私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(399)

Album: Xen
Artist: Arca
Genres: Electronica, Breakbeats, Hip Hop, Chill-out, Minimal

Xen

ベネズエラの首都、カラカス出身の音楽プロデューサー、エンジニア、DJの
Alejandro Ghersi(1990-)によるソロエレクトロミュージックユニット。2014年作の1st。

現在のところは、EPを3枚と、2013年に自主制作したフリーダウンロードのミックステープ&&&&&が
ヒットしたことがその名が知れ渡るきっかけとなります。
近年急速にアメリカ国内のビッグネームの作品でコラボレーションしたり、自身の作品に
ゲストプロデューサーとして参加して貰ったりしているようです。

Kanye Westをプロデューサーに迎えたり、FKA Twings/EP2のプロデューサーとして参加したり、
Bjorkの制作中の9枚目のオリジナルアルバムにゲストプロデューサーとして参加したりしています。

2013年の10月にはMoMAでのオーディオとビジュアルのパフォーマンスを合体させた&&&&&と
題されたライブパフォーマンスを行っています。この時にビジュアルアートを担当したのが、
14歳の少年の時にGhersiが知り合った、Jesse Kandaです。
ArcaのPVを見れば、Jesse Kandaの独特なグロテスクさ、生々しさの中に、頽廃的な美しさのある
世界観が楽しめ、筆者自身あまりPVを見たりしないのですが、久々にビジュアル面で楽しめる、
不思議な気持ちにさせられるアーティストだと思います。

本作のアートワークでは、CGによる人間の男性とも女性ともつかないような生物が
作り上げられていて、彼自身の性別への苦悩やカミングアウトという行為への思いが、
表現されているようです。

音楽性としては、ヒップホップ的なチョップとペーストの方法論で
作られるようなビートでありながら、かなり断片化され、原型が完全に分からなくなるほど、
一部には拍子が分からぬほどになったブレイクビーツと、
同じく断片化されたシンセのコード、不協和音に加えて、
モーダルな響きを重視したというより、殆ど無調な展開を挟んだり、
エフェクトをかなり強く掛けたボーカルのサンプリング音の使い方など、
インダストリアル的な側面が目立っています。しかしながら、ヒップホップ的と言ったように、
ビートの乗り易さ、バックビートの強さと、リズムには断片化されながらも局所的にパターンが
ある程度守られている(特にミックステープ&&&&&では顕著な傾向でした)ところがあり、
こうした部分のグルーブ感覚は、アンビエントやエレクトロというよりは、
ブラックミュージックやハウスなどのファンにも受けるような要素だと思います。
音像としては音数を絞り込みつつも音圧の高い密室的なものとなっていて、
Aphex Twin, Autechreの音楽に近いとも言えるミニマルな内容となっています。

