私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(307)

Album: Moonstone
Artist: Toninho Horta
Genres: Bossa Nova, Jazz, Fusion

Moonstone.jpg


ブラジル、ミナスジェライス州ベロ・オリゾンテ出身のギタリスト、作曲家、編曲家。
1948年生まれ。幼少期より母親からギターを習い、1969年にデビューを果たしてからは
アレンジャー、サポートギタリストとしてブラジル国内の有名ミュージシャン
(Elis Regina, Milton Nascimento, Maria Bethania, Joao Bosco, Airto Moreira, Edu Lobo,
Nana Caymmi, Flora Purim, Gal Costa, Sergio Mendes, Chico Buarque, Flavio Venturini,
Joyce, Johnny Alf, Wagner Tiso, Francis Hime, Beto Guedesなど)のライブやレコーディングに
参加していました。彼はClube da Esquina(Corner Club)という、地元ミナスジェライス州に
基盤を置く先鋭的なミュージシャン集団に所属しており、HortaやMilton Nascimento,
Lo Borges, Wagner Tisoなどを初めとするメンバーは、
クラシック、プログレッシブロック、ボサノヴァ、ジャズといった
音楽の高度なクロスオーバーを指向し、ボサノヴァ登場以降(1960年代後半)のブラジルの
ポピュラー音楽であるMPB(Musica Popular Brasileira, Brazilian Popular Musicの意)の
ムーブメントを巻き起こすきっかけとなりました。
HortaはPat Methenyが最も影響を受けたギタリストであり、ブラジル音楽とジャズ/フュージョンの
双方の影響を受けた複雑なヴォイジングと、柔らかくメロディアスなスキャットを得意と
しています。本作のレコーディングにはMethenyのバンドであるPat Metheny Groupの
メンバーであるDanny Gottlieb(Dr), Mark Egan(B, Jaco Pastoriusの直接の弟子), 
Steve Rodby(B),Nana Vasconcelos(Percussion)が一同に会して録音されています。
勿論Pat Metheny自身もサポートでギターを弾いています。
他にもHerbie HancockやWayne Shorterとの共演もあり、アメリカ国内のフュージョン系の
ミュージシャンの間でも、その名は広く知れ渡っています。1989年作の7th。
#1Bicycle Rideは、アコギの高音が煌びやかなアルペジオから始まり、
ピアノソロと、それに続いて曲のハイライトとなるオクターブ奏法を効果的に用いた、
丸い音のフルアコのソロへと繋がって行きます。お気に入り。
Mark Eganのフレットレスベースのトレブリーな音とメロディが強烈な存在感を放つ
#2Eternal Youthは、次第にパワフルなスネアでドライブ感あるグルーブを創出する
Danny Gottliebのドラムスが、PMGならではのロック的なダイナミズムを感じさせます。これも最高。
Toninho自身のエレガット弾き語りによる#3Gershwinは、低音弦のアタックの音や、
音の粒が揃った巧みなアルペジオで魅せてくれます。エレキのソロは音程差の大きいフレーズを
独特なタイム感で歌わせていて、Pat Methenyが彼に強い影響を受けていることが窺われます。
表題曲の#4Moonstoneは、左チャンネルにPat Metheny, 右チャンネルにToninhoが
割り振られており、二本のギターだけによる対話に浸ることができます。お気に入り。
Danny Gottliebのシャラシャラしたシンバルワークが優しく耳を撫でる#5Lianaは、
鋭いフィルインを起点としてサックスやバイオリンとギターの美しいユニゾンが聴けます。
一転して複雑なリズム構成と、Michael Breckerの流麗なホルンが特徴的な#6Yarabelaは、
如何にもPMGの曲にありそうなノリの一曲です。
続いてエグいキックとアコギの縦横無尽なバッキングがスウィンギーな#7Francisca、
再び弾き語りに戻った#8Sun Songでは、弦の一つ一つの音がくっきりとした完璧で個性的な
コードヴォイジングと、優しいスキャットでしっとりと聴かせます。
Nana Vasconcelosのパーカッションが作り出す疾走感あるリズムと、
キラキラとしたシンセの音が時代を感じさせながらも、背後を流れるバイオリンが
コースティックな肌触りを感じさせる#9I'll Never Forgetは、激しいドラムスを起点にして、
情熱的なサックスソロがクライマックスとなります。お気に入り。
#10Spirit Landは、水の音がSEとして入り、分厚いコーラスワークがあり、
Mike Eganのフレットレスベースと強くリバーブを掛けたドラムスの音が幻想的な世界観を
思わせます。ギターの音はその中でも生々しくて際立って聴こえてきます。
どの曲も最高ですが、弾き語りの曲の優しさ、柔らかさとアコギのアタックや鳴りの気持ちよさも
ありながら、PMGの諸作品のような巧みなバンドアンサンブルも楽しめてしまうという、
最高のブラジリアン・フュージョンだと思います。愛聴盤です。

Bicycle Ride

Eternal Youth

Moonstone

I'll Never Forget

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  1. 2014/06/10(火) 23:08:41|
  2. Toninho Horta
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

今日の一枚(303)

