私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(246)

Album: Cruor
Artist: Allerseelen
Genres: Post Industrial, Noise, Neofolk

Cruor.jpg

1987年にオーストリアで結成されたインダストリアル/ノイズ・ミュージックユニット。
実質はGerhard Hallstattによるソロ・ユニットです。
ユニット名のAllerseelenとはドイツ語で万霊祭(死者の日、All Soul's Day)を指しています。
出身地のオーストリアだけではなく、北米やロシアを中心として
サポートメンバーを加えて、ライブ活動も行っているようです。
本作は1994年作の1stで、89年から93年までの間にレコーディングされた作品を集めたもの。
(同じ時期に録音された作品のLPやカセットでのデモが数多くあるようですが、
現在では入手は困難です)
初期はritualで神秘的な音像の、ノイズミュージックの色合いが濃い、
インストゥルメンタルのみの作品をリリースしていましたが、
現在はボーカルの入ったバンド演奏による楽曲を制作し、
終末論や、ファシズムからの影響が色濃く見られる難解な歌詞と、
元々はノイズミュージックやポスト・インダストリアル(70年代後半に商業主義的音楽への
反発から生じてきた)から派生し、60年代の英米のフォークミュージックに基礎を置く
ネオフォークへと接近していきます。
筆者はノイズやインダストリアルに関して完全なる素人ですが、
偶然中古CDショップのセールコーナーで本盤を発見し、このジャケットの不気味さに
惹きつけられて衝動買いしてしまいました。
資料を検索してもドイツ語のものばかりで情報を集めるのにはかなり苦労しますが、
どうやらドイツ語圏の評論家には彼らをナチシンボリズムと結びつける人もいるようです。
(社会学者のAlfred Schobert(1963~2006))
一方Gerhard本人によれば、影響を受けたのはシュールレアリスムとシンボリズム、
特に19世紀中頃にイギリスで勃興したラファエロ前派(15世紀の北方美術の影響が色濃く、
象徴主義芸術の先駆とも言われています)であると話しています。
録音状態のせいか、音質はあまり良いとは言えませんが、そのお蔭か金属的なノイズの音や
バリバリしたSEの類に独特の安っぽさが加わって、不気味さが強調されています。
表題のCruorとはラテン語で血の塊を意味しています。
#1Flamme Empor(Flame Emperor)は冒頭のバリバリしたノイズとフラメンコのような
打ち込みのリズムが非常に印象的です。アウトロのテーマは結構キャッチーだと思います。
#2Aufbluteは、ローファイで足音のような打ち込みのリズムと、
極めてシンプルなリフを繰り返すシンセが不気味です。
#3Rabenkehrは、エフェクトの掛かった管楽器のような音でエスニックなテーマが流され、
ピコピコしたシンセがパーカッシブです。後半にかけて動物の鳴き声がSEとして入ってきます。
表題曲の#4Cruorは、前曲からのテーマが続いて流れた後、呻き声のような加工された音が
激しく鳴り響きます。スネアドラムのような音が忙しなく、焦燥感を駆り立てます。怖過ぎです。
#5Schwazer Rabは、鳴ったり止んだりを繰り返す、スウィンギーでアフリカンな
香りのするパーカッションが印象的です。
ホワイトノイズのような音が全体を覆い尽くしているのがまた不気味。
#7Ostaraは、冒頭から同音連打するシンセと工場で正確に動き続ける、
機械音のようなリズムが執拗に、等間隔に鳴り続けています。
得も言われぬ高揚感のある一曲です。
#8Totenloheは、5拍子のリズムがけたたましく鳴り、、飛行機の通過する時の
轟音のような音と、解体工事の現場で金属を削る時のような高音のノイズが入り混じって
迫って来ます。
#10Schwarzmondは、バリバリとした雷のような電子音にコーラスのように入る
声のサンプリングがループしています。リズムは和太鼓のような独特の音色です。
次第に電子音のノイズが大きくなり、フェードアウトしていきます。
#11Sirb Und Werbeは、大雨の音を加工したようなノイズが絶え間なく流れる中で、
コロコロしたパーカッションが多様に音色と周波数を変えながらリズムを刻んでいます。
#12Opus Angelorumは、どことなくスピリチュアルでゆったりとした
シンセのフレーズをバックに、ハウリングのようなノイズがユラユラと蠢いています。
神秘的です。途中からブレイクビーツのような高速のスネア音が、
非常に小さい音量で聴こえてきます。
#13Goldene Dammerungは、か細い高音のノイズに、歪ませたキーボードがテーマを奏でています。
まだきちんとテーマとなるメロディ(というかリフ)が展開していくので、
本作の中では曲の体裁をなしている気がします。昔の悪魔城ドラキュラのBGMのようです。
#14Flammenspurenは、パチパチと燃える焚火のような電子音の背後で、
カタカタとしたパーカッションが不安を煽り立てています。
全編を通じてバリバリした電子音が印象的で、
リズムやキーボードのリフも案外キャッチーなので、
聴いていて飽きない不思議な音楽だと思います。
不気味さの中に同居する神秘性と言えばいいのか、
非常に興味深い作品だと思いますが、筆者の中ではまだその真意を解釈しきれずにいます。

Aufblüte

Cruor

Totenlohe

Strib Und Werbe

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  1. 2014/01/20(月) 14:23:51|
  2. Allerseelen
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  4. | コメント:2

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
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