私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(287)

Album: Once Again
Artist: John Legend
Genres: R&B, Neo Soul

John Legend


アメリカ、オハイオ州スプリングフィールド出身のシンガーソングライター、俳優。
1978年生まれ。ペンシルベニア大学英文学科卒。
デビュー以前は本名のJohn Stephens名義で活動しており、ダブ・エレクトロ方面ではMagnetic Man,
ヒップホップ関連ではJay-ZやKanye West, そしてR&Bでは2000年代前半からトータルセールスで
3000万枚以上を売り上げたAlicia Keysのバックとしてレコーディングに参加していました。
4歳でピアノを弾き始め、7歳の頃から教会の聖歌隊で歌うようになり、
大学時代にはCounterpartsというアカペラグループを結成しています。
当時から、ヒップホップグループThe Fugeesのメンバーとして90年代末にGrammy Awardsの11部門に
ノミネートされムーヴメントを起こしたLauryn Hill(1975-)に見出され、
1200万枚を売り上げた彼女のソロアルバム、The Miseducation of Lauryn Hillに
ピアニストとして参加するなどしています。2000年には、大学のルームメイトであり、
後にKanye WestのレーベルであるG.O.O.D Musicの音楽プロデューサーとなる
Devo Springsteen(1977-)の紹介で、Devoの実の従兄弟であるKanye Westと出会うこととなります。
本作は2006年作の2nd。プロデュースは前述のDevo Springsteenが行っています。
Legendという芸名の名付け親は、Westの1stでも活躍したラッパーのJ. Ivyです。
本作のプロデュースには、Kanye Westにゆかりのある人物を始めとして、
Will.I.Am(Black Eyed Peaceのメンバー), Raphael Saadiq(Raphael Saadiqの項を参照),
Craig Street(Norah Jones, The Manhattan Transfer etc)
,Sa-Ra(Jill Scott etc), Eric Hudson(Ne-Yo, Brandy), Devo Springsteen,
Dave Tozer(Mayer Hawthrone etc),など錚々たる面子のプロデューサーを迎え、
制作が行われています。Kanye Westが関与しているとはいえ、ヒップホップ色はあまり強くなく、
1stのGet Lifted(2004)から本作にかけて、よりオールドスクールなソウルに近いサウンドと
なっていて、彼の、少しハスキーでノイズのある渋い低音の響きが美しいボーカルと
完璧に嵌っています。浮遊感のあるアレンジやエレピのフレージングは、ネオソウルに見られる
ジャジーさが出ているともいえますし、ソリッドで生々しいリズムトラックや、
有名曲をも含めた大胆なサンプリングにはヒップホップの発想が前面に出ています。
Classics Ⅳの有名曲Stormy(1970)を元ネタにしたWill.I.Amプロデュースの#1Save Roomは、
シンプルなテーマのメロディをオルガンの浮遊感ある音や、
シンセで繰り返していきながら静かに進行していきます。
サビにかけて歪んだギターが盛り上げてダイナミズムを付けています。
#2Heavenは、Monk HigginsのHeaven Only Knows(1972)からサンプリングしたコーラスの
フレーズをひたすらにループさせ、所々加工させながら流しています。お気に入り。
強調されたキックと、動きの大きいベースラインに対して、張り裂けそうな情感を湛えた
ボーカルで、自分を利用した女性への強烈な皮肉を込めた歌詞が映える#3Stereo、
Raphael Saadiqプロデュースの#4Show Meは、ブルージーで枯れた音のギターリフを中心として、
囁くような息漏れの強いファルセットのボーカルが淡々と歌い上げます。
アウトロではスムースなストリングスが入ってきてメロウに終わっていきます。
その流れで続く暖かなソウルの#5Each Day Gets Betterは、ピアノの高音が煌びやかで、
静かにホーンが鳴るモダンな音像で、各フレーズに僅かに掛かったビブラートやミドルの
柔らかくかつ豊かな響きのあるボーカルは圧巻です。後半にかけて、
ピアノを起点にして女性コーラスが前に出てきて一層グル―ヴィーになり、
クライマックスを迎えていきます。メロディーもキャッチ―で最高です。
なかなかスンゴイことになっている(外で人の見ている前で致しちまおう、と言う内容ですが…)
歌詞に気が取られてしまいますが、サウンドではそんなことはおくびにも出さない
#6P.D.A.(We Just Don't Care)は、ジャジーで饒舌なループと、力強いタッチで抑揚を
付け盛り上げるピアノと、ダンサブルなグルーブを放ちながら繊細なシンバルワークを見せる
リズムと、メロでは短く音の切られ、渋いギターソロの後で派手に前に出てくる
ベースラインもクールです。これも素晴らしく良い。
Jimi Hendrixがサポートギタリストとして参加しているThe Icemanのシングル、
(My Girl)She's a fox(1964-1966?)をこれまた大胆にサンプリングした#7Slow Danceは、
レゲエのカッティングとローファイなコーラスが60年代にタイムスリップしたかのような
雰囲気を見せています。
Norah Jonesを手掛けるCraig Streetプロデュースのシンプルなピアノバラード#8Againは、
少ないブレスで激しく歌うボーカルの後ろで、随所随所を抑えたギターのオクターブを絡めた
フレーズが存在感を放っています。ホワイトノイズのような音が僅かに入っていてこれが
浮遊感を感じさせてくれます。
エフェクトが掛けられ籠った音のボサノヴァなアコギのストロークと、
シンセベースピロピロした電子音が味付けをしつつ、途中から入ってくる暖かいコーラスや
パーカッションで複雑でどこか翳りのあるサウンドを聴かせる#9Maxine、これもお気に入り。
同じモチーフを用いたインタールードの#11Maxine's Interludeを挟んで、
Kanye West自身が作曲に参加したバラードの#12Another Againは、クリーントーンのギターの
短いリフレインを中心としてフルートやピアノがそれを膨らませていきます。
ボーカルのメロディの乗せ方はラップ的です。
低音の豊かな味わいがあり、どことなく陰鬱さを滲ませたような、しかし決して冷たくなく、
暖かみのある響きの声と言い、どの音域でもその響きを失うことなく分厚さのある巧みさと言い、
シンガーとしての能力の高さも尋常ではないですが、クラシックなソウルに根付きながら、
ヒップホップを体験した00年代初頭から続くネオソウルの潮流の中でも、
一際輝きを放つ作品だと思います。練られた詞世界のシリアスさや現実へ鋭く肉薄した感覚は、
さながら70年代のニューソウルが持っているヒリヒリとした雰囲気を持っているようです。
しかしながら、彼のボーカルはそれをあくまで優しく包むように表現していて、
すっきりと聴けてしまいます。

Save Room

Heaven

Each Day Gets Better

P.D.A.(We Just Don't Care)

Maxine

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  1. 2014/04/30(水) 22:51:23|
  2. John Legend
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
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