Album: Waves
Artist: Antonio Carlos Jobim
Genres: Bossa Nova

Wave.jpg

ブラジル、リオデジャネイロ州リオデジャネイロ出身の作曲家、編曲家。1927年生まれ。
リオデジャネイロのチジュッカ地区に生まれ、14歳の頃に父が妹のために買った
ピアノにのめりこむようになります。彼の師となったのは、ベルリン国立音楽アカデミーを
卒業し、ドイツから移住してきたHans-Joachim Koellreutter(1915-2005)という作曲家でした。
クラシックに加えて、当時のヨーロッパの現代音楽や高度な作曲技法を学んだことが、
彼が後にボサノヴァという音楽を生み出すきっかけとなりました。
若い日に結婚した彼は、妻を養うために建築を学び建築事務所で働いていましたが、
音楽への夢を諦めきれず、ラジオやナイトクラブでピアノを演奏するようになります。
ナイトクラブでの演奏を見たRadames Gnattaliに才能を見出された彼は、1952年に
Continental Recordに入社、一社員として譜面起こしや編曲の仕事に携わるようになります。
翌年の1953年にはOdeon Record(EMI Brazil)にアーティスト兼レコーディング・ディレクターとして
契約を結び、本格的に作曲活動を行うようになります。
1956年には映画「黒いオルフェ」の原作となった舞台Orfeu da Conceicaoの音楽制作を
担当したことで、この舞台の制作者である詩人、作家、作詞家、翻訳家、外交官の
Marcus de Moraes(1913-1980)と楽曲を共作するようになります。
翌年には、クラシックギターを用いてサンバのリズムをギターのみで演奏する
バチーダという奏法を生み出したギタリストのJoao Gilberto(1931-)と出会い、
Moraesと共作し温めていた、ボサノヴァの最初の曲と言われるChega de Saudadeを彼に提供します。
JoaoのソロアルバムO Amor, o Sorriso e a Flor(1960)の制作後に彼はアメリカへと渡り、
Stan GetzやNewton Mendonca, Frank Sinatraなど名だたるミュージシャンと作品を共作したり、
自身の楽曲がカヴァーされるようになります。60年代は作曲の傍ら映画音楽の制作やテレビ番組出演、
オーケストラの指揮など極めて多忙な日々を過ごしていた彼は、後のフュージョンブームの
きっかけを生み出したCreed Taylor(1929-)のレーベルであるCTI Recordsからインストゥルメンタル
の作品をリリースしています。純粋なボサノヴァからは少し離れ、ジャズ(クロスオーバー)へと
接近した内容となっています。1967年作の5th。
本作は究極のイージーリスニング作品と称されるそうですが、
構造を見ると非常に精緻に作りこまれています。
表題曲の#1Waveは、右チャンネルを流れるアコギのストロークがリズムを刻む中で、
時折入ってくる流麗なストリングス、ホーンとピアノが密室的な音像で共存しています。
アウトロの印象的なユニゾンで盛り上がりながら終わっていきます。
丸くモコモコしたベースが前に出て、随所随所で鋭いフィルを入れる軽いドラムスが疾走感を作る
#2The Red Blouseは、壮大なストリングスがテーマを様々に変奏して行きます。
3:00あたりからはパワフルなピアノソロがあり、その後は短いリフを繰り返しながら終わっていきます。
ホルンのゆったりとしたトーンが耳を撫で、冒頭から同じコードワークで淡々と弾いていくアコギを
バックにした#3Look To The Skyからそのままシームレスに繋がっていきながらも、
ギターがパターンを変えて、リムショットの乾いた音、流麗なシンバルレガートが細やかに
入ってくる#4Batidinaではさらにストリングス特にチェロの中低音が音量を上げて
存在感を示しています。
ホーンの呻く様な低音がダークな雰囲気を作り、ドラムスも一層性急にビートを刻む
#6Mojaveは、ピアノがリズムの間を埋めるようにしてパーカッシブに入ってきて面白い。
#7Dialogoは、左右に振られた管が交互に対話していくようにテーマを繰り返していきながら、
それを弦が纏め包み込んでいくように流れてきます。
本作の中でも特にアップテンポでボーカル入りの#8Lamentoは、艶のある低音のボーカルと、
妖しい雰囲気を醸し出すホーン、様々にアクセントを付けたシンバルの作るリズムが印象的です。
#9Antiguaは、ハープシコードの奏でるウネウネとしたリフレインを中心にして、
ホルンやフルートがそれに続いていきます。
最後を飾る#10Captain Bacardiは、少し録音がうねりのある部分がありますが、
左チャンネルを流れる流麗なトロンボーンと、特徴的なノリを生み出すリズムパターンを起点にして、
ギターもユニゾンをかましながら盛り上がっていきます。
アルバムを何周しても飽きのこない最高のBGMとしても良いですし、
車内で困ったときはとりあえずこれを掛けてしまいます。

Wave

Mojave

Lamento

Antigua

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  1. 2014/06/05(木) 17:50:19|
  2. Antonio Carlos Jobim
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
https://twitter.com/privategroove
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可能な限りフォローバック、コメントしに参ります。
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