私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(408) I LOVE YOUR LOVE/Negicco

Album: I LOVE YOUR LOVE
Artist: Negicco
Year: 2019
Genres: Soul,Disco, JPOP, 渋谷系

I Love Your Love

久々のレビューはジャム(@jamuireiji)さんのリクエストのもと書いてみました。
相変わらず救急科勤務が続き体力消耗しておりますが、これからも私的名盤放送/紹介を宜しくお願い申し上げます。

2003年に結成された新潟県を活動拠点とする3人組の女性アイドルグループ。
長い活動期間の中で、特に近年の渋谷系再評価/アキシブ系
(秋葉原+渋谷系のこと。アニメソング、声優ソング、ボーカルグループ、アイドル、Vocaloid系などの中で、
90年代のスノビッシュで様々な音楽スタイルを融合した渋谷系の影響を強く受けた音楽ジャンルのこと)
の楽曲で注目を集めているグループでもあります。

長い活動期間があり、TVCMにも出演したりと全国的な知名度もある彼女たちは、これまで
メインのプロデューサーであるconnieのほか、小西康陽(ピチカート・ファイブ)、サイプレス上野とロベルト吉野、
田島貴男(ORIGINAL LOVE)、Shiggy Jr., 冨田恵一、坂本真綾などを作家に迎えています。

リアルタイムの渋谷系の作曲家以外にも、現役で活躍する若手のアーティストの起用も目立っている彼女たちは、
同じく新潟県出身のアイドルグループであるRYUTistなどと合わせて、
アキシブ系、アイドル系のブギー、AOR、ネオアコースティック的な音を求める方であれば確実に気に入ることと思います。

本作は彼女たちの最新シングルで、1年7ヶ月ぶりにリリースとなりました。
90年代から、希少なバンドという形で、吉田美奈子/山下達郎~佐藤竹善/ORIGINAL LOVE~さかいゆうなどの流れを汲む
邦楽ブラックミュージックの消化の歴史の中で重要な役割を担ってきたNONA REEVESの西寺郷太がM1を作曲しています。

西寺さんは文筆家としても分かり易く読みやすい、優れた文章を書く人で、Michael JacksonやPrinceなど、
主に80年代のブラックミュージックに関する著作は、松尾潔さんの著作とともに名盤さん自身も愛読しています。

M1はフィルターハウスのようなイントロから始まるバブルガムなブギー(BPM131)で、オクターブのフレーズを中心とした
ディスコらしいベースラインと4つ打ちのリズムパターンで進行していきます。
メロ部分のコード進行はシカゴソウルのこみ上げる感じがあり、
フィロソフィーのダンス/ライブ・ライフにも迫るスリリングさです。
奥田健介(BONNIE PINK, 堂島孝平、m-flo, CHEMISTRY、土岐麻子 etc)のオクターブのカッティングを
中心としたメロウなギターはさながらDavid T Walkerのような繊細な音色で素晴らしいです。
随所に挟まれる3連のカッティングフレーズなどはかつての東京女子流(土方隆行などが参加)を感じさせますし、
Espesia的なVaporwave以降のリゾートミュージックらしさもあります。
ベースは小松シゲル(キリンジ、堂島孝平、BONNIE PINK, いきものがかり、南波志帆 etc)が参加し、
モコモコした音でありながら埋もれず、ギターソロの前では存在感を発揮する音のバランスが最高。
リズムの重いグルーブは、80sのオハイオファンクやMidnight StarなどのSOLAR Recordsのファンク系アーティストの
それを感じさせます。最近のプロデューサーで言うと、T-Groove(英国在住の邦人若手プロデューサー、高橋佑貴, 1982-)
などが好んで使うタイム感です。近年の彼女たちの楽曲の中でもとりわけ名曲だと思います。

1995年に結成されたポップス/ロックバンド、クラムボンのミトがペンを執ったM2は、
ピアノのコードバッキングが8ビートを刻む80sJPOP的なフレーズでありながら、ジャジーで緊張感あるハーモニーが
クラムボンらしさのあるメロ部分、愛らしい、囁くようなボーカルに意外なほどラウドなドラムスが絡む不思議な一曲です。
後半では恐ろしいほどにシンバルを鳴らしまくっているのにうるさくなく、ボーカルを邪魔しないところが見事な
録音バランスとうことになるのでしょう。

メインプロデューサーのconnie(丹羽洋介, アイカツシリーズなど 1978-)が担当するM3は、
Aメロ~Bメロ部分はシンセの作る調性感の薄いコード進行に、(Perfumeの傑作、JPNに収録のHave a Strollを思わせる)
ブリブリしたシンセ―ベース、TR909的な重いリズムマシンで、ハウス的なリズム構築がクールなトラックです。
これもニュージャックスウィングなど90sR&Bが好きな方には堪らないと思います。

