私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(309)

Album: part of grace
Artist: Lillies and Remains
Genres: Post Punk/New Wave, Gothic Rock

part of grace


2007年にリーダーのKent(Vo, G)を中心として京都市で結成された、
日本のポストパンク/ニューウェイブ/グラムロックバンド。
現在はベーシストのNara Minoruが脱退し、KentとKazuya(G)の二人組になっているようです。
日本では余り名前を知られていませんが、メンバーはUKのインディーロックバンドである
Neils Children(1999-)の影響を公言しており、ニューウェーブのバンドといっても
電子音楽への接近は余り見られず、サイケデリック・ロックや或いはゴシック・ロック
に近いサウンドが見られます。重く、金属的な音のギターサウンドは、
粒の粗く、強く歪ませた中で、空間系のエフェクトを派手に掛けた荒々しいもので、
同じくゴシックロックを代表するバンドの一つであるBauhausのそれに近いものがあります。
UKインディーには全く疎い筆者ですが、サポートとしても
Selfish Cunt, Neils Children, Project:Komakinoなどのライブに参加しているようで、
日本国内よりも英国内での方がその名を知られているのかもしれません。
歌詞は前編英語詞で、ボーカルの囁くように歌う表現はJoy DivisionのIan Curtis(1956-1980)
を思わせるような低音の独特な響きを持っており、日本人バンドらしいメロディの
キャッチーさも相まって、中毒性を感じるサウンドです。
多重録音されたコーラスとローファイなギターが印象的な冒頭から、
重いタムの音とサンプリングされたボイスが散りばめられていく#1ARGOから、
突き刺さるようなカッティングが終始鳴り響き、ダンサブルで疾走感のあるドラミングで
一気に聴かせる#2The Fakeのダークで気怠い雰囲気には得も言われぬ中毒性があります。
強く歪ませたベースのザクザクしたシンプルなリフ、忙しないラップパートと、
硬質なリズムギターが絡みつく#3Poles Apartはお気に入り。
#4Moralist S.S.は、キャッチ―なクランチのカッティングを中心としたパンキッシュなギターと、
一層うねりを強めたベースが肉体的なグルーブを作ります。
一転して牧歌的な雰囲気を湛えており、クリーンのアルペジオがアンビエント的な
短いインストの#5Aliceを挟んで、細かく入ってくるブレイクや短音カッティングが緊張感を
生み出しながら、物哀しいギターリフが耳に残る#6Wreckageへと繋がって行きます。お気に入り。
#8Unmade Schemerは、クラシックロックっぽい特徴的なベースリフを中心としながら、
荒々しいリズムギターとドタドタしたドラムスに得も言われぬグルーブがあります。最高。
不気味でアンビエントなストリングスをバックに、タムを絡めたラウドなフィルが鳴らされる
パートから、一気にパンキッシュに疾走していく展開が面白い#9Solitude of Vigourもお気に入り。
スラッシュメタルを思わせるような極低音のギターリフと、囁くようなボーカルが
左右に定位された#11Grind, 不穏さを煽るクリーントーンのギターと、
アウトロのエモーショナルなギターソロが印象的な#12Upsetterで淡々と終わっていきます…
ボソボソと囁くようなボーカルにローファイなギターサウンドと、
普段自分の聴く音楽の趣味からは少し離れていますが、3ピースならではの一体感あるサウンドと、
シンプルなフレーズの中にあるノリの心地よさでいつの間にか聴けてしまいます。
ニューウェーブと言うより、グラムロックやパンクの好きな方に、
むしろ受けの良いサウンドかもしれません。良作。

The Fake

Poles Apart

Moralist S.S.