#1Now You Knowは、チル的な残響の強い冷ややかなシンセを中心とした静かなパートに、
尺八のような笛の音が入り、重くデジタルなキックに、焦燥を煽る高音のシンセが絡みついて
徐々にビートが決まっていくような作りになっています。奇妙で最高です。
一気に静寂を取り戻した#2Held Apartは、こちらはクラシカルなフレーズもあって
シンセソロによる穏やかで悲しげなスキット。
表題曲の#3Xenは、歪ませたような、何か金属同士が擦れるようなノイズ混じりのシンセが
定位を変えながら流れるパートがテーマとなっており、スクラッチを掛けたようなキックが
始まってからは、ブレイクビーツ化したキックと水音のようなパーカッション、
古い木のドアが開くような音、不協和なストリングス系の音が流れたり、
ガラスの割れるような音がして終わっていきます。これも最高。
再び音数が少なくなったスキットの#4Sad Bitchは、弦または琴の音を加工したような
高音成分の多いシンセが弾けるようにして流れていきます。コードというよりは、
低音パートのシンセが副旋律になるようにして組み合わせてあります。
得も言われぬ多幸感があり、リズムも原型を留めながらゆったりと流れていく
#5Sistersは、ノイズ交じりのリズムもレゲエのようなグルーブがあります。
#6Slit Thruは、かなり強くレイドバックしたリズムにスクラッチを掛けられた
ボイスサンプルと思しきSE、ブレス音や女性の声などボイスサンプルが散りばめられた中で、
コズミックなシンセがフリーキーでファンキーにアドリブしていきます。お気に入り。
琴のメロディーが日本的な情緒を窺わせる#7Failed、不協和な高音弦とフィルターの掛けられた
ような低音弦のリフレインで埋め尽くされた#8Family Violenceはひたすらに
不安にさせられる一曲。恐ろしい。
再びビートの強くなった#9Thieveryは、アフリカンなリズムをバックに東南アジア、
中東ともインドともつかぬメロディーに男性のボイスサンプルが混ぜられた一曲。
後半にかけてテンポダウンしていきながら、ベースが前に出てくる#10Lonely Thugg、
#11Fishはバリバリとしたノイズから一気に断片化されたシンセのフレーズと
ブレイクビーツ、ボイスサンプルが組み合わせられた頽廃的な一曲。
ストリングス系のシンセによる#12Woundは、懐かしいベタッとした音色で、
昔の3D初期のテレビゲームを思わせるようです。お気に入り。
#13Bullet Chainedは、タイトルの通り銃声を思わせるような激しいノイズが
ひとしきり鳴った後、細分化されたブレイクビーツ、心臓の鼓動を思わせるようなキックの
印象的なパートから、順次下降していく歪ませたシンセのフレーズでキャッチーに、
展開していく所はさながらプログレのようですらあります。最高。
#14Tongueは、演奏されたベースラインを分断して構成したような低音に
蚊の鳴くような不快とも言える高音が鳴り続ける一曲。
琴と木琴の間のような音色のアルペジオ、ウッドベースのような低音が流れる#15Promiseは、
電撃のような音、爆弾の炸裂音のような音にラジオのノイズのような音が入り混じっています。

この手の電子音楽は聴いてみないことにはその内容を推測することすら
難しいのですが、ミニマル的、ブレイクビーツ的なコラージュの手法を基礎としながらも、
旋律の組み立て方やキックの入るタイミングなどにはブラックをはじめとして
様々な地域の音楽的要素を文脈が分からなくなるほどに分割して、散りばめるという
ことに成功しています。しかしながら、楽曲としては奇妙なキャッチーさを併せ持っており、
普段あまり電子音楽を聴かない筆者としても非常に楽しめる一枚でした。
先ほど挙げたAphex TwinやAutechreよりも僕はこちらの方が好きかもしれません。傑作。

Xen

Sad Bitch

Thievery

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  1. 2015/09/18(金) 00:27:04|
  2. Arca
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今日の一枚(389)

Album: Born Free
Artist: Mondo Grosso(大沢伸一)
Genres: Acid Jazz, House, R&B, Fuison

Born Free Mondo Grosso

滋賀県大津市出身の日本の作曲家、編曲家、DJ、ベーシストの大沢伸一によるアシッドハウス、
アシッドジャズ、ヒップホップ、ブレイクビーツ、エレクトロニカユニット。1967年生まれ。
1995年作の3rd。所属事務所はAvex関連のrhythm zoneです。

現在は大沢のソロユニットとなっていますが、元々は1991年に京都でバンドとしてスタートし、
1993年にフォーライフ・レコード(小室等・吉田拓郎・井上陽水・泉谷しげるの
フォークシンガー4人が1975年に設立したレコード会社)からメジャーデビューを果たします。

当時流行していたアシッドジャズを取り入れた生バンドでの演奏で海外でも高い評価を
得ていたようで、ヨーロッパでのツアーも経験しています。1996年に大沢以外のメンバーが
脱退し、ソロプロジェクトとなってからは、電子音楽、ダンスミュージックへとそのベクトル
を変えていき、他のアーティストへのプロデュース、フィーチャリング、リミックスも
積極的に行うようになって行きます。