長きにわたってファンから愛されるNegicco、今後の活躍もまだまだ楽しみです。
11/16に行われるツアーファイナルではsugarbeans(Key)、末永華子(Key)、堀崎翔(G)、千ヶ崎学(B / KIRINJI)、
岡本啓佑(Ds/黒猫チェルシー)という豪華メンバーで生演奏も聴けるようで、行ける方はぜひ。

公式トレーラー

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  1. 2019/11/07(木) 23:04:45|
  2. Negicco
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今日の一枚(405)

Album: Smashing Anthems
Artist: 水樹奈々
Genres: Pops, Pop Rock, HR/HM, Symphonic Rock, R&B, Disco, AOR

Smashing Anthems

愛媛県新居浜市出身の日本の歌手、声優。1980年生まれ。
2015年作の11th。発売は11月11日。筆者は予約で前日にフライングゲットして聴いております。

前作のSUPERNAL LIBERTYから1年7ヶ月ぶりのリリースとなった今作は、
シングル曲に#8禁断のレジスタンス、#13エデン、#4Angel Blossom, #15Exterminateの
4曲があり、前作に比べるとシングルも豊富な状態でのリリースとなりました。

しかしながら、事前に本人もラジオなどで公言していたように、
具体的な数字は示されていませんが、制作期間はかなり短い状態であることに
変わりはないようで、ライブツアー後に詰め込んでレコーディングが行われていたようです。

CD以外にもBlu-rayとDVDで未公開のライブ映像が収録されており、
(古いものだと2002年のLive Attractionの映像も収録されています)
オーディオコメンタリーも加わってディープなファンも楽しめる仕様になっています。

シングル売り上げの低下が起きているようで、いちファンとして少し心配している
部分もあったのですが、今回も、基本的には前作での新たな作家とのコラボレーション、
アレンジ方針の転換といった路線を踏襲した傾向となっており、筆者としては、
むしろとても期待の持てるアルバムになったと感じています。

特に以前のシングルレビューでも述べましたが、演奏に生音が増え、
シンフォニックなサウンドが影を潜めたことで、水樹奈々自身のボーカルが、
オケに埋もれずによく聞こえる様になっていて、この点も注目すべきと思います。
ただし、この傾向はシングルよりもアルバム曲で特に顕著な傾向を示すことになりました。

この点に関しては、今まである種「異形な」ポップスとしてのアイデンティティー、
或いは曲が始まって数秒間でリスナーを釘付けにするようなアニメソングとしての
キャッチーさというものを失う結果にならざるを得ない部分があり、
ネット上のレビューやブログを見ていても批判的な意見も見られていると思います。

これは、彼女が長いキャリアの中で様々なステージを経て現在にたどり着くまでの過程で、
(村野直球提供曲の多い最初期、矢吹敏郎プロデュース時代、Elements Gardenとの
タッグを組んだ時代、そしてここ3年間位の方向模索期に分けてよいと思います)
その中でファンを獲得していくにつれて生じてくる思い入れの問題というのもありますが、
それよりも大切なのは、彼女がこれから歌手としてどのようなキャリアを形成し、
どのようなファン層に対して訴えかけていくか、
それは言い換えれば、これまでのファンへの気配りをどの程度しながら、
どういったリスナーの層にターゲットを持っていくサウンド作りをしていくかという問題となります。

一つのスタイルを一貫して通すタイプの人も正解ならば、音楽性、スタイルの変化を
続けていく人も正解だと思いますが、筆者個人としては、結果として好きなサウンドに
方向が向いてきていることを素直に喜びたいと思っています。

どのようにアレンジやコード進行が変化したとしても、失われない部分というのがあります。
それは、彼女の場合は「歌謡曲感」と唯一無二の「声質」ということだと思います。
その点に関しては、本作でも徹底して、歌謡曲感のあるメロディやアレンジは随所に
散りばめられており、水樹奈々としてのアイデンティティは十分保たれていると思います。

ある人は、水樹奈々は変わってしまった、と述べるかもしれませんが、
おそらくそれは表面的な聴き方しかしていないからそのように聞こえるわけで、
アレンジ的には1stの頃程度の音の密度に「戻って来た」とも言えるし、
#15Exterminateや#1Glorious BreakなどはElements Gardenらしい音も
きちんと残しているという部分で、むしろ「保守的な部分もあるアルバム」と捉えられると思います。

こうした結果となったのは、
外見上のサウンドが変化して、売り上げや、アニメ/CMタイアップなどの取得に影響が出ないかということが、
プロデューサーの三嶋章夫さんの頭の中にあるからだと、筆者は考えます。

つまり、シングル曲とその他数曲は、これまでの水樹奈々スタイルのポップスで安全を確保しながら、
アルバム曲で方向性を模索して行こうという、苦心の末に出した解答が、
このアルバムとして形に残ったのだ、と捉えればよいでしょう。

筆者の視点から見てみると、今作ではブラックミュージックとのクロスオーバーという観点から
見ても、面白い曲が揃った一枚になったと思っています。
例えば、本人がラジオなどでもPVの話をしているM3Super☆Manはディスコ
(というより典型的なパターンミュージック)の構成とリズムに、
フィリーソウルのようなストリングスを取りながらも、歌謡らしいメロを中心に曲が纏められています。

