私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(348)

Album: Limited Addiction
Artist: 東京女子流
Genres: Pops, Soft Rock, AOR, Fusion

Limited Addiction

2010年に結成された日本のガールズアイドルグループ。avex trax所属。
メンバーは小西彩乃、山邊未夢、新井ひとみ、中江友梨、庄司芽生の5人組です。
本作は2012年作の2nd。オリコン週間25位。

2010年のデビュー直後に渋谷O-nestでライブを行い、
その後は2週間に一回の頻度でステージに立っているようです。
テレビ出演では、NHKの"Music Japan"、BSフジの冠番組「東京女子流スレスレTV!」のほかに、
フランスで放映されているJapan In Motionという番組などでもその姿を見ることが出来ます。
普段筆者はアイドル「グループ」の楽曲を聴く機会が少なかったのですが、
80年代のシティポップスに影響を受けた音楽性と言う触れこみやTwitter上での情報を得て、
急遽作品を聴いてみました。

サウンドプロデュース、アレンジを行っているのは松井寛(1967-)
という人で、筆者の知るところでは、「笑っていいとも」などのバラエティ番組や、
「新世紀エヴァンゲリオン」などのアニメなど、テレビ番組の音楽制作で知られる鷺巣詩郎のソロ作品、
MISIAの初期作品のアレンジを手掛けた人物と思われます。
他のメディアでも言われていることですが、この松井氏のアレンジが往年の
ジャパニーズフュージョン~シティポップスの流れを感じさせるもので、
とりわけ手数の多く、軽快なドラムスの打込みや、多彩な音色の選択は非常に緻密な仕事で、
元になったドラマーが想像できてしまうような明確なサウンドイメージがあるように感じています。
堅いリバーブの感じと、引き締まったリズム隊の作り出すグルーブは、かつての角松敏生の
サウンドを思わせるような部分があります。


基本的にトラックは打込みによるものなのですが、ギタリストにはスタジオミュージシャンとして
70年代後半から現在に至るまで活躍し続けてきた土方隆行(1956-)を迎えて制作されており、
正しく本家(?)の角松敏生を代表する曲である"DO YOU WANNA DANCE"(シングル)、
そしてアルバムでは全盛期の80年代の作品群、
"ON THE CITY SHORE"(1983), "AFTER 5 CLASH"(1984), "GOLD DIGGER"(1985), "SEA IS A LADY"(1987)
に参加しています。その他にも浅川マキ、杏里、小野正利、河村隆一、コブクロ、佐藤博、
スピッツ、SMAP(フュージョン期)、竹内まりや、玉置浩二、田村ゆかり、TM Network、
中島みゆき、浜田省吾、松田聖子、南佳孝、吉田拓郎、吉田美奈子などなどこれはほんの一部ですが、
非常に多くの作品でプロデュースとギター演奏を行っています。
キャッチ―なアイドルポップスの側面もありながら、楽曲の構成は複雑で、
練りこまれたホーンやストリングスのアレンジに加え、インストパートの長い楽曲構成が、
アイドルポップスには極めて特徴的な作風だと思います。

彼女達自身によるボーカルは、決して高い技術があるというわけではないのですが、
全パートユニゾンということはなく、きちんとコーラスで歌っている点も、面白いです。
エイベックスと言うレーベルは、小室哲哉氏の黄金期の時代から、
ダンス、ダンサブルであること、をテーマにして音楽制作を行う印象があります。
そういった意味で、シンセ色の強い打込みの、メカニックな音色の4つ打ちリズムと、
ドラマティックで、明るい展開というサウンドと、この東京女子流の音は、
一見相反する影のあるサウンドという風に感じる部分もあります。
しかし、聴いている客を躍らせるアイドルソングと言うことで考えれば、
こういったファンク、フュージョンのリズムを取り入れた軽快で肉体的なリズムというのも
一つの方法として納得できるように思います。

