私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(285)

Album: Industrial Zen
Artist: John Mclaughlin
Genres: Jazz, Jazz Rock, Electronica, Progressive Rock

Industrial Zen


イングランド、ヨークシャー州ドンカスター出身の作曲家、ジャズ/ロックギタリスト。
1942年生まれ。元々はスタジオミュージシャンの出身で、Rolling StonesやCreamのJack Bruceらの
作品のレコーディングに参加し、ソロデビューは1969年のこととなります。
その後、Tonny Williams(Lifetime, VSOP)に見出され、彼のジャズ・ロック指向が前面に出た
バンドであるLifetimeのメンバー(他にはAllan Holdsworth, Jack Bruceもメンバーでした)
として作品に参加することになります。この時期にはJimi Hendrixとのセッションも行っており、
その音源も残されているようです。こういった鮮烈なデビューをきっかけとして、
Miles Davisのエレクトリック期の作品であるBitches Brew(1969, Miles Davisの項を参照),
In A Silent Way(1969), Live Evil(1970), On The Corner(1972), Big Fun(1974),
A Tribute to Jack Johnson(1971)といった知る人ぞ知る作品群に参加します。
その後自身のバンドであるThe Mahavishnu Orchestraを結成した彼は、メンバーとして
Jan Hammer(Key)やBilly Cobham(Dr)らを迎えて、ジャズロックやフュージョンの元祖とも言うべき
サウンド、とりわけ自身がどっぷりと浸かっていたインド音楽の影響が強く打ち出され、
ファンクやジャズのリズムやインプロビゼーションにクラシックの和声を取り入れ、
ムーグシンセサイザーやツインネックのギターやギターシンセサイザーなど機材面でも積極的に
新たなものを求め、ハードロックのような歪んだ音も巧みに取り入れた、
極めて先進的な音像の作品を作り出していきます。
他にもAl Di MeolaとPaco De Luciaとのギタートリオでの活動や、Jeff Beckや
Chic Coreaとのプロジェクトなど、その精力的な活動は衰えるところを知りません。
彼の影響を受けたギタリストは非常に多く、Pat Metheny, Steve Morse, Eric Johnson,
Mike Stern, Al Di Meola, Shawn Lane,Scott Henderson, Omar Rodriguez(Mars Volta)など、
現在も第一線で活躍する数限りないギタリストとりわけフュージョン系の速弾きギタリストの
殆どに影響を与えていると言って過言ではありません。本作はソロ名義で発売された2006年作の18th。
年齢を考えると普通はテクニック的に衰えの訪れる時期のはずなのですが…
むしろ本作はMahavishnu Orchestra活動時の全盛期を髣髴とさせる超絶プレイの応酬を
楽しむことができます。ただサウンドとしてはジャズロックと言うよりもう少し
くだけたハード・フュージョンの印象が強く、ちょうど同時期に活動していたWeather Reportの
音にかなり近いイメージを自分は持ちました。
現代に彼らが降り立ったらこういう曲をやりそうです。
Mark Mondesirのシンセの音もZawinulを意識した部分を感じます。
参加しているゲストも非常に豪華で、
Bill Evans(Sax, Lee Ritenour, Miles Davis),
Gary Husband(Dr, Jeff Beck, Quincy Jones, Mike Stern, Al Jarreau),
Mark Mondesir(Dr,Key Jeff Beck)になんとVinnie Colauta, Dennis Chambers, Eric Johnsonという
豪華絢爛なメンバーを迎えています。Vinnie Colaiutaを始めとしてJeff Beckゆかりの人物が
多いのも納得ではあります。他にも、John Coltrane Bandの一員である名ベーシスト、
Jimmy Garrisonの息子で同じくベーシストのMatthew Garrison
(1970-, Herbie Hancock, John Scofield)や、当時弱冠22歳と言う若さの
