私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

私的名盤放送第60回 「90年代R&Bの宝石たち~スロウ・ジャム特集」

私的名盤放送第60回 「90年代R&Bの宝石たち~スロウ・ジャム特集」

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「放送アーカイブはこちらから」

M1 I LOVE... /Official髭男dism 『I LOVE…』 (2020)
M2 入江にて /郷ひろみ 『SUPER DRIVE』 (1979)
M3 Lady Seduction /Chill 『Chill Out』 (1986)
M4 24 Hours /S.H.E. 『3's A Charm』 (1997)
M5 Splendid Love /Lip's 『Splendid Love』 (1990)
M6 土曜日のLina /村田和人 『Boy's Life』 (1986)
M7 I've Got To Be Loved /Rodney Mannsfield 『Love In A Serious Way』 (1993)
M8 ララルハレルヤ /駒形友梨  『Indigo』 (2019)
M9 What Took You So Long /Delegation 『Deuces High』 (1982)
M10 Boogie from the Desk /MO-J TRAX feat. YUKA 『MO-J TRAX featuring YUKA』 (1998)
M11 さよならを言わせて ~Let me say good-bye~ /今井優子 『DO AWAY』 (1990)
M12 I Do Love You (Piece Of My Love) /En Vogue 『Soul Flower』 (2004)
M13 I'm The Man (Your Mama Been Warnin' You About) /Kino Watson 『True 2 the Game』 (1996)
M14 One Way Call /大西結花 『ONE WAY CALL』 (1991)
M15 So in Love /Jason Weaver 『Love Ambition』 (1987)
M16 Westside /TQ 『They Never Saw Me Coming』 (1984)
M17 You Bring Out The Best In Me /Bloodstone 『Don't Stop』 (1978)
M18 Second To None /Sharp 『Sharp』 (1989)
M19 Something About The Way That You Do /Pure Soul 『Pure Soul』 (1995)
M20 Rock My Body /松浦亜弥 『Naked Songs』 (2006)

【放送後記】
しばらくぶりの放送となりました。いかがお過ごしでしょうか。
コロナウイルスの大流行もあり、特にここ数日は寒波がやってきております。
不要不急の外出は避け、暖かくしてお過ごしください。

今回は、黄金期といえる90年代のR&Bに焦点を当て、特にブラックコンテンポラリー/ニュージャックスウィングと
ネオソウル/ネオクラシックソウルの丁度あいだの時代に当たる作品群から、
「スロウ・ジャム」と呼ばれる、ムーディーでセンシュアルな楽曲を多く選びました。

1曲目には国民的グループとして紅白歌合戦出場を果たした、Official髭男dismの新曲を選びました。
基本的には大ヒットしたPretenderのスタイルを踏襲した、80sソウル~AORの香りが漂うシティソウルな一曲でした。
特にA~Bメロ部分は80sソウル~クワイエットストームな作りとして、細やかなトラップビート、モダンな音色のシンセを
組み合わせた構成が見事です。2番入りからピアノ弾き語りになったり、ゴスペルライクなコーラスを組み合わせたりと、
音の抜き差しも非常によく工夫されています。

シティポップという音楽の指す範囲は非常に広範であり、その背景にある音楽性は多岐にわたります。
歌謡曲の伝説的なアーティストが残した、同時代的なフュージョンやブラックミュージックを取り入れた
ポップスも、シティポップの範疇に含まれると思われます。郷ひろみの1979年作はニューヨークの
スタジオミュージシャングループである24th Street Band(Hiram Bullock, Steve Jordan, Will Lee, Clifford Carter)が
参加しています。(放送ではLAとお話しましたがNYの間違いです)
シンプルでありながらもどっしりとしたタムの効いたフィルインがファンキーなドラムスとメロディアスなメロディ、
スムースジャズ的なライトなホーンアレンジ、ラストサビに掛けての転調など、歌謡曲的要素は希薄な一曲でした。

渋谷のFACE RECORDSで購入した、西海岸出身の詳細不明のブラコン/エレクトロファンクユニット、Chillの
爽やかなジャケットが非常に印象的な1986年作から、リヴァーブの効いたスネアとシンプルなリフレインで作られたブギー、
Lady Seductionです。特徴的なシンセのリフは、一度聴いたら耳から離れません。

第二のEn Vougeといったイメージの3人組女性ボーカルグループ、S.H.E.の97年作もBOOK OFFでひっそりと290円で
売られていました。Soul,Heart,Energyの頭文字を取って名付けられたグループのようで、唯一作です。
プロデューサーはVanessa Williamsを手掛けたことで知られるAntonina Armatoが手掛けています。
ここから澄んだリムショットと妖しげなコード進行、ウィスパーボイスで滑らかに歌うスロウジャム、24 Hoursです。

加藤貴子、吉村夏枝、山本京子の3人で構成されるアイドルグループ、Lip'sの2ndシングル、Splendid Loveです。
@fumimegane0924さんに教えて頂きました。今はやりの「オブスキュア・シティポップ」なリゾートミュージックで、
EPO, 大江千里、牧野由依などのプロデュースで知られるプロデューサー、清水信之が手掛けた一曲です。
清水信之自身による鋭い16ビートのカッティング、三四郎によるサックスのロングソロなど、
全体の音作りはややチープでありながら、角松敏生=杏里サウンドに勝るとも劣らぬキャッチーさがあります。
Espesiaや東京女子流などのアイドルポップスの基礎となったのは、こういった曲なのであろうと思われます。

続いて、80年代の山下達郎バンドのコーラスを務めたことでも知られるSSW, ボーカリストの村田和人ソロから、
1986年作から、Jeff Porcaroが作り出したLA的なシャッフルのリズムに、濡れた切ないメロディが絡むスロウ、
土曜日のLinaです。安部恭弘/アイリーンや山下達郎/Morning Gloryと並べて聴きたい佳曲。
プロデュースは前作のSHOWDOWNと共にRonnie Fosterが担当しています。

クワイエットストームを代表するアーティストと言えばAnita Bakerの名前が上がると思いますが、
Anitaや Peabo Bryson, Regina Belleなどのプロデュースで、唯一無二なリッチでジャジーなサウンドを
作り上げたプロデューサーが、Michael J. Powellです。
Michael PowellプロデュースによるシンガーにはMini CurryやこのRodney Mannsfieldがいます。
彼自身は2枚のアルバムを残したのみで、本作は1993年作の1stです。
その他にもTerry Steele(私的名盤放送#59)、Paul Laurence、Buster & Shavoni、Gary Taylorなど
BCMを代表するプロデューサーがこぞって参加しています。
Garry GlennのペンによるM1は特にAnita Baker/Rapture直系のクワイエットストームで、
メロ部分はリムショットで柔らかく、サビに掛けてパワフルに叩く展開の付いたドラムス、
9thの響きが美しいジャジーなコード進行、転調を加えた後半の、畳みかけるようなピアノのバッキングも最高です。

以前にもアキシブ系の名盤として[Core]を紹介した声優、駒形友梨の高橋諒プロデュースによる2nd EP Indigoから
ボーカロイド系の作曲家とゆまによるソウルフルなハーモニーとフュージョン的な複雑なキメのリズムが
加わったシティポップ、ララルハレルヤを選びました。

UK出身のファンクバンド、 Delegationが1982年に欧州だけで発売した5thから、
うねうねしたシンセベースと引き締まったドラムス、ピュンピュン鳴るシンセが堪らない、多幸感溢れるブギー、
What Took You So Longです。アメリカでは1978年にOh Honeyがヒットした一発屋のイメージが強いようですが、
本国、欧州では人気を保っていたグループのようです。Ariolaから発売したEau De Vieは比較的入手しやすいアルバムですので、
是非聴いてみて下さい。グルーヴィーでキャッチーでありながらも、UKソウルならではのすっきりしたテイストがあり、
のちのアシッドジャズを既に予見させる音像だと思います。

オブスキュア・シティポップディスクガイド」に掲載されたアルバムの中から、
最近手に入れたトラックメイカーチームのMO-J TRAXとシンガーのYUKA(長織有加)からなるユニットの
1stフル、1998年作です。全体的にニュージャックスウィング~ヒップホップソウルの間をいくスウィンギーなビートを
基本にしながらも、取り上げたBoogie from the Deskのような、ある種東洋的なメロディが重ねられているのが特徴的です。
極めてスカスカで音数の少ないトラックと、重低音を強調した音のバランスだからこそ成立する、MISA~
宇多田ヒカル1st, 嶋野百恵な90年代邦楽R&Bの味わいです。

角松敏生プロデュースによるシンガー、今井優子の1990年作がリマスター再発されました。
青木智仁(B), 今剛(G), 鈴木茂(G), 村上"ポンタ"秀一(Ds), 斉藤ノヴ(Perc), 数原晋(Flh)など錚々たるメンバーが参加
しています。発売されてすぐ購入したのですが、中々掛ける機会を得られずにおりました。
のちに角松自身もソロアルバムで取り上げるさよならを言わせて ~Let me say good-bye~ です。
全体を覆い尽くすまばゆいばかりの音作りと、どこまでも派手な演出のフィルイン、サビでダンサブルな
ビートへと変化する緩急の付け方など、角松敏生サウンドの真骨頂が楽しめます。Jay Graydonを思い起こさせる
ワイアークワイアーなギターソロも見事です。

タッグを組んできたFoster & McElroy(Club Nouveau, Tony! Toni! Toné!, Alexander O'Neal, Regina Belle, Swing Out Sisterなど)
による、艶消しなサウンドの上物と、細やかで、音色への圧倒的なこだわりを感じるビートがたまらない
ミッドチューンを多数生み出してきたボーカルグループ、En Vogueの2004年作から、
Guyのカヴァー、I Do Love You (Piece of My Love)です。元曲はTR808によるぶっといビートとレイドバックしたリズム、
熱く滾るボーカルの掛け合いのバランスで聴かせていましたが、En VogueのバージョンはTLC/Waterfalls以降な
ヒップホップソウルのマナーを感じる音作りで、エレピやギターのバッキングが加わると70sソウルのような
オールドスクールな質感を漂わせます。

