私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(383)

Album: 17 Living Souls
Artist: monolog(金坂征広, Yuki Kanesaka)
Genres: Funk, Soul, Hip Hop, Jazz Funk, R&B

17 Living Souls

千葉県、茂原市出身の日本のマルチプレーヤー、音楽プロデューサー。ボストン在住。
1981年生まれ。2013年作の2ndフルアルバム。

中学生の頃からミュージシャンとしての活動を開始し、高校卒業後バークリー音楽大学に入学、
その後はボストンを拠点として音楽活動を行っています。
バークリー在学中にはCee Lo(1974-, Goodie Mob, Gnarls Barkleyのメンバー)
, Slum Village(90s後半に活躍したデトロイト出身のヒップホップグループ)といった
ヒップホップグループのバックでスタジオミュージシャンとして演奏していました。
米国内の雑誌The SourceではNational Rap Music Competitionの部門でプロデューサーとして
優勝するなどしています。
また日本国内では、女性R&B系シンガーである山口リサ(1983-)のプロデュースをデビュー当時から
行っています。

2012年にはRe:Live -JAZZ meets HIP HOP CLASSICS-というカバーアルバムを発売しており、
90年代のR&Bやヒップホップの名曲、De La SoulやCommon, D'Angelo, Aaliyahなどの楽曲を
ジャジーにアレンジし、20種類以上の楽器を自身の手によって全て生演奏し制作するスタイルを
確立していきます。

本作も自身による生演奏のオーバーダブによって制作されており、オリジナル楽曲に加えて
レアグルーブとして知られるArchie Bell & The Drells/Tighten Upや、
Stevie Wonder/As, Bobby Caldwell/What You Won’t Do For Loveなどの知る人ぞ知る有名曲、
Patrice Rushen本人を迎えたRemind Meも収録されています。
その他には、2004年には共演歴もあり彼自身が影響を受けているGeorge Duke(1946-2013)への
追悼としてFrom Dusk To Dawnのカバーも収められています。
アルバムのライナーノーツにはDukeに向けられたメッセージが綴られています。

Marie Davyをゲストボーカルに迎えた#1Can Youは、オールドソウルそのもののベースラインと、
Twangなトーンのリズムギターの単音リフとカッティングに、一際モダンな音の
引き締まったドラムスが組み合わさった一曲です。
そのままJ Troniusをゲストに迎えたジャズファンク#2Livin For Itへとシームレスに繋がって行きます。
中盤では同音連打を中心とした派手なピアノソロが控えています。
Archie Bell & The Drellsのカバー#3Tighten Up ~hype vibe~は、モコモコとしたトーンのベース、
アナログっぽい音の塊となって迫ってくるドラムスが作り出すグルーブが腰に来ます。最高。
短いインストのインタールード#4King's Men Is Still Aliveでは、もう少し疾走感が出た16ビートで、
Loyvieをゲストに迎えた#5Grey Cityは、ローファイなエレピが自由自在に跳ね回り、
柔らかなシンバルレガートのリズムパターンに、ひたすらにファンキーな
カッティングが繰り返されるジャズファンクです。お気に入り。
Oj Martoriをゲストに迎えた#6Week Endは、繊細でファルセットの滑らかなボーカルと、
アンビエント的な香りのするシンセにローファイなドラムスやエレピの音が混然一体となっています。
本人が参加したPatrice Rushenの1982年作のカバー#7Remind Meは、エレピのソロからパーカッションと
ドラム、ストリングス系のシンセが入って来るモダンな音作りとなっており、
2小節をひたすらに繰り返すベースリフが前に出たファンキーなアレンジとなっています。
キーボードソロは、ピッチベンドの多くエモーショナルで、後半ではエレピのリフとドラムのみのパートから
これまた味のあるハーモニカソロも入っています。原曲よりもこちらの方が好きかもしれないです。最高。
George Dukeへのトリビュートであるカバー#8From Dusk To Dawnは、バックビートの強調された
重厚感たっぷりのドラムスにゆったりとしたエレピがテーマを弾いていく前半部から、
リズムチェンジした後半では白玉が多くなり、激しくなって行きます。お気に入り。
The Metersへのトリビュートというドロドロしたファンク#9A To Zigabooから、
Oj Martoriをゲストに迎えた#11Good Timesは同じくファンクでありながらももう少しモダンな音に
なっていて面白い対比になっています。
パワフルな女性ボーカルShakyma Horaciusをゲストに迎えた#13Be Freeは、細切れにブレイクを
挟んでネオソウルっぽいグルーブを作り出しています。
爽やかで甘いコーラスと微妙にブレスリーなトーンのリードボーカル、Vをゲストに迎えた
#14So Goodは、もう少しテンポを落として、オルゴールのようなシンセのキラキラとした
フレーズやポップなメロディもあって異色な一曲です。お気に入り。
Stevie Wonderの名曲カバー#16Asは、ピアノソロによるジャジーなイントロから、
揺れのある女性コーラスにネオソウルっぽい香りがするパートがあり、リズム隊が入って来てからは
音数少なくレイドバックしたアレンジになっています。お気に入り。
Saucy Ladyをゲストに迎えたBobby Caldwellのカバー#17What You Won’t Do For Loveは、
大胆にリハーモナイズされたピアノ弾き語りによるアレンジです。