Hadrien Feraud(1984, Chick Corea, Billy Cobham, Jean-Luc Ponty, Bireli Lagrene)
という二人の若手ベーシストのプレイは極めて冴え渡っており、
この大御所達のキレッキレの演奏の中でかなり際立っている、というのも忘れてはいけません。
本作の楽曲は、彼自身と関わりのあったミュージシャンや尊敬する人物に向けた曲という
テーマで作られており、曲名にその人物名が登場してきます。
#1For Jacoはやはり、JacoになりきっているHadrien Feraudの、息の長く鬼の如く速い
パッセージを弾きこなしていく緊張感あるプレイと、Gary Husbandのキーボードが
非常に印象に残ります。Bill Evansのソプラノサックスを中心にして難解なキメを連発した後、
長いベースソロへと繋がっていきます。名曲。ジャコもきっと浮かばれるでしょう。
重厚さ満載のVinnie Colaiutaのドラムスで始まり、後半からいつも通りの変態っぷりを
発揮し手数が爆発する#2New Blues Old Bruiseは、Eric Johnson(G)のあの
どこまでも透き通ったトーンのバッキングにMclaughlinが
速弾きしまくるという夢の共演が楽しめます。エフェクトを掛けた不穏なコーラスが、
アルバムジャケットのブルーで不気味な雰囲気を醸し出します。完全なるアンビエントになって、
Zakir Hussainのタブラ(tabla, 北インドの民族楽器)の入り、Mclaughlinのフレーズも
エスニックなものが増え、本領発揮と言う感のある#3Wayne's Wayへとシームレスに移行します。
ここではリズム隊はDennis Chambers(Dr)とTony Grey(B, 上原ひろみ)に変わり、
よりプログレっぽい音へと変わっています。饒舌なシンバルワークがとにかく気持ち良いです。
キーボードのループするフレーズに合わせてスピードアップしていく展開では、
これぞデニチェンというドラミングが聴けてアドレナリンが出まくります。
サックスのフレーズはさながらMike Sternのようです。
#4Just So Only More Soは、2:40あたりからMarcus Wippersbergによる打ち込みが
非常に好みのスネア音で、キラキラとしたシンセと、次第に力強くなるBill Evansのサックスで
盛り上がっていき、激しいジャズロックを鳴らしています。テーマとなるフレーズのバックで、
Matthew Garrison(B)がこれまた多様なフレーズとノリで鋭く切り返しています。
#5To Bop Or Not To Beは、完全なるミニマルテクノのフレーズを繰り出すOtmaro Ruizのシンセが
粒だった音で迫ってきます。その後はMatthew Garisonのベースがこのリフレインを弾き、
ギターやキーボードがこれをどんどん崩してフレーズにしていきます。
間を縫うようにして極限まで音を詰め込んだDennis Chambersの鋭いドラムス、ツーバスが
徹底的な攻撃を仕掛け続ける中で、次々とソロが回されていきます。恐ろしい緊張感です。
インド出身の歌手、作曲家のShankar Mahadevan(1967-)のボーカルが入った一際インディアンな
#6Dear Dalai Lamaは、#2のコーラスが所々で入ってきて統一感を演出しています。
ほぼアカペラで進行したのち、4:00あたりから忙しないタブラが入って疾走します。
サックスソロからデニチェンの激しいドラミングを起点にしてギターソロへと交代します。
#7Senor C S.はCarlos Santanaに向けられた曲なのでしょうが本人は参加しておられません。
この曲でもHadrien Feraudがベースを弾いていますが、やはり存在感が半端ではないです。
Mclaughlinも、後半のギターソロでは本作中では珍しくメロウなフレーズを弾いています。
お気に入り。それにしてもベースが凄すぎる…
#8Mother natureは、Shankar Mahadevanの巧みに音を伸ばしたり倍音を含ませたりした
スキャットをフィーチャーした打ち込みリズムの一曲で、
シンセのリフレインするフレーズが耳に残ります。
全体的にGary Husbandのくっきりとした音色のキーボードが非常に重要な役割を果たしており、
本作のキーパーソンの一人だと思います。
インド音楽からの影響が色濃く出たフレーズやシンセの近未来的な音、
それにフュージョン的で難解な中でも軽快で疾走感のあるリズム、
それらが噛みあって現代のジャズ・ロックとも、プログレとも付かぬ世界観を生み出しています。
彼の長いキャリアの中でも最高傑作の一つだと思います。