Unmade Schemer

Solitude of Vigour

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  1. 2014/06/16(月) 00:05:26|
  2. Lillies and Remains
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  4. | コメント:3

今日の一枚(295)

Album: Sim City
Artist: 平沢進
Genres: Post Punk/New Wave, World Music, Ambient

Sim City


東京都足立区中川出身のシンガーソングライター、ギタリスト、
シンセサイザー奏者、音楽プロデューサー、アレンジャー、CGモデラー。
1954年生まれ。1973年にMandrakeというへヴィメタルバンドを結成し、
Black Sabbath直系のメタルから、古典的プログレを取り入れた楽曲を制作、
学園祭などを中心としてライブ活動を行ったあと、78年頃にMandrakeを解散し、
1979年には、日本を代表するニューウェーブ/ポストロックバンドである
P-Modelを結成します。P-Modelは数回の活動休止を経ながらも2000年まで活動を
続けており、その音楽性は極めて広範に及ぶため、とてもここでは語り尽くすことは
出来ませんが、初期はKraftwerkやXTCに代表されるテクノ・ポップ的な音像
(とりわけリズムに対する実験的なサウンド構築が特徴的です)と、
中期はポップネスから離れて音響系やアンビエントの方向へと接近して行き、
自作機材やサンプリングを多用した音像、
解凍(1991年頃-1993年まで)期からは再びテクノポップへと回帰して行きながらも、
民族音楽とのクロスオーバーなど、1989年に開始したソロ活動の音楽性が
混合された音像、
改訂(1994年頃-2000年まで)期にはライブパフォーマンスに、インターネットを介して
会場に設置されたインターフェースから得られた情報をフィードバックするという
インタラクティブ・ライブと呼んでいたパフォーマンススタイルを確立するなど
していました。この時期の作曲はその多くがメンバーである小西健司によって
行われています。
ソロ活動の中では、様々な民族音楽からの影響が見られる作品を多く
リリースしています。
その中でも本作を初めとするBANGKOK録音3部作(1995年から1998年にかけて録音された
Sim City, SIREN, 救済の技法の3枚のオリジナルアルバム)は、
彼が最も影響を受けたものの一つであるタイ音楽と、
タイの人々で性転換手術を受け女性となった、saopraphetsonの方々の存在や文化に
影響を受けており、本作ではコーラス隊としてアルバムレコーディングに
彼女達が参加しています。
他にもソロではアニメ作品の音楽(DETONATORオーガン、剣風伝奇ベルセルク、
妄想代理人)や映画音楽(千年女優、パプリカ)を制作したり、
戸川純(1953-)を中心とするテクノバンドであるヤプーズ(Yapoos)、
90年代半ばを中心に活躍した声優の宮村優子(1972-)に楽曲提供を行ったりしています。
少し横道に逸れましたが、本作の紹介に移ります。
本作は先ほども述べましたようにタイをテーマとしたコンセプチュアルな作品と
なっており、この統一感やドリーミーな浮遊感のある音像はPink Floydの