ノースカロライナ州出身のシンガー、Kino Watsonが1996年に発表した1stアルバムから、
レイドバックしたビートと丁寧に重ねられた繊細なコーラスワークが心地良い
絶品のスロウ・ジャム、I'm The Man (Your Mama Been Warnin' You About)です。
プロデュースもセルフプロデュースで行った一枚で、その他にもThe Floaters/Float Onをサンプリングした
オーセンティックなメロウBring It On、Darryl Shepherdとのco-produceによる妖しげなヒップホップソウル、
Body Languageでは乾いたスネアの音色が時代を感じさせます。地味ですが巧みなリードヴォーカルの表現を
堪能できる一枚でした。

今やシティポップのアンセムとなった竹内まりや/Plastic Loveのカヴァーが収録された
女優、歌手の大西結花の1991年作から、イントロのガラスが弾けるような音色のシンセや、
シンプルなベースラインと、突き抜けるリヴァーブ感を備えた暖かなガールポップです。
少し安っぽいホーンのソロはまだフュージョン~スムースジャズの香りを残しています。

ネオソウルが時代の中心と評価されがちな90年代半ば~00年代初頭のR&Bですが、
良く振り返ると、以前取り上げたYours TrulyやA Few Good Men, Brian McKnightなど、
いわゆる「歌唱音楽」としてのソウル/R&Bを表現するアーティストも確かに居ました。
Jason Weaverは1979年生まれ、シカゴ出身の子役上がりのシンガーで(Rahsaan Pattersonも同じく子役上がりですが)、
弱冠16歳にしてリリースされたフルアルバム、Love Ambitionを取り上げました。
Kipper Jones, Booker T.,Rasaan Pattersonなどを手掛けたKeith CrouchやRobin Thicke、J.R. Hutson(Leroy Hutsonの息子)
などがプロデュースを手掛けています。
そのボーカルスタイルは一聴してMichael Jacksonに強い影響を受けたものと分かりますが、
軽やかにビートを乗りこなしながら、巧みな音の止め方を見せる技術に驚かされます。
特にアーバンでジャジーなミッドSo in Loveは印象的なシンセのリフと、遠くに聴こえるストリングス系の白玉、
Sherree Ford-Payneの艶やかなコーラスの対比が最高に美しい。

1976年生まれ、コンプトン出身のシンガー、TQの1998年リリースの1stアルバム(USR&B#122, UK#27)から、
ヒットシングルとなったWestside(USR&B#12, UK#4)を取り上げました。
これも絶品のスロウジャムですが、生演奏によるトラックはMint Conditionの作り出すグルーブを思い起こさせます。

ミズーリ出身のファンクバンド、Bloodstoneの1978年作は心斎橋のGroovenut Recordsで手に入れました。
Winston Monsequeがプロデュース、Al Johnsonがアレンジャーに参加したことで、
アーバンなテイストが強まった一枚になっています。オープンカーに滑り込む女性のジャケットもお洒落です。
You Bring Out The Best In Meは冒頭の鋭いフィルインから一気に引き込まれ、
芯のあるファルセットのリードボーカル、メロディアスなベースラインといい、
レアグルーブに必要な要素すべてが詰まった良曲です。

詳細不明な6人組ボーカルグループ、Sharpの1989年作は、熱田神宮近くのBOOKOFF PLUS 熱田国道1号店で
見つけました。ELEKTRAから発売された一枚で、ニュージャックスウィング的なアプローチの曲が目立ちますが、
その中でもゴスペルライクな豪華なコーラスが映える極上のスロウジャム、Second to Noneを選びました。
一周して、この如何にもわざとらしい音色のシンセベースや、シャキシャキしたカッティングが
お洒落に聴こえるから不思議なものです。

ワシントンD.C.出身の4人組ボーカルグループ、Pure Soulの1995年作も選びました。
En Vogueの件で少し述べましたが、同じくFoster & McElroyがプロデュースに参加しているほか、
Teddy RileyやRaphael Saadiqも参加している辺り、気合の入り具合を感じます。
Teddy RileyとRodney JerkinsによるSomething About The Way That You Doは時代の流行を感じさせる
ヒップホップソウルで、巧みなコーラスとダークで艶消しなハーモニーの組み合わせは安心して聴いていられます。

以前、大塚愛/Strawberry Jamを取り上げた時も、これほどまでにグルーヴィーでキャッチーなJPOPがあったのか、
と再発見した喜びを感じましたが、オブスキュア・シティポップディスクガイドで取り上げられた
この松浦亜弥の2006年作も、まさにそんな一枚でした。
自身の有名曲を生演奏とアーバンな編曲で再録した作品ですが、何曲か新曲も含まれています。
ジャズ/フュージョン系の鍵盤奏者、Ben Sidranらのペンによるアシッドジャズな新録音曲、
Rock My Bodyを選びました。Incognito~BNH直系のタイトなリズムパターンとファルセット混じりの
センシュアルなボーカル表現の細やかさに驚かされます。
その他、ヒット曲LOVE涙色(#3)もグルーヴィーでしっとりとした質感の一曲に生まれ変わっています。
他にもNorah Jones/Don't know whyのカヴァーなど面白い取り組みも多数、隠れた名盤でした。

まだまだ取り上げられていないLP, CDが多数あります、次回もお楽しみに。

前編

中編

後編

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  1. 2020/02/13(木) 16:47:01|
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私的名盤放送第59回 「アーバンブギーとアキシブ系、ガールポップで送る新春2時間スペシャル」

私的名盤放送第59回
「アーバンブギーとアキシブ系、ガールポップで送る新春2時間スペシャル」


私的名盤放送#59 3

私的名盤放送#59 2

私的名盤放送#59 1

「放送アーカイブはこちらから」

M1 マリンスノーの都市 /ブルー・ペパーズ 『Believe in Love / マリンスノーの都市』 (2019)
M2 Are You the Woman /Kashif feat. Whitney Houston 『Send Me Your Love』 (1984)
M3 If I Ever Lose This Heaven /Maxine Nightingale 『Right Back Where We Started From』 (1976)
M4 彼女とTIP ON DUO /今井美樹 『Ivory』 (1989)
M5 MAGIC TIME /スダンナユズユリー 『MAGIC TIME』 (2019)
M6 If You Want Me /Phyllis Hyman 『Living All Alone』 (1986)
M7 オールドファッション /坂本真綾 『今日だけの音楽』 (2019)
M8 This is What We Like /Noora Noor 『CURIOUS』 (1999)
M9 Magazine Lover /Pieces 『Pieces』 (1978)
M10 What About Our Love? /Maysa 『Maysa』 (1995)
M11 Groovelatino /Hiroshima 『Groovelatino』 (2019)
M12 愛の歌 /ゴスペラーズ 『G10』 (1998)
M13 MARINARING /河野万里奈 『水恋』 (2019)
M14 Better Days /The Blackbyrds 『Better Days』 (1980)
M15 For the Love of You /Rafael Cameron 『Cameron All The Way』 (1982)
M16 Why You Take My Love /Nicole 『What About Me?』 (1985)
M17 Lovers /Pieces of A Dream 『Pieces of A Dream』 (1979)
M18 Prisoner Of Love /Terry Steele 『King Of Hearts』 (1990)
M19 気まぐれイニシエーション /Erii 『Cherii♡』 (2019)
M20 Fast Lane /Kool Customer 『Kool Customer』 (2019)
M21 It Seems Like You're Ready /R. Kelly 『12Play』 (1993)
M22 笑顔。 /安野希世乃 『笑顔。』 (2018)
ED My Graffiti /水瀬いのり 『Catch the Rainbow!』 (2019)

【放送後記】
明けましておめでとうございます。12月はレギュラー放送をやれずに過ぎてしまいました。
勤務の忙しさにかまけて放送できずおりました。申し訳ありません。
しかしその間に、2010年代ベストアルバムや、以前より書き溜めていたラーメン名店10選などを編集できましたので、
そちらの方も是非お楽しみ頂ければ幸いです。

加えて、昨年は「私的名盤紹介アネックス」の1年でもありました。休みを見つけては商業施設をめぐり、
東海3県のショッピングモール写真集としては、Web上で見られるもののうち最も多くの施設を収録しているかと思います。
これからも、岐阜県、三重県中部などの商業施設まで足を延ばしていこうと思っております。お楽しみに。

今回は、昨年レコードハンティングのため行ってきた心斎橋と渋谷、下北沢のレコードショップで集めてきたものを
中心に、その他にアキシブ系、シティポップなどを集めてお送りした新年2時間スペシャルです。

VIVID SOUNDからデビューした福田直木さん、井上薫さんの2人組によるAOR~シティポップユニット、
ブルーペパーズのニューシングルを選びました。M1はあえて少しチープに作られた軽めのドラムス
(生ドラムをサンプリングして構築しなおしたNightfly/Donald Fagenのような音作りにも聴こえます)と
Dionne Warwick/For YouでのJay Graydonの作る音世界を思わせるようなリバーブ感とリズムギターのフレーズに
思わずにやりとさせられます。放送に選んだのは、琴のような音色のシンセが使われ、オリエンタルな響きのあるコード感の
佐々木詩織(山下達郎のサポートで知られる佐々木久美さんの娘)さんとのデュエット、M2です。
数多くのAOR~フュージョン系のアーティストのバックを務めたLeland Sklar
(B, James Taylor, Barbra Streisand, Billy Cobham, 松任谷由実、TOTO, Rita Coolidge, David Sanborn etc),
高中正義のサポートで知られる宮崎まさひろ(Ds)、そしてKinKi Kidsのサポートで知られる若手ギタリストの外園一馬などが
参加しています。後半のハーモニカソロは、Stevie Wonderの吹くそれのような美しさです。
アウトロにかけて、佐々木さんのボーカルはソウルフルとなり、その魅力が堪能できます。傑作でした。
2ndフルアルバムの制作が待たれるところです。近年のシティポップ~AOR系のアーティストの中で、
キャッチーさ、メロディの美しさとフックのあるバックトラック、ジャジーで凝った編曲のバランス、演奏のニュアンスの細やかさ、
その全てにおいて、ブルー・ペパーズがトップにいると確信しています。まだアルバムを聴かれていない方は必聴です。
(最近各種ストリーミングにもアップロードされました)