基本的にはインストもののジャズファンクやサザンソウルが好きな方はきっと嵌ると思いますが、
所々にネオソウル的な音遣いやリズム構築が見受けられたり、そういった音とアナログ的な、
音全体が塊になって迫ってくるようなバンドサウンドが綺麗に溶け合っていて、
さらりと聴けてしまいます。佳作。

Livin For It~King's Men is still Alive

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  1. 2015/03/27(金) 01:51:41|
  2. monolog
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今日の一枚(365)

Album: レキシ
Artist: レキシ
Genres: Soul, R&B, Funk, Pops

レキシ

福井県出身のシンガーソングライター、音楽プロデューサーの池田貴史(1974-)による
ソロ音楽ユニット。デビューは1994年で、Super Butter Dogと言うファンクバンドのキーボーディスト
としてでした。その後、2004年に中村一義(現代の日本のインディーロックを代表する
シンガーソングライター、マルチプレーヤー)、町田昌弘、小野眞一、山口寛雄、
玉田豊夢(Dr, ポルノグラフィティ、斉藤和義、角松敏生etc)と
100s(ひゃくしき)というロックバンドを結成し、活動していました。
2008年に解散したSuper Butter Dogには後にハナレグミを結成する永積タカシ、
RhymesterのMummy-Dとユニットを結成した竹内朋康が所属していました。

レキシと呼ばれるプロジェクトは1997年のデビュー当初から行っていましたが、
その活動はかなり断続的だったようです。
その他にも池田氏はプロデューサーとしてスネオヘアーのプロデュースも担当しています。
活動が本格化したのは2005年頃からということらしく、プロジェクトに参加したメンバーには
日本史の登場人物などをもじった「レキシネーム」というあだ名が付けられるようです。
池田氏自身がかなり日本史に造詣が深いようで、日本史、特に近世以前の様々な時代の
ワードを取り上げたユーモラスな歌詞に、ドロドロとしたファンク、スムースでメロウなソウル
といったブラックミュージックが載せられているという、非常に個性的な音楽性を有する
ユニットとなっています。

他のミュージシャンとの共演も盛んで、過去にはにはいとうせいこう、椎名林檎、斉藤和義、堂島孝平、
山口隆(サンボマスター)、ANI(スチャダラパー)、安藤裕子、Mummy-D(Rhymester)
野宮真貴(Pizzicato Five)、中村一義、忌野清志郎、スネオヘアー、星野源、毛皮のマリーズなどが
ゲストとして参加しています。最近ではジャズピアニストの上原ひろみ
(レキシネーム: オシャレキシ)と共同でツアーを行っています。

本作は2007年作品の1stアルバムで、ゲストには足軽先生 (#1, いとうせいこう)
シャカッチ (#2,#3,#6,#7,#9,永積タカシexハナレグミ), 蹴鞠Chang (#1,#2,#3,#4,#5,#7,#8,#9, 玉田豊夢),
DA小町 (#3,#4,#5,#8,#9, #11,町田昌弘ex100s), ヒロ出島 (#2,#3,#4,#5,#7,#8,#9, 山口寛雄ex100s)
つぼねぇ (#6, 原田郁子),切腹さん (#8, スネオヘアー),パープル式部 (#2, 小谷美紗子)
Dr.コバン (#3,#4,中村一義)というメンバーとなっています。

サウンドとしては、肉体的なディスコサウンドや日本語によるラップのジャジーヒップホップ、
ファルセットボーカルの映えるスイートソウル、ゆったりとしたレゲエ、
フュージョンライクな疾走感のあるポップロックなど、
全体としてリバーブの掛かった暖かくてアナログ感のある音像で、
山口寛雄(B)、玉田豊夢(Dr)のリズム隊は非常にキレのある演奏を見せていて、
重要な役割を果たしています。
最新作に関しては年間ベストの記事でも取り上げておりますが、個人的にはこの1stの
サウンドは特にブラック色が濃く作られているように感じますし、好みの音です。

