私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(288)

Album: Mass Confusion
Artist: Various Artists
Genres: Techno, Minimalist Experimental, Electronica

Mass Confusion


本作は以前私的名盤紹介で取り上げました、ドイツ、ローゼンハイムで結成されたのテクノユニット、
Funkstorung(1996-)のメンバーであるMichael Fakesch(1975-)関連のコンピレーションです。
(詳細はMichael Fakeschの項を参照)90年末から00年代初頭にはヒップ・ホップへの接近が見られ、
00年代以降は、アナログシンセサイザーを多用したアシッド・ハウスへと傾倒したサウンドを
指向しているユニットであった彼らですが、メンバーのMichael Fakeschはドイツ国内で
インディペンデント・レーベルであるMusik Aus Stromを運営しており、
Funkstorungのもう一人のメンバーであるChris de Lucaや、Fakeschと近しいミュージシャンの
作品もここからリリースされています。2002年作。
彼らは、フランスの電子音楽・現代音楽作家であるJean Michel Jarre(1948-)
, NY出身のヒップホップグループであるWu-Tang Clan、さらにはBjörkといったアーティストへの
リミックス提供でも知られており、それらはオリジナルアルバムの中に収録されています。
本作に収録された楽曲はまず、Fakeschの友人であるFunckarma
(Don FunckenとRoel Funckenという兄弟によるユニット, 1995-)の二人によってある程度
選曲されており、そこからFunkstorungの二人が収録曲を絞り込んでセレクトした
という形をとっています。
全体として非常にメロディアスで、録音も生々しく聴きやすい印象を受けます。
Funkstorungのオリジナルよりも聴きやすいと感じます。
繰り返しが多く、リズムコンシャスでかつミニマル指向のサウンドと考えてよいと思います。
Manchester出身のユニット、Metamaticsによる#1Giant Sunflowers Swaying In The Windは、
ローファイでオルガンのような残響感のあるシンセが頽廃的な雰囲気を演出します。
低音の強調された瑞々しいキックはミニマル的で、波打つように入ってくるトレブリーな音色が
静かに不安を掻き立てます。お気に入り。
Lusine Iclによる#2Risaは、抜けの良いスネアが作る短いループが徐々に断片化されていく
リズムコンシャスで明るい雰囲気の一曲です。ブレイクビーツとなった中間部からは、
極めて低いベース音が目立ち始めてどっしりと進行していきます。
ハウリング音のようなノイジーな高音が刺さり、ガチャガチャした機械音のようなSEが、
レイド・バックしたファンキーなリズムにアクセントを与える
Stars As Eyesの#3Black Achievementも良い。
ファミコンのような音のシンセがジャジーにフレージングするバックで、
ソリッドなリズムが入ってくるXelaの#4Streetlevelは、音像こそアンビエントですが、
やっていることはさながらジャジー・ヒップホップのようでもあります。
Autophonicによる#5Mind The Dotは、サンプリングされた男性の低音ヴォイスが
フィーチャーされており、そこにノイズの入った高音のシンセと、インド音楽のようなフレーズを
奏でるサックス、釘を打つような音のSEがランダムに入ってきてカオティックなグルーブを
作っています。お気に入り。
本作の編集に活躍したFunckarmaによる#7Kobaltは、冒頭に入ってくるリズムパターンを執拗に
繰り返しながら、元スクラッチDJの彼ららしく、軽やかにこのテーマを切り崩して進んでいきます。
極めてリズムコンシャスですが、途中からはアンビエントなストリングスが遠くから鳴って来ます。
リズムのループと、このストリングスが入れ代わり立ち代わり前に出て行きます。
Adam Johnsonによる#8Baquelchは短い一曲ですが、AMラジオのようなノイズの混じったトラックと、
メロディアスなシンセが途中からギターのような音になっていく変化が楽しい。
本作にバンドサウンドで花を添えるTomato Weirdoの#10La Salle De Bainは、
一際疾走感のあるドラムンベースなリズムと、歌心のあるベースラインがジャジーな空気を
足していて素晴らしい。
Mr.Projectileによる#12Less Math, More Musicは、本作の中でも特にキラキラとしたシンセの
メロディアスさやシンプルなリズムトラックですっきりとしてポップな一曲になっています。
元々はAutechreのような、現代音楽色の強いテクノから聴き始めた私にとって、
電子音楽に対してどこか退屈な、というか理解し難い印象を持っていましたが、
Michael FakeschやFunkstorungの音楽は、黒人音楽に近いリズムの面白さに伴って、
メロディアスなテーマやジャズっぽいハーモニーが楽曲の中にあったりしてとても
馴染める、というか自然体で聴けるように感じます。
頽廃的で無機質な音なのに、どこかノスタルジーを感じるような、不思議な気持ちになる一作です。