続いては、ブラックコンテンポラリーを代表するプロデューサーであるKashifの全盛期のアルバム、
1984年作から、若き日のWhitney Houstonをフィーチャーした夢見心地のメロウ、Are You the Womanです。
極めてシンプルな構造の楽曲であるにもかかわらず、暖かく優しい気持ちにさせてくれる魔法掛かった一曲です。
後半にかけて派手なスラップベースと音の抜き差しで展開を作るクラブミュージック的な展開も見事です。

UK出身のソウルシンガーで、現代の視点から見てシティソウル、BCM的なアプローチの楽曲も多い
Maxine Nightingaleの1976年作から、元々Leon Ware作の楽曲で、Quincy Jones/Body Heat(1974)に
収録されたIf I Ever Lose This Heavenのカヴァーを選びました。
ワウの掛かったブルージーなリズムギターや乾いたドラムス、切れ味鋭いホーンに、滑らかでどこまでも伸びるボーカルが
朗々と歌い上げる名演です。70sソウルを代表するエヴァーグリーンな作品でした。

続いて、シティポップで、今井美樹の1988年のシングル、彼女とTIP ON DUOを。上田知華と秋元康のタッグによる一曲で、
独特にシンコペートしたリズムの作りなどはフュージョン的なニュアンスがあり、佐藤準(ASKA, 杏里、光GENJI)のセンスに
よるものなのではないかと思います。この時代ならではのコズミックな音作りが堪りません。
スウィンギーなリズムやサビ前の展開はJUDY AND MARY/そばかすにも近い魅力がある一曲です。

雰囲気を少し変えて、LDH所属の女性3人組ダンスボーカルグループであるスダンナユズユリーのニューシングル、
MAGIC TIMEを選びました。アニメ「ガンダムビルドダイバーズ Re:RISE」のEDに選ばれた一曲で、
2000年代の邦楽R&Bを思い起こさせるベルベッドな肌触りのあるトラックに仕上がっています。
最近のボーカルグループではBananaLemon/DOWN的な音作りで、ラップのフロウやハイハットのリズムなどは
現代のトラップの特徴もバランスよく取り入れられていると思います。

そしてディスコクイーンとしてReggie Lucas/MtumeのコンビによるプロデュースのYou Know How to Love Meで
知られるPhyllis Hymanの、1986年にフィラデルフィアインターナショナルから発売されたブラコンの隠れた名盤、
Living All Aloneを取り上げました。LeRoy & Tom Bellが参加する同作からポコポコしたリズムマシンの心地いいA3を。

そして昨年発売された声優/SSWの坂本真綾のニューアルバム、今日だけの音楽から、
the band apartの荒井岳史(Vo, G)作曲、近年では花澤香菜のプロデュースで知られる北川勝利の編曲という
奇跡的な組み合わせによるオールドファッションです。以前のthe band apart提供曲Be Mine!の緊張感あふれる
コード進行からは一変して、ジャジーな造りではありながらも、AOR/シティポップな色合いが増した甘酸っぱい一曲で、
音数は絞られながらも、煌めくエレピのバッキングなどのセンス、ラストサビに掛けて盛り上げていく編曲は
いかにも北川勝利らしさを感じます。少し歪んだギターソロも、敢えて弾き過ぎずで、
チョーキングのニュアンスが最高に気持ちいいです。
他にもMondo Grossoの大沢伸一による、ACOの楽曲を思わせるような、暗くミニマルなM3や、
東京事変の伊澤一葉(Key)によるラテンジャズポップスなM5、
キリンジの堀込泰行と、河野伸(ACO, Crystal Kay, 古内東子、ハロープロジェクト、COSA NOSTRA, SPANK HAPPYなど)の
組み合わせによるスケールの大きなバラードM7,
ゲスの極み乙女の川谷絵音によるプロデュースのM4, M9など、豪華な作家陣が多数参加しています。

一気にモノトーンな雰囲気のヒップホップソウルも。主に00sにNe-YoやRhiannaのプロデュースで、
当時のUSR&Bの最先端のサウンドを作り出してきた、ノルウェー出身の2人組プロデューサーユニット、Stargateの
初期のプロデュース作品から、UAE出身で難民としてノルウェーに住むようになったシンガー、Noora Noorの
ソロアルバムを選びました。極めて調性感の薄く、カズーとうねうねと動くベースラインで作られる重いグルーブが
堪らないヒップホップソウルです。Timberland以降のラテン化が進んだR&Bの時代を予見するサウンドでした。

Jeff Paris(G, Leon Ware, Jeffrey Osborneへの楽曲提供でも知られる)を中心とするスタジオミュージシャンを集めた
グループであるPiecesの唯一作から、哀愁漂うウェストコーストロックなダンサー、Magazine Loverも最高でした。
Michael McDonald的なキーボードのリフをメインにファルセットのコーラス、整然としたリズムが絡む一曲です。

日本で特に人気の高いアシッドジャズバンド、Incognitoのボーカリストとして知られるMaysaの1stアルバムに
収録されている95年発売のシングル、What About Our Love?です。80sソウル~スムースジャズな雰囲気の
イントロに打ち込みのスネアが入り、生ベースの作るグルーブとのバランスが堪らない一曲です。
アシッドジャズとヒップホップソウル, 後のCraig DavidなどのUKガラージの丁度間を行く、絶妙なバランスの編曲でした。

アシッドジャズと並んで日本で人気の高い音楽ジャンルの代表がフュージョン/スムースジャズだと思います。
日系アメリカ人3世のメンバーによってアメリカで結成されたフュージョンバンド、その名もHiroshimaも、
FruitscakeやShakatak, 日本勢ではCasiopea, T-SQUAREなどと並んでいい意味でダサくてキャッチーなフュージョンが
聴けるバンドの一つです。ホーン系のシンセのオブリガートや、一貫して流れるテーマがキャッチーで素晴らしい、
彼らの最新作、Groovelatinoです。

日本のR&B, ゴスペルなどのブラックミュージック受容の歴史の中で、山下達郎~久保田利伸と並んで重要な役割を
果たしてきたといえるゴスペラーズですが、JPOPとしての親しみやすさを保ちながらも、
ブラックミュージックらしいグルーブやハーモニーの魅力を最大限引き出した楽曲たちは、
時代が経っても色褪せない唯一無二なサウンドになりました。
彼らの10thシングル、BOO〜おなかが空くほど笑ってみたい〜(アニメ「はれときどきぶた」のOP)のB面に収録され、
ベスト盤G10に収録された、ニュージャックスウィングなシンセのイントロと少しレイドバックしたビートが
最高に心地良い愛の歌です。
後半ではEmotions/Best of My Loveのフレーズを引用したりと、ブラックミュージックへの強い愛を感じます。
CHEMISTRY/Us(2003)と並んで、JPOPらしい煌めくメロディと、重いアンサンブルが見事に融合した名曲でした。
最近だとクロックワイズ/駒形友梨のアンサンブルにも近いニュアンスを感じます。90sJPOPが残した大切な遺伝子です。

アキシブ系から、1990年生まれのアニメソング系シンガー、河野万里奈のニューシングル、水恋(すいれん)の
M2 MARINARINGです。饒舌なオブリガート、ボイスパーカッションとフィリーなストリングスを組み合わせたシティポップで、
一十三十一/City Diveに収録されていそうな涼しげなアーバンダンサー。

キーボーディスト、プロデューサーとして、フュージョン、ディスコの一時代を作り上げたGeorge Dukeが
手掛けた4人組、Blackbyrdsの1980年作、Better Daysから剃刀のようなドラムスの作るグルーブと
うねるシンセベースのバランスが堪らないブギー、A3を選びました。ディスコ期のGeorge Dukeソロ作がお好きならマストの
レアグルーブです。粘り付くグルーブに満ち満ちています。

フィラデルフィアソウルを代表するグループ、The SpinnersのG.C. Cameronの実弟であるRafael Cameronのソロ作、
Salsoulから発売された1982年作からIsley Brothersの同名曲とは随分と雰囲気を異にしたアーバンブギー、
For the Love of Youです。Michael Jacksonを意識しまくったフェイクやボーカルが時代を感じさせます。

1958年生まれ、ニューヨーク出身のソウルシンガー、Nicole McCloudの1st, 1986年作から
USダンスチャート10位のヒットとなったDon't You Want My Loveです。
映画Ruthless PeopleのOSTに収録されています。Aldo Novaのペンによる1曲で、多幸感溢れるブラックコンテンポラリーです。
Anita Baker/Raptureに収録される楽曲たちをもう少し暖かく明るいサウンドへと振ったようなサウンドで、
Whitney Houstonの大ヒットを予見させる一曲だと思います。ソウルフルなコーラスが入っていますが、
あくまでスクエアなリズムパターンの上に乗っており、踊りやすく大衆に膾炙するバランス感覚が見事です。

Grover Washington Jr.に見いだされたフィラデルフィア出身のクワイエットストーム~フュージョンバンドの
Pieces of a Dreamの1st, 1981年作から、太いベースラインと暖かいエレピのブルージーなバッキングに、
嗄れたボーカルのニュアンスがサザンソウルを感じるスロウ、Loversです。

Luther Vandross, Glenn Jones, Freddie Jacksonらと並んで、ブラコン系シンガーとして隠れた名盤を
残しているシンガー、Terry Steeleの1stアルバム、1990年作からA1に収録されている絶品のクワイエットストーム、
Prisoner Of Loveです。クワイエットストームと言うと、イントロのシンセのフレーズで如何に心を掴むか、
というのが個人的に重要なポイントなのですが、パッド系の音色から始まりホーン系のキャッチーな
リフが入る見事なイントロといい、高過ぎず低すぎずのスムースで力強いバランスの声も最高です。
スタジオミュージシャンにはPaul Jackson Jr.(G), Ray Parker Jr.(G), Freddie Washington(B),
Patrice Rushen(Key), George Duke(Key), Gerald Albright(Alto Sax), Howard Hewett(Chorus)
James Ingram(Chorus), Mic Murphy(ex. The System, CHorus)、Philip Bailey(Chorus)
Leon Ware(Chorus), Phillip Ingram(Chorus)など錚々たる面々が参加しています。
その他、George BensonのIn Your Eyesを思わせるようなミッド、DeliciousではPatrice Rushenのバッキングが見事です。
Jam & LewisがプロデュースしていたAlexsander O'Nealの諸作を思わせるTR808サウンドなYou Fixed The Woundなど、
アーバンでメロウなクワイエットストーム満載の傑作です。心斎橋のレコードショップ、Rare Grooveで見つけて即買いしました。
他にもCCM系やシティポップなどもツボを押さえた品揃えで、最近訪問したお店の中でも特にお気に入りのお店でした。
神保町のラバーガードレコードイーストレコード、浜松市のSoul Clapなどと並んで、AOR, BCM, 80sソウル好きには
おすすめのお店です。