リミックスや編曲を手掛けたアーティストにはJamiroquai, Etienne De Crecy, 浜崎あゆみ、
Alex Gopher, Chara, 椎名林檎など、プロデューサーとしてはUA, bird, Crystal Kay、wyolica,
中島美嘉、m-flo, 安室奈美恵、布袋寅泰、Chemistry, Mr.Children, 玉置成実、藤原ヒロシ、JUJU,
AFTERSCHOOL, MINMI、若旦那などを手掛けるなど、活発に活動しています。

本作は、Mondo Grossoが大沢のソロプロジェクトとなる直前の時期の作品で、
IncognitoやBrand New Heaviesに代表されるようなアシッドジャズの影響が色濃く見受けられます。
しかしながら、既にこれ以前の作品でダンスミュージック的なアプローチを試してきたこともあって、
サウンドは肉体的なものと言うよりは、もう少し冷ややかで、4つ打ちのトラックが多い、
というわけではないのですが、ハウス的なグルーブ、ハーモニーが感じられます。

演奏は基本的に生音で、大沢自身によるベースラインにはジャズっぽい香りがあって、
リズムのハネ具合も粘り過ぎずという感じで非常に良く楽曲に合っています。
その他のメンバーにはB-BANDJ(フランス出身の黒人ラッパーで、後に瘋癲(Fu-Ten)で
活動しています), 吉澤はじめ(Key, 現在はクラブジャズバンド、SLEEP WALKERのメンバー)
中村雅人(Sax, SLEEP WALKERのリーダー)といった面々で、ボーカリストにはZhana Saunders,
そして秋吉敏子の娘であるMonday満ちるが参加しています。

アシッドジャズ~ハウスと書きましたが、上物の感じは、吉澤はじめのキーボードを
主体に組み立てており、エレピの鋭いコードバッキングや、ドラムマシンのレイドバックした、
ヒップホップ的なビートが組み合わさって、UKソウルのような陰鬱な表情をも見せていて、
R&Bファンにも(というよりもむしろ、良い意味でライトなブラック好きに嵌りそうな
グルーブですね)楽しめる内容となっていると思います。

高音のピアノループとアフリカンなパーカッションにフランス語のラップ入った
#1Jour et nuitで静かに始まります。
フィリーソウルのような大仰でシルキーなストリングスからハウス的なビートが入ってくる
Doopな#2Do you see what I seeは、ぶっとく低音の強調されたベースリフとドラムス、
ボーカルによるモーダルなパートから、コーラスとピアノのコードバッキングの加わる
ジャジーなパートへの変化が鮮やかです。中盤ではかなり生々しい音となったストリングスの
フィーチャーされたパートがあり、ますますドラマティックになって行きます。お気に入り。
レイドバックした乾いたドラムスに、オクターブ奏法を絡めディスコライクでありながら、
曲が盛り上がるにつれてメロディアスになっていくベースが絡みついて
Brand New Heaviesを思わせるようなアシッドジャズ#3Familyは、
エレピによるソロ、ホーンによるインストパートなどが入ったライブ感溢れる一曲。最高。
重く揺るぎないマシンビートにベースリフ、不穏に揺れるエレピに低音の鈍い響きがあるラップが
フィーチャーされた#4What goes up must come downはアウトロにかけてのピアノがジャジーで良いです。
アップテンポでラテンっぽい疾走感あるグルーブに掴まれる#5Running manは、
饒舌なサックスソロと、絶妙にアウト感のあるピアノソロが聴き所です。最高。
再びピアノループとラップを中心に組み立てたジャジーヒップホップの#6Life without springは、
ベースのリフとピアノのループに対してキックの位置を微妙にずらしたり抜き差ししながら
うねっていて独特なグルーブを作り出しています。
ピコピコシンセとエレピのパーカッシブなバッキングとマシンによる安いリズムボックスの
音で出来たインタールード#7Hemisphereに続いて、お経によるイントロから始まるジャジーヒップホップ
#8To The Curbは、中間部のエレピロングソロ、キメを挟んでフリーキーなホーンのソロは
ジャズロック的でもあります。お気に入り。
左右に振られたピコピコしたシンセと、モータウン的なベースライン、ソウルフルな女性コーラスが
印象的なジャズファンク#9Move into the nightでも、吉澤はじめの滑らかなキーボードソロが
素晴らしいです。キーボードソロの後は大沢自身によるベースラインが際立っています。
ゴーストノートのニュアンス、音の切り方も完璧なプレイだと思います。最高。
#11Sphereはサンプリングによると思われるホーンの2小節ループが怪しげな雰囲気を決定づけている
ヒップホップ~アシッドジャズなインストで、テーマを様々に変奏したサックスソロ、
エレピソロが存分に取り上げられています。
#12Give me a reasonは、生々しいリズムトラックにローファイに加工されたボーカルとエレピが
配置された頽廃的で物憂げな一曲です。