他にも、M9The New Starは、前作でR&Bテイストのアレンジを見せたバラードFateとは違った方向で、
より低音の強調された打ち込みの4つ打ちと、クラブミュージック的な音の抜き差し、
ハモンドのリフでゴリゴリ押すのが特徴的です。間奏の男性コーラスは完全にソウルとなり、
バックのサウンドはフュージョン的に作ってあります。

さらに、M14アンビバレンスではヒップホップ~ネオソウル寄りのレイドバックしたドラムスに
ミュートの効いたカッティング、歯切れのいいコードリフは80sAORのようで、
サビは濡れていて哀愁漂うメロディーが流れていて、
これも非常に素晴らしいクロスオーバーだと思います。

では大体全体を見渡したので、各曲を見ていきたいと思います。

#1Glorious Breakは、サイバーなSEとノイジーなシンセをバックにしてストリングス、
歌が入るとオペラのような分厚いコーラスが入った豪華な一曲。
テンポの速い打ち込みのキックがボトムを支えてメロディーは
前々作のアヴァロンの王冠を思わせるようなモチーフが加えられています。

#2Never Let Goは、テンポを抑えてしっかりとメロディを聴かせる歌謡ロックで、
ディストーションギターのリフは本物のメタルの音になっています。
それに対してBメロではアコギのコードバッキングが目立つ音になり表情を
常に変えながらサビへと入っていきます。
スネアロールを中心にしたBメロ~サビのリズムパターンと、Aメロの力強いパターンで
差がつけられていて、多彩な変化を見せます。お気に入り。

#3SUPER☆MANはイントロとメロのパターンをひたすらに繰り返しながら進んでいく
打ち込み歌謡ディスコ。ウネウネしたシンセベースとシンセのボトムが耳を撫で、
左右に振られた電子音でスペイシーさを出しています。
今野均のストリングスはさながらO'Jaysのようなシルキーな音になっており、
後半の可愛い歌い方はファンには堪らないですね。お気に入り。

#4Angel Blossomはシングルレビューをご覧下さい。

Superflyのバックを務めるギタリスト、伊藤寛之と藤林聖子のペアで手掛けた
#5BRACELETは、onetrapというプロデューサーチームに所属する
南田健吾(YUKI、JUJU、田村ゆかり、ファンキーモンキーベイビーズetc)がアレンジと演奏を
手掛けています。冒頭以外はサイバーなテイストはなりを潜めた、シンプルなロックバラードに
なっています。重い8ビートのドラムスでシンプルなフィルにしておいて、
サビメロは、短いブレスで一気にグイグイ突っ込んで引っ張っていく歌で、疾走感を生み出しています。
1音1音の長いメロディーをしっかり聴かせています。ギターソロも矢吹敏郎のような泣きもありながら
モダンさもあって素晴らしいバランスだと思います。最高。

#6レイジーシンドロームはシングルレビューをご覧下さい。一押しです。

#7コイウタは、ほぼ完全に生音のリズムセクションになった、シンプルなロックバラードです。
室屋光一郎の煌びやかなバイオリンも大きすぎず良いバランスで、ともすれば悲しくなりそうな
曲の中で暖かさを感じさせます。高尾俊之のドラムスは硬い中にも陰りのある音で好みです。
サビ後半では張り上げずに柔らかくファルセットに抜くような歌い方で、
随所に、年齢を重ねて声に味が出てきたというのがよく分かります。

#8禁断のレジスタンスは、バリバリにビブラート聴かせた歌唱が炸裂する、
デジタルなシンセとハードロックを溶け合わせた一曲。
間奏でリードを取るケルティシュな笛は、かつての残光のガイアを思い出させるようです。
増崎孝司のギターはあまり前に出てはいませんが分厚い音色で、
二家本亮介のベースは普段の超絶技巧を思うとと静かなプレイですが、
2番の冒頭など随所に面白い所を見せています。

本作の中でも最も異端なサウンドと言える#9The New Starは、
英語の歌詞で吹いてしまいそうになりますが、そこはご愛嬌ということで、
最近のR&Bの流行りに合わせたトーンのエレピのリフ(これだけ聴いたら完全にネオソウル)とボーカル、
その後ビートが入ると、なんとさらに音数が減って、ドラムスにボーカル、ファンクのカッティング、
男性ボーカルのコーラスがマッチョに響く中で、単音カッティングのリフを合わせた
ファンキーなトラックです。ジャジーな前半部から間奏に入ると、ハモンドのリフが炸裂する
バリバリのファンクになり、そのままクラブDJよろしくフィルターが掛かりながら(!)、
一瞬Mayer Hawthroneなどの好きそうなSteely Danチックな展開まで挟んでしまい、
そしてそのままテーマへと還っていきます。