Giant Sunflowers Swaying In The Wind


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  1. 2014/05/04(日) 01:59:59|
  2. Funckarma(Various Artists)
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今日の一枚(262)

Album: 音楽図鑑
Artist: 坂本龍一 
Genres: Experimental, Electronica, Techno

音楽図鑑


東京都中野区出身の音楽プロデューサー、作編曲家、キーボーディスト、ピアニスト。
1952年生まれ。東京芸術大学大学院修士課程修了。
YMOでの活動だけでなく、結成以前のスタジオミュージシャン
(大瀧詠一、山下達郎、大貫妙子、細野晴臣らの作品に参加)としての活動、
ソロ活動、映画音楽での楽曲提供など、ここで語り尽くすことは不可能に近いほど
幅広い活動をしており、政治思想的な活動も多い彼ですが、以前(といってもかなり前です)
彼のソロ2ndであるB-2 Unitのレビューを書いてから、
他にも80年代のソロ作品を何かしら書きたいと考えておりました。
1983年にYMOを解散(散開)した翌年、1984年作のソロ5th。
テクノやテクノ・ポップ、ニューウェーブ界隈での活躍が知られ、
クラシックを自身のルーツとする彼ですが、
演奏者としてはR&Bやファンクのような黒人音楽的なプレイから
7thの未来派野郎(1986)で見られるようなフュージョンっぽいプレイをしていた時期もあり、
楽曲によっては、沖縄音楽的(YMOの作品にも時折見られますが)であったり
ボサノヴァ的であったり、或いはパンク・ロック的であったりするようなこともあるなど、
作品ごとに非常に振れ幅が大きく、前衛的な、実験的な音楽への取り組み方と考えるよりは、
関心の赴くままに、既存の音楽のスタイルの探究と、作品の中でのその音楽性の統合を
自身の目標として、音楽活動を行っていたように感じます。
本盤を選んだのは、当時坂本がレコーディングを行っていた隣のスタジオで
山下達郎が妻である竹内まりやのソロ作Varietyのレコーディングを行っており、
そのことがきっかけで数曲に達郎がギターを弾いているから、というのもあります。
他にもYMOの高橋幸宏、細野晴臣に、大村憲司、近藤等則、清水靖晃、
ムーンライダーズの白井良明と武川雅寛など多彩なスタジオミュージシャンが参加しています。
立花ハジメがデザインした、ピアノを弾く坂本の影が蟻の形をしているジャケットは、
自分をハタラキアリに喩えて表現したものということです。
タイトル通りチベットの少女のダンスをイメージしたという#1TIBETAN DANCEは、
ハンドクラップとタンバリンの入った複雑なイントロから、
正確無比で抜けの良い高橋幸宏(Dr)のドラムスと、スラップを絡めた歌う細野晴臣(B)ベースという
リズム隊の作るゆったりとしたリズムに、大村憲司(G)のカッティングが随所に絡みます。
メロディ自体は極めてシンプルですっきりとした音です。
至る所にテープの逆回しによるフレーズの構築が見られるのも興味深い所です。
#2ETUDEは、淡々と刻まれるビートに、ジャズというよりはフュージョンっぽい軽快さのある
サックスがメロディを吹いています。キラキラとしたキーボードのリフが前に出てきて