#1Introは、前作アルバムの"鼓動の秘密"の最後に収められているOutroからの
続きと言う形になっており、ChicのNile Rodgersを思わせるようなカッティング、
ループされるストリングス、ヒップホップ的なソリッドなリズムが印象的なインスト。
そのまま密室的なスネアの叩きだす16ビート、カッティングとともにシームレスに入っていく
#2Sparkleは、サビメロの歌謡っぽさとゴリゴリした進行の組み合わせが面白いです。
サビ前のカッティングフレーズやシンセソロには大仰さがあって適度なダサさがあります。
歪ませたカッティングに派手なシンセのリフでダンサブルに始まる#3W.M.A.Dは、
強くエフェクトの掛けられたBメロ部分の歌唱は歌詞が充てられておらずAh...のみで通しており、
オクターブとスラップを組み合わせたベースラインが腰に来るグルーブを生み出しています。
少ししつこいほどにバキバキのキメを繰り返す展開ですが、
暗さのあるハーモニーで、ただポップと言うわけではなく不思議な感覚があります。お気に入り。
ローファイなエレピのソロから始まり鋭いフィルインを起点にメロに入る#4Regret.は、
手数の多くへヴィ―なドラムスと太いベースの作るフュージョンライクなグルーブが堪りません。
キーボードソロは速弾きの入ったテクニカルなもので、緻密なコーラスを見せるパートも楽しい。
アウトロのカッティングフレーズも鳥肌ものです。最高。
00年代の日本のガールズバンドを代表する存在であったZONEのカバー
#5僕の手紙は、原曲よりも音数を絞った、レイドバックしたサウンドに変化しており、
クリスピーなクリーンのリズムギターはジャジーで、荒い歪みのギターソロも
トレブリーで枯れたトーンで渋いです。これも最高。
激しいスクラッチとブラコン風味のシンセベース、大きなキックの入った異色な#6Don't Be Cruelは、
デジタルな感触のトラックの中でアコギのアルペジオが緩衝材のような役割を果たしています。
インストパートでは少しハードなギターソロが控えています。
#7Liarは、ひたすらにスラップする極太ベースとハードなドラミングの作る真っ黒なリズムの中で、
シンセ然としたホーンのオブリガートがキラキラとした雰囲気を出しています。
QueenのWe Will Rock Youのオマージュと思われるイントロをあしらった#8Rock You!は、
左チャンネルの低音弦の単音カッティングとワウの掛かったカッティングを中心としたギターと、
サスティーンの短いシンセベースの粘りつくグルーブがありながらメロディはアイドルソングらしく
ポップなものになっていて素晴らしいバランスだと思います。
それにしても、サビ前にカッティングの3連が入る曲が多い気がします。
表題曲の#10Limited Addictionは、冒頭に置かれているユニゾンのギターリフを中心とした
パターンミュージックですが、ドラムスは手数が多いです。
シルキーな歪みのギターがブルージーなソロで、暴れ回っていて熱いです。
ピアノの弾き語りに壮大なストリングスと管を加えたバラードの#11追憶は、
やはりとてもかなりまだ幼いアイドルの歌う歌詞とは思えぬ哀しいもので、
後半ではもう少し音数が減り、荒廃した景色を思わせる残響が印象的なドラムスのパートが
挟まれています。
最後のインスト#11Outroは何とオーセンティックな4ビートのモダンジャズかと思わせておいて、
いきなりメタルばりの重いリズムと歪んだギターのパート、そしてまたジャズへと戻って行きます。

ギラついた音処理やアレンジ、ドラムの手数の多いフレーズは80sを思わせる部分もありますが、
今の録音技術と打込みのなせる業でかなり密室的な音になっており、
場合によっては過剰装飾に聴こえかねない部分もあるとは思います。
兎にも角にも、当時平均年齢14歳のアイドルグループの歌う楽曲としてはかなり大人びた
ファンキーでブラック色の強い作品で、年齢と曲、歌詞の内容のアンビバレントな感じが
独特の魅力を生み出しているように感じます。佳作。

Sparkle[Live]

W.M.A.D

僕の手紙

Don't Be Cruel

Limited Addiciton

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  1. 2014/11/14(金) 00:37:05|
  2. 東京女子流
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
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