というなんとも説明するのが難しい一曲ですが、
聴けば聴くほどにニヤリとしてしまいます。一体これをどうやってライブでやるのか…
多分これが好きなファンは極めて少ないと思いますけれども、
ここまでやって良かったのか、水樹奈々、という感じです。しかし筆者は大好きな音です。最高。

光増ハジメ提供の#10Clutch!!は、ブラスアレンジを前面に出した疾走感あるタオル曲という感じ。
徐々に上昇していくサビなど、アオイイロ、Level Hi!などを彷彿とさせるメロディー、展開です。
明るい曲調の中にも、どこか切なさのある雰囲気もきちんと残していて、
乗り物に乗りながら、タオルを振りながら、ライブで盛り上がれそうな一曲です。
ラストサビの後の、最後のStand up!My dearというフレーズなど
特にそうですが、かつてのAlive & Kickingまで位の頃の、
甘酸っぱくて少し野暮ったい、水樹奈々の歌声を思い出させてくれます。お気に入り。

#11熱情のマリアは、#8と同じ作曲者の加藤裕介提供です。この手の派手なサウンドの
水樹ポップスで、多重録音のコーラスをフィーチャーしたトラックは珍しいと思います。
コーラスとの掛け合い部分はよく聴くと凝った構成になっていて、上手くメロディを載せるのは
かなり難しいと思います。ライブで歌うのも難しそうです。
Elemets Gardenの普段の編曲に比べると、これでもまだおとなしめの音になっています。

エデン~Angel Blossomのメンバーから山本陽介(G)と須永和広(B)が参加、
藤間仁がアレンジの#12エゴアイディールは、水樹奈々自身の作曲による一曲ですが、
事前に三嶋プロデューサーからの意見もあったようで、今までの曲とは雰囲気を変えて
手数の多くキメの多いリズムに、フュージョン的なハーモニーを載せています。

水樹奈々自身、高度な作曲技術を持っているのに驚きます。
毎回キー、メロディーと一部のコードくらいを書いているのかな、と思いきや、
インタビューなどを読んでみると構成からリズムパターン、すべてのコードを自分で
考えながら、激務の中で2週間でこれを書き上げてしまうというのは、驚くばかりです。

粘りのある打ち込みのドラムスはアーティキュレーションも生々しく、
鮮やかなピアノのリフが映えたメロでは意表を突いたメロディーラインで、
サビではリズムパターンをエイトに変えてポップに、と好対照をなしています。
2番からはドラムベース共に遊んでいて邦楽ポップスの音数を超えていて非常に楽しいです。
バッキング、ソロ含め大平勉さんが忙しそうな曲で、今からライブが楽しみです。
ラストサビのロングトーンは歌詞の通り、かなり力強く張り上げているので、
生放送番組の時は詰まり気味で少し苦しそうな印象を受けました。
彼女のことなのでオリジナルキーで演奏すると思うのですが、ライブだとどうなるのでしょうか…
ファンとしては少し心配になるかも、しれないです。最高。

#13エデンはシングルレビューをご覧下さい。
もちろん歴代シングルの中でも最高レベルに良い曲だと思います。傑作。

本人曰く、アコースティックライブの時の酒場のシーンで何かを掴んだ、という結果が現れた
#14アンビバレンスは、AOR~AC的な音がこれまでには無かった一曲です。
作曲に中村僚、中村友の兄弟(西野カナetc)を迎え、スタジオミュージシャンには
けいおん!シリーズの音楽を担当した小森茂生、Tom H@ckなどの所属するF.M.Fから
土方幸徳(Dr)、工藤嶺(B)を迎えて制作されています。

この曲のイメージを決定づけているピアノ、Rhodesのバッキングは村田昭というキーボーディストで、
どうやら90年代には、本サイトでも何度かお話している
武藤敬一朗(K-muto、嶋野百恵の項を参照)とユニットを組んで活動していたようです。
ということもあってか、あの90s~00sの邦楽NJS、R&Bの懐かしい香りも漂ってくるようです。

冒頭の印象的なピアノのリフからベース、そして土方幸徳のデッドな音のドラムスが入ってくる
イントロ部は、90sR&B~ヒップホップを思わせるようなルーズなノリになっています。
ドラムスの作るグルーブは椎名林檎の1stでの河村智康を思わせるような、
レイドバックした中にも、ブリティッシュロックのような翳りのある雰囲気で、
フィルも含めて素晴らしいバッキングだと思います。

本人は歌唱する際に、何度も歌いすぎて感情が籠り過ぎるのを防ぐため、
3回目のテイクをOKにしたという事のようです。
どこか緊張感の残っている歌い方なのが窺われ、一つ一つの音の伸ばし方・切り方、
サビの最後の力の抜き方など、非常に細やかに、瞬時に喉をチューニングしながら
歌っている様子が伝わってきます。