スラップベースでファンキーになったかと思うと、
一気に山木秀夫の叩く4ビートへとリズムチェンジし、また元に戻っていきます。
#3PARADISE LOSTは、John Miltonの同名叙事詩から取った一曲で、
ヤン富田の叩くスティールドラムの堅く弾けるようなレゲエのリズムに、
裏拍でカッティングするギターは山下達郎が弾いています。
ブロウが特徴的なトランペットは、フリージャズ界隈で活躍する近藤等則が吹いています。
ノイズの入ったフリーキーで妖しい魅力を放っています。
#4Self Portraitは、高橋幸宏のストレートな8ビートにピコピコしたシンセのリフと、
達郎の声をサンプリングしたというシンセがメロディを奏でています。
他の曲と比べて非常にはっきりとした進行ですが、音像には浮遊感があります。
#6M.A.Y. IN THE BACKYARDは、手数の多いマリンバの奏でる、丸みのあって生々しい
メロディが左右に振られて広い空間を感じさせるのに対して、
強くリヴァーヴの掛かったシンセと細切れに入ってくるSEが強烈な存在感を
放っています。4分が過ぎたあたりで機械音のようなノイズが入ったりと不安を掻き立てる
ピアノのフレージングも相まって得も言われぬ不気味さがあります。お気に入り。
#7羽の林では、山下達郎のコードカッティングと、古典的なミニマルっぽく配置された
パーカッションが、ドラムスの作るシンプルなリズムパターンと絡みついていて、
リズムに独特な奥行きが出現しています。ポエトリーリーディングに使われている詩は
Peter Barakanが翻訳しているようで、当初から交流があったとは知りませんでした。名曲。
#9A TRIBUTE TO N.J.P.は、ジャズっぽいメロディをサックスとピアノで奏でていく無調の曲で、
N.J.P.は韓国系アメリカ人の現代芸術家であるNam June Paik(1932-2006)を指しているようです。
一部彼自身の声がサンプリングされています。
ミニマルアンビエントの#10REPLICAは、タイプライターの音をサンプリングして作られた
リズムに、種々の管楽器(ホルンでしょうか…)の作るクロマチックなベースライン淡々と
ウォーキングしています。
#11マ・メール・ロワは、子供達の合唱によって流れる主旋律に、コラージュされるようにして
入る近藤等則のサックスとシャッターが閉まる音を高くしたようなSEが時折入ってきます。
筆者には幽玄さのある東洋的なメロディに聴こえます。
#12きみについては、1分30秒近くから自身のボーカルが入り糸井重里の歌詞を歌っています。
フルートの繊細なリフと疾走感のあるベースライン(坂本自身が弾いています)が印象的です。
#13TIBETAN DANCE (VERSION)は、#1のリミックスですが、中間部では山下達郎のあの
テレキャスのジャキジャキしたカッティングが配されていて、耳が気持ちいいです。
以前書いたB-2 Unitや1stの千のナイフのような刺々しい前衛性は若干削がれている感はありますが、
それでも、各楽曲ごとに様々な国、民族の音楽をミクスチャーにしながら、
当時最新鋭のサンプラーをフルに活用された音作りがなされていて、
初めて聴くにも最適なポップさを兼ね備えた大傑作だと思います。
坂本の80年代の各ソロ作品は、毎回音楽的なコンセプト、やりたい音楽の像が
明瞭に現れていて、それを実現するだけの機材とミュージシャンが揃っていた
奇跡の連続であったと考えて、間違いないと思います。