For Jaco

To Bop Or Not To Be


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  1. 2014/04/20(日) 22:57:06|
  2. John Mclaughlin
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今日の一枚(258)

Album: Ⅱ Grande Gioco
Artist: Albero Motore
Genres: Progressive Rock, Fusion, Jazz Rock, Psychedelic Rock

2 Grande Gioco


ギタリスト、プロデューサー、シンガーソングライターとして60年代初頭からイタリアン・ロックの
黎明期に活動を開始し、現在まで活発にリリースを続けているRicky Gianco(1943-)に見出され、
イタリア、ローマで1973年に結成されたプログレッシブ・ロックバンド。
メンバーはMaurizio Rota (Vo, Per), Adriano Martire (Key), Fernando Fera (G)
Glauco Borrelli (B, Vo), Marcello Vento (Dr,後のCanzoniere Del Lazio(72年から78年
まで活動していたフォークロック、プログレバンド)のメンバー)
という、後にイタリア国内で腕を振るう事となるスタジオミュージシャン5人です。
Albero Motoreとは、イタリア語でピストンの往復運動を回転力に変えるための
軸であるクランクシャフトを指すようです。
1974年作の1stにして彼らの唯一の作品です。本作は新宿のDisk Unionでたまたまジャケ買いした
作品の一つで、色々と調べてはみましたが情報のソースの殆どがイタリア語しかなかったため、
正確な情報をお書きできるかどうか定かではありませんが御了承下さいませ。
発売年に関しては、店頭の商品紹介では67年と言う手書きの表示があり、
Disk Unionの公式ウェブサイトによっては69年作品とも書かれていたのでもともと
ハッキリとしていないのであろうと思います。
私の持っているCDは2007年にリマスターされたイタリア輸入盤なので、
おそらく本国ではそれなりの知名度のあるバンドだと考えてよいと思います。
イタリアン・プログレと言って一般に思い浮かべられるようなスペイシーな音像ではなく、
むしろ作品の内容としてはロック色が強い作品で、
キーボードの派手な音遣いに見られるようなサイケデリック・ロックからの影響や、
アメリカのクラシックロックに多くあるようなギターリフの構造が見受けられます。
Marcello Ventoのドラミングは軽いながらも非常に手数が多く難しいことをやっていますし、
他のメンバーも当時としてはかなりテクニカルな演奏難度の高い曲が多いことも特徴と思います。
とりわけクラシック・ロック色の強い#4Landruや、カントリーからの影響が色濃い
#6Nel giardino dei LillaにはFrank Zappa或いはSteve Winwoodの在籍していた