特に、2番の「今更遅すぎるけど」の部分では、
フレーズの頭に少し多めにエッジボイスを入れながら、セクシーに歌いながら、
だからかもしれないですが、少し詰まり気味でノイジーになってしまっています。
これもこのテイクの味ということになるのかと思いますし、
彼女が丸裸の生歌で勝負しているということがよくよく分かります。
ありとあらゆる面で筆者好みの音になっていて、
大好きな曲がまた一つ増えました。嬉しい限りです。最高。

そして最後を飾る#15Exterminateは、一気に雰囲気を得意の展開に戻し、
Elements Garden藤間仁のもとにデジタル~HR/HM~シンフォニックロックの一曲になっています。
もはやサビ前のピッキングハーモニクスやゴリゴリのリフなど、増崎孝司のギターは
完全にへヴィメタルのそれになっています。
サビのキャッチーさも十分で、得意のビブラートロングトーンバリバリの一曲です。お気に入り。

というわけで、年間ベストを決める前からこんなに長丁場の記事を書いてしまい申し訳ありません。
最近更新できていなくて鬱憤?が溜まっていたのか最長の記事になってしまいましたが、
筆者としては今作は、「非常に見どころのある面白いアルバム」だったということを述べて、
終わりにしたいと思います。読んで頂いた方はありがとうございました。

万人に勧められる作品では(相変わらず)ありませんが、確実に水樹奈々は進化しています。

※今回どうして長い記事を書いたのかといいますと、
ラジオやインタビューで水樹奈々自身から「サウンド」「曲の構成、メロディーの作り方、アレンジ」など、
非常に具体的なミュージシャンとしての思想や、現状の捉え方を聞く機会が増えたから、なのです。
つまり、彼女のアルバムレビューを書く上で、
少しでもサウンド面に着目してお話しする人間が居ても良いのではないかと思ったからであります。

SUPER☆MAN

禁断のレジスタンス

Exterminate

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  1. 2015/12/09(水) 01:18:34|
  2. 水樹奈々
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今日の一枚(404)※

Album: ひつじ雲
Artist: 朝日美穂
Genres: Pops, AOR, Soft Rock

ひつじ雲

大阪府生まれ、東京都、千葉県佐倉市出身の日本のシンガーソングライター。1972年生まれ。
早稲田大学第二文学部西洋哲学専修卒。2013年作の5th。

1995年に、リットーミュージック主催AXIAアーティストオーディションの優秀賞と
サウンド&レコーディング賞を受賞したことがきっかけで、翌年ミニアルバムAperionで
デビュー、1997年にSony Recordsからメジャーデビューを果たします。

その後は2002年に朝日蓄音という自身のレーベルを立ち上げ、オリジナルアルバムを
5枚、EPを2枚残し、ゆっくりと地道に活動を続けています。
本作は6年ぶりのオリジナルアルバムで、出産と子育てを経て制作されているということのようです。
収録曲に関しては、SoundCloudでも試聴ができるようになっています。

本作では、先行シングルとなった夏のトレモロをキリンジの兄、堀込高樹と共作していたり、
バックバンドにもキリンジのメンバーである楠均(Dr)、千ヶ崎学(B)は2005年より
彼女のバンドメンバーとして参加しています。また同曲ではギターに
青山陽一(冨田ラボ、bird etc)が参加しています。
他には田村玄一(Pedal Steel)、まつきあゆむ(G)、たまきあや(Violin)、戸田和雅子(Cho)などが
参加し、独特な音世界を創り出しています。

デビュー時から、他のJポップの女性シンガーソングライターには中々見られなかったような
音数を絞った、クリアな録音による音響派的な構築、ジャズやブラジリアンの影響が強く
伺われるハーモニー、リズムにもヒップホップ的なものもあったり、変拍子とテクニカルな
キメを突っ込んだフュージョン~プログレ的なものもあったりと、
捻られたメロディーのセンスも加わって、作風としてはJoni Mitchellを
思わせるかのような独創性に満ちています。

夢落ちる
一人多重録音によるコーラスと、ホルンを中心とした淡いホーンが印象的なスロウなバラード。
シタールのような音のシンセソロと、スペイシーな音の中でくっきりとした、
少しギラついた千ケ崎学のべースが映えています。

夏のトレモロ
脱力したファルセット交じりの高音ボーカルが柔らかく歌うアップテンポ。
メロ部分のキメの鋭さに歯切れのいいメロディが絡まって、重いキックとスラップベースのリズム隊、
トレブリーな音色のギターソロが疾走感を演出するキラーチューン。
予想を裏切る展開もクールです。最高傑作の一つだと思います。

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  1. 2015/11/27(金) 01:03:14|
  2. 朝日美穂
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今日の一枚(397)

Album: Save Our Souls
Artist: Skoop On Somebody
Genres: R&B, Pops

Save Our Souls

大阪府大阪市で1995年に結成された、日本の3人組R&B, ポップスバンド、コーラスグループ。
2002年作の5th。

1995年当初はSKOOPのバンド名で活動しており、私的名盤紹介で取り上げた作品の中では、
嶋野百恵の5.3.1(R&Bタブを参照)でEverything(I See)というトラックにも参加するなど、
バンド形式を取りながらも、主に邦楽のR&B界隈で認知されていたようです。
彼らがヒットするようになったきっかけは、2001年のシングル、sha la laが花王のCM曲に
選ばれたことでした。翌年には本作に収録されているぼくが地球を救う?Sounds Of Spirit?が
同名TBSドラマの主題歌となり、トップ10入りを記録することになります。