ジャジーヒップホップ路線の楽曲には若干展開が少なく単調なイメージを与えかねませんが、
全体として非常にすっきりと聴けてしまい、ドライブなどBGM的な聴き方をするには
好適なアルバムだと思います。インスト部では特にキーボード、歌物のバックではベースラインの
良さが際立っていて、演奏面でもタイトで楽しめる和製アシッドジャズです。佳作。

Do you see what I see

Family

Move into the night

To The Curb

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  1. 2015/05/05(火) 02:18:33|
  2. Mondo Grosso
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今日の一枚(387)

Album: Introducing
Artist: Tortured Soul
Genres: House, Electronica, AOR, Soul

Tortured Soul

アメリカ、ニューヨーク、ブルックリン出身のハウス、エレクトロニカユニット。
2001年結成。2004年作の1st。
メンバーはChristian Urich(Dr, Vo), Jason Kriveloff(B, Chorus), Ethan White(Key, Chorus),
Angela Johnson(Guest Vo)となっていて、フロントマンはUrichです。

Urichはニューヨーク州立大学で音楽を学び、Jason Kriveloff, Ethan Whiteの二人と
バンドを組んで、Joey Negro, Kenny Dope, Soul Clap, Jamie Jonesなどのハウス~エレクトロ、
R&B, ヒップホップに影響を受けながら、Jamiroquaiに代表されるようなアシッドジャズを
取り入れた音楽性で活動していました。

彼らのデビューのきっかけは2001年に組んだアシッドジャズ系のバンド、Cooly’s Hot Boxでした。
当時、Urichの大学の同学年の友人で、ヴァイオリンを専攻していたAngela Johnsonを
このバンドに加えて、Might Do Something Wrongという曲を制作したところ、
これが地元ニューヨークのハウス系レーベルであるCentral Park Recordingsに注目され、
Tortured Soul名義でデビューを果たすこととなりました。
(Cooly's Hot BoxはR&B、ジャズ、ブラジリアンなどを巧みに取り入れた作品を作っており、
こちらもニューヨークのDJには人気を誇っていたようです。)

その後はニューヨークのハウス系のクラブで彼らの楽曲は密かな注目を集め、12インチシングルは
ヘビーローテーションとなっていたようです。Kruveloff, Whiteの二人は、アシッドジャズバンドの
Topazのメンバーとして活動しており、ニューヨークのジャズ系の
スタジオミュージシャンでもあります。

デビュー後はよりバンドサウンド指向へと音楽性を転換していき、80s的なディスコサウンドや、
Roy Ayersに代表されるようなフュージョン、ヒップホップのビート感を巧みにミクスチャーした
サウンドを生み出していきます。2006年に1stの本作、2009年には2ndのDid You Miss Me,
2013年にはセルフタイトルアルバム、そして今年の5月には4thアルバムが発表される予定で、
順調に活動を続けています。

公式のサイトでEDMの一形態として紹介されていることもあって、ダンサブルな打ち込みビートが
全体を貫いていますが、一部の曲の演奏は人力によるもので、ブレイクビーツを取り入れたり、
ジャズファンク的な粘りのある懐かしいグルーブを叩き出したりと飽きさせません。
しかしながら、コードは結構入り組んでいて複雑な響きになっており,
洒脱さ、浮遊感があって都会的な音像になっています。
今作ではまだゲストボーカルのAngelaが参加した楽曲を聴くことはできませんが、
彼らがデビューするまでの勢いを感じる楽曲がたっぷり収録されており、トリップできます。