ブリティッシュ・プログレバンドのTraffic(1967-1974)にあるようなイディオムが散見されるのも、
特徴的と感じます。
他にも#7Capodanno '73はロック寄りのフュージョンとも取れるような音を感じ取れて、
なかなか時代の先端を行っていた音であることを想像させてくれます。
#1Cristoforo Colomboは、左右に振られたパーカッシブなキーボードのリフと、
モータウンっぽい香りのするGlauco Borrelliのモコモコしたベースラインがクールです。
ギターソロはストラトらしい透き通った音色でブルージーで、
弾き過ぎていなくてかっちりしたグルーブがあります。 プログレじゃないですが良い曲です。
最後1分30秒はシャウトがあり、キーボードのファンキーなロングソロがあります。
フェードインと共に始まる#2Le Esperienze Passateは、フォーキーなストロークに乗せて
軽やかなキーボードソロが聴ける前半部から左右に分けられた歌の掛け合いと、
スペイシーなキーボードで静かに進行する後半へと展開してきますが、
バスドラムが生み出すリズムはかなり入り組んでいて、プログレ臭を漂わせます。
#3Una Vita Di Notteは、軽くはありますが切れ味鋭く攻撃的なフィルが印象的なドラムスが
暴れる中でピアノソロが光ります。コーラスのハーモニーにはBeatlesの影が見え隠れしていて
時代の音と言う感じです。
#4Landruはシャキシャキしたトレブリーなリズムギターと歌うようなベースラインが堪らない
クラシックロックですが、ドラムスは相変わらずフュージョン的な疾走感があり、
軽快で手数が多く、緊張感があります。ノリノリな女性コーラスと、Maurizio Rotaのパワフルで
しゃがれたボーカルが綺麗な対比をなしています。アウトロの饒舌なキーボードソロ、
ワウを絡めたサイケデリックなギターソロと熱いドラムが絡みつきます。最高。
カントリーっぽい速弾きのギターソロと、哀愁漂うメロディにイタリア語の巻き舌な発音で
掻き立てられる#5Israeleは、エフェクトの掛かったコーラスで不気味に進行したり、
激しくフランジャーの掛かったギターソロでサイケデリックに終わっていきます。
#6Nel Giardino Dei Lillaは、左チャンネルを流れるアコギの高音の透き通ったバッキングと、
消え入りそうなハーモニカによるフォーキーなソロが印象的です。
カンタベリーっぽい音像も魅力的です。
2分40秒の短いインスト#7Capodanno '73は、メンバーのテクニックが炸裂するフュージョンで、
クリーンのカッティングを絡めたリズムギターと、煽り立てるようなスネア連打が作る
疾走感あふれるリズムに、火花の散るようなキメを繰り返していきます。これもお気に入りです。
たまたま購入するに至った作品で、レコードから音を起こしたためか所々にノイズが
入ってしまっていますが、Sgt. Pepper'sのようなサイケデリックな前衛性もありながら
フュージョン風の洗練された曲や、フォーキーで温かい曲もあって、
今聴いても斬新さのあるサウンドだと思います。正に掘り出し物の名盤でした。
これだからジャケ買いはやめられません。

