私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(399)

Album: Xen
Artist: Arca
Genres: Electronica, Breakbeats, Hip Hop, Chill-out, Minimal

Xen

ベネズエラの首都、カラカス出身の音楽プロデューサー、エンジニア、DJの
Alejandro Ghersi(1990-)によるソロエレクトロミュージックユニット。2014年作の1st。

現在のところは、EPを3枚と、2013年に自主制作したフリーダウンロードのミックステープ&&&&&が
ヒットしたことがその名が知れ渡るきっかけとなります。
近年急速にアメリカ国内のビッグネームの作品でコラボレーションしたり、自身の作品に
ゲストプロデューサーとして参加して貰ったりしているようです。

Kanye Westをプロデューサーに迎えたり、FKA Twings/EP2のプロデューサーとして参加したり、
Bjorkの制作中の9枚目のオリジナルアルバムにゲストプロデューサーとして参加したりしています。

2013年の10月にはMoMAでのオーディオとビジュアルのパフォーマンスを合体させた&&&&&と
題されたライブパフォーマンスを行っています。この時にビジュアルアートを担当したのが、
14歳の少年の時にGhersiが知り合った、Jesse Kandaです。
ArcaのPVを見れば、Jesse Kandaの独特なグロテスクさ、生々しさの中に、頽廃的な美しさのある
世界観が楽しめ、筆者自身あまりPVを見たりしないのですが、久々にビジュアル面で楽しめる、
不思議な気持ちにさせられるアーティストだと思います。

本作のアートワークでは、CGによる人間の男性とも女性ともつかないような生物が
作り上げられていて、彼自身の性別への苦悩やカミングアウトという行為への思いが、
表現されているようです。

音楽性としては、ヒップホップ的なチョップとペーストの方法論で
作られるようなビートでありながら、かなり断片化され、原型が完全に分からなくなるほど、
一部には拍子が分からぬほどになったブレイクビーツと、
同じく断片化されたシンセのコード、不協和音に加えて、
モーダルな響きを重視したというより、殆ど無調な展開を挟んだり、
エフェクトをかなり強く掛けたボーカルのサンプリング音の使い方など、
インダストリアル的な側面が目立っています。しかしながら、ヒップホップ的と言ったように、
ビートの乗り易さ、バックビートの強さと、リズムには断片化されながらも局所的にパターンが
ある程度守られている(特にミックステープ&&&&&では顕著な傾向でした)ところがあり、
こうした部分のグルーブ感覚は、アンビエントやエレクトロというよりは、
ブラックミュージックやハウスなどのファンにも受けるような要素だと思います。
音像としては音数を絞り込みつつも音圧の高い密室的なものとなっていて、
Aphex Twin, Autechreの音楽に近いとも言えるミニマルな内容となっています。

#1Now You Knowは、チル的な残響の強い冷ややかなシンセを中心とした静かなパートに、
尺八のような笛の音が入り、重くデジタルなキックに、焦燥を煽る高音のシンセが絡みついて
徐々にビートが決まっていくような作りになっています。奇妙で最高です。
一気に静寂を取り戻した#2Held Apartは、こちらはクラシカルなフレーズもあって
シンセソロによる穏やかで悲しげなスキット。
表題曲の#3Xenは、歪ませたような、何か金属同士が擦れるようなノイズ混じりのシンセが
定位を変えながら流れるパートがテーマとなっており、スクラッチを掛けたようなキックが
始まってからは、ブレイクビーツ化したキックと水音のようなパーカッション、
古い木のドアが開くような音、不協和なストリングス系の音が流れたり、
ガラスの割れるような音がして終わっていきます。これも最高。
再び音数が少なくなったスキットの#4Sad Bitchは、弦または琴の音を加工したような
高音成分の多いシンセが弾けるようにして流れていきます。コードというよりは、
低音パートのシンセが副旋律になるようにして組み合わせてあります。
得も言われぬ多幸感があり、リズムも原型を留めながらゆったりと流れていく
#5Sistersは、ノイズ交じりのリズムもレゲエのようなグルーブがあります。
#6Slit Thruは、かなり強くレイドバックしたリズムにスクラッチを掛けられた
ボイスサンプルと思しきSE、ブレス音や女性の声などボイスサンプルが散りばめられた中で、
コズミックなシンセがフリーキーでファンキーにアドリブしていきます。お気に入り。
琴のメロディーが日本的な情緒を窺わせる#7Failed、不協和な高音弦とフィルターの掛けられた
ような低音弦のリフレインで埋め尽くされた#8Family Violenceはひたすらに
不安にさせられる一曲。恐ろしい。
再びビートの強くなった#9Thieveryは、アフリカンなリズムをバックに東南アジア、
中東ともインドともつかぬメロディーに男性のボイスサンプルが混ぜられた一曲。
後半にかけてテンポダウンしていきながら、ベースが前に出てくる#10Lonely Thugg、
#11Fishはバリバリとしたノイズから一気に断片化されたシンセのフレーズと
ブレイクビーツ、ボイスサンプルが組み合わせられた頽廃的な一曲。
ストリングス系のシンセによる#12Woundは、懐かしいベタッとした音色で、
昔の3D初期のテレビゲームを思わせるようです。お気に入り。
#13Bullet Chainedは、タイトルの通り銃声を思わせるような激しいノイズが
ひとしきり鳴った後、細分化されたブレイクビーツ、心臓の鼓動を思わせるようなキックの
印象的なパートから、順次下降していく歪ませたシンセのフレーズでキャッチーに、
展開していく所はさながらプログレのようですらあります。最高。
#14Tongueは、演奏されたベースラインを分断して構成したような低音に
蚊の鳴くような不快とも言える高音が鳴り続ける一曲。
琴と木琴の間のような音色のアルペジオ、ウッドベースのような低音が流れる#15Promiseは、
電撃のような音、爆弾の炸裂音のような音にラジオのノイズのような音が入り混じっています。

この手の電子音楽は聴いてみないことにはその内容を推測することすら
難しいのですが、ミニマル的、ブレイクビーツ的なコラージュの手法を基礎としながらも、
旋律の組み立て方やキックの入るタイミングなどにはブラックをはじめとして
様々な地域の音楽的要素を文脈が分からなくなるほどに分割して、散りばめるという
ことに成功しています。しかしながら、楽曲としては奇妙なキャッチーさを併せ持っており、
普段あまり電子音楽を聴かない筆者としても非常に楽しめる一枚でした。
先ほど挙げたAphex TwinやAutechreよりも僕はこちらの方が好きかもしれません。傑作。

Xen

Sad Bitch

Thievery

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  1. 2015/09/18(金) 00:27:04|
  2. Arca
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

プロフィール

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは50,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
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