私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(350)

Album: Brown Sugar
Artist: D'Angelo
Genres: Neo Soul, R&B, Soul

Brown Sugar

アメリカ、バージニア州リッチモンド出身のシンガーソングライター、キーボーディスト、
音楽プロデューサー。1974年生まれ。
1990年代末から同時多発的に出現してきたいわゆるネオ・ソウルを代表するミュージシャンと
言われています。オリジナルアルバムは僅か2作品で、本作は1995年作の1st。

本人はMarvin GayeとPrinceからの影響を度々公言しているようですが、
実際には古典的なソウルミュージックに留まらず、ヒップホップ、ファンクのビート、
MCを取り入れた密室的な音像に、自身によるジャジーで浮遊感ある
キーボードプレイが取り入れられた、独特な音楽性を有しています。

父はペンネコステ派の教会の牧師で、他の宗派の人間との関わりを
持たないようにと厳格に育てられていたようです。
3歳の頃に兄からピアノを譲り受けて弾き始めるようになり、
父に習いハモンドオルガンも演奏していたようです。
17歳の頃、当時彼が結成していたMichael Archer and Preciseという
バンドが、ニューヨークのアポロシアターで行われたアマチュアナイトの
コンペティションで成功をおさめ、このことをきっかけにして高校を退学、
ニューヨークへと移り住み、音楽活動に専念するようになります。

I.D.U. (Intelligent, Deadly but Unique)というヒップホップグループに
加入した彼は、その卓越したソングライティング能力で頭角を現すようになり、
1991年にEMIと契約、1994年作のシングルU Will Knowのヒットで一躍有名となります。
この作品は、Black Men Unitedという全員黒人男性アーティストによる
ユニット名義で発表(発表されたのはこの一曲のみです)されており、
Brian McKnight, Usher, R. Kelly, Boyz II Men, Raphael Saadiq,
Gerald Levertといった錚々たるメンバーが参加しています。
全米28位、R&Bチャートでは5位まで上り詰めています。
ソロアルバムでデビューを飾る以前にも、Angie Stone, Erykah Badu,
The Boys Of Harlem, Twiceらの作品にボーカリストとして参加したり、
プロデュースを行ったりしています。

その翌年に発表されたのが本作で、R&B Album ChartではTop 200に65週間連続チャートイン、
最高位は22位、年間で50万枚以上、トータルでは約200万枚を売り上げるという
大ヒットとなっています。彼の商業的な成功によって、
同じくネオソウルと呼ばれる音楽を作り出していたMaxwell, Erykah Badu, Lauryn Hillなどが
続々と発掘され、成功を収めていくこととなりました。
2000年作のVoodooはGrammy AwardでBest R&B Albumを受賞、Slum Village, Anthony Hamilton
(Anthony Hamiltonの項を参照)などをゲストに迎え、ライブツアーを行っています。
2000年以降は他のアーティストとの共演の機会が増え、J Dilla, Common, RH Factor,
Q-Tip, Snoop Doggなどの作品でゲストミュージシャンとして参加しています。
2010年前後からは契約の問題や本人の体調悪化などの原因で活動が停滞していますが、
Pino Palladinoらと制作した数曲の新曲が公開されているなど、徐々にではありますが
発売の準備が進んでいるようです。

温かく倍音豊かな中低音に対して、柔らかく繊細なファルセットのボーカルは、
彼自身が大きく影響を受けたと公言するPrinceのものに近い部分を感じます。
タイトルのBrown Sugarとはマリファナを指す隠語と言うことなのだそうですが、
正に麻薬的な中毒性、浮遊感のある音だと思います。
ハーモニーにはジャズを想起させる部分もありますが、
循環、繰り返しの多い構成になっていて、ライブでのアドリブ演奏を
誘発しやすいようなものだと思います。録音の影響か、全体としては独特のモコモコとした
サウンドで、そのあたりが70sを思わせるという評価を生み出しているのかもしれません。
ただその温かみのある音の質感とは裏腹に、歌い上げられる歌詞は麻薬への礼賛や殺人を
取り上げたものなど、非常にヒリヒリとしていて、
数少ない参加アーティストであるBob Powerのギターは熱量たっぷりで、
ブルージーなフレーズを弾き出しています。
その他にはA Tribe Called QuestでQ-Tipらとともにグループを支えた
Ali Shaheed Muhammedがプロデュースで#1に、Raphael Saadiqは#7に参加していたりします。