千葉県出身の声優、1997年生まれの山崎エリイのErii名義での1stEPから、宮川弾(ex. ラヴ・タンバリンズ)のペンによる
一十三十一&クニモンド瀧口のタッグを思わせるようなアーバンミッド、気まぐれイニシエーションです。
もう一つ、アキシブ系ではFlying Dog系の女性声優、シンガーの安野希世乃(『冴えない彼女の育てかた』加藤恵役など)の
2nd EPから表題曲の笑顔。を選びました。花澤香菜に始まり、伊藤美来、駒形友梨、斉藤朱夏など、90s-00s JPOPの
美味しい部分を見事に抽出したうえで、アニメソングとしてのキャッチーさも兼ね備えた、優れたポップスが百花繚乱の
様相を呈しています。表題曲の笑顔。は、ややスロウでリゾートミュージック然としたトラックに、
気怠い表現のボーカルがたまらなくスムースなシティポップです。サビ部分では繊細な多重コーラスと、
岩崎宏美/Street Dancerを思わせるエレガントなメロディが素晴らしい。他にも、SMAPの90sを支えた
作曲家であり、JPOPのメインストリームにブラックミュージックのエッセンスを取り入れてきたコモリタミノルの
ペンによるホーンの派手なアレンジが楽しいM1, EPOによる爽やかでシンプルなM2,
渋谷系とメインストリームのポップスを繋ぐ位置にいた堂島孝平によるWonder Shotは、
北川勝利の編曲と合わさると、水樹奈々のElements Garden期を思わせるような高揚感溢れる一曲に仕上がっています。
そのほか、鈴木祥子(松田聖子、Wink、吉村由美(PUFFY)などへの提供で知られる)による
ジャジーなバラードM5は、Al Greenのような枯れた、シンプルなリズムパターンと、
今にも消えてしまいそうなファルセットで繊細に歌うボーカル表現が完璧にマッチしたM5かすかなかなしみ、
ポスト渋谷系、アキシブ系を代表する名曲と言える花澤香菜/恋する惑星を生み出した、
岩里祐穂&北川勝利の最強タッグによるM7ロケットビートなど、上質で丁寧に作り込まれた
ポップスが詰め込まれた佳作だったと思います。

LA出身のトラックメイカー、トークボックスプレーヤーのB. Bravo, シンガーのRojaiの2人組による
ユニット、Kool Customerの最新作、セルフタイトルから、TuxedoのサウンドをよりZapp的なエレクトロなサウンドへと
傾け、モダンな音作りを適所に加えて作り上げたブギー、Fastlaneも取り上げました。
Midas Hutch, Le Flex, Tuxedoなどと合わせて、80sブギー再評価の重要なアーティストとなっていくのではないでしょうか。

そして、終盤には90s以降のR&Bのサウンドに最も大きな影響を与えたR.Kellyのソロ名義としての
1stアルバム、1993年作から、USR&Bチャート29位となった、蕩けるようなスロウ、It Seems Like You're Readyを選びました。

最後には、昨年発表された水瀬いのりのニューアルバムから、嵐/Love so sweetのB面、いつまでもでデビューし、
AKB48/ポニーテールとシュシュの作曲でも知られる多田慎也と島田尚のタッグによる壮大なアレンジのストリングスと、
デビュー以来成長を遂げた、伸びやかに張り上げる地声と透明感溢れるファルセットのバランスが素晴らしいボーカルが、
切々と歌うメロディの美しさといい、アルバム(Catch the Rainbow!)の最後を飾るにふさわしい傑作でした。
今年初めて参加するツアーも楽しみです。

長くなってしまいましたが、新年を飾るにふさわしい佳曲をたっぷりと取り上げた2時間、いかがでしたでしょうか。
年間ベストアルバムのほか、レギュラー放送も取り組んで参ります。

私的名盤紹介/私的名盤放送/私的名盤紹介アネックスを今後とも宜しくお願い申し上げます。








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  1. 2020/01/28(火) 11:14:00|
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私的名盤放送第58回「歌唱音楽としての90sR&B特集、女性声優特集」

私的名盤放送第58回「歌唱音楽としての90sR&B特集、女性声優特集」

私的名盤放送#58 1

私的名盤放送#58 2

「放送アーカイブはこちらから」

M1 ヤングアダルト /マカロニえんぴつ 『season』 (2019)
M2 Gorgeous /ZOO 『Gorgeous』 (1992)
M3 Up, Down /Jamm 『Jamm』 (1988)
M4 BITTER /西恵利香 『Love Me』 (2019)
M5 星のステージ /戸松遥 『Sunny Side Story』 (2013)
M6 見えないもの /SMAP 『朝日を見に行こうよ』 (1999)
M7 A Thang for You /A Few Good Men 『A Thang for You』 (1994)
M8 パパパ /斉藤朱夏 『パパパ』 (2019)
M9 You Lift Me Up /Dayton 『Cutie Pie』 (1981)
M10 My Desire /Lo-Key? 『Back 2 Da House』 (1994)
M11 More Than You Know /Dunn & Bruce Street 『Official Business』 (1982)
M12 A Melody of Hope /福冨英明 『Melodies of Hope』 (2003)
M13 I LOVE YOUR LOVE /Negicco I LOVE YOUR LOVE (2019)
M14 Gotta Get Back with You /Mind, Heart & Soul 『Mind, Heart & Soul』 (1995)
M15 Baby Come Back /Mosley & Johnson 『Mosley & Johnson 』 (1987)
M16 みっつ数えて /彩恵津子 『All I Need』 (1984)
M17 MILKY WAY /HALLCA(冨永悠香 ex Espesia) 『VILLA』 (2019)
M18 Baby Check Your Friend /Silk 『Tonight』 (1999)
M19 Waning Moon /Mellow Mellow 『Waning Moon』 (2019)
M20 Come and Get It /Yours Truly 『Truly Yours』 (1991)
M21 青空のラプソディ /fhána 『World Atlas』 (2018)
M22 Time! /障子久美 『Time!』 (1993)
M23 It's Heaven /駒形友梨 『[Core]』 (2018)
M24 ク・ルリラビー /柊かえ&本城香澄(KiRaRe) 『KiRaRe1stアルバム「キラリズム」』 (2017)
M25 She's Gone /Paul Laurence 『Underexposed』 (1989)

【放送後記】
また前回の放送から1か月余りが経ってしまいました。いかがお過ごしでしょうか。
だんだんと日も短くなってまいりました。相変わらず救急科での勤務が続いており、昼夜逆転の日々が続いています。
12月頭からは再び通常の勤務体制に戻り、内科専攻医としての日常が戻ってまいります。

しかし再び病棟主治医としての責任を負う役割になりますので、気が休まらない状態が続きます。
年末も待機、当直などがありますが体調を崩さないように頑張りたいと思います。

さて、久々の放送でしたので、2時間たっぷりと楽曲中心にお届けいたしました。
タイトルの通り、USR&Bが最も輝いていた90年代のバラードを中心に、深夜の時間に合った選曲をしてみました。

1曲目には2012年に神奈川県で結成されたロックバンド、マカロニえんぴつの5thEPから
ザクザクした単音リフと淡々としたリズムから、字余り気味に歌う歌詞は最近のあいみょんのスタイルに近いものを感じる
ヤングアダルトを選びました。かつてのAqua Timez/虹やフジファブリック/若者のすべてを
思い出させてくれるような甘酸っぱいサビが最高です。

EXILEや中西圭三(セルフカバー)などのバージョンで知られる"Choo Choo Train"の一発屋と言われてしまいがちですが、
当時流行のNJSをJPOPに取り入れた代表的なダンスボーカルグループ、ZOOの92年作EPから、
鋭いドラムンベースなイントロと大仰なホーン音色のシンセが多幸感あふれるスウィンギーなトラックです。

クワイエットストームではディスコグループ、Arpeggioのメンバー、Fred Sawyersと
Fredi Grace And Rhinstoneで活動していたKeith Rawlsの2人組ボーカルグループ、Jammの1988年作から
BCMからニュージャックスウィングへと移り変わる時代を感じさせるUp, Downを選びました。
シンセの硬く透き通ったコードバッキング、音数の少なさがこの時代特有の暖かみを与えます。

埼玉県出身のシンガー、タレント、アイドル(AeLL.のメンバーとして活動)の西恵利香(1989-)の
今年発売されたフルアルバムLove Meから、最近はやりのElla Mai/Bod Upを彷彿させる
クワイエットウェイブ、Bitterを。作家にはMONJOE(DATS)、shin sakiura、Mori Zentaro、PARKGOLFなどを迎えています。

最近結婚したばかりの声優、戸松遥の2013年の2ndソロから、flumpoolや、近年ではAimerの楽曲で
主にアレンジャーとして活躍する古川貴浩のペンによる星のステージです。
豪華なホーンのアレンジとフュージョン的なドラム、素朴なボーカルが可愛らしい爽やかな一曲です。
サビの多重コーラスやフィリーソウル的な展開が女性声優のソロアルバムにはなかなかないテイストでした。

SMAPの99年のシングル、朝日を見に行こうよのB面見えないものです。8cmシングルでしか聴けない少しレアな楽曲です。
イントロ部分から非常に生々しいキーボードのリフ、アシッドジャズ的なリズム構成が少し懐かしい。

90年代R&Bを語るうえでは絶対に外すことのできない偉大なプロデューサー、Babyfaceプロデュースにより
94年にLa Faceからデビューしたボーカルグループ、A Few Good Menの1stフルから表題曲のA Thang for Youです。
少しダーティーでヒップホップソウルの影響下にあるビートと、
ゴスペル直系の分厚いコーラスが絡みつく絶品のスロウジャムです。