#1I Might Do Something Wrongは、4つ打ちのキックとリムショットの入ったタイトでブラジリアンな
リズムパターンに、徐々に存在感を増してくるコズミックでローファイなシンセ、
ジャジーなエレピのコードをバックにして、柔らかいファルセットのボーカルが幻想的です。
後半にはピコピコシンセのリフが流れ、シンセが波のように押し寄せてきます。最高。
#2How's Your Lifeは、アップテンポになってかなりソリッドで密度の高いキックに、
それとは対照的な乾いたスネアのフィルが軽いグルーブを作り、#1と同じ音色のシンセが
蠢くイントロから始まります。こちらはメロディに展開が多くポップで、アシッドジャズ的な
一曲に仕上がっています。中間部から入ってくるファルセットのコーラスはD'Angeloの
それを思わせるようなか弱さがあって、デジタルなトラックに彩りを与えています。最高。
#3Whyは、ギターのカッティングのフレーズをサンプリングして配置し、シンセベースのリフが
左チャンネルに、低音のボイスサンプルが入ったミニマルなイントロから、
入り組んだコーラスワークで巧みにコードチェンジしていく構造は非常にAOR的で、
Steely Dan、最近ではOle Borudのようなブルーアイドソウルを思わせます。最高。
すこしレイドバックしたビートとディスコ的なベースラインが懐かしいリズムの#4Fall In Loveは、
乾いたギターのカッティングと、複雑なコーラスワーク、エレピのジャジーなソロで
聴かせる一曲です。これもキャッチーで素晴らしいです。お気に入り。
#5You Found A Wayは、冒頭のベースリフとポリリズミックな打ち込みのキック、
エレピのボサノヴァを思わせるコードバッキングで音数少なく進行していく一曲です。
コーラス、オルガン系のチルなシンセが入ってきて、ダンサブルなフックへと展開する瞬間は
鳥肌ものです。フックの終わりのキメもフュージョンライクで軽快なグルーブです。
トリルの多いエモーショナルなエレピソロから演奏はヒートアップしていきます。最高。
柔らかなシンバルレガートとリムショットと、一番ジャズしている生ドラムに
太く低音の強調されたメロディアスなベースが絡み付いた#6Epicは、1:30あたりから一気に
リズムチェンジを繰り返し、Chris Daveに近い人力リズムマシンとも言えるグルーブを
叩き出すUrichが良い仕事しているインストの長尺曲です。
ディスコライクな4つ打ちからTOPのような16ビート、そして後半に向けてテンポアップして
いきます。お気に入り。
#7Enjoy It Nowは、アフリカンなパーカッションと残響のカットされたハンドクラップに
揺らめくエレピによるミニマルな展開のイントロからラップ、コーラスが入って、
16ビートのコードカッティングが組み合わさって肉体的なグルーブが生まれていきます。
ピコピコシンセのシーケンシャルなフレーズは東洋的な香りがします。
そのままシームレスに繋がっていく#8Don't Hold Me Downは、エレピによるジャジーな
コードバッキングと、細やかにリムショットの入ったリズムパターンが落ち着いた、
都会的な雰囲気を醸し出しています。後半では女性ボーカルがリードボーカルになるパートが
挿入されています。
彼らによる完全な生演奏のフュージョン~AORの#9Love Everlastingは軽く疾走感たっぷりで、
エレピのハネたコードバッキング、Ramsey Lewisを思わせるようなファンキーな
ロングソロがフィーチャーされており、コードワークも意表を付いていて洒脱です。最高。
エレピの翳りのあるコードバッキングとアシッドジャズ的な軽い粘りのあるドラムスが
印象的な#10If You Want To Feel Alright, そして最後には日本盤ボーナストラックとして
生演奏によるジャズファンク#11Shush Birdyが収録されており、エレピの奇怪なバッキングが楽しめる
一曲となっています。