TIBETAN DANCE

ETUDE

Paradise Lost

Self Portrait

M.A.Y In The Backyard

羽の林で 

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  1. 2014/02/26(水) 00:42:16|
  2. 坂本龍一
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今日の一枚(211)

Album: Computer World
Artist: Kraftwerk
Genres: Techno, Progressive Rock

Computer World


1970年に西ドイツ、デュッセルドルフで結成された電子音楽/テクノ/プログレッシブ・ロック音楽グループ。
デュッセンドルフ音楽院にて即興音楽を学んでいたRalf HütterとFlorian Schneiderを中心として
結成されたKraftwerkは、シンセサイザーを用いた観念的で抽象的で実験的な音楽性を持つグループとして
現在でも圧倒的な知名度を誇っていますが、彼らの音楽の根底には、黒人音楽やプログレッシブ・ロックからの
影響を同時代的に受けたクラウト・ロック(ジャーマン・ロック)への意識が常にありました。
そういった意味で、機械的な、実験的な手段を用いて制作された無機質で、冷ややかな虚脱感のある
彼らの楽曲の中には、どこか人間らしいグルーブの感覚や奇妙なポップネスが存在しています。
74年に4thのAutobahnが大ヒットを記録してから、Trans-Europe ExpressやThe Man Machineといった
彼らの代表作と呼ばれるアルバムでは、社会的なメッセージや皮肉を強く込めたジャケットイメージや、
巨大なアナログ・シンセサイザーを会場中に並べて行われたライブパフォーマンスなども相まって、
アート・ロックや前衛音楽としてのイメージが強く、
ダンス/クラブ・ミュージック色の濃い本作(81年作の9th)は、発売当初厳しい目で評価される
ことが多かったようです。
勿論上記の作品群も本作も、現代のポピュラー音楽の観点から見て、十二分に評価されるべき作品だと思います。
AutobahnやThe Man Machineが、プログレッシブ・ロックを電子音楽の立場から再構築するという
複雑で暗澹とした空気を湛えた側面が強いのに対して、本作では特にリズム面での
(厳密にはハウス・ミュージック的であるというべきか)ファンキーなアレンジや
リフレインの多用というような、現代的なテクノ・ミュージックやクラブ・ミュージック、
或いはヒップ・ホップのエッセンスにもなり得るようなグルーブが作品全体に満ち溢れています。
メロディも非常にポップになり、機材の進歩のおかげかリマスターのおかげか、
より抜けの良く立体感のある音で楽しむことができます。
81年というと、日本ではYellow Magic OrchestraがTechnodelicを発売した年でもありますが、
こちらがいわゆる音響系ポスト・ロックやニューウェーブといった(これはB-2 Unit/坂本龍一でさらに
ポスト・パンク寄りのアプローチとして実現しています)方向へのサウンドでありました。
いずれにせよ共通しているのは、「非人間的なビートによる非人間的なグルーブの構築」という
発想ではないかと私個人は感じています。
#1Computer Worldは、シーケンサーによる画一なビート、メロディをなぞるように繰り返される
ベースラインと、殆ど無意味な単語の羅列のよう(に聞こえるがよく考えると現代に対する警鐘に
聞こえなくもない)、エフェクト処理された声が不気味なグルーブを作ります。
Buisiness, Numbersのところのエフェクトが凄く気になる…
#2Pocket Calculatorは、ファミコンみたいな音が鳴る右チャンネルと、延々と同じメロディを
鳴らすサスティーンの短いピコピコシンセが気持ち良いです。
発売された国の言語で本曲がボーナス・トラックで収録されているのがまたなんとも面白い。
ダンサブルでクールです。
#3Numbersは、ファンクっぽいハネ気味のビートと耳を交互に撫でるキュッキュッとした音で
耳がくすぐったい一曲。色々な言語で数字を数えるだけというまたなんとも意味不明な歌詞。
イチッニッサンシュィと言われてしまうと日本語ではないように聴こえます。
#5Computer Loveは、当時シンセサイザーにVelocityの機能が搭載されたこともあって、
低音部のボリューム奏法のような音量変化や、淋しげなメロディのリフレイン、
そして意外にも手数の多いリズムトラックが不思議な焦燥感を与えます。
#6Home Computerはベースラインのリフが最高にカッコいいです。
展開も多くメロディにエスニックさを感じるのもお気に入りです。後半のインスト部分は彼ららしい
暗さや漠然とした不安感を湛えた音になっています。
#7It's More Fun To Computeは冒頭部に曲名を繰り返した後はひたすらインスト。
やはりどこか不気味な空気を纏っています。何とも言葉にしづらい…
私自身電子音楽は殆ど素人で詳しくないですが、間違いなく本盤には飽きのこないグルーブがありますし、
それを人間の演奏によらずに生み出そうとするには、とてつもない時間を注ぎ込んで
一音一音、各フレーズを配置していくかということを考えねばならないのだと思います。
"Communication"というフレーズが頭の中をループしています。
もう一度、聴いてみて、歌詞をきちんと解釈してみようと思います。

Computer World

Pocket Calculator

Numbers

Computer Love

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  1. 2013/11/04(月) 01:47:52|
  2. Kraftwerk
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今日の一枚(155)