放送中のテレビアニメ、「俺のこと好きなのはお前だけかよ」のOPテーマとなった女性声優、斉藤朱夏の
ニューシングル、「パパパ」も最高にキャッチーでした。デビューシングルとなった「くつひも」はaikoの楽曲を思わせるような
バックの演奏が印象的でしたが、同じチームで制作されていて、全体の音のバランスは近いものを感じさせます。
4つ打ちのイントロから複雑なフィルインを繰り返し重い8ビートを刻むドラムスが最高に気持ちいいです。
まだフィジカルが手に入っておらずPersonnelが不明ですが、フレーズの組み立て方は佐野康夫さん的だといえると思います。
しかし音作りはもう少し低域の出た重いタッチです。
2番からは部分転調を加えたり、メロディーもトリッキーなリズムでソロデビューしたばかりのシンガーにはかなり難しい
曲かと思いますが、見事に歌いこなしていて将来が楽しみです。

名前の通りオハイオ州デイトン出身のファンクバンド、Daytonの1981年作から、ヘヴィーなリズムに
滑らかなストリングスと柔らかいコーラスが被さったメロウなYou Lift Me Upを選んでみました。
間奏部分のピアノソロはジャジーな感触もあり、ごりごりのファンクが苦手な方でも楽しめるかと思います。
もともとはSunというファンクバンドとして活動しており、David Shawn Sandridge, Chris Jonesらがこの
Daytonを結成したようです。SunのアルバムもLPは高騰していますが良盤揃いです。またお掛けしようと思います。

続いて少し時代を進めて、Lo-Key?はJam & Lewisが立ち上げたレーベルのPerspective Recordと契約し、
デビューアルバムを発表した4人組のボーカルグループです。メンバーのLance AlexanderとTony "Prof-T" Tolbertは
作曲家としても活躍しており、Alexsander O'Neal/Love Makes No SenseやNext, Shanice/I Wish, Smooth/Strawberries
などを手掛けたことでも知られています。彼らの94年作、2ndからポコポコしたリズムマシンと
ぶっとく重低音の太いシンセベースに柔らかいファルセットが絡みつく、ヒップホップソウル以降の感覚がある
スロウジャムです。後半のギターソロや、かすかに聞こえるシンセのリフレインはChris Jasperのようなセンスを感じさせます。
商業的にはヒットしなかった作品ですが、良質なベッドタイムR&Bが数多く収録されています。

ファズの掛かった荒々しいギターソロから始まるブギー、Dunn & Bruce Streetの唯一作、82年作からOfficial Businessを
選びました。Dunn Pearson JrとBruce Grayの2人組で、現在のTuxedoなどにいかにも影響を与えていそうな
B2Shout for Joyや、甘茶ソウル的なこみ上げるメロウ、A1If You Come With Meなど、良質なトラックが並ぶレアグルーブです。

最近、金山のSOUNDBAYで見つけたアルバムでは、1963年生まれのシンガー、キーボーディスト、
福冨英明の2003年作のフルからアシッドジャズ~ジャズボーカルの間を行くファンキーな
M1A Melody of Hopeも素晴らしかったです。Original Love/スキャンダルを思わせる性急な16ビートと
ソウルフルでスモーキーな太いボーカルが圧倒的な存在感を放っています。

新潟県出身のアイドルグループ、Negiccoの最新シングルについては最近のレビューで書きましたので
そちらをどうぞ。

90年代はMotownにとって不遇の時代でしたが、その中でも「本物の歌唱力」を持った大人のためのグループを
いくつかデビューさせていました。Mind, Heart & Soulはそんなグループのうちの一つで、4人組の
男性ボーカルグループです。唯一作となった1995年作から80sのブラックコンテンポラリーの香りを残したクールなキメから
始まるM1を取り上げました。Jermine Jacksonに才能を見出され、自身もMotownでソロアーティストとして
活躍したMichael Lovesmithがプロデュースを務めています。フロントマンのDaveon Overtonによる
圧倒的な伸びを見せるハイトーンが炸裂しています。

少し時代が前後しますが、91年にMotownからデビューし、Ricky Jonesが所属していた3人組ボーカルグループ、
Yours Trulyも、BCMの流れをくむオーセンティックなR&Bを指向したグループでした。
彼らの唯一作となった1stフルから、16ビートの少しハネたシンセのリフレインが
Remind Me/Patrice Rushen的なグルーブを生み出すメロウなニュージャックスウィング、
Come and Get Itを選びました。ほかにも夢を見るような繊細なファルセットがたまらないクワイエットストーム、
M2I Wanna Make Love To You, 女性シンガーのDionnaをフィーチャーした、Keith WashingtonやFreddie Jacksonの
ソロ作に負けずとも劣らぬM6Gonna Miss The Oneなど、都会の夜にぴったりなバラードが並ぶ名盤です。

Staxの流れを汲み、80年代のサザンソウルレーベルとして知られるMalacoでソングライターとして活動していた
2人組、Mosley & Johnsonの87年作から、George Benson/Turn Your Love Aroundや
Michael Jackson/Baby Be Mineを思わせるブラコン必殺のコード進行なブギー、Baby Come Backを選びました。
いかにもサザンソウルな泥臭いボーカルも、アーバンなトラックと合わさって聴きやすく仕上がっています。

「LIGHT MELLOW 和モノ669 / SPECIAL」、「JAPANESE CITY POP」、吉沢dynamite.jp監修「和モノ A TO Z」に
掲載されたシティポップの人気作、彩恵津子の85年作も東京遠征で手に入れました。
角松敏生のバックコーラスとしても知られる彩恵津子の本作はLAレコーディングで、
Tim Weston(G), Carlos Vega(Ds), Bill Champlin(Chorus)などが参加しています。
桐ヶ谷仁のペンによるキュートなミッド、みっつ数えてをどうぞ。
その他、BUZZの東郷昌和や笹路正徳、岸正之などが参加しています。見つけたら即買いです。

解散してしまった大阪市堀江出身のアイドルグループ、Espesiaは、リゾートミュージック~シティポップリバイバル、
Vaporwaveなどの影響を受けた楽曲を時代に先駆けてリリースしていました。
解散後、ソロ活動で活躍しているメンバーもおり、脇田もなりさんは特にAOR、NJSなどから影響を受けたJPOPを
生み出しており、VIVID SOUNDから数作、作品をリリースしています。私的名盤放送でも何曲かお掛けしております。
Espesiaのリーダーだった冨永悠香さんもソロ活動を続けており、1stフルを発表しています。
HALLCA名義のアルバムから、グロッケンのようなシンセや、フリューゲルホルンのゆったりとした
バッキングが心地よいクワイエットウェイブ、Milky Wayを取り上げました。
アレンジャーではEspesia時代から協力してきたPellycolo、Rillsoulなどのアレンジャーが参加しています。
今年のアイドル系ポップスの中でも特に見事な完成度の一枚だったと思います。
かつてのEspesia時代の楽曲がお好きな方は必聴です。

同じくアイドルポップスでは2018年にデビューしてからグルーヴィーなディスコ~JPOPを生み出している
3人組、Mellow Mellowの最新シングル、Waning Moonも素晴らしかったです。
Jackson 5/I Want You Backな進行を軸にして煌めくJPOPへとアレンジする手法は、
星野源/Sunや亜咲花/Shiny Daysにも通ずるものがあります。
明るくもどこか淋しく切ない香りがする、不思議な一曲です。
前作のDear My Star収録のNJSなC/W, Trap of Loveも見事なトラックでした。(過去回で放送しています)

90年代のR&Bを代表するプロデューサーというと、Jam & Lewis, Babyface, Teddy Riley, R Kellyなどということに
なるでしょうが、Keith Sweatももちろん忘れてはいけません。
アトランタで結成された5人組ボーカルグループ、Silkも彼によって見出されました。
1999年作の3rdから柔らかなコーラスと複雑なメロディを見事に歌いこなす
ダークなスロウジャム、Baby Check Your Friendです。

京都アニメーションの楽曲にはポップ&キャッチーなテーマソングが無数にありますが、
その中から「小林さんちのメイドラゴン」のOPとなったLantis所属のポップロックバンド、fhanaの2017年のシングル、
青空のラプソディです。ドラマティックなストリングスが前面に出るサビ、ディスコビートにぶりぶりとした
ベースラインが目立つイントロ、目まぐるしく展開が変化する、まさにアニソンだからこそ
出来る壮大な名曲です。アニメも最高でした。

フォロワーの@telepath_yukariさんに教えて頂いた、
松任谷正隆に見出されたレアなシティポップ系SSW, 障子久美の93年作のシングル、Time!も素晴らしかったです。
広瀬香美/GROOVY!(本間昭光プロデュース)を思わせるようなディスコからの影響も感じられる楽しげなトラックです。
今聴くと少しチープな録音ではあるものの、古内東子的なジャズ由来のコード進行も適度に加えながらも、
複雑になり過ぎない塩梅が素晴らしい。木村恵子、具島直子などと合わせて是非どうぞ。

最近、アニメソング、アキシブ系、Flying Dog系のアーティストを沢山教えて頂いている
@jamuireijiさんに教えて頂いた、スペースクラフト所属の女性声優、駒形友梨のソロ1stミニアルバム、
[Core]から滑らかな邦楽シティポップ~アシッドジャズなIt's Heavenを選びました。鋭いカッティングとうねるベース、
クラビネットのリフを組み合わせるセンスは、声優さんのソロアルバムではなかなか見られないと思います。
しかしながらメロディは非常にポップで、後半の歌のメロディを変奏したピアノソロも見事です。最高。
その他にも、ブルーペパーズ/6月の夢に負けずとも劣らぬ滑らかなグルーブで満ち満ちたAORのクロックワイズは、
後半のブラジリアンなフルートソロやギターソロも含めて見事な編曲です。
クリスマスソングなストリングスの豪華なオールディーズな香りもするポップス、Talk 2 Nightは、
槇原敬之や竹内まりやの90年代の傑作群を思わせるようなオーセンティックなJPOPです。これも息をのむほど美しい。
2ndEPはまだ配信が解禁されていないようで、早速購入しようと思います。