Cristoforo Colombo

Le esperienze passate

Landrù

Israele

Capodanno '73

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  1. 2014/02/19(水) 21:48:31|
  2. Albero Motore
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今日の一枚(248)

Album: Evidence Humanity
Artist: Mike Keneally/Marco Minnemann
Genres: Progressive Rock, Fusion

Evidence Of Humanity


Mike Keneallyは、アメリカ、ニューヨーク出身の作曲家、ギタリスト、マルチプレーヤー。
1961年生まれ。1988年にはFrank Zappanのツアーメンバーとしてギター、キーボードの
二つを担当し、その卓越したテクニックでZappa自身から相当な信頼を得ていたようです。
93年のFrank Zappaの死後には息子のDweezil Zappaのサポートメンバーや
Steve Vai, ULVER(ノルウェーを代表するブラック・メタルバンド)のサポート、
そしてソロ活動を行ってきました。
Marco Minnemannは、ドイツ、ニーダーザクセン州ハノーファー出身のドラマー、
作曲家、マルチプレーヤー。1970年生まれ。元Yesのキーボーディストである
Eddie JobsonのプロジェクトUKZ, Guthrie Govan率いるプログレバンドのAristocrats
への加入や、ポートノイ脱退後のDream Theater
後任ドラマーオーディションへの参加などで近年その名を耳に多いすることの多い人物です。
ソロ活動としては、Normalizerというプロジェクトを行っており、本作も、
そのプロジェクトによって作られた作品です。2010年作。
これは、Marco自身が演奏したドラムソロの音源を公開し、それに対して
複数の作家が曲を付けて作品を作っていくというものです。
#1Respect?は、アコギの生々しい刻みと緩やかなシンフォニックなシンセが、
攻撃的なドラミングと明確な対照をなしています。
後半はFrank Zappaを思わせるフレージングが随所に出てきます。
#2Evidence of Humanityは、一転して冒頭から強く歪んだ変拍子バリバリのリフがザクザクと
刻まれていて緊張感が張り詰めた短い一曲です。Marcoの足技は人間離れしています。
ポストロックのような幻想的なシンセと、背後でドコドコしながらシンバルで遊ぶドラムスに
アコギが絡みつく#3Three People Run Naked Through Schoolから、
#4Tooth and Cold Stone Pewはリズムを極めて複雑にするパーカッションや
ワウの掛かったギターの音色がこれまたZappaのようです。最高。
後半のベースラインで完全に拍を見失う#5Nowから、
#6Bastards into Battleはフリーキーな速弾きが飛び出します。正に変態そのもの。
いきなりポップになる#8Bad Fridayは、ギター以上にシンセが歌っていて、
#9Rough Time at The Hotelではペダルスティールの独特な音色が楽しめます。
ピアノが饒舌に冒頭のキメで魅せる#10Whoaは、アコギのシャリシャリした音や
タッチノイズの穏やかな一曲と思いきや後半になるにつれドラムは激しくなり、
タイトルを唱える#11Kaaに突入します。シルキーで艶のある音色で、
フレーズはエモーショナルで、泣いています。これも良曲。
ちょっとカァカァ言い過ぎですが…
本作のハイライト#12Clown Removalは、幻想的なオルガンのバッキングのもと、
独特の浮遊感のあるフレージングで奥行きのある前半部から、
一気にドラムの手数が増え、マシーンのような連打の中が空間を支配する後半部は
一瞬たりとも気が抜けません。
#14Apex Musicは、うねりにうねるキーボードと独特なタイム感のリフが不思議なグルーブを
作ります。#16Tryingは、どこかエキゾチックな空気の流れるフレーズが、
リバーブの掛かった個性的なトーンと完璧に噛みあっていて壮大なストーリーを感じさせます。
付属のDVDでは、Normalizerを用いたインプロビゼーションによるセッションの模様と
インタビューが100分近く収録されていて、ファンには堪らない仕様になっています。良作。