The Darkside Of The Moonを思わせる(Echoesは彼らへのオマージュ)部分もありますが、
サウンドの中心となっているのは自身が得意とするシンセサイザーであり、
古典的プログレのイメージというよりは、デジタルなサウンドに特有の生々しさや
鋭さを内包したサウンドであるということが出来ると思います。
数ある彼のソロ作品の中で、楽曲のキャッチーさという点でも飛び抜けている感があり、
初めて聴いた筆者も非常に楽しめました。
題名のSim Cityとは、同じタイトルのテレビゲームと同じように、
「機械運動によって生み出された仮想上の街」という意味合いで考えれば、
Simulative Cityの略と言えるのかもしれません。
壮大なストリングスの中で、語りが入った#1Recallから始まり、
シームレスに#2Archetype Engineへと繋がっています。シンセベースのポコポコした
リズムとノイズ交じりのリズムトラックの中で、日本語訛りの強い英語が独特な
響きを持たせています。動きの大きいメロディの中でファルセットに掛かりながらも、
オペラティックで不気味なコーラスに助けられて分厚い音を作っています。お気に入り。
映画「千年女優」の音楽の元になった#3Lotusは、左チャンネルを流れ、
リズムをキープしながらも饒舌に動くシンセや、日本の笙のような音の
ソロが聴き所です。歌メロはポップです。
#4Kingdomは、東南アジア的な音階の歌メロで、馴染みのないものでしたが非常に
面白いと感じます。ハーモニーもそれに伴って不思議な浮遊感があります。
リズムトラックは不安を掻き立てるような音でこの対比も良い。
#5Echoesは、淡々としたリズム、幾重にも重ねられた電子音の作る波の中で、
アンビエントに進んでいきます。エフェクトの強く掛けられたコーラスが時折出てきて
現実に引き戻されるような感覚に陥ります。
表題曲の#6Sim Cityは、冒頭のジャズっぽくウォーキングするベースと
コーラスから始まり、待ってましたと言わんばかりにウネウネしたシンセと
強めのスネア音が入ってきます。サンプリングによる女性ボーカルが断片化され挿入
され、このシンセ音の作るリズムと、バックを覆い尽くすハーモニーが混沌とした
世界観を演出しています。3:00前後の、ウネウネシンセが前に出て来て、
車が急停車するような、タイヤの擦れるような音の出てくるパートは鳥肌もの。最高。
#7月の影はDark Side of the Moonのことを指しているのでしょう。
シンセベースが動く中で朗々とした歌唱が堪能できます。
#8環太平洋擬装網は、敢えてローファイにしたストリングスのループを繋ぎ、
ディストーションの強く掛かったギター(TokaiのTalboを使っているらしい)
が入ってきます。時折入ってくるエレピの速弾きフレーズも面白い。
相変わらずシンセの低音パートに耳が行ってしまいます。お気に入り。
バラード風の#10Caravanは、伸びやかなロングトーンの歌唱を中心とした
ゆったりした一曲です。歌がはっきり聴こえてくるだけに歌詞の
意味不明さが際立ちます。
ピアノと琴のような音のアルペジオに合わせて語りが入っていく
#11Prologueは、平沢自身のスキャットが少し入りつつドリーミーに終わります。
これまで難解なイメージがあったニューウェーブですが、
本作はテクノポップ的なダイナミズムやシンセベースのグルーブがあり、
聴き易い印象を受けました。

