私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(225)

Album: Black Radio 2
Artist: Robert Glasper Experiment
Genres: Jazz, Hip Hop, Neo Soul, Electronica

Black Radio

アメリカ、テキサス州ヒューストン出身のジャズ・ピアニスト、作曲家、音楽プロデューサー。1978年生まれ。
2012年作品であるBlack Radioが第55回グラミー賞(Best R&B Album)を受賞しています。
幼いころからジャズ/ブルースシンガーであった母に連れられて教会でピアノを弾くようになってから、
既に彼はゴスペルとジャズのハーモニーを共存させることを考え始めていたようです。
2003年にデビューを果たし、2ndのCanvasからは名門Blue Noteから作品をリリースするようになります。
2013年作の6th。前作からに引き続き、個人名義ではなくRobert Glasper Experimentという名義で
製作されており、Derrick Hodge(B)とMark Colenburg(Dr)というリズム隊に
Casey Benjamin(Sax, Vo)を加えたバンドによる生演奏でのトラックを中心として、
様々なゲストミュージシャン(その多くはシンガーかラッパーです)
を招いて実験的な音楽性の作品を作ろうというプロジェクトです。
(ドラマーは前作のChris Daveから変わっていますが)
音楽性としてはシンセサイザーによるアンビエントな電子音もありますが、
演奏は基本的に人力によるものでアコースティックな手触りのトラックが多く、
Glasper自身はファンキーな楽曲ではFender Rhodesを用いたり、
或いはオーセンティックなジャズピアノを中心としてラップが主役になる
トラックに乗せていくというスタイルをとることが多いようです。
Jill Scottに代表されるようなネオ・ソウル界隈のミュージシャンであったり、
BrandyのようなR&Bとは言えど90sのポップスの世界でスターとして活躍してきたボーカリスト、
はたまたNoah Jonesのようなジャズ・シンガーなど、今回集めてきたゲストは殆どが30代半ば~40代前半の
Glasper自身と世代の近いミュージシャンが多くを占めています。
前作からの流れで聴いた方にとってみればとげとげとした実験性は薄く、
それほど新鮮味はないかもしれませんが、逆に言えば、ジャズピアノとヒップホップ、
ネオソウルやブレイク・ビーツやアンビエントといった音楽がフュージョンした彼独自のスタイルが
非常に洗練されてきて、洒脱で極めて質の高いアーバンミュージックに仕上がっています。
そういった意味では、本作は「ジャズピアニストの前衛的な作品」と捉えるのではなく
あくまで黒人音楽を中心とした現代的なクロスオーバー・ミュージック
(AORといってしまっても良いかもしれない)のスタンダードと考えてよいでしょう。
#1BabyTonight(Black Radio 2 Theme)/Mic Checkは、前半部と後半部で違った構成になっています。
前半はFender Rhodsから始まってリラクシングなピアノのフレージングにヴォイス・ヴォコーダーの
掛かったエフェクトが入ります。後半はゲスト・ヴォーカリストのマイクチェックを
サウンドコラージュして作ったアンビエントなオーバーチュア。
幼いカウントから始まる#2I Stand Aloneは、短いピアノループと低音の強調された
ドラミングの作るミニマルなグルーブにCommonによる歯切れの良く冷ややかなラップと
サビでのPatrick Stumpのソウルフルな歌唱が対照的なネオソウル。
Brandyとの共作#3What Are We Doingは、彼女のドスの効いた低音部の歌唱とコーラスを中心に据えて
オルガンのバッキングが存在感を放っています。イントロはキャッチーで懐かしい感じでこれもまた良い…
#4Callsはサビでのリフレインが印象的なJill Scottとの共作でリードシングルでした。
まさにJill Scottお得意の一曲。
ブリッジでベースが前に出て来るところなど、起伏の少なく浮遊感のある楽曲の中で
高揚感があって良いと思います。
#5No Worriesは、90s末頃からメジャーシーンに登場し始めた男性R&BシンガーのDweleが起用されていますが、
これもRhodesのバッキングがスペイシーでクールです。
ちなみに打ち込みっぽいリズムですが人力で叩いています。
豊かな響きの中にもハスキーさがあって良いシンガーです。
#6Trustは、サビへの鮮やかな展開にハッとさせられます。
Marsha Ambrosiusの伸びやかで冷徹なハイトーンが静謐なバッキングに見事に嵌っています。
#7Yet To Findは、ピアノの静的で優しいリフが支配する中で抑揚の付いた低音部の豊かなトーンで
朗々と歌い上げるAnthony Hamiltonのボーカリゼーションのおかげで、
ネオソウルというよりは正統派なR&Bの香りが漂っています。
ゴスペルライクなコーラスワークもエモーショナルで素晴らしい。
アウトロのファルセットも儚くて良いです。お気に入り。
#8You Own MeはFaith Evansとのコラボレーションで、
こちらはGlasperのサウンドに彼女が合わせている感じです。いつもより抑えめのボーカリゼーションで
クールに仕上がった小品。アウトロの饒舌なピアノソロは白眉。
#9Let It Rideは、冒頭から入る速いブレイクビーツを人力で叩くMark Colenburg(Dr)と、
所々に面白い音使いのあるピアノをバックに時に気怠く、時にパワフルに歌う
Norah Jonesのボーカルが冴えわたります。名曲だと思います。
ピアノもかなりアドリブ感が強く後半部では緊張感のあるインタープレイを楽しめます。
アウトロのドラムソロは空いた口が塞がらない…
Emeli Sandeの参加した#11Somebody Elseは、囁くような音色で定位されているコーラスが生々しいです。
アルバム最後に収録されているStevie Wonderのカヴァー#12Jesus ChildrenはLalah Hathawayを招き
ジャジーなハーモニーを作るピアノとスタティックなドラムスのシンプルなバッキングの中で
鈍く光る低音が強調されたボーカルが悲痛で深刻な歌詞に強烈な説得力を与えています。
このカヴァーは昨年にコネチカット州の小学校で起きた銃撃事件に対する追悼の意を込めて製作されてそうです。
90年代末から00年代においてHip Hopの革命があり、ニューソウルがありという
現代ブラック・ミュージックの同時代的なクロスオーバー作品の教科書になりうる紛れもない傑作。

Stand Alone

What Are We Doing

No Worries

Yet To Find

Let It Ride

Jesus Children

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  1. 2013/11/22(金) 14:53:46|
  2. Robert Glasper Experiment
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
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