学校のチャイムが安っぽい音で入ってから、間抜けで気怠いラップと、
ぶっといシンセベースが堪らなく緩いグルーブを作り出す#1歴史ブランニューデイは、
サビでは柔らかいファルセットの歌唱が入っていてキャッチ―に仕上がっています。
後半では和琴のソロがあり、ボイスチェンジャーで将軍の名前をもじっていく謎の展開もあります。最高。
#2Let's 忍者は、ループで作られたと思われる揺れの少ないリズムに、
Stevie Wonderを思わせるようなハーモニカのフレーズ、ストリングスの暖かいバッキング、
小谷美佐子の怪しげなコーラスが良いです。
へヴィ―なドラムスと激しく歪みワウの掛かったコードカッティングでファンキーに
展開するSly的な#3Good bye ちょんまげは、ブリブリとうねるベース、ラウドなフィルを叩くドラムが
重厚なグルーブを作っています。歌詞の謎英語も格好いい。お気に入り。
一転してポップロックになった#4真田記念日は、饒舌で太い音色のリードギターのチョーキングが
良い音しています。ブライトな音色のピアノソロから、シャキシャキしたアコギが入って来る
フォーキーな#5ええじゃないかは癒される一曲です。
#6万葉集は、本物の万葉集から引用したポエトリーリーディングに、ピアノと女性コーラスを
加えて作ったインタールード的な一曲。
Venturesのようなテケテケしたリフから始まる#7参勤交代は、お経のような音程で繰り返される
コーラスが何とも不気味です。
観客の熱い歓声が加えられライブ感たっぷりのスウィートソウル#8HiMiKoは、訥々とした、
少し嗄れた声のポエトリーリーディングがあり、サビでは卑弥呼を連発し客が熱狂…という
何とも不思議な曲ですが、間奏でのコーラスの透明感といい、パリッとしたギター、
リズム隊のレイドバックした感じは見事な再現度で、録音のローファイ感も相まって最高。
ChicのLe Freakを髣髴とさせるカッティングが印象的なディスコナンバー#9踊り念仏もお気に入り。
笑い声と謎の英語が混じった笑い声がSEに入ったスウィンギーなポップス#11和睦は、
アウトロに子供たちが歌っているのがまた微笑ましくて良いです。
織田信長が好んだと言われている「敦盛」の一節を引用したソウルフルなバラード
#12兄者 I Need Youは、アコギ弾き語りにコーラスを加えてシンプルなメロディを
繰り返すというだけの構造ですが、ハイトーンで歌うゲストボーカルが
エモーショナルで素晴らしいです。最高。

名前とコミカルな歌詞に、グル―ヴィーでファンキーな演奏とポップネスが同居した、
面白い一枚です。今後も追って行こうと思います。

歴史ブランニューデイ

真田記念日

兄者 I Need You

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  1. 2015/02/05(木) 01:52:27|
  2. レキシ
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今日の一枚(363)

Album: Problems
Artist: Lee Fields
Genres: Funk, Soul

Problems.jpg

アメリカ、ノースカロライナ州出身のソウルシンガー、1951年生まれ。
いわゆるJames Brownのフォロワーとして、ルックス、ボーカルスタイル共にかなり
近いものを持っていた彼は、Little JBという異名を取っていたようです。
デビューは1969年のことで、Kool and the Gang, Sammy Gordon, the Hip-Huggers,
O.V Wright, Darrell Banks, Little Royalなどのツアーに参加した経歴もありますが、
70年代はなかなかヒットに恵まれず、
ローカルでの活動が中心で、資料を探しましたがなかなか情報が集まりませんでした。

それから長い時が経ち、1990年代のレアグルーブ(ディープファンク)発掘の流れに乗って
彼も再評価の対象となります。まず1979年作品のLet's Talk It Overなどが
クラシックとして発掘(2010年にリマスター再発)されることとなり、
2000年代に入るとDaptone Recordsから数枚のシングルをリリースし、
Soul Fireから傑作の誉れ高い本作をリリースします。2002年作の10th。(Discogsによるデータ、
Soul Providersとのコラボレーションを除く。なお、彼のアーティストページを見ると合計10枚の
オリジナルアルバムが紹介されています。)今年もオリジナルアルバムを発表するなど、
Abanti Records, Desco Records, BDA Records, Truth & Soulなど12ものレコード会社を
転々としながら現在に至るまで活発に活動しています。
2006年にはフランス出身でプログレッシブハウスDJ、プロデューサーとして活躍している
Martin Solveig(1976-)とタッグを組みJealousyを発表、2008年にはI Want Youを発表しています。