Archetype Engine

Sim City

環太平洋擬装網

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  1. 2014/05/14(水) 15:34:45|
  2. 平沢進
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今日の一枚(270)

Album: MODERN MUSIC
Artist: ムーンライダーズ
Genres: Rock, Post Punk/New Wave

Modern Music


1975年に鈴木慶一(1951-)を中心として結成された日本のロック/ニューウェーブバンド。
71年から3年間活動していた、はちみつぱいというバンドが前身で、
結成当初はアグネス・チャンのバックバンドとして活動を続けていました。
76年に火の玉ボーイ(鈴木慶一とムーンライダーズ名義)でデビューを果たしてから、
ポストパンクやニューウェーブ、テクノの台頭という時代のムーブメントにリアルタイムで影響を受け、
1979年作に発表された5th。次作のカメラ=万年筆(1980)では徹底した欧州的な(違う言い方を
すればハイファイで、プログレ的な)ロマンチシズムの排除と、XTCのようなニューウェーブ特有の
グルーブのあるリズムパターン、ローファイな音の中に、
当時YMOの坂本龍一などが取り入れていたダブなど手法の影響が見られる、
「洗練された」音楽性へと進んでいくことになりますが、今作ではまだそういったロマンチシズムが
随所に残っており、見方によってはプログレ的であったり、ハードロック的であったり
フォークロック的であったりと様々なイディオムが見られ、
かなり流動的な手法でニューウェーブに迫った、ダークで掴みどころのない
不思議な作風になっていると思います。
冒頭のギターリフからクラシックロックかと思わせながら、中間部ではボーカルエフェクトの
強くかかったKraftwerkなテクノポップへと展開していく#1Video Boyから驚かされます。
ただリズム隊はきちんとロックしておりドライブ感があるのがまた非常に個性的です。素晴らしい。
岡田徹(Key)作曲の#2グルーピーに気をつけろは、歌謡曲っぽい湿り気があるメロディに、
淡々としたリズム隊の演奏をよそに、中間部でのアンビエントな電子音が陰鬱な印象を与えます。
鈴木博文のベースラインがディスコビートを感じさせるフレーズで、
ダンサブルなグルーブがある中に、淡々とした低音コーラスが渋い#3別れのナイフは、
ディレイによる長いギターソロが聴き所です。左右で交互に鳴るギターのバッキングがスペイシーです。
お気に入り。随所に入ってくるトレブリーなギターリフがキャッチ―な#4Disco Boyは、
名前ほどディスコしているかというと微妙ですがフェイクしたボーカルといい、
これもまた妖しい魅力があります。
#5Virginityは、すっきりとしたバッキングで、メロウなファルセットのコーラスやシンコペーション
の多いベースラインが際立っています。ギターソロはNiel YoungやBruce Springsteenのバンドで
弾いていたNils Lofgrenを意識しているそうですが、素晴らしい泣きっぷりです。
サビでのキメが時代を感じさせる#6Modern Loversは、本作の中でも特にコーラスの定位感が
素晴らしい一曲です。エモーショナルで喉頭の開いた力強いボーカリゼーションも圧巻です。
ハードロック的なイントロのギターがエモーショナルな#7Back Seatは、
ボーカルが入った途端にアンビエントな世界観に変わるのに驚かされます。
テープを途切れさせて作ったようなストリングスの音や、フリーキーに鳴り渡るシンセの音色が、
シルキーなギターサウンドと鮮やかな対比を見せています。お気に入り。
#8Burlesqueは、低音よりのブラスの音が作る分厚いトラックに、キュートな女性コーラスが
彩りを添えるヨーロピアンなメロディが異色な一曲。
#9鬼火は、一層へヴィ―になったドラムスの作る端正なグルーブに対して、
揺らめくシンセのバッキングや多種多様な音遣いはプログレ的ですらあります。名曲。
ニューウェーブと一口に言っても、ムーンライダーズの音楽はその範疇のみで語れるバンドとは
考えにくいと思います。むしろ70年代後半の東京と言う都市の生み出した音楽であるとだけ
定義した方が良いのかもしれません。音楽に対して遊び心があり、他の文化との文脈の中で、
享楽的に接していながら、その内側に(80sには薄かった)冷ややかな自己批判性と
先の見えない朧げな不安さを抱えたような、若者たちの
独特な空気を今にリアルに伝えてくれている気がするからです。
何度聴いても不思議な気持ちになる一枚です。

Modern Lovers

Video Boy[Live]

Back Seat

鬼火

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  1. 2014/03/16(日) 02:32:20|
  2. Moonriders
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今日の一枚(259)