メンバーはTAKE(武田雅治, 1969-, Vo, G, Cho)、KO-ICHIRO(松本康一朗, 1964-, B, Cho)、
KO-HEY(野上幸平, 1969-, Dr, Cho)の三人で、影響を受けたミュージシャンとしては
Donny Hathaway, Stevie Wonder, Quincy Jones, Kirk Franklinなどが挙げられています。

ヒット直後に発売されたアルバムで、プロデューサーには松尾潔(EXILE, CHEMISTRY,
MISIA, 宇多田ヒカル、平井堅、川口大輔、鈴木雅之、Nona Reeves)、エンジニアには
TLCらを手掛けたGary Brownを迎え、ゲストにはCHEMISTRY(Cho)、古内東子(作詞)などが
参加しています。

サポートのスタジオミュージシャンには小松秀行(B, Original Love、古内東子),
石成正人(G, 平井堅、JUJU、いきものがかり、久保田利伸、ゴスペラーズ、SMAP)
斉藤ノブ(Perc)、高水健司(B)などがメンバーに加えて参加しています。

作風としては、R&B、ブラコン的なレイドバックしたグルーブ、80sディスコ的な
ダンサブルさを湛えながらも、生演奏による鋭い音色で、Jポップらしいキャッチーな
メロディーも合わさって、当時ヒットしていたCHEMISTRYに近いサウンドを生バンドで
楽しめるという感じです。

#1Perfume Loveは、Ernie Isleyを思わせるようなブルージーなシンセリードのフレーズに
始まり、単音カッティングとレイドバックしたドラムス、ブラコン風味のワウが掛かった
シンセベースが作る緩いグルーブに、低音の艶のあるボーカルが映え、
ジャジーな中にも邦楽ポップス的な構造が見て取れる一曲です。
キーボードソロにギターソロとインスト部分も長く取られています。最高。
バラードの#2Tears of Joyは、当時の平井堅を思わせるような打ち込みR&B然とした一曲で、
薄く流れるストリングスの音処理はSwing Out Sisterのそれを思わせるようです。
粘りのあるボーカルと揺れ方の整ったビブラートの美しさが際立ちます。
アウトロのコーラスワークが素晴らしい。お気に入り。
Chemistryがゲストで参加している#3Two of A Kindは、TOTOの初期のような、
メロやサビ前などAOR的なキメが特徴的なトラックとなっており、ファンキーで歯切れの良いホーン、
フィリーなストリングスも加わり、リッチなサウンドになっています。最高。
スマッシュヒットとなった#5ぼくが地球を救う-Sounds of Spirit-は、伸びやかなボーカルを
ファルセットのコーラスが彩る、Emotions/Best of My Loveのような典型的なディスコサウンドですが、
ハットのアクセントのつけ方など、ドラムスや小松秀行のベースラインは、
フュージョン色の強い軽いグルーブを作っています。極めて完成度の高い和製ディスコです。最高。
ぶっといベースリフ、甲高くチューニングされたドラムスから始まるファンク#6On the Red Carpetは、
オルガンやRhodesのバッキングも粘りついていて、ゴリゴリしたダークな曲展開の中で、
今出宏のメロディアスでエモーショナルなハーモニカソロが素晴らしいアクセントになっています。最高。
古内東子が作詞を担当している#7Long For Youは、
石成正人(G, 平井堅、スキマスイッチ、JUJU、坂本真綾、久保田利伸etc)のアコギの倍音、高音の綺麗さに
ただただ聴き惚れてしまうスロウバラード。ストリングスが大きくなりコーラスが被さっていきながら、
ハイトーンを連発する後半は圧巻です。
ドラムスのKO-HEYによるインタールード#8Running of S.O.S.は、フュージョン~ロックインストといった
絶妙なハードさの演奏で、残響の少ないデッドなスネアの音色が好みです。
UNCHAINの新譜のリズムトラックと言われても分からないかもしれません。
#9これは恋じゃないは、松尾潔の作詞センスが本領発揮といった感じのジャジーなR&Bです。
こういう曲もリズムが生で録音されていると、起伏があって飽きさせません。
ブレイクの後のシンセのテーマや音の断片化させた配置の仕方がヒップホップ的で良いです。
本作の中でも取り分け打ち込み然としたヒップホップ寄りのトラック#10A Streetcar Called Desireは、
典型的なファンクのカッティングとエレピのコードバッキングにトークボックスで味付けしています。
サビでは生々しい音のコーラスと大胆なスラップベースが前に出てきて、メロまでのデジタルな音遣いから
変化を付けています。
知念輝行の左チャンネルのギターが牧歌的な雰囲気を醸し出しているスローな#12My Hometownは、
メンバーのコーラスワークがフィーチャーされた一曲で、
山本拓夫(岡村靖幸、サザンオールスターズ、Mr.Children)のサックスソロも滑らかで
どこまでも伸びていくようです。最高。
表題曲の#14Save Our Soulsは、所々にモーダルインターチェンジを挟んだり、鋭いキメを挟んだり
しながらも、全体的にはベルのような柔らかいシンセや、サビ全体を流れるコーラスのシルキーな
感じなど、Boyz Ⅱ Menのような90sR&Bの香りが湧き立っています。お気に入り。
スラップしまくりのベースラインに低音の強いビートが固めるダンサブルな
#16a tommorrowsongは、上物に爽やかなコーラスとシンセで彩っていて、
柔らかく落ち着いたサウンドに仕上がっています。

