッシュなボーカル、
TR909のような歯切れのいいドラムマシン、うねうねしたコードバッキングが心地いいブギーです。
1番終わりのシンセソロから2番の始まり部分は少しモーダルな質感があって、これも憎い演出です。
最後には、 Freddie Jackson/Rock Me Tonight(Jacksonとはデュオ名義で活動していました)
, Stephanie Mills/(You're Putting) A Rush on Me,
Meli'sa Morgan/Do Me Baby、その他Evelyn KingやLilo Thomasなどを手掛け、
ブラックコンテンポラリーの一時代を築き上げたハーレム出身のプロデューサー、Paul Laurence(1958-)の89年作のソロ、
Underexposedから絶品のクワイエットルーム、She's Goneを取り上げました。
シンセのキャッチーで耳から離れないリフ、センシュアルで囁きかけるようなファルセットのボーカル、
端正で音数の少ないリズムとシンプルなサビと、クワイエットストームの魅力が凝縮されたトラックです。
得意のスロウジャム、クワイエットストームと女性声優ソングをたっぷりと2時間お届けした
私的名盤放送第58話、いかがでしたでしょうか。次回は手に入れたアナログや新譜なども多めに絡めて
お送りしようと思います。良い夜を。
①
②
③
④
- 関連記事
-
- 2019/11/16(土) 02:11:30|
- 私的名盤放送セットリスト
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0
Album: I LOVE YOUR LOVE
Artist: Negicco
Year: 2019
Genres: Soul,Disco, JPOP, 渋谷系

久々のレビューはジャム(
@jamuireiji)さんのリクエストのもと書いてみました。
相変わらず救急科勤務が続き体力消耗しておりますが、これからも私的名盤放送/紹介を宜しくお願い申し上げます。
2003年に結成された新潟県を活動拠点とする3人組の女性アイドルグループ。
長い活動期間の中で、特に近年の渋谷系再評価/アキシブ系
(秋葉原+渋谷系のこと。アニメソング、声優ソング、ボーカルグループ、アイドル、Vocaloid系などの中で、
90年代のスノビッシュで様々な音楽スタイルを融合した渋谷系の影響を強く受けた音楽ジャンルのこと)
の楽曲で注目を集めているグループでもあります。
長い活動期間があり、TVCMにも出演したりと全国的な知名度もある彼女たちは、これまで
メインのプロデューサーであるconnieのほか、小西康陽(ピチカート・ファイブ)、サイプレス上野とロベルト吉野、
田島貴男(ORIGINAL LOVE)、Shiggy Jr., 冨田恵一、坂本真綾などを作家に迎えています。
リアルタイムの渋谷系の作曲家以外にも、現役で活躍する若手のアーティストの起用も目立っている彼女たちは、
同じく新潟県出身のアイドルグループであるRYUTistなどと合わせて、
アキシブ系、アイドル系のブギー、AOR、ネオアコースティック的な音を求める方であれば確実に気に入ることと思います。
本作は彼女たちの最新シングルで、1年7ヶ月ぶりにリリースとなりました。
90年代から、希少なバンドという形で、吉田美奈子/山下達郎~佐藤竹善/ORIGINAL LOVE~さかいゆうなどの流れを汲む
邦楽ブラックミュージックの消化の歴史の中で重要な役割を担ってきたNONA REEVESの西寺郷太がM1を作曲しています。
西寺さんは文筆家としても分かり易く読みやすい、優れた文章を書く人で、Michael JacksonやPrinceなど、
主に80年代のブラックミュージックに関する著作は、松尾潔さんの著作とともに名盤さん自身も愛読しています。
M1はフィルターハウスのようなイントロから始まるバブルガムなブギー(BPM131)で、オクターブのフレーズを中心とした
ディスコらしいベースラインと4つ打ちのリズムパターンで進行していきます。
メロ部分のコード進行はシカゴソウルのこみ上げる感じがあり、
フィロソフィーのダンス/ライブ・ライフにも迫るスリリングさです。
奥田健介(BONNIE PINK, 堂島孝平、m-flo, CHEMISTRY、土岐麻子 etc)のオクターブのカッティングを
中心としたメロウなギターはさながらDavid T Walkerのような繊細な音色で素晴らしいです。
随所に挟まれる3連のカッティングフレーズなどはかつての東京女子流(土方隆行などが参加)を感じさせますし、
Espesia的なVaporwave以降のリゾートミュージックらしさもあります。
ベースは小松シゲル(キリンジ、堂島孝平、BONNIE PINK, いきものがかり、南波志帆 etc)が参加し、
モコモコした音でありながら埋もれず、ギターソロの前では存在感を発揮する音のバランスが最高。
リズムの重いグルーブは、80sのオハイオファンクやMidnight StarなどのSOLAR Recordsのファンク系アーティストの
それを感じさせます。最近のプロデューサーで言うと、T-Groove(英国在住の邦人若手プロデューサー、高橋佑貴, 1982-)
などが好んで使うタイム感です。近年の彼女たちの楽曲の中でもとりわけ名曲だと思います。
1995年に結成されたポップス/ロックバンド、クラムボンのミトがペンを執ったM2は、
ピアノのコードバッキングが8ビートを刻む80sJPOP的なフレーズでありながら、ジャジーで緊張感あるハーモニーが
クラムボンらしさのあるメロ部分、愛らしい、囁くようなボーカルに意外なほどラウドなドラムスが絡む不思議な一曲です。
後半では恐ろしいほどにシンバルを鳴らしまくっているのにうるさくなく、ボーカルを邪魔しないところが見事な
録音バランスとうことになるのでしょう。
メインプロデューサーのconnie(丹羽洋介, アイカツシリーズなど 1978-)が担当するM3は、
Aメロ~Bメロ部分はシンセの作る調性感の薄いコード進行に、(Perfumeの傑作、JPNに収録のHave a Strollを思わせる)
ブリブリしたシンセ―ベース、TR909的な重いリズムマシンで、ハウス的なリズム構築がクールなトラックです。
これもニュージャックスウィングなど90sR&Bが好きな方には堪らないと思います。
長きにわたってファンから愛されるNegicco、今後の活躍もまだまだ楽しみです。
11/16に行われるツアーファイナルではsugarbeans(Key)、末永華子(Key)、堀崎翔(G)、千ヶ崎学(B / KIRINJI)、
岡本啓佑(Ds/黒猫チェルシー)という豪華メンバーで生演奏も聴けるようで、行ける方はぜひ。
公式トレーラー
- 2019/11/07(木) 23:04:45|
- Negicco
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0