ポニーキャニオンとコンプティークによる女子中学生アイドルを描いたメディアミックス作品の
Reステージ(アニメは今年の夏放映していたようです)内のアイドルグループ、KiRaReの1stフル、
「キラリズム」から、トランスやハウスに影響を受けた90sJPOPをそのままに蘇らせたような
ク・ルリラビーです。イントロのオリエンタルなシンセリフとコケティッシュなボーカル、
TR909のような歯切れのいいドラムマシン、うねうねしたコードバッキングが心地いいブギーです。
1番終わりのシンセソロから2番の始まり部分は少しモーダルな質感があって、これも憎い演出です。

最後には、 Freddie Jackson/Rock Me Tonight(Jacksonとはデュオ名義で活動していました)
, Stephanie Mills/(You're Putting) A Rush on Me,
Meli'sa Morgan/Do Me Baby、その他Evelyn KingやLilo Thomasなどを手掛け、
ブラックコンテンポラリーの一時代を築き上げたハーレム出身のプロデューサー、Paul Laurence(1958-)の89年作のソロ、
Underexposedから絶品のクワイエットルーム、She's Goneを取り上げました。
シンセのキャッチーで耳から離れないリフ、センシュアルで囁きかけるようなファルセットのボーカル、
端正で音数の少ないリズムとシンプルなサビと、クワイエットストームの魅力が凝縮されたトラックです。

得意のスロウジャム、クワイエットストームと女性声優ソングをたっぷりと2時間お届けした
私的名盤放送第58話、いかがでしたでしょうか。次回は手に入れたアナログや新譜なども多めに絡めて
お送りしようと思います。良い夜を。









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  1. 2019/11/16(土) 02:11:30|
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私的名盤放送第57回「現代AOR, クワイエットストーム特集」

私的名盤放送第57回「現代AOR, クワイエットストーム特集」

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「放送アーカイブはこちらから」

M1 Always Love You /Ole Borud 『Outside The Limit』 (2019)
M2 守りたいもののために /伊藤美来 『PopSkip』 (2019)
M3 Just Let Me Love You /Stroke 『Stroke』 (1985)
M4 Baby, You Belong to Me /Magic Touch 『Baby, You Belong to Me』 (1973)
M5 Freezing Midnight /高尾直樹 『A Voice of Love & Peace』 (2000)
M6 Lock Me Up /Robert Winters and Fall 『L-O-V-E』 (1979)
M7 Don't Stop /Dr. York 『New』 (1985)
M8 ターミナルセンター /春野 『CULT』 (2019)
M9 Never Gonna Give You Up /Kere Buchanan 『Goodbye Yesterday』 (2014)
M10 Get At Me /Smooth Approach 『You Got It』 (2000)
M11 Special Part of Me /Lloyd Price 『The Nominee』 (1978)
M12 Lines /Norman Saleet 『Here I Am』 (1982)
M13 流星タクシー /ベルマインツ 『流星タクシー/ケセラセラ』 (2019)
M14 You /Billy Preston 『Late At Night』 (1979)
M15 エゴアイディール /水樹奈々 『SMASHING ANTHEMS』 (2015)
M16 リフレイン /浜崎容子 『BLIND LOVE』 (2019)
M17 Right from Wrong /Henrik Hansson 『Right from Wrong』 (2018)
M18 Give A Little Love to Me /Maxine Nightingale 『It's A Beautiful Thing』 (1982)
M19 Would You Please Be Mine /Rose Royce 『Golden Touch』 (1980)
M20 Love Me All My Life /Cool'r 『Cool'r』 (1989)
M21 ジャンクション /あっぷるぱい 『あっぷるぱい』 (2012)

おまけ30分
M22 ラッキー・ガールに花束を /山下達郎 『SONORITE』 (2005)
M23 Part Time Kiss /SMAPPIES 『SMAPPIES - Rhythmsticks -』 (1996)
M24 あつい気持ち /One Step communicate 『あつい気持ち』 (1996)
M25 こわれそうよ /ACO 『Lady Soul』 (1998)

【放送後記】
またしばらくぶりの放送となりました。いかがお過ごしでしょうか。
来月末日まで救急科での勤務が続くため、相変わらず不規則な生活が続いております。
今回の放送は、主に90年代以降のAORとクワイエットストームを中心に取り上げました。

80年代のAOR全盛期が過ぎると、CCM系のアーティストが優れた作品を残しましたが、
メインストリームとしてのAOR人気は落ち込んだ時期が続きました。
90年代末からは、北欧で一部メロディックハードロック、AOR系のアーティストが現れるようになりました。

Ole Borudはノルウェー出身のSSW/ギタリストで、構築的な楽曲と卓説した演奏力、ライブパフォーマンスで、
何度か来日公演もこなしている、北欧AORの代表的なアーティストの一人です。
今年リリースされたニューアルバムからタイトなリズム隊と、Steely Dan以降のジャジーなコード進行の中にも
スリリングなホーンはEWF的で、スピード感あふれるAlways Love Youを選びました。
ギターソロ前の展開はTOTO直系のキーボードのバッキングが素晴らしいです。
その他にもBCM的なアプローチの楽曲もあったりと、飽きさせない造りです。名盤。

北欧ではありませんが、ニュージーランド出身のドラマー、プロデューサーのKere Buchananも、
希少な現代のAOR系アーティストかと思います。ドラマーとしてはJeff Porcaroからの影響を強く感じさせるタイム感ですが、
より80年代後半のスムースジャズにも繋がるようなプレイです。
Steely Dan, TOTOからの影響を公言する一方で、楽曲はよりブラックミュージックよりのものが多く、
2014年作の2ndからBill Champlinをゲストに加えたNever Gonna Give You Upを選びました。
多重コーラスによるイントロから始まり、シンプルな8ビートのリズムパターンでありながら、
鋭いハイハットの刻みで緊張感をもたらしています。80年代のRod Tempertonの楽曲を思わせるタイトさですが、
Bill Champlinのボーカルが加わることで黒過ぎない出来になっています。

マイナーなアーティストでは、おそらく名前から北欧出身と思われる仙台在住のSSW, Henrik Hanssonの
唯一作と思われるシングル、Right from Wrongです。詳細は全く不明ですが、録音状態などから
自主制作と思われるものの、楽曲自体はさきほどのKere Buchannanに通じる、
Steely Danフォロワー好きには堪らない一曲です。Bernard Purdieの得意としたシャッフルのリズムパターンに
音数少ないピアノ、ディストーションギターのバッキングが組み合わさった透明感ある一曲です。
音のテクスチャーと合わせてJay Graydon/Airplay for the Planetにも収録されていそう。

以前にも紹介した声優、伊藤美来の2ndフル、PopSkipからとびきりAOR/シティポップ色の強い「守りたいもののために」です。
シタールのオブリガートと細やかなドラムスの作るゆったりとしたグルーブ、
松任谷由実/中央フリーウェイを思わせるサビの展開(いつものわたしさん@karonsenpaiからご指摘頂きました)に、
彼女のキュートなボーカルが載り、ソウルフルなブラスの組み合わせで現代的な音にアップグレードされています。
ラストサビの直前の部分は平井堅/片方ずつのイヤフォンのような90sポップスの香りも感じさせます。
本作は、今年の聴いてきたアルバムの中でも抜群におすすめの一枚です。昨年の早見沙織/Junctionに負けずと劣らぬ傑作。

続いてはRose Royce, Jean Carneなどの作品をリリースしたOmni Recordsから発売された
詳細不明の男女混成5人組のボーカルグループ、Strokeによる1985年作のセルフタイトルから、
イントロのハーモニカを思わせる安っぽいシンセリードのフレーズ、シンプルな繰り返しのサビ、切ないメロディと、
完璧なクワイエットストームの一曲です。

中高生時代から聴き続けている山下達郎さんのサンデーソングブックですが、最近になってDiscogsで
レコードを買い漁るようになり、達郎さんが掛けているレコードたちが如何にレアなものが多いのか思い知らされています。
今回は、詳細不明のボーカルグループ、Magic Touchが唯一リリースした1973年作のシングル、Baby You Belong To Meを
手に入れました。甘く蕩けるファルセットボーカルに、スネアのタメの効いたフィルインを起点にして、
流麗なストリングスが包み込むサビへつながっていくスウィートソウルです。

さらに、デトロイト出身の鍵盤奏者、シンガーのRobert Wintersによるグループ、Robert Winters and Fall
も山下達郎レコメンド(アルバムMagic Manをサンデーソングブックで取り上げたようです)ですが、
今回は1982年作のL-O-V-Eから、クラップの入った、スラップベースの粘り付くブギー、Lock Me Upを選びました。
リズムパターンはシカゴソウルに代表的なそれですが、メロディアスなベースラインと鋭いホーンが
合わさってシティソウルな1曲に仕上がっています。

続いてニューヨーク出身のシンガー/プロデューサーのDr.York、1985年作からKashifがプロデュースを務めた
アーバンダンサー、Don't Stopも最高です。シルキーなストリングスと爽やかなコーラスを中心にしたフック、
時代を感じさせるシンセのリフレインなど、Michael Wycoff, Starship Orchestraなどに近い
重いグルーブに満ちた一曲です。軽いサウンドになりがちなこの時代のBCMの中でも異彩を放ちます。

ボカロPとしての活躍でも知られるトラックメイカー/SSWの春野による春野名義の1stEP、CULTから
リードトラックのターミナルセンターです。Vaporwave~最新のローファイヒップホップの影響を受けた、
ぼやけたテクスチャーのエレピと、生々しいリズムマシンの組み合わせが都会の夜を思わせるトラックです。
メロ部分の展開は歌謡曲的な懐かしさがありながら、BCM的なサビのハーモニーへと繋がる、
現代版クワイエットストームの佳作だと思います。Nujabesなど好きな方には堪らないサウンドだと思います。

続いて、R&Bではオハイオ州クリーブランド出身の4人組コーラスグループ、Smooth Approachの00年作, 2ndから
Isley Brothers/For The Love Of You~アメリカ大好き!/今田耕司(tofubeats/流星とも言いますが)
を思わせるシンセのリフを中心として、当時流行りの変則ビート、
NJSに多く使われるホーンのSEを加えたスロウジャム、Get At Meです。
本作のヒットでO'Jays, Zhane, KCi & Jojoとの共演を果たしますが、グループとしては短命に終わることとなりました。