90s末から00s初頭にかけて、日本国内でもR&Bのブームとも呼ばれる時期が到来する訳ですが、
その中心人物の一人である松尾潔が全面的にプロデュースしている本作の中でも、
優れたスタジオミュージシャンとコーラスワークで、非常に完成度の高い一枚になっていると思います。佳作。

Perfume Love

Tears Of Joy

僕が地球を救う

Save Our Souls

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  1. 2015/08/18(火) 18:41:42|
  2. Skoop On Somebody
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今日の一枚(394)

Album: Blue Avenue
Artist: 花澤香菜
Genres: AOR, Soft Rock, Fusion

Blue Avenue

東京都出身の日本の声優、歌手。1989年生まれ。
細かいバイオグラフィーに関しては以前の記事を参考にしてください。

渋谷系の時代に活躍した作家と多く組んだネオアコ色の強い1stのClarie、
オルタナやパンクロック、R&B、ファンクなど振れ幅大きく多彩な曲を収録した
2ndの25に続いて、今作のテーマとなっているのは、一言でいえば
「70s後半~80sにかけてのアメリカ西海岸のソフトロック、アダルトコンテンポラリー、AOR、
フュージョン」ということになると思います。

レコーディングはロサンジェルスと国内で行われており、LA録音のトラックには
海外のベテランスタジオミュージシャンが数多く参加しています。
名前を挙げてみると、
海外勢では
Steve Jordan(Dr, Eric Clapton, Keith Richards, Neil Young, John Mayer Trio, ),
Will Lee(B, David Sanborn, Steely Dan, The Brecker Brothers, Billy Joel, Diana Ross,
Natalie Cole, 山下達郎, SMAP etc),
David Spinozza(G, James Taylor, Donny Hathaway, Paul McCartney, Billy Joel etc),
Rob Maunsey(Key, )など
なお、Steve Jordan, Will Leeのリズム隊は、Hiram Bullock(G), Clifford Carter(Key)を加えて
The 24th Street Bandという、80sにスタジオでのレコーディングを中心に活動していた
バンドのメンバーで、日本で特に大きな人気を誇っていました。
その他でも、このメンバーは(ギターのHiram Bullockは故人となってしまいましたが)
日本のアイドルグループ、SMAPの初期作品のバッキングでも参加したりしています。
国内では
佐野康夫(Dr)、河村智康(Dr)、後藤秀人(G)、千ヶ崎学(B,キリンジ)、奥田健介(G, Nona Reeves)、
北園みなみ(Key)など、
なお先行シングルの#6こきゅうとすでは相対性理論が参加しています。

#1I Love New Dayは、録音のキメの細かさが良く分かる、繊細で柔らかいコーラスは、
前作までの密室的な音づくり、メロディーはネオアコ感のある感じに仕上げていますが、
ホーンによるテーマをはじめとして、バンドサウンドはLAらしくカラッとしたフュージョンに
なっていて、変化を感じさせてくれます。Will Leeのベースソロから始まるソロ回しは
完全に24thStreetの音になっております。最高。
打ち込みによる4つ打ちキックとエレピによるコード提示、サスティーンの短いシンセベースが
サイバーな感じを演出しつつ、ストリングスを薄く効かせたハウス#2ほほ笑みモードに続いて、

一聴すると竹内まりやの曲かと思ってしまうようなイントロに思わずにやけてしまう
#3Nobody Knowsは、Steve Jordanのクローズハットが特徴的な鋭いキメを繰り返しながら、
メロディアスなWill Leeのベースラインはお馴染みといった感じで、
ファンキーなAOR~フュージョンという感じです。Wuritzerとクラビネットはアレンジを担当している
北園みなみが弾いております。サックスソロも軽く音数の多い
フュージョンライクなものとなっています。今の邦楽ポップスでは決して味わえない
芳醇なグルーブのある一曲。最高。

#5Traceは、Saigenjiのアコギによるアルペジオと生のチェロ、バイオリンの音を
フィーチャーした悲しげなバラードで、分厚く重ねられたコーラスはゴスペルライクです。