Evidence of Humanity (DVDの収録内容の一部)

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  1. 2014/01/26(日) 00:08:54|
  2. Mike Keneally
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今日の一枚(245)

Album: 天鵞絨症奇譚
Artist: KENSO
Genres: Progressive Rock, Fusion

天鵞絨症奇譚


1974年に現役の歯科開業医、大脳生理学者の清水義央(G)を中心として、
神奈川県相模原市で結成された日本のプログレッシブ・ロック/フュージョンバンド。
2002年作の7th。本作まではドラマーとして村石雅行(Dr)が参加しています。
他にもバークレー音楽大学のジャズ作曲家出身の三枝俊治(B)や
東京音大作曲科出身の光田健一(Key,ex Stardust Revue,小田和正etc)など、
現代を代表するスタジオミュージシャンやソングライターを有する彼らは、
フュージョン指向のスムースな音像でありながら、変拍子を多用した緻密なリズム構成と
キャッチーでメロディアスなテーマが同居した非常に独特な音楽性を見せています。
特に本作は、以前に紹介したフュージョン、アンビエント色の強い時の丘(1991)
と比較して、ハードロック色の強くエッジの効いた清水義央のギタープレイが
印象的なものになっています。
しかしながら、テクニカルでキャッチーであるだけでなく、
楽曲ごとにガムランやフラメンコなどの民族音楽やテクノ、ノイズからの影響が見て取れ、
かなり興味深いことをしていると思います。
今回はゲストとしてフラメンコ歌手の川島桂子が参加しています。
タイトルの天鵞絨症(びろうどしょう)とは、Bombycosisという珍しい精神疾患のことを
指しているようで、白昼夢と幻視を伴う遺伝性疾患ということだそうですが、
筆者は聞いたことがありません。
(CD付属のライナーに精神病理学的な詳細がご丁寧に説明されていて思わず笑みがこぼれます)
#1精武門は、いきなり強く歪んだギターリフから始まるハードロックインストです。
徐々にテンポアップしていきながらキーボードの速弾きソロへと繋がっていきます。
アウトロはアコギのゆったりとしたストロークで終わっていく展開の多い一曲。
#2禁油断者マドリガルは、レスポールらしい艶のあるクランチでの
キーボードとのユニゾンに始まり、SEが僅かに入って終わっていきます。
#3韜晦序曲は、揺れるキーボードの印象的なキメの多い前半部から、
パーカッションが入りポリリズミックに展開します。
#4木馬哀感は、ブルースロックっぽいテーマを中心としながら、ピコピコしたキーボードがあり、
クラシカルで澄み切ったなピアノソロが飛び出してきます。
#5Tjandi Bentarは、環境音がそのまま入った冒頭から、東南アジアっぽいと言えばいいのか
何と言えばいいのか解らない不思議なフレージングのキーボードが頭に残ります。
2分50秒あたりから一気に早くなってベースラインが際立ちます。
村石雅行の軽快で歯切れのいいドラミングが冴えわたっています。名曲。
#6謀反は一転してシンプルなロックインストかと一瞬思わせますが、
やはりギターのフレーズは捻くれております。
#7夢想用階段は、ボイスサンプリングの早回しと思われるループと、
(何を言っているかは聞き取れません)ノイズが所々に入ってきながら、
シタールがメロディを弾いていくなんとも不気味な一曲です。
#8Echi Dal Foro Romanoは、キラキラしたシンセのアンビエントで柔らかい前半から
フィルを起点にして激しく展開します。抜けの良い三枝俊治のベースは最高です。
クリーンのカッティングでバッキングされたキーボードソロから
シンフォニックに、ドラマティックに終わっていきます。
#10太郎と言う生き方は、ドラムンベースのようなフレーズをマシーンのように叩く
ドラムスに対して、キーボードのテーマは伸びやかです。
ビブラフォンのような音のシンセも耳が心地いいです。
#12Isolated Jiroは、如何にも彼ららしいフュージョン寄りのプログレといった感じで、
溜めるようなドラミングでどっしりと進行していきます。
ここでも途中で奇怪なキーボードソロが一際目立っています。
#14陰鬱な日記は、ベースラインが動きまくりバキバキのスネアの残響が空間を支配しています。
このピアノソロは短いですが圧巻だと思います。
テーマを弾くギターの艶のあり太いトーンは好みの音です。
曲の最後には川島桂子の、ハスキーで渋いカンテが完璧に嵌っています。これも名曲。
#15自他融解は、幻想的なキーボードに覆いかぶさるようにして、
アナログテレビのスノーノイズのような音が入ったこれまた不思議な一曲。
ともすれば変わったリズムや民族楽器の使用といった特徴をなぞっただけで、
形骸化していると批判されがちなプログレの中で、彼らの作品は常に独創的な視点と
示唆に富んだ、好奇心をくすぐるようなコンセプトがアルバム全体を流れており、
最高の演奏テクニックがその心を完璧に形にしている、
真の意味で「プログレしている」プログレバンドの一つだと思います。
清水氏のブログによると、今年は新作を出す予定があるようで、
筆者はとてもとても楽しみにしております。

禁油断者マドリガル

Tjandi Bentar

Echi Dal Foro Romano

太郎と言う生き方

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  1. 2014/01/15(水) 23:35:06|
  2. KENSO
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今日の一枚(207)