ダンサブルでそぎ落とされたクラブサウンドでありながらも、生演奏も適度に取り入れられていて、
アシッドジャズ的な軽いグルーブと時に意表を突いたリズムチェンジなど、
都会的な抜けの良いサウンドで、キャッチーさも十分です。
ソウルフル~ジャジーハウスの愛聴盤の一つ。

I Might Do Something Wrong

How's Your Life

Why

You Found A Way

Epic

Love Everlasting

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  1. 2015/04/10(金) 00:49:32|
  2. Tortured Soul
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今日の一枚(381)

Album: Rapture
Artist: Tropics
Genres: Ambient, Dub Step, Chill Wave, Soul, R&B

Rapture.jpg

イングランド、サウサンプトン出身の音楽プロデューサー、マルチプレーヤー。
2010年にSoft VisionEPでデビューを果たし、翌年2011年には1stフルアルバムである
Parodia Flare(Mike Paradinasが主宰するレーベルで、Bear In Heaven, Little Dragonなどの
リミックスを手掛けているPlanet Muより発売)をリリース、本作は4年ぶりとなる
2015年作の2ndフルアルバム(Innovative Leisureからリリース)です。

筆者自身はダブステップやチルウェイブといった音楽には触れることが少なく、
有名どころではWashed Outの作品を最近ようやく聴いた…と言う程度のため、
偶然普段見ていますブログ様で紹介されているのを発見し購入に至りました。

基本的にはサンプリングによる環境音やシンセサイザーによる電子音を組み合わせて作られる
エレクトロニカの一部という事になりますが、チル(Chill)という言葉の意味する通り、
選択される電子音は冷ややかで滑らかな感触があって、この音色の選び方がかなり重要な要素と
なっているように感じます。生々しい音よりも、チープでリヴァーブの深くかかった音が
選択される傾向にあり、古典的なエレピによるバッキングも積極的に取り入れられています。

また、個人的な感想としてビートは70s~80sのブラックとりわけディスコミュージックに影響を受けた
バックビートの強調され、もたれかかったものが多く、
捉えようによってはダンサブルと言えるのかもしれません。

ここまでは一般的な傾向で、本作に関して言えばビートの構築はブレイクビーツ的な作られ方であり、
ダンスミュージックと言うには程遠いものであると思いますし、まだ確立したジャンルであるとは
考えにくいと思います。さらに、曲全体の構成はミニマルなループを適宜配置していった作りが中心で、
ベースやドラムなども生音がかなりしっかりと入っています。
そのため、一聴するとJames Blakeの作品のようにソウルフルなテイストが感じられ、
そうした部分に筆者はかなり心を揺さぶられました。

テンポもゆったりとしたものが多く、徐々に音数が増えたり減ったりしていきながら、
揺らめくように各電子音が配置されていて、聴いているだけで、
どことなくノスタルジックで、そして幻想的な世界に連れて行かれるようです。

#1Blameは、消え入りそうなファルセットと、ヘリコプターの音のような電子音、
金属のアクセサリーが擦れるような音、徐々に近づいてくるように定位されたシンセが心地いいです。
#2Hungerは、ドラムンベース的なリズムトラックに少しヨレが加わっており、ソウルに
良くみられるようなエレピの白玉と、反響するように定位されたコーラスが揺らめいています。お気に入り。
#3Indigoも#2と同じくエレクトリックなソウル路線と言った一曲で、もう少しリズムに捻りが
加えられています。
曲途中から生のドラムスが入って来て、少しへヴィ―なグルーブになった#4Kwiatは、
雨だれのような手数の多いフィルと、それとは無関係にゆったりとしたコーラス、次第に
音量の大きくなっていく電子音の組み合わせが面白いです。お気に入り。
打って変わってメロディラインのはっきりとした表題曲の#5Raptureは、都会的なソウルの趣が強く、
ブライトな音色のピアノソロがあり、パタパタとした音のパーカッションが入って焦燥感を
演出する中間部、後半では不穏なコーラスの音が大きくなって行き、
ピアノソロでクライマックスを迎えます。最高。
#6Perfume Kinshipはインストによる1分50秒の短いインタールード。
断片化されたコーラスとピコピコしたシンセ、東洋的な旋律を奏でるシンセが重ねられています。
続いてインストの#7Torrents of Springは、ホーンの取り入れられたジャズ寄りのハーモニーが
印象的です。
コズミックなシンセとボーカル、エレピのみのイントロからスネアロールが入る
#8Home & Consonanceは、後半ではヨレたリズムのシンセソロが用意されています。
ボイスサンプルがひたすらに繰り返され、多重録音されたコーラスの彩りが美しい#9Gloriaもお気に入り。
徹底的に音数を絞り込んだ#11Not Enoughは、彼の繊細なファルセットによる
コーラスを楽しめる一曲です。