深呼吸する音から始まってうねるシンセとニューウェーブ色満載な中華メロディ、
淡々としたベースラインで静かに始まる異色な#6こきゅうとすは、
聴いた瞬間に相対性理論の曲と分かるトラックです。一段とロック色の強いドラムスは
サビで16のハットの刻み、シンプルなフィルで、浮遊感のある上物の中でソリッドな
サウンドを作り出しています。ブレスリーな歌唱も、やくしまるえつこの投げやり歌唱と
高い親和性があって、違和感なくあの無機質な感じを演出しています。お気に入り。

再びホーンアレンジに北園みなみを起用したスウィングジャズ風の#7Night And Dayは、
佐野康夫のタイトで輪郭がハッキリとしたドラムスと、千ヶ崎学によるウッドベースによる
リズム隊のグルーブが前面に打ち出された一曲となっています。フリーキーなサックスソロから
ピアノソロへと一気に爆音になっていきます。最高。
#8タップダンスがの音が聞こえてきたらは、ドゥーワップ的な一人多重録音によるコーラスと、
ニューオーリンズなピアノ、タップの音を組み合わせたインタールードです。これも良い。

#9We Are So In Loveは、冒頭、間奏にちりばめられたフュージョンライクな後藤秀人の
ギターソロが印象的な、アッパーな打ち込みポップス。ドラムベースはかなり生音に近く
作りこまれていて、サビ前からサビの展開はリフレインの多いトランス的なつくりになっているので、
本作の中ではかなりキャッチーな曲だと思います。後藤秀人のストラトの音は音域的に美味しい
中高音が綺麗に出ていて、端正で素晴らしいと思います。お気に入り。

カチッとした堅いグルーブを好む傾向にある北川勝利には珍しく、レゲエのルーズなリズムを
取り入れた打ち込みレゲエ、#10プールは、あえてギターのカッティングを使わず、
低音域でリフを弾かせておいて、ピアノで淡々とコードを弾かせることで、
彼女のボーカルの冷ややかな感じとよく合わせていると思います。
ハーモニカのオブリガートはStevie Wonderのそれのような感じでこれも最高のセンスです。

Swing Out SisterのAndy Cornellがプロデュースした#11Dream A Dreamは、
冒頭にこきゅうとすのテーマをリフレインさせながらポエトリーリーディングで始まっていきます。
ミュートの効いたホーンのオブリガート、高い音圧のシンセベース、テレキャスターと思われる
カッティングの音は80sのリゾートミュージック(≒シティポップス)を思わせます。
中塚武作編曲の#12マジカル・ファンタジー・ツアーは生のストリングスをフィーチャーしており、
今までのソロアルバムの空気を一番良く伝えていると思います。
と思わせておいて、途中でローファイな電子音を混ぜてきたりと工夫が凝らされています。

北川勝利と岩澤祐穂の名コンビによる先行シングルのバラード#13君がいなくちゃだめなんだは、
美麗なストリングスの音の波の中で、へヴィーなタム回し、カラッとしたスネアなど
音色巧みにグルーブを作り出す河村"カースケ"智康のドラムスが際立っています。
アルバムのタイトル通り、青色に関わる海やプールといった表現がそこかしこに
見られている岩澤祐穂の作詞もこの曲では非常にシンプルで、
透明なボーカルと完璧に合っています。最高。

ラストを飾る#14Blue Avenue を探しては、Nona Reevesの奥田健介と西寺郷太の二人による
作詞作曲編曲の一曲で、#1に勝るとも劣らない滑らかなAORに仕上がっています。
千ヶ崎学のベースラインはシンコペートしたリフを中心に組み立てていて、
全体としては80s以降の堅めのグルーブになっています。打ち込みドラムとしては
随所でのフィルなどリアルに作ってあって、#1にはない、爽やかさの中にどこか暗くて
湿度のあるトラックとなっています。

国内外と正に贅を尽くしたミュージシャンを起用して作られた本作は、
フュージョン、AOR界隈でももっと注目されてもいいと思います。
ただし、プロデュースは基本的に北川勝利が担当しているため、
完全なる西海岸のスタジオミュージシャンの音という感じではなく、
モダンで、ニューウェーブやネオアコを経由した音になっています。
曲によっては打ち込み然としたものもありますが、アルバムの中で
さほど違和感を出さずに、むしろ良い清涼剤的な役割を果たしていて、
発売当初は賛否両論であったらしい、こきゅうとすも、
アルバムでは音が調整されて上手く溶け込んでいると思います。

オルタナティブロック前景化から90年代以降日本のポップスで勢いを
失っていたフュージョン~AOR/ACの系統のポップスが、声優のソロ作品という形で
世に出されることになるとは、世の中何が起こるか分からないと思いました。
兎にも角にも、声優ファンとかアニメファン、などという括りで見ることなく、
誰が聴いても良質と分かる一作になっていると思います。傑作。

こきゅうとす

君がいなくちゃだめなんだ

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  1. 2015/06/28(日) 03:03:58|
  2. 花澤香菜
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
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