Album: Ⅲ(Melt)
Artist: Peter Gabriel
Genres: Progressive Rock,New Wave, Noise

Melt.jpg


イングランド、サリー州ウォーキング出身のシンガーソングライター、ボーカリスト。
1950年生まれ。1967年から1975年の間、伝説的なプログレッシブ・ロックバンドである
Genesisで結成当初からフロントマンとして活躍し、ライブパフォーマンスにおいて
その奇抜な衣装や照明演出、メイクといった視覚効果での演出や演劇性を取り入れた
斬新なステージングを行ったことでも知られています。
1974年のコンセプトアルバム、The Lamb Lies Down on BroadwayではGabrielが中心となって
作詞を行い、なんとライオンの衣装を着てライブを行っています。
その当時からディレクターのWilliam Friedkinと映画音楽の制作に取り組むため
一時的にバンドを離れたりと、他のメンバーとの音楽性の違いもあり、
75年にGenesisから脱退することになります。
ソロ活動開始後は、ワールドミュージックと、当時導入され始めていたアナログ・シンセサイザーを
用いた電子音楽への接近が見られ、本作では最新鋭の技術であったGate Reverbと言われる
リヴァーヴを極限まで小さくするドラムエフェクトを初めて用いています。
このエフェクトを使った曲では、元GenesisのPhil Collinsが叩いています。
(#5Family Snapshotではスネアドラムのみ、#10Bikoではスルドというサンバやボサノヴァなどの
ブラジル音楽で使われる打楽器を用いています。)
他にも当時はまだThe Jamに在籍していたPaul Wellerが
#6And Through the Wire でギタリストとして参加しています。
コーラスにはイングランドのアートロックを代表するシンガーソングライターであるKate Bush、
King CrimsonのギタリストでありリーダーであるRobert Frippなど、
超一流のミュージシャンがこぞって参加しています。
プロデュースには後に5度グラミー賞を受賞することになる、当時弱冠25歳の
Steve Lilywhite(U2, The Rolling Stones, Talking Heads, XTCなど多数)を起用し、
アフリカ民族音楽と、ニューウェーブ、ノイズミュージックをリアルタイムに
経験したロックの極めて高度な融合が試みられています。
リズムトラックには一切の金物(シンバル類)の音が入っていない点も特徴的だと思います。
アルバムジャケットはPink Floydでお馴染みのHipgnosisが担当しています。
元々彼の1stから4thまでの作品にはアルバムにタイトルがついておらず、この顔の半分が
溶け出したようなジャケットのイメージからMeltと呼ばれています。1980年作のソロ3rd。
#1Intruderはゲートリヴァーヴの掛かったひたすらにシンプルなパターンを重く叩くドラムスに
合わせて、低音の響きが豊かなGabrielのボーカルが訥々と歌います。
短く音の切られたギターのフレーズと、掛け声を発する雄雄しい男たちの声が
不気味さを演出しています。後半の悲痛で叫ぶようなボーカリゼーションは圧巻です。
サックスのリフレインとノイズ、Kate Bushのコーラスで幕を開ける#2No Self Controlは、
歌い上げるメロディには奇妙なポップネスがありつつも、巨大な音圧で迫ってくるタムの音が
圧倒的な存在感を放っています。最高にクールです。
1分20秒のサックスによるメロウなバラード#3Startを挟んで、
#4I Don't RememberではRobert Frippの激しくフランジャーの掛かったギターのバッキングと、
Tony Levinのチャップマン・スティックの生み出す太くうねりのあるベースラインが作る
ハードロック的なグルーブの中に、種々のノイズやエフェクトを施したコーラスが
上手く混じりこんでいて異様な高揚感を与えてくれます。名曲。
キーボード弾き語りで静かに始まる#5Family Snapshotは、途中からバンドが入ってきて
盛り上がっていきます。メロディの綺麗さは本作中でも随一です。
アンビエントな電子音から一気にパンクロックに変貌する#6And Through The Wireは、
若き日のPaul Wellerのギターリフが聴き所です。金物の音が無いこともありながら、
メロディやコーラスのハーモニーは完全にロックになりきらずエスニックな空気を残しています。
#7Games Without Frontiersは、アンビエントなイントロと、耳に残るコーラスのリフレインが
生々しく鳴る背景で、サスティーンの効いたギターが異彩を放ちます。
よく動くベースラインとギターのストロークの軽快さと、
ドラムスの重さが対照的な#8Not One Of Usも、音が塊になって流れてくるような感じではなく
各楽器の音が分離されて聴こえてくるアレンジになっています。
南アフリカの反アパルトヘイト活動家であり、壮絶な拷問を受け77年に30歳の若さで亡くなった
Steve Bikoへの追悼の意を込めて制作された#10Bikoは、Bikoの理不尽な死への怒りと悲しみ、
彼を殺しても反アパルトヘイトの活動は止むことは無いという強いメッセージが込められています。
Phil Collinsの叩くスルドのアフリカンなリズムと、極限にまで削ぎ落とされたサウンドが、
神聖さを感じさせているのかもしれません。
現代にいたるまで極めて怪しげな魅力と新鮮さを放ち続けていながらも、
ムーブメントとしては非常に短い時間で形骸化せざるを得なかった
ニューウェーブの誕生は、それまで様式美の極致であった
プログレッシブ・ロックを生業としていた彼自身に強烈な創作意欲を注ぎ込んだに違いありません。
そういった意味で、ニューウェーブ通過後のロックのクロスオーバーとしてのサウンド面でも、
不法侵入者や暗殺者の心情を描くことを通じて、歪曲した民主主義へのアンチテーゼを反映した、
悲痛さを滲ませる詞世界の面でも、80年という時代を、彼が生きていたからこそ生まれ得た奇跡的な
作品であると考えて間違いないと思います。