Album: Dimensionaut
Artist: Sound Of Contact
Genres: Progressive Rock

dimensionaut.jpg


2009年にアメリカ、フロリダ州マイアミで結成されたブリティッシュ・プログレに
ルーツを持つプログレッシブ・ロックバンド。
2013年作のデビューアルバム。あの伝説的なプログレッシブ・ロックバンドである
GenesisのPhil Collins(Dr, Vo)の実の息子であるSimon Collins(Dr, Vo)を中心として
結成されたバンドの1stアルバムですが、彼の歌声は一聴して父であるPhil Collinsの声を思わせるもので、
往年のGenesisファンの方であれば感慨深いものがあるのではないかと思います。ドラミングのスタイルも、
ロック・オリエンテッドでパワフルな音色を
素地としながら、複雑なキメやフィルも難なく叩ききっており、ポリリズムを多く
取り入れたリズム構成を中心とした非常に面白いものだと思います。
このあたりのドラマーとしての特徴や個性も、やはりかなり父に似た部分を持っていると
言えそうです。Steve HackettやPhil Collinsとの共演やGenesis参加を通じて、
70s~80sのブリテッシュ・プログレの何たるかを極めて深いレベルで解しているように感じます。
楽曲はインストの#2のようにかなり高度な演奏テクニックを必要とするものもありますが、
全体としてキーボード主体に作られている部分があってシンフォニックでキャッチーな
ものが多い印象です。
#1Sound of Contactは2分程度の短いインスト。冒頭の歪んだギターの音色から
ハードなものを想像しますが、一気に密室的なコーラス定位とアコギのストロークが
印象的なパートへと移っていきます。キーボードの音色はポストロックっぽさもあります。
#2Cosmic Distance Ladderは、変拍子ゴリゴリのリズムにメロディックなリードギターが絡み付く
ハードロック寄りのインスト。
リフはプログレメタルっぽさがありDream Theaterをもっとスペイシーでクラシカルな
プログレ寄りにしたらこんな感じになりそうという曲。ドライブ感溢れるドラミングもお気に入りです。
#3Pale Blue Dotは、アンビエントなキーボードのフレーズに始まりサビのメロディ
のリフレインが印象的な一曲です。ギターのバッキングは如何にもハードロック的で
インスト曲に比べると圧倒的に聴きやすいと思います。
#4I Am Dimesionautは、Simonの父譲りの透き通ったファルセットがメロウな冒頭から
徐々に盛り上がっていくミドル。これもやはり歌のメロディはキャッチーですが、
曲間のドラムソロになると一気に複雑さが増してプログレらしくなっていきます。
フィルも無駄な音がなくかなりへヴィーで強烈な存在感を放っています。
#5Not Coming Downは、一気にポップス色を湛えた楽曲へと変わっていきます。
トラックはキーボードとアコギが前に出ていてスペイシーな音像です。
チェロやアコギ、オルガンのアコースティックな肌触りが異色な一曲。
アウトロのドラムスが地味に激しいフレーズを叩いているのが面白いです。
#7Beyond IlluminationはボーカリストとしてHannah Stobartを迎えており、
甘く無垢な彼女のボーカリゼーションが、SFをテーマとした本作の雰囲気に
見事に溶け込んでいます。Simionの方は共鳴の多い力強いものになっていて
好対照をなしています。レゲエっぽいリズムアプローチも面白い佳曲。
#9Realm of In-Organic Beingsは、ピアノのループにソウルフルなシャウトや
スキャットが入る短いインスト。
エッジの立ったドラミングとノイズ交じりのボーカル処理が一風変わっていて面白いです。
#10Closer to Youは、ピアノ弾き語りを中心にしたバラード。ドラムの入りから徐々に盛り上がっていきます。
トレモロの絡んだグランジっぽいギターソロまで飛び出します。
バッキングのギターのフレーズもどこかシューゲイザーの香りがする音色です。
最後を飾る#12Mobius Slipは19分にも及ぶ大作主義な一曲で、最初の3分間はImages & Wordsや
Yesの90125を思わせるようなスペイシーで壮大な分厚いオルガンとキーボード中心のパート、
その後静寂が訪れシンバルの中を枯れたギターが鳴るポストロックなパートを挟み、
クリーンのカッティングが鳴る中でボーカルが入ってきます。
スパニッシュなアコギがあり、一気にキメの多くメタリックでハードなパートに移っていきます。
強くエフェクトの掛かったボーカルと粒の揃った刻みが気持ち良いです。
そしてシンバルで遊びまくっている鬼畜なドラムソロへと繋がっていきます。
この辺のセンスもPhil Collinsを思わせる部分があってニヤリとしてしまいます。
音もへヴィーで素晴らしいです。
そしてDave Kerzner(Key)によるイタリアン・プログレっぽさのあるシンフォニックなパートは
次第にクライマックスに達していきます… 文句のつけようもありません。
80sのブリティッシュ・プログレの複雑さの中にあるポップネス、
イタリアン・プログレのような幻想的なキーボードの音色、
それにモダン・へヴィネスやシューゲイザー、ポストロックにオルタナと、
現代的なロックの香りを纏わせ、アップデートされた現代人のための正統派プログレの旗手。

Cosmic Distance Ladder

I Am Dimesionaut

Beyond Illumination

Mobius Slip

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  1. 2013/10/17(木) 14:17:05|
  2. Sound Of Contact
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
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