Album: Flashmob
Artist: Vitalic
Genres: Techno, Electronica, New Rave

flashmob.jpg


フランス、ディジョン出身の音楽プロデューサー。1976年生まれ。
00年代後半から、ビッグ・ビートからの流れを汲んだ、ダンス・ミュージックとしての
アナログ・シンセを活用した電子音楽に、ロックの要素を取り入れた音楽性を持つことで知られる
ニュー・レイブ系のミュージシャンの一人として数えられることが多いです。
2009年作の4th。レイブとは言っても、Daft Punkのようなポップネスもありますし、
勿論ギター音のサンプリングによるキレの良い音色も楽しむことができます。
そういった意味で、彼の作品群はパンク色の強い作品だと感じます。
ヒットのきっかけとなった1st、OK Cowboyと比較すると、エッジの効いたロック色は、
本作ではやや薄くなっており、そのかわり80s的なディスコ・ミュージックに近い
パターン・ミュージックのグルーブ感を追求して制作されていると言えそうです。
ボイス・ヴォコーダーを用いたアシッドなロボット声から、
如何にもリズムマシンで作ったバシッとしたキック、
はたまたR&B的なボーカルの導入といい、アルバム随所に様々な音楽からの影響が窺われますが、
一貫してポップで聴きやすく、中毒性があるようにアレンジされています。
ただその中でも、やはり最も強い影響を感じるのはKraftwerkだと思います。
特に複雑なリズム構成の中にファンキーさとポップネスを兼ね備えた、
Computer Worldは本作の源流にある作品のように感じます。
スペイシーなシンセの音色や、どことなく哀愁が漂っているメランコリックなメロディは、
彼らならではのものだと思います。
歪んだシンセの音が耳にへばりつくようで、やはりテクノはヘッドフォンで聴いた方が気持ちいいですね。日本でPVが撮影された#2Poison Lipsはキャッチーなメロディと80s的なトランス・サウンドで
フロアを盛り上げること間違いなしのアンセムだと思います。
ボイス・ヴォコーダーが効果的に活用された表題曲の#3Flashmobは、
左右への音の振りが激しく非常にサイケデリックで、中毒性のある一曲です。
#5Stillは、奇妙な音色のシンセから始まり、ソリッドなリズムトラックがもたれたグルーブを
定位しています。とにかく奇妙なメロディを奏でるキーボードから耳が離せません。
加工された男女のボーカルが、サウンド・コラージュ的に用いられており、リフレインが
非常に印象的です。
陰鬱なメロディと、徐々に曲を盛り上げつつ背景を流れるストリングス、
良く分離されたシンバル類の音が静謐で淋しげな雰囲気を醸し出す#8Allan Delonは、
本作の中でも彼らの静的な部分での魅力が凝縮されています。
#12Station Mir 2099は、一転して近未来的なサウンドメイクで、
ワウのかかったような歪んだベースラインや、ピコピコとひたすらリフレインを刻むキーボード、
一際くっきりとしたメロディを奏でるシンセのフレーズは非常に印象的です。
ダンサブルなディスコ・ミュージックを吸収しているとは言え、
ニュー・ウェーブのようなパンク由来の歯切れのいいサウンドと、
単なる享楽的な音楽性とは異なる実験性やサイケデリックな音使いを随所に感じる良作。

Poison Lips

Still

Allan Dellon

Station Mir 2099

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  1. 2013/05/28(火) 01:07:34|
  2. Vitalic
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今日の一枚(126)

Album: Blue Lines
Artist: Massive Attack
Genres: Electronica, Hip-Hop

Blue Lines


1988年にイングランドのブリストルで結成されたヒップ・ホップ、エレクトロニカユニット。
1991年作の1st。レゲエとヒップ・ホップを中心として、オルタナティブ・ロックやR&B、
ファンク、ソウルからへヴィ・メタルに至るまで、数多くの音楽とのクロスオーバーを見せる
音楽性が特徴的で、後進のダンス/クラブ・ミュージックやダブ、等のミュージシャンに絶大な
影響力を持っています。初期の作品である本作では、近年の作品に比べてよりブラック・ミュージック
からの影響が強く出た作風となっています。
ベースラインのサンプリングによるランニングに、ソウルフルな女性ボーカル(Shara Nelson)
が朗々と歌う#1Safe From Harm、William DeVaughnを元ネタとする
#4Be Thankful For What You've Gotでは、フリーソウルらしい緩いグルーブ感と、
ダンスミュージックの非常に高いレベルでの融合を楽しめます。
厚みのある緻密なストリングス・アレンジと、機械的なリズムトラックに、ハイトーンボーカルが
リフレインする#6Unfinished Sympathyの、幻想的でアンビエント的な音像は、唯一無二の
不思議なトリップ感を与えてくれること間違いありません。
一転して、#7Daydreamingではヒップ・ホップ色が濃厚になりますが、
あくまでR&Bっぽいコーラス・ワークや抜けの良いアレンジで聴かせます。
ダンス・ミュージックではありながらも、踊れる要素はほとんどなく、むしろダブとヒップ・ホップを
下地として、ロックンロールの要素を極限まで抑えつつ、R&Bやソウルの緩さを上に
被せて、無駄な音を削り落としていくことで、理性的な、しかしどことなく
頽廃的で耽美的な世界観を創出しています。
高く積み上げられたオールド・スクール的なR&Bへの知識と、
優れたサンプリング、プログラミングの技術により、俯瞰的な視点から
グルーブを「構築」していくという、ヒップ・ホップ、エレクトロニカの方法論を、
最も洗練された形で提示した歴史的傑作。

Be Thankful For What You Got

Unfinished Sympathy

Daydreaming

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  1. 2013/03/27(水) 15:25:53|
  2. Massive Attack
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  4. | コメント:0
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
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※放送企画として「私的名盤放送」というラジオを配信しております。
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