抽象的でミニマルな電子音の重なりを中心に据えながらも、エレピやシンセのフレーズには
ジャズやソウルのエッセンスが振り掛けられており、彼の柔らかく消えてしまいそうなボーカルと
合わさって、幻想的で、身体にじわじわと冷たいものが凍みこんでくるようです。佳作。

Hunger

Rapture

Torrents of Spring

Gloria(Tontario Remix)

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  1. 2015/03/22(日) 21:43:00|
  2. Tropics
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今日の一枚(378)

Album: Colonel Abrams
Artist: Colonel Abrams
Genres: Disco, House, R&B

Colonel Abrams


アメリカ、ミシガン州デトロイト生まれ、ニューヨーク州ニューヨーク、マンハッタン、
イーストビレッジ出身のシンガーソングライター、音楽プロデューサー。1985年作の1st。

10歳の時に建築業に関わっていた父の仕事の都合でデトロイトからニューヨークへと引越し、
幼いころからピアノとギターを弾くようになります。デビュー前から複数のバンドを
組んで活動し、その中にはHeavy Impactと言うバンドや、1970年代半ばには、
かのPrinceがリードギターで参加していた94 Eastと言うバンドでも活動していました。

1980年代半ばになるとLeave the Message Behind the Door, Music Is the Answerなどの楽曲で
始めはヨーロッパを中心に、後にアメリカ国内でもその名が知られるようになって行きました。
1985年にはAMIと言うレーベルと契約し、ニュージーランド出身の音楽プロデューサーの
Richard Burgessと共に働いていたSteven Machatと言う人物に見出され、
ソロアルバムの制作が始まります。

Richard Burgessプロデュース、共作によるTrapped(1985)は、イギリス国内のシングルチャートで
Top5に入り、US Hot Dance Music/Club Playでは首位を獲得するに至りました。
本作は2週間連続でダンスミュージックのアルバムチャートで1位、
シングル盤のTrappedは発売から2年間の間に500万枚以上の売り上げを残し、
1995年にはBoards of Canadaによるカバーも発表されるなど、ダンスクラシックとして親しまれています。
同じく本作に収録されているI'm Not Gonna Let Youは1986年にダンスミュージックチャートで1位、
US Billboard Top 200では75位、US Top R&B/Hip-Hop Albumsでは13位となっています。

その後、大きなヒット曲、ヒットアルバムは無かったものの、BillboardのHot Dance Club Songsでは
80年代から90年代にかけてチャートインしており、ディスコ全盛期からハウス、
トランスミュージック隆盛の時代ににかけて、優れた作品を残しています。
本作も、ディスコミュージック全盛期のサウンドからハウスの間にあるサウンドと言った趣で、
バリトンボイスの渋いボーカルの味わいと煌びやかな打ち込み、ローファイなリズムマシンの音と
合わさって独特な高揚感を生み出しています。

