私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(289)

Album: We Get Requests
Artist: Oscar Peterson Trio
Genres: Jazz, Bebop

We Get Requests


カナダ、ケベック州モントリオール出身のジャズピアニスト、作曲家、歌手。
1925年生まれ。Duke EllingtonをしてMaharaja of the keyboard(鍵盤の皇帝)と
言わしめ、60年以上にも渡るキャリアの中でレコーディングした作品は200以上、
Grammy Awardでは8回の受賞を成し遂げています。
カナダの国鉄に勤めていた移民の父の元に生まれ、モントリオール郊外で
黒人の多く住んでいた地域に育った彼は、5歳のころからピアニストであった姉
(Daisy Sweeney)とトランペット奏者であった父に習ってピアノとトランペットに
親しんでいました。7歳のときに病気のためトランペットが吹けなくなり、
その後はピアノに集中して一日4,5時間の練習を怠らず続けていたようです。
地元モントリオールでピアノ教師として働いていた姉の影響もあり、
J.S Bachのフーガやプレリュードを弾きこなして行く中でクラシックの和声法について
学んでいたようです。若き日にはTeddy WilsonやNat "King" Cole, Art Tatumなどと
交流を深めつつ、バーやホテルのラウンジでピアノを演奏していました。
彼のデビューのきっかけとなったのはNorman Granzとの出会いでした。
偶然ラジオで放送されていたPetersonの演奏を聴いて衝撃を受けたNorman Granzは、
タクシーを飛ばして彼の演奏していたバーへと直行し、彼を飛行機に乗せて
アメリカに連れて行ったという逸話があります。
こうして、Granzを中心として44年から83年まで行われていたジャズコンサートの
プロジェクトであるJazz at the Philharmonicに参加、彼の運営していたVerveレコード
に所属したことが、その後の華々しいキャリアのきっかけとなります。
彼の演奏スタイルは幼いころからリアルタイムに影響を受けてきたスウィング・ジャズ
のリズムやハーモニーの中に、演奏のレパートリーであったクラシックの和声が
効果的に取り入れられ洗練されたもので、鋭く明瞭なタッチと、音数の多く、
鍵盤の端から端まで縦横無尽に動き回る卓越したテクニックも含めて、
あらゆる時代において最高のピアニストの一人であると言われます。
デュエットやカルテットでも多くの名作を生み出している彼ですが、
その活動の中心を成していたのはトリオとしてのコンサートでした。
Ray Brown(B), Joe Pass(G), Herb Ellis(G),Ed Thigpen(Dr)などメンバーを
少しずつ変えながら活動していました。本作は1964年作で、メンバーとしては
Ray Brown(B), Ed Thigpen(Dr)を迎えて制作されています。
内容としては当時のポピュラーソングやボサノヴァ、映画音楽のカヴァーが
多くを占めており、非常に聴きやすい作品の一つでもありますし、
かつ時代を考慮すると、録音の良さが際立っています。
雰囲気こそ全体的に艶やかで穏やかな演奏が続いていますが、
フレーズ自体は滑らかな速弾きが多く、極めて正確なプレイだと思います。
この三人による録音は、これが最後の作品という事になります。
Antonio Carlos Jobimの#1CorcovadoからベーシストのRay Brownの抑制されつつも
スウィンギーで絶妙な音の切り方のプレイに集中してしまいます。
元々は映画音楽でありPetersonを代表するスタンダード#2Days of Wine and Rosesは、
ブライトなコードヴォイジングが煌めく冒頭部から、シンバルレガートの高音部の繊細な響きが
耳を撫でるEd Thigpenのドラムスで緩やかに進んでいきます。お気に入り。
#3My One and Only Loveは、緩急の付いた冒頭のフレージングで鳥肌が立ちます。
ゆったりとしたベースが鳴る中でピアノは明瞭で透き通ったトリルの目立つフレーズや
クライマックスでオクターブの入る部分など、盛り上げ方も最高です。ずっと聴いていたい…
不安定なイントロとベースの長いフレーズから始まる#4Peopleは、エモーショナルな
コード弾きを中心として進んでいき、ウォーキングベースが前に出てくるスウィンギーな
パートへと移り変わっていきます。スネアドラムの乾いた鳴り方など録音の良さから生々しさ
がひしひしと伝わってきます。
中盤の繰り返しで絶妙に強弱をつけていく中でそれにシンクロしてバスドラムが派手になっていく
#5Have You Met Miss Jones?, Ray Brownが微かに口ずさむ声が聞こえてくる楽しげな
#6You Look Good to Meは、パーカッシブで4ビートへとリズムチェンジしていくベースと、
安定したグルーブの中に時折入れてくるハイハットやスネアのフィルが、
速弾きするピアノに緊張感を加えています。これも最高。
#1と同じくAntonio Carlos Jobim作曲のボサノヴァの名曲#7The Girl from Ipanemaは
モーダルで複雑なドミナントモーションのあり、予想を裏切るコード感でありながら、
極めてスムースに進んでいくアドリブの難しい構造にも関わらず、
自在にリズムの中で動きながらフレージングしていきます。凄過ぎる…
中盤でベースが派手に出てくる#8D. & E.は、やはりアウトロの饒舌なドラムスが聴き所でしょう。
メロディも一際ポップで、静かにボリュームダウンしていく終わり方もクールです。
高音部のシングルノートの輝きを心行くまで堪能できる#9Time and Again、
そしてアルバムの最後で一気に盛り上がりを見せる#10Goodbye J.D.は、
本作の中でも一際熱いプレイを聴かせてくれます。
全体を通して有名曲が殆どで入門としても良く挙げられる作品のようですが、
有名でキャッチ―であろうが、最高のメンバーによる洗練されたアドリブがしっかりと味わえる
作品として愛聴していきたいです。

Corcovado

Days of Wine and Roses

My One and Only Love

You Look Good to Me

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  1. 2014/05/08(木) 01:16:25|
  2. Oscar Peterson
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
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