近年は、The Expressionsと称するバックバンドとレコーディングを行っており、
ソロ名義の作品にも彼らが録音に参加しています。

表題曲の#1Problemsからゴリゴリで真っ黒なファンクで、録音のアナログ感溢れる
ローファイな感じが曲に完璧に嵌っています。荒々しくパワフルなドラムスのフィルや
ホーンの音色が堪りません。ファルセットの柔らかさなんかはJBよりも繊細な感じで最高。
#2The Right Thingは、さらに音質が劣悪になっているため聴くぐるしい部分もありますが、
ギターの単音リフを中心にして、James Jamersonを思わせるベースラインがクールです。お気に入り。
#3Rapping With Leeは、ポエトリーリーディングが流れる中で、ひたすらに同じパターンを
繰り返すギター、同音連打で押し切るホーンが合わさったインタールード。
乾いたリムショットの音が軽快な16ビートにワウワウカッティング、
音の大きさゆえにピリピリとノイズが入るシャウトが存在感十分の#4Bad Trip、
#5Get On The Good Footは、ワンコードでひたすらカッティングを繰り返すインストで、
左右に配置されたパーカッションが自在に歌っています。
#6I Don't Know Where I'm Goingは、ギターとベースのユニゾンするリフが休符を挟んだ同じ
パターンで繰り返され、Fieldsが金属的なシャウトをかまして行きます。
リムショットの残響が印象的なドラムソロからシンセの音の波が寄せては返すメロウな
#8Honey Doveは、情感たっぷりな嗄れ声が堪りません。最高。
#9I'm The Manでは再びドロドロとしたディープなファンクへと戻り、シャウト連発の
一曲となっています。後半のギターソロも聴き所です。爆発音のようなキックと、
もたれかかったドラムスは、アウトロに向かって存在感を増して行きます。
#10You Made A New Man Out Of Meは、手数の多いドラムスとミュートの効いた
フュージョンライクなグルーブがあります。

かなり直球なJBフォロワーですが、この作品と合わせて知名度の高いMy Worldでは
もう少しソウル寄りの軽やかな楽曲が増えているようで、そちらも手に入れたいと思います。
ホーンのアレンジも濃密になりすぎずそぎ落とされ、すっきりとしていて、
体が自然と動くグルーブに満ちています。

Problems

The Right Thing

Honey Dove

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  1. 2015/01/24(土) 21:29:20|
  2. Lee Fields
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今日の一枚(343)

Album: In The Pocket
Artist: The Commodores
Genres: R&B, Funk, Disco

In The Pocket

アメリカ、アラバマ州タスキギーのタスキギー大学の学生であったLionel Richie(1949-)
を中心として1968年に結成され、現在までメンバーを様々に変えながら活動しているファンクバンド。
オリジナルメンバーはWalter Orange(Vo,Dr,Key), William King(Trumpet,G,Key)
Lionel Richie(Vo,Sax,Key,Dr),Thomas McClary(G), Milan Williams(Key, Trombone, G),
Ronald La Pread(B)で、全員が分担して作曲を行っています。

バンド結成後、1972年にはモータウンと契約し、翌年、1973年にJackson 5のツアーの
バックバンドとして活動を開始しました。結成当初Lionel Richieはサックスを担当しており、
1974年に発表された1stアルバムであるMachine Gunではインスト中心のファンクを演奏していましたが、
彼のボーカルをフィーチャーしたバラードである1977年作のシングル、EasyがUS Hot100で首位を
獲得したことをきっかけに、その後はバラードを中心とした楽曲でヒットを飛ばしていきます。
70年代後半から80年代半ばにかけて、Three Times a Lady, Nightshift, Brick House, Fancy Dancer,
Lady (You Bring Me Up), Too Hot ta Trotなどが有名曲で、バラードに加えて、当時流行の
ディスコミュージックを取り入れたサウンドで成功を収めます。