#1The Truthは、シンプルなビートにタムを絡めた打ち込みドラム、ホーンやクリーンのコードカッティング、
単音カッティング、ハンドクラップなどが散りばめられたリズムトラックに、
NJSにも繋がるようなシンセリードが断片的に組み合わせられた一曲。最高。
冒頭では複数のドラムキット、とりわけハイハットの細やかな刻みが目立ったブレイクビーツのようにも
聴こえるリズムが面白い#2Speculationは、シンセのリフの使い方が何とも80s的です。
シンセベースの低音の強調された音も暴力的で懐かしい香りがします。
スウィートソウルなトラックにAbramsによるポエトリーリーディングで始まっていく
#3Never Changeは、ゆったりとしたリッチなグルーブを維持しながら、
途中から太いスラップベースとメロディが入って来て、コーラスの入ったキメを繰り返しながら
盛り上がっていきます。後半ではエレピのリフやストリングスもあり、他のデジタルな音像のトラックとは
一線を画していて良いです。
彼の代表曲となった#5Trappedは、冒頭の歯切れの良くクッたリズムのシンセベースのリフが
繰り返されながらファンキーに進行していきます。音数少ないトラックの中でホーンっぽい
トーンのシンセによるテーマが絶妙です。かなりリバーブの足されたタムのような
音のドラムもクールです。最高。
#6I'm Not Gonna Letは、細かく刻まれたシンセのシーケンシャルなフレーズに、
Chicを思わせるようなカッティング、パワフルなマシンの揺らぎ無いビートが
噛み合っています。お気に入り。
#7Over And Overは、キラキラとしたシンセが揺れ、柔らかいボーカルが絡みつくイントロから、
脱力したボーカルのままリズム隊が入って来て、女性コーラスが挿入され落ち着いた艶消しな一曲に
なっています。最高。
ブラコンテイストが強いバラードの#8Margauxは、サックスの艶のあるオブリガートと
ソウルフルな女性コーラス、グロッケンシュピールのような音のシンセが哀愁を感じます。お気に入り。
続いてスロウテンポのクワイエットストーム#9Table For Twoは、短い一曲ですが囁くような
コーラスの定位が気持ち良いです。お気に入り。

筆者の所有している輸入盤では残りはボーナストラックです。5曲あります。
#10は#5の別ミックスとなっており、インスト部分の長いロングバージョンとなっています。
#11は#6の別ミックスとなっており、こちらもインスト部分の長いロングバージョンになっています。
個人的にはイントロのインスト部分が長くなっていて、こちらの方が
ダンスミュージック然としています。最高。
#12は#1の別ミックスとなっており、エモーショナルでハードロック的な
ギターソロがフィーチャーされています。これもお気に入り。
#13は#7の別ミックスとなっており、アフリカンなパーカッションが追加され、
ベースラインも強調された肉体的なグルーブの強いアレンジとなっています。お気に入り。
#14Music Is The Answerは、元のアルバムには収録されていなかった彼の1stシングル(1984)で、
ソリッドで強いビートとベースにボーカル以外は、僅かにシンセがコードを鳴らすのみで、
本作の中でも飛びぬけてハウス色の濃い一曲となっています。お気に入り。

本作は、2010年にリマスターされCDでリリースされているため、筆者は手に入れることが出来ましたが、
彼のことを知るきっかけとなった山下達郎のラジオ、サウンドストリートで紹介されていた
(と記憶しています)2ndアルバムのYou And Me Equals Usは1987年以来CD化されておらず、
入手が難しい状態となっています。リマスター再発が期待される一枚だと思います。

ブラコンやNJSといった80年代末以降のブラックミュージックを先取りしたサウンドで、
シンセやリズムマシンの古い音やアレンジを含めて、
今聴いてみると個性的な魅力を放っている一枚です。
もっと聴かれるべきダンスクラシックスだと思います。佳作。

The Truth

Trapped

Over And Over

Table For Two

Music Is The Answer

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  1. 2015/03/15(日) 20:51:49|
  2. Colonel Abrams
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
https://twitter.com/privategroove
こちらでもおすすめの音楽など情報を流しております!
フォロー下さると嬉しいです。
可能な限りフォローバック、コメントしに参ります。
※放送企画として「私的名盤放送」というラジオを配信しております。
ツイートキャスティングホームページをご覧下さい。不定期に配信、Twitterにて情報を呟いております。ハッシュタグは「#私的名盤放送」です。宜しくお願い致します。
http://twitcasting.tv/privategroove

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