私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(234)

Album: Spread Your Wings And Fly: Live At the Fillmore East May 30, 1971
Artist: Laura Nyro
Genres: Pops, Blue Eyed Soul, R&B, Jazz
(曲名にスラッシュが入っているものはメドレーになっています)

Spread Your Wings And Fly


アメリカ、ニューヨーク/ブロンクス出身のシンガーソングライター。1947年生まれ。
14歳の頃に近所の友人とコーラスグループを組み、いわゆるドゥー・ワップのスタイルで
歌っていたようで、1966年にデビューを果たします。
ソングライターとしてBlood, Sweat & TearsやBarbra Streisand, Fifth Dimension,
Frank Sinatraなど、60年代から70年代にかけて当時一線で活躍していた数多くのシンガーに
カヴァーされたことで知られている彼女ですが、シンガーとしてもゴスペルの影響を
受けながらもCurtis Mayfieldのような洗練されたソウルの香りを漂わせる
実に巧みなボーカルテクニックを有しており、60年代から70年代初めにかけて
最も優れた白人の女性シンガーの一人ではないかと私自身感じています。
音楽性としては当時ニューヨークに移住して間もない時期のBob Dylanのような
都会的なフォークミュージックやMartha and the Vandellasのようなモータウンからの
影響も垣間見られる非常に特徴的なもので、複雑なリズム構成(特にテンポチェンジ)やコード進行、
転調の楽曲が多いと言えるでしょう。
James TaylorやCarole Kingなど、多くのシンガーソングライターを生み出した60年代後半
という時代の文脈の中で、彼女の影響を公言するミュージシャンはJoni Mitchellを初めとしてRickie Lee Jones,
Kate Bush, Elton John, Cyndi Lauper, Todd Rundgren, Melissa Manchesterなど数限りなくいると思われます。
日本では、彼女の追っかけをするほどの大ファンである山下達郎が多大な影響を受けています。
先日お書きしたCharlie CalelloはLauraの作品のうち数枚のプロデュースに携わっています。
97年に僅か49歳の若さで亡くなられた彼女ですが、本作は死後の2001年に発売されたライブ音源で、
閉鎖される直前のフィルモア・イーストで71年5月30日に行われ、僅か3本のマイクで録音されたものが
奇跡的に発掘された、というなんとも貴重なものです。
マスターテープの音の劣化が激しいため、どうしても音の途切れる部分が
あったりしますが、肝心のボーカルは出来うる限りのリマスター作業のおかげでクリアに仕上がっており、
十分鑑賞に堪えうるものになっています。
これもエンジニアの方々の途方もない努力の賜物と思うと、こみあげてくるものがあります。
これ以前に発表された94年のライブ盤とはまた違った若さに溢れる、「黒く」ソウルフルな
ボーカリゼーションを楽しむことができます。
フィルモア・イーストでのライブは彼女にとって3回目で、前座はMiles Davis Band
だったというから驚きです。
ピアノの弾き語りだけによる極めてシンプルなバッキングですが、
それであるがゆえにピアノの一音一音の間の一瞬の静けさや、観客のさざ波のような拍手の音が
71年という時代の空気を、極めて生々しく伝えてくれています。
本盤が初出の#1American Doveは、ベトナム戦争まっただ中のアメリカの世情を反映した強烈な反戦の歌で、
胸を打たれるスタティックなバラードですが、どこまでも透き通ったトーンで、
ミドルの張りのあり堂々とした歌唱に一気に夢中になること必至です。いきなり最高の一曲。
#2Ain't Nothing Like The Real Thing/(You Make Me Feel Like) A Natural Womanは
歌の間で徐々に強く打鍵されるピアノが迫ってきます。微かに掠れのあるサビで、
力強く張り上げるファルセットが、ライブならではの美しさで
声域の継ぎ目のないスムースなボーカリゼーションです。
#4I Am The Bluesはモタり気味に力強く響くピアノに翳りを見せた低音から
軽くヴィヴラートの掛かった高音、そしてロングトーンの果てしない伸びやかさ…
一曲の中で様々な表情を見せてくれます。
#5Walk On By/Dancing In The Streetは、冒頭のジャジーなフレージングから
楽しげな前半部Walk On Byから、左手の繰り返しが重厚なグルーブを生み出す
アップテンポなDancing In The Streetはドスの効いた低音が朗々として素晴らしい。
柔らかいタッチのバッキング始まる#6Emmieは、後半になると一気に盛り上がりを見せ、
16ビートの性急なリフとドラマティックなグリットサンドがクールです。
間奏で弾きまくる#7Map To The Treasureはやはり左手の力強いフレージングが強烈な存在感を放ちます。
これもスタジオ版より好きかもしれないです。
パワフルでパーカッシブなピアノをバックに国を救えとラウドに歌う#9Save The Countryは、
時代の冷ややかで鬱屈とした空気の中でこそのリアリティを放っています。
#11Lu/Film Flam Manは、傑作の2nd Eli And The Thirteenth ConfessionからのLuで始まりますが、
こちらはソウル色の強い味付けのボーカルになっていてこれもまた良い…
観客たちを静まらせ、曲紹介からはじまる未収録の新曲#12Mother Earthでは、
笑い声も入っていたりして楽しそうな空気を感じます。
消え入りそうなハイトーンの甘い音で歌い、静かにリフレインして終わっていきます。これも最高。
ライブという一瞬の時間の中で、
全力を振り絞り歌う若き日のLauraの美しい姿が浮かび上がってくるかのようです。
これを聴いて、ファンにならない人なんて、いるんでしょうか?
音の良し悪しなんて関係ない、本物の「歌」がこのアルバムには詰まっています。僕は大好きです。

American Dove

Ain't Nothing Like The Real Thing/(You Make Me Feel Like) A Natural Woman

I Am The Blues

Save The Country

Mother Earth

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  1. 2013/12/05(木) 18:11:12|
  2. Laura Nyro
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
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