Lionelは1982年にグループを脱退した後、We Are The World(1985)の作曲を務めたり、
Kenny RogersのLady(1980)は全米1位, Dianna RossとのデュエットEndless Love(1981)も
全米1位となり、一躍ポップスターとしてその名が知れ渡るようになりますが、
Commodoresの方は80年代後半、1985年にNightshiftでグラミー賞を受賞して以降は
活動が停滞気味となり、オリジナルアルバムのリリースは滞っています。

本作は1981年作の9thで、Lionel Richieが所属していた時期の最後のアルバムです。
シングルの"Oh No"(US#4), "Lady (You Bring Me Up)"(US#8)は共にヒットを博しています。
とりわけLady (You Bring Me Up)はディスコ・クラシックとして取り上げられることの
多い楽曲で、Kool & The Gang/Celebrateなどと並び称されます。
ちなみに、このLady(You Bring Me Up)はWilliam KingとHarold Hudson,
Williamの妻であったShirley Hanna-King共作の楽曲で、
Lionelは作曲に関わってはいません。Oh Noの方はLichieによる作曲です。

乾いたエレピとシンセのイントロが繰り返されて一気にサビへと突入する
#1Lady(You Bring Me Up)は、遠くで鳴る歯切れの良いホーンと、
フランジャーの掛かったような揺れた音のリズムギターが印象的です。
リズムはひたすらにシンプルで、肉体的ですが黒さは薄められています。
大仰なコーラスのパートがあり、再びサビへと戻っていきます。最高。
クワイエットストームなバラードの#2Saturday Nightは、
ワウの掛けられたシンセベースと、エレピの作る太いグルーブと、
クリーントーンのギターのトレブリーで細いバッキング、
細切れに挿入されるシンセのオブリガートが緊張感を生み出しています。これも良い。
一気にテンポアップしたダンスチューン#3Keep On Taking Me Higherは、
フィリーソウル的な美麗なストリングスと、疾走感あるフィルで煽り立てるドラムス、
ギターのカッティングとハモンドオルガンのリフがユニゾンしたフレーズも派手で、
ギラギラしたサウンドにマッチしています。スライドの気持ち良いスラップの入った
ベースライン、ベースソロも素晴らしい。
Lionelのソロ作品の空気を強く感じるブラコンなバラード#4Oh Noは、
温かみのあるコーラスと、淡々と歌うボーカル、牧歌的なギターソロが聴き所です。
ぶっといベースと僅かに歪ませたリズムギターの絡みつき、パワフルなキックが重厚な、
ダークなダンスチューン#5Why You Wanna Try Meは、
コズミックな音のシンセソロにニューウェーブを感じます。お気に入り。
粘りつくようなドラムスと、ファルセットボーカルが炸裂する#7Been Loving Youでも、
アレンジはさほどドロドロし過ぎず、ホーンの音はさながらEWFのようです。
ピアノ弾き語りによるバラードの#8Lucyで終わっていきます。

ヒット以前の濃厚なファンクを演奏していた時代のファンも多いことはよく知られていますが、
本作のようなダンサブルで、白人にも受け入れられやすいサウンドと言う意味で、
本作は非常にスタンダードな佳作だと思います。

Lady (You Bring Me Up)

Saturday Night

Keep On Taking Me Higher

Why You Wanna Try Me

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  1. 2014/11/02(日) 19:17:53|
  2. The Commodores
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今日の一枚(339)

Album: March Of The 13 Cats
Artist: 13 Cats
Genres: Funk, Fusion, Disco, Pops

13Cats

アメリカ、カリフォルニア州出身の作曲家、編曲家、音楽プロデューサーのCat Grayと、
同じくカリフォルニア州サンフランシスコ出身のパーカッション奏者であるKarl Perazzo、
そして東京都新宿区出身の日本のドラマー、沼澤尚(1960-)の三人によるフュージョン、
ポップスユニット。同名のロカビリーのバンドがありますが、それとは別の
ユニットです。本作は1996年作の3rd。

余り彼らを取り上げている記事が少ないため、
まずは簡単に三人について解説しておきたいと思います。
以前、筆者の大好きな日本のAOR/ソフトロックバンドとしてSing Like Talking
(Sing Like Talkingの項を参照)についてお話ししたことがあると思いますが、
この三人は佐藤竹善のソロキャリア、そしてSLTのバックバンドとしてサポートを
行っていた経歴があり、佐藤のソロではAlive & Kickingというライブアルバムで、
彼らの演奏を聴くことができます。特にCat Grayに関してはSLTのプロデューサーを
務めていた時期(アルバムで言うとtogetherness(1994), DISCOVERY(1995),
Welcome To Another World(1997)の時期に当たります