1933年生まれ、ルイジアナ州出身のベテランシンガー、Lloyd Priceの1978年作からフィリーソウル全盛期の
サウンドそのままなダンサー、Special Part of Meも最高です。この時代ならではの生演奏の分厚さを楽しめます。

Air Supply/Here I Amをプロデュースしたことで知られるプロデューサー、/SSWのNorman Saleetによる
唯一のソロ、1982年作から、TOTO直系な熱くハードなギターソロが見事なLinesです。

関西学院大学の軽音サークルでMr. ChildrenやBUMP OF CHICKENの非常にハイクオリティなコピーをされているのを
発見し、見つけ出したバンド、ベルマインツは、ここ最近の邦楽ポップス~ロックの中でも特にお気に入りです。
Gt/ボーカルを務める盆丸一生さんの耳から離れない個性的なトーンの伸びやかなボーカルと、
シャキシャキしたカッティング、角松敏生以降のシティポップ/リゾートミュージックの香りも漂うシングル、
流星タクシーは一押しです。先日新たにEPをリリースしており、ブルー・ペパーズと並んで今後の活躍が楽しみです。
デビュー間もないのにも関わらず自身のサウンドを確立していて、スロウのB面ケセラセラではジャリ付いたギターを
バックにフォーキーなサウンドと、正統派JPOP/ロック復権の兆しを感じさせます。

「5番目のビートルズ」とも呼ばれ、Rolling Stones, Ray Charles, Sam Cooke, King Curtisなど
数多くの大物のバックを務めた鍵盤奏者、シンガーのBilly Prestonが1979年にMotownからリリースしたソロから
Gloria Jonesと共作のこみ上げる切ないメロウグルーブ、Youを選びました。David T. Walker(G), Paul Jackson Jr.(G),
Chuck Rainey(B), James Gadson(Ds)などが参加しています。シンプルなフックが繰り返される構造ですが、
メロディアスでモコモコとしたベースラインや枯れたギターソロで飽きさせません。

水樹奈々さんの楽曲からは、2015年作のSMASHING ANTHEMSより自身による作詞/作曲のテクニカルフュージョン、
エゴアイディールをどうぞ。上松範康作曲のNext Arcadiaに次ぐ演奏難度の高いトラックですが、
ライブでも完璧な再現度でただただ驚かされます。

ニューウェーブ、テクノポップを基調として様々なテイストの楽曲を残している
2人組音楽ユニット、アーバンギャルドのボーカリスト、浜崎容子の最新ソロアルバムも取り上げました。
角松敏生プロデュースでありながら、アーバンギャルド特有の暗く陰鬱な空気を残した独特なサウンドに仕上がっています。
森俊之(Key), 鈴木英俊(G), 本田雅人(Sax)などのほかに、
山内薫(B), 荒山諒(Ds, Jacob Collier, 寺井尚子、中島美嘉etc)など角松敏生のレコーディング、
ライブサポートで関わるスタジオミュージシャンが複数参加しています。
インストBCM~マシンファンクといったイントロから始まり妖艶なAメロへ移っていくバイブルは特に不思議な一曲。

何度かお掛けしているUK出身のシンガー、Maxine Nightingaleの1982年作(USR&B#35)から
ポップで多幸感溢れるアーバンブギー、Give A Little Love (To Me)です。曲ごとのクレジットは記載されていませんが、
James Gadson(Ds), Ed Greene(Ds), Cornelius Mims(B), Bob "Boogie" Bowles(G)などが参加しています。
良い意味で黒過ぎないすっきりとしたグルーブ、コケティッシュなボーカルの組み合わせが
UKソウルらしい爽やかさを生み出しています。これも名盤です。
以前お掛けしたGemini/Risingなどと並べて楽しみたい一枚です。

サイケデリック・ソウルと言われた1970年前後のTemptationsをプロデュースしたことで知られる
Norman Whitfieldがプロデュースした代表的なグループが、LA出身のRose Royceです。
彼らの1980年作からKenny Copelandの圧倒的な声量の太いファルセットで聴かせるメロウ、
Would You Please Be Mineを取り上げました。
その他にもUS Pop, R&Bで1位となった標題映画のタイトルソング、Car Washや、
BeyoncéのカヴァーしたWishing on a Starなどを収録した傑作です。

最後には2010年に結成されたインディーポップバンド、あっぷるぱいのセルフタイトルです。
SUGAR BABEが演奏しそうな楽曲をコンセプトとして、タイトルからサウンドの全てまで
当時に近づけた愛を感じる一枚です。ジャンクションはパレードを思わせるイントロ、本家よりも
もう少しジャジーなハーモニー、ウォーキングベースで彩る涼しげなトラックです。

おまけの30分では、管理人のこれまでの音楽遍歴を振り返りながら、「昨今のストリーミングサービスについて」、
思うところを気ままにお話ししました。

先日は名古屋市内のハードオフを回ったり、都内へ買い出しへ出かけたりと新たにアナログレコードを
掘り起こしておりますので、放送に反映できればと考えております。次回もお楽しみに。

前編

中編

後編

おまけ


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  1. 2019/10/25(金) 11:48:19|
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私的名盤放送第56回「録り溜めシティポップ、ブラコンで棚から一掴み」

私的名盤放送第56回「録り溜めシティポップ、ブラコンで棚から一掴み」

私的名盤放送56回1

私的名盤放送第56回2

CHEMISTRY.jpg

Collage.jpg

M1 If You're Ready /Beau Williams 『Beau Williams』 (1982)
M2 Blue /阿川泰子 『MS.MYSTERY』 (1987)
M3 Show Me What You Got /The Dramatics 『Somewhere In Time』 (1985)
M4 Shine The Light /Collage 『Shine The Light』 (1985)
M5 She's Gettin' Married /さかいゆう 『She's Gettin' Married』 (2019)
M6 Tonight's The Night /Harold Melvin & The Blue Notes 『The Blue Album』 (1979)
M7 Let You Know /Backman Johanson and the Others 『At Last』 (2018)
M8 ゆらゆら /岡本真夜 『Hello』 (1998)
M9 抱擁 /THREE1989 『抱擁』 (2019)
M10 Giving It Away /Angela Clemmons 『Angela Clemmons』 (1982)
M11 Give It Up /Pleasure 『Give It Up』 (1982)
M12 Get Together Again /CHEMISTRY 『CHEMISTRY』 (2019)
M13 Wise Woman /Moonchild 『Little Ghost』 (2019)
M14 Come To My Party /Eugene Record 『Trying To Get To You』 (1978)
M15 Many Mistakes /Bar-Kays 『Contagious』 (1987)
M16 (Baby) Love is a Two-Way Street /Addrisi Brothers 『Addrisi Brothers』 (1977)
M17 マジックアワー /STUTS, BIM, RYO-Z 『マジックアワー』 (2019)
M18 Why Did You Turn Me On /Maxine Nightingale 『Bittersweet』 (1980)
M19 For a Week Story /MILK 『MILK』 (1987)
M20 Doesn't That Mean Something /Geoff Mcbride 『Do You Still Remember Love』 (1990)
M21 Joy's Coming In The Morning /Paul Beasley 『My Soul Is Free』 (1983)

「放送アーカイブはこちらから」

【放送後記】
また1ヶ月ほど間が空いてしまい申し訳ありません。現在は内科での研修を一時的に離れ、救急初療室で日々を送っています。
12時間交代の2交代制で勤務しており、夜勤が連続することもままあります。昼夜逆転の勤務のため
なかなか更新できずにおりました。しかしその分自宅で過ごす時間が長くなり、音楽に触れる時間は今まで通り以上に
確保できています。

特にLPを聴く時間が長くなり、クレートも順調に出来てきておりますので、その点はご安心ください。
先日、東京へ久々に買い出しへ出掛けました。神保町のイーストレコード、渋谷のFACE RECORDS,
新宿のディスクユニオンソウル・ブルース館、下北沢のフラッシュディスクランチとGeneral Record Store、
Record Stationと周り、得意の80sソウルを中心にかなりの枚数買い揃えました。近いうちに放送に反映させますので、
ぜひお楽しみにされてください。

さて、今回も前回に引き続き、レコードで集めた作品から、そのエッセンスをお届けしました。
まずテキサス出身のゴスペル系シンガー、Beau Williams(1950-)の82年作1stから、SLAVEを思わせるような重い
グルーブが堪らないダンサー、If You're Readyで始めました。彼のレコードは比較的安く手に入れられて、
かつ鋭いカッティングギターの入ったファンキーな楽曲が多く、どれもおすすめです。

続いて、神奈川県出身のジャズ系シンガー、阿川泰子(1951-)のLA録音による1987年作からジャジーミッド、
Blueを選びました。George Bensonとの仕事で知られるRonnie Fosteや、同じくLAのフュージョン界きっての
鍵盤奏者、プロデューサーのDavid Garfieldを迎えて制作されています。彼らの人脈で
Nathan East(B), Michael Landau(G)が参加しています。ドラムスのフィルインなど多分にJeff Porcaro的なニュアンスで、
前に出過ぎずかつ非常にメロディアスなベースラインが素晴らしい。

Temptationsの影響下にあるグループとして称されることが多い、デトロイト出身の5人組、The Dramaticsの
87年作もどうぞ。同時期のWhispersにも引けを取らない、爽やかな高揚感溢れるシンセのバッキングが堪らない
Show Me What You Gotです。野性味あふれるリードボーカルに少しチープなシンセのリフレインと
トレブリーなカッティング、スラップベースのベースラインが合わさることで、この時代にしかない軽やかさが生まれます。

SOLARレーベル関連では、LA出身のボーカルグループ、CollageのひときわAOR色の強い85年作も最高の一枚です。
AOR~ブルーアイドソウル畑では、編曲にLenny Whiteが絡んでいます。表題曲Shine The Lightは
優しくファルセットに抜いたボーカルとフュージョン的なサックスソロ、David Fosterプロデュース期の
Earth, Wind & Fireの夢見心地な作品を思わせるようです。名曲。

