私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(254)

Album: Roberta Flack & Donny Hathaway
Artist: Roberta Flack & Donny Hathaway
Genres: Soul, R&B, Folk

Roberta Flack Donny Hathaway


アメリカ、ノースキャロライナ州ブラックマウンテン出身の女性シンガーソングライターである
Roberta Flack(1937~)と、イリノイ州シカゴ出身のキーボーディスト、シンガーソングライターの
Donny Hathway(1945~1979)によるデュオ名義で発表された1972年作品。
元々ハワード大学でクラシックや声楽を学んでいた二人は在学時からの知己であったようで、
1970年のFlackのソロ2ndであるchapter Twoに、Hathawayがアレンジ、ピアノ、コーラスで
参加していたりと、今作以前でも深い親交があるようです。
自身のアルバムの中で白人の曲をカヴァーしたものを収録したりと、
いわゆる人種の壁を超えたニューソウルの旗手として知られるHathawayと、
ジャズやファンクの他にフォークやブルース、ポップスと幅広い音楽からの影響が
窺われるソロ作品を生み出したFlackは、ピアニストであることも含めて
音楽性を見ても共通項の多い人物だと考えてよいと思います。二人の自作曲に加えて、
James Taylorのカヴァーで知られるCarole Kingの#2You've Got A Friendや
Ralph MacDonald, William Salterによる#7Where Is the Love,
(元々はFifth Dimensionへの提供曲として書かれたもの),
ジャズスタンダードの#6For all we knowなど、二人の影響を受けた音楽が如実に出た作品
に仕上がっています。参加しているスタジオミュージシャンも豪華で、Eric Gale(G),
Chuck Rainey(B)というモータウンサウンドの担い手である2人に加え、
Bernard Purdie(Dr)やDavid Spinozza(G, on #2),
Billy Cobham(Dr, #2, Miles Davis, The Mahavishnu Orchestra), Joe Farrell(Sax on #5,
Return To Forever)などジャズ・フュージョン系のミュージシャンも多く参加しています。
ストリングスアレンジは Queen, The Bee Gees, Anita Baker, Aretha Franklin, Rascals(Groovin')
やHall & Oates, Norah Jonesなどを担当したArif Mardinです。
ただサウンドは、緊張感のあり複雑なリズムやキメのあるファンクサウンドというものではなく、
あくまで二人の歌とハーモニーの魅力を引き出すことに専念されて作られていて、
非常に内省的な色の強い作品となっています。
どこまでも真っ直ぐで力強く、朗々としたFlackの歌唱と、Hathawayの、内からあふれ出る葛藤や
苦悩の感情がそのままフェイクしたメロディに出てくるような歌唱の対比も最高にクールです。
Tom Jonesのカヴァー#1I (Who Have Nothing)は、流麗なストリングスにEric Galseの渋い
ギターソロと、ブルージーに、エモーショナルに歌い上げます。
名カヴァーの#2You've Got a Friendは、Hathawayの音数少ないエレピの響きが抜群の存在感
を見せています。Billy Cobhamの軽やかなドラムミングの作る緩いグルーブも素晴らしいです。
Aretha Flanklinのヒット曲#3Baby I Love Youで一気にアップテンポになり、
楽しげなギターリフとフィルの多いドラムスがファンキーです。
二人の共作によるオリジナル#4Be Real Black for Meは、意味深なタイトルとは対照的に
暖かみのあるサウンドで、完璧に息の合ったハモリを堪能できます。
Barry Mann, Cynthia Weil, Phil Spectorというまた恐るべき御仁たちによる共作で
The Righteous Brothers('64)のカヴァー#5You've Lost That Lovin' Feelin'は、
原曲から大きく離れたアレンジとなっており、モータウン色満載のベースの
リフやフィルのフレージングがとても面白く、浮遊感のある独特な響きのハーモニーが不思議な
気持ちにさせる一曲です。アウトロではワウの絡めたカッティングが入ったり、
忙しなくピアノ弾き倒していたり、ダイナミックにストリングスの音が入ってきたりと展開も多いです。
FlackのピアノでHathawayが歌う#6For All We Knowは、自然と掛かったヴィヴラートの
あの揺れ方の深さや速度の完璧さといい、低音の豊かな倍音といい、
高音の伸びも圧倒的な声量にも感動しっぱなしです。もう最高です。言う事なしです。
一気にバンドサウンドになりとびきりグル―ヴィーに進行する#7Where Is the Loveは、
メロディックに主張するストリングスと、やはりChuck Raineyのベースのフレージングが個人的には
気になってしょうがないです。本作でもとりわけキャッチ―でポップな一曲です。お洒落です。
ストリングスによる間奏がMarvin Gayeっぽさを感じる#8When Love Has Grownは、
明るく健全な雰囲気でまたこれも良い。
トラディショナル・ソングの#9Come Ye Disconsolateは、ピアノにベースのみを加えて
二人の掛け合いで聞かせるバラードに仕上がっています。
7分に渡るインストの#10Moodは、Flackがピアノ、Hathawayがエレピを弾いています。
清澄なトーンで弾かれる悲しげでありながら情熱的なピアノのクラシカルなテーマと、
輪郭のおぼろげで水の滴るかのような音のエレピが、二人の人間をそのままに映し出しています。
どの曲も彼ららしく大胆なアレンジが施されていて、歌唱も、演奏も、二人の素晴らしい個性が
立った奇跡の作品なのだと、強く感じています。カヴァーとはかくあるべきものなのでしょう。
Hathawayの人生について思いを馳せながらこの優しい歌声を聴くと、
そのたびに切なさがこみ上げてきます。素晴らしい作品です。

You've Got a Friend

You've Lost That Loving Feeling

For All We Know

Where is the Love

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  1. 2014/02/09(日) 01:45:21|
  2. Roberta Flack & Donny Hathaway
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  4. | コメント:3

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
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S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
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プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
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ハードフュージョン, アシッドジャズ,
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