Intruder

No Self Control

I Don't Remember

Family Snapshot

Biko

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  1. 2014/02/20(木) 02:48:12|
  2. Peter Gabriel
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  4. | コメント:2

今日の一枚(150)

Album: Pelican West
Artist: Haircut 100
Genres: Alternative Rock, Post Punk/New Wave

pelican west


1980年にイングランド、ケント州でNick Heyward(Vo, G)を中心として結成された、
ブラスロック、ポストパンク/ニューウェーブバンド。#1Favorite Shirtや#2Love Plus Oneなど
ヒット曲を連発しましたが、僅かアルバム2枚を残して解散しています。
1982年作の1st。最近まで全くその存在を知らなかったのですが、たまたま中古レコードショップの
バーゲンコーナーで気にかかり購入に至りました。
ラテン色の強いリズムと、切れ味の鋭いカッティングが全編を通じて鳴り響き、
軽快なグルーブを創出しています。
特にPatrick Hunt(Dr)の堅めのスネアや Les Nemes(B)の良く動くベースライン、
そしてNickのジャキジャキしたドライブ感溢れるリズム・ギターのトーンが心地よいです。
当時の彼らのような、ファンクにラテン音楽の要素を取り入れたバンドは「ファンカラティーナ」
(ABC, Funkapolitan, Level 42、Modern Romanceなど)と言われていたようです。
ホーンの入れ方に注目して聴いてみると、いかにもファンク的な疾走感を感じさせるものと
なっていますが、アレンジはアコースティックで温かい音になっているため、
どちらかというとネオ・アコースティックの影響が強いバンドであると言えるかもしれません。
彼らの楽曲は、日本で90年代に生まれてきたいわゆる「渋谷系」のミュージシャンたちに
強い影響を与えているらしく、Flipper's Guitarの楽曲に、「バスルームで髪を切る100の方法」
(アルバム、「カメラ・トーク」収録)というのがあるほどです。
彼らの代表曲である#1Favorite Shirt(邦題:好き好きシャーツ というのを読んで思わず
吹き出してしまいました)は、ダンサブルでキャッチ―なメロディが楽しめます。
高速カッティングとメロディアスなホーンとの絡みが素晴らしい!
曖昧な関係の男女の姿を描いた切ない#2Love Plus Oneでも、
ソリッドなカッティングの切れ味は勿論のこと、サックスのリフレインが強く頭に残る
中毒性の高い曲です。
#4Marine Boyはフュージョンライクなリズムと、手数の多いジャジーなピアノソロを聴かせてくれます。
サックスのメロディは日本のフュージョンのようなスムースさを湛えていますが、
その中でもカッティングは相変わらずファンキーで曲に疾走感を与えています。
ニックのボーカリゼーションもメロウで、柔らかいものとなっています。
バイクの通り過ぎるSEと共に始まる#5Milk Filmは一転してクラシック・ロック色の強い
ソリッドなリズムと甘いメロディを特徴としたギター・ポップに仕上がっています。
ファンキーな#6Kingsize (You're My Little Steam Whistle)はスラップベースのハネた
リズム感と、絶妙なタイム感のカッティングが良く映えたグル―ヴィーなファンク・ロックです。
#10Love's Got Me In Trianglesは、本作の中でも異色な一曲で、低音が強調されたダークな
ベースラインと、エモーショナルなボーカルが炸裂するダンサブルなものとなっています。
#12Calling Captain Autumnはシンプルな歌詞に粒の揃ったカッティングと
ファンクにおける教科書的なベースライン、左チャンネルから流れるコンガの連打が音の隙間を
縫うようにグルーブを創出していくゴリゴリとしたファンクです。
80年代の英国ポップスを代表する隠れた名盤だと思います。

Favorite Shirt

Love Plus One

Marine Boy

Love's Got Me In Triangles

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  1. 2013/05/12(日) 23:24:53|
  2. Haircut 100
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  4. | コメント:0

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
https://twitter.com/privategroove
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フォロー下さると嬉しいです。
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