ブラックミュージックに影響を受けたJPOPの中でも、特にもっと評価されても良いと思うSSWの代表格がさかいゆうさんです。
CM, ドラマタイアップなどありますが、それらに縛られ過ぎず、常に良質でグルーヴィー、キャッチーな曲を
生み出し続けていると思います。彼の最新シングルは90sアシッドジャズのブームを支えたIncognitoの
メンバーを迎えて制作されています。

少し時代を戻して、フィラデルフィアソウルを代表するグループの一つ、Harold Melvin & The Blue Notesの
1979年作、Tonight's The Nightです。Teddy Pendergrassが所属していたことでも知られるグループです。
テディペン脱退後のシングルですが、円熟したフィリーダンサーと言える一曲で、4つ打ちのディスコビートに
70sソウルの穏やかで上品な上物が載っているバランスが、この時代にしか実現できなかったバランスだと思います。

昨今のシティポップ/シティソウルの注目は大変嬉しいことなのですが、その中で、当時の邦楽だけでなく、
ヨットロックやフュージョン、ブルーアイドソウル、ブラックコンテンポラリーなど洋楽にも注目が
集まれば、と思う今日この頃です。Backman Johanson and the Othersは北欧出身の現行AOR系バンドで、
City Soulのコンピレーションにも取り上げられました。AORの人気が低迷していた90-00年代においても、
北欧ではその人気が続いており、Tomi Malm(Key, 彼のソロ作もBill Champlinが参加していたりと素晴らしいです)や
Ole Borudのバックバンドも参加しています。TOTO/AIRPLAY直系のCut and Pasteもよいですが、
ウェストコーストの音ととファンクグルーブを見事に融合したLet You Knowも最高です。

90年代という日本のポップスの黄金期の中でも、1998年と言う特別な年にリリースされた岡本真夜のHelloから、
彼女の普段作り出す陽だまりのような優しいポップスとは一味違うアーバンファンクなゆらゆらを選びました。
編曲には森俊之が関わっており、同時期のスガシカオや椎名林檎のバックを思わせるような繊細な
グルーブを作り出すドラムスが最高です。背景にはAverage White BandやRufasなどの影響が窺われます。
案外忘れられがちなJPOPレアグルーブの筆頭だと思います。

最近の邦楽ポップスには好きな曲が非常に多く嬉しい限りです。特にtofubeatsやPUNPEE周辺の人脈、アーティストには
自分の好きなサウンドが多く、掘り起こしがいがあります。THREE 1989は1989年生まれの3人組
(マルチプレーヤー、DJ, ヴォーカリスト)で、80sソウルやディスコからの影響が非常に強く表れています。
ニューシングルの抱擁は少し時代を進めてLeVertなど80年代末から90sR&Bのスロウジャムをお手本にした
蕩けるような一曲です。90s~アメリカ時代の久保田利伸や、Skoop of Somebodyがお好きな人には嵌ること間違いなしです。
今の時代の録音をもってすれば、TR808の音も非常にぶっとく、Giorge Pettusのクワイエットストームにも匹敵します。

その他、松尾潔さんのもと再び再結成しセルフタイトルアルバムを発表したCHEMISTRYの最新作から、
tofubeatsが手掛けたダンサー、Get Together Againも一緒にどうぞ。

レアグルーブからは、Kashifのバックコーラスを務めたヴォーカリスト、Angela Clemmonsの82年作を。
Minnie RipertonやLinda Lewisを思わせるような少しコケティッシュ声質のボーカルと、シャープなリズム隊と
サビへと向かって行く妖しげな高揚感が堪りません。

もう一つレアな一枚では、オレゴン州ポートランドで結成された6人組ファンクバンド、Pleasureの
特にAOR~ブルーアイドソウル色の強い82年作から表題曲のGive It Upです。70年代後半から80年代に掛けて
ファンク/レアグルーブ界隈での評価が高いバンドで、のちにメンバーはCOOL'Rの名義で活躍することとなります。
この82年作はGlenn Jones/I Am Somebody, Fonzi Thornton/The LeaderをプロデュースしたRobert Wrightが手掛けています。
表題曲はMichael McDonald参加前後のDoobie Brothersをディスコ寄りにしたような一曲です。
それ以外にももっとファンク色の強いメロウグルーブ、What's It Gonna Beも最高です。見つけたら即買いましょう。

近年のブラックミュージックからは、南カリフォルニア大学で結成された3人組、Moonchildの最新作から、
クワイエットウェイブ、アンビエントソウル、ネオフィリーの中間を行くWise Womanです。
アンビエントソウルはビート感が希薄でなかなか楽しみ切れていなかったのですが、
彼らの楽曲は音作りがカラフルで聴きやすいと思います。

山下達郎さんのサンデーソングブックを聴いて知ったアーティストやプロデューサーは数知れませんが、
その中でも、学生時代に心に刺さったのがChi-Litesのリードボーカリストであり、その後プロデューサーとして
メロウなシカゴソウルの傑作を数多く生み出したEugene Recordです。ソロ名義でのアルバムは3枚あり、
最近ようやく揃いました。1979年作の2ndでは彼とco-writerとしてヒットを生み出したBarbara Acklinが
コーラスで参加し、Earth, Wind & Fireのホーンサウンドを司ったアレンジャー、Tom Tom 84を迎えています。
その中から独特のリラックスした感じがいかにも彼らしいCome To My Partyを。

80年代に入り、リズムマシンやシンセサイザー、デジタル録音の技術が向上するにつれて、
もともと大所帯で活躍していたバンドが人数を減らして活動するパターンは、比較的多くみられました。
CameoやBar-Kaysはその代表格ともいえますが、80年代後半の彼らのアルバムには、
今振り返られるべきデジタルファンクやクワイエットストームが数多く収録されています。
87年作から粘っこいボーカルと単音カッティング、強くリヴァーブの掛けられたスネアが時代を感じさせる
Many Mistakesを選びました。

今回の放送で一番お掛けしたかったのが、PUNPEE feat. STUTS/夜を使い果たしての元ネタとなった、
マサチューセッツ州出身の兄弟2人組によるブルーアイドソウルユニット、Addrisi Brothersの77年作の1stから、
A面5曲目にひっそりと収録されたBaby, Love Is A Two Way Streetです。オリジナルアルバムは僅か3枚しかない
グループですが、そんなところから、息を呑むような美しい冒頭のテーマと、暖かさに満ち溢れたアレンジの名曲を
見つけ出すPUNPEE/STUTSはやはり天才だと思わされます。モータウン直系のメロディアスなベースラインと、
冒頭のテーマとなるメロディを様々に変奏しながら進んでいく、豪華な編曲でありながら爽やかな質感がある、
不思議な魔法の掛けられた一曲だと思います。Discogsでスウェーデンからレコードを取り寄せたかいがありました。
それに引き続いて、STUTSがBIM, RYO-Z(RIP SLYME)と組んで発表した新曲、マジックアワーも素晴らしいです。
ジャケットのような夏終わりかけの夕暮れを思わせるイントロ部、サウスのヒップホップ的なドラムの音色、
後半のギラギラとしたトラップビートとジャジーなコード進行など、目くるめく変わっていくサウンドスケープが
素晴らしい。

もう一曲、AOR系では1952年、ロンドン出身のシンガー、Maxine Nightingaleの1980年作を取り上げました。
70年代末にミリオンヒットを幾つか持つ彼女ですが、80年前後の楽曲はいい意味で黒過ぎず、
当時のフュージョン系のスタジオミュージシャンが参加しているものも多いです。
BittersweetではAbraham Laboriel, Bobby Watson, Jerry Knight(B), John Robinson(Ds)などが参加しています。
特に、ジャジーなハーモニーとAbe Laborielと思われる繊細なベースライン、Rhodesのファンキーなバッキングが堪らない
A2 I'm Givin' It All To Youと、たゆたうボーカルとストリングスに多幸感溢れるサビが最高に
メロウなB4 Why Did You Turn Me Onなど、シティソウルの観点から今振り返られるべき一枚です。
彼女の他の作品も鋭意収集しております。

続いて、和モノではRecord Store Day限定盤として再発されたボーカルデュオ、MILKの自主制作版7インチシングルから
For a Week Storyです。西城秀樹や河合奈保子、亜蘭知子のバックボーカルを務めたことでも知られる
RitsukoとRieによる姉妹ユニットで、その他の詳細は不明です。George Benson/Turn Your Love Aroundを
思わせるようなイントロフレーズが印象的なミッドファンクで、
うねうねしたシンセベースと少し薄い音のバッキングが最高。

Gelard Levertのプロデュースで唯一のアルバムを発表したボーカリスト、Geoff McBrideの90年作は、
ソングライターでGarry Glenn(Anita Baker etc)が参加した艶やかなNo Sweeter Loveや、
明るいシンセのバッキングとどこかもの悲しいメロディの組み合わせが切ないDoesn't Mean That Somethingが出色です。

そして最後には、Mighty Clouds of Joyというソウルグループのボーカリストとしてデビューした
Paul Beasleyというゴスペルシンガーのソロ、83年作です。あまりそれ以上の情報が出てこない、
ややマイナーなアーティストですが、いわゆるジャケ買いで大成功した一枚でした。
Joy's Coming In The Morningは繊細なファルセットボーカルと、端正なグルーブ、ウェストコーストの
フュージョンを思わせるサックスソロなどが組み合わさった、AOR的な視点から見ても楽しい一曲です。
AORファン的には、CCM(Christian Contemporary Music)系のバンドとして知られるWhite Heartの
ギタリスト、Dann Huffが参加している点も見逃せません。
ほかにもメロウソウルなA1 My Soul is Free、Jim SchmidtとPagesの2人がタッグを組んだ、
Love Has Taken It All Away(前回お掛けしました)のカヴァーなど、思いがけない発見が沢山ある一枚でした。

私的名盤放送、第56話もいかがでしたでしょうか。引き続き、全ての録音はTweetCastingホームページ、
このブログの記事のどちらからも聴くことが出来ます。

皆様のおかげで毎回200-300人ほどのお客様に見て頂いております。大変嬉しく思っております。
コメント、リクエストなど可能な範囲でお答えしますので、Twitter DMまたはブログのコメント欄まで、ぜひお寄せ下さい。
次回もお楽しみに。

前編

中編

後編


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  1. 2019/10/05(土) 18:22:43|
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
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