表題曲の#1Brown Sugarは、サビの消え入りそうなファルセットの、シンプルな繰り返しによる
サビが得も言われぬ浮遊感があって、背後で雑然と流れている話し声のサンプリングや
エレピのローファイな音と、ヒップホップ由来の生々しいスネアの定位感が中毒を誘います。最高。
#2Alrightは、かなり荒い音質のリズムトラックに、太く低音の出たベースリフを中心とした
これまたミニマルな作りになっていて、後半に向かうにつれてベースも動きを見せてきます。
#3Jonz In My Bonzは、マリンバのような音のシンセとエレピが波打つようなグルーブを作り、
サビでのコーラスの頽廃的な妖艶さは筆舌に尽くしがたいです。
一転してBob Powerによるギターの入った牧歌的なイントロから始まる
#4Me And Those Dreamin' Eyesは、コーラスの音が空間に広がっていく感じが堪りません。
ジャジーなイントロから始まる#5Shit, Damn, Motherfuckerは、動きの少ないメロディで
エレピやギターがフリーキーに弾いており、強烈な歌詞を歌い上げています。
後半ではギターのふにゃふにゃした音が癖になりそうです。
ジャズギタリストのMark Whitfieldが参加した#6Smoothは、Gene Lakeの叩きだす
ヒップホップ的なリズムがどっしりとループされている中で、
緊張感あるピアノソロが展開されている異色な一曲です。
Smokey Robinsonの1979年作品のカバー#7Cruisin'は、生のストリングスを豪華に取り入れた
(デジタルな音処理が施されていて、遥か彼方で鳴っているような感じです)
クワイエットストームな一曲に仕上がっています。お気に入り。
#8When We Get Byは、どっちりとしたウォーキングベースと、乾いたリムショットや
繊細なシンバルの音が暖かくてアナログな感触があります。
アウトロのBob "Bassy" BrockmanによるトランペットソロはMilesを思わせるようです。最高。
#9Ladyは、プロデュースとともにギター、ベースを弾いているRaphael Saadiqの趣味が
少し反映されたファンキーで肉体的なグルーブのある一曲で、幾重にも重ねられたコーラスは
Four Topsのそれを思わせるような美麗さです。Tim Christian(元々はRaphael Saadiqとともに
Tony! Toni! Toné!というNJS関連の音楽グループのメンバーでした。)によるピアノはもう少し明るく
ハッキリとした音で、また違った感触です。お気に入り。
#10Higherは、彼自身によるオルガンと、緻密な多重録音のコーラスのハーモニーを、
Will Leeによる饒舌なフィルが心地いいベースが支えています。

80年代末から90年代初頭にかけて流行していた派手で享楽的なニュージャックスウィングの音から、
70年代的な音へと回帰していきながらヒップホップやエレクトロミュージックとの
クロスオーバーを遂げて変化していくネオソウルをはじめとする現代のブラックミュージックのサウンドへと
変化する時代の、エポックメイキングな作品の一つだったのであろうと感じます。
そんなことはともかく、とにかく、中毒にならずにはいられない、クールで妖艶な魅力のある作品だと思います。

Brown Sugar

Shit, Damn, Motherfucker

Cruisin

When We Get By

Lady

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  1. 2014/11/21(金) 00:34:38|
  2. D'Angelo
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  4. | コメント:0

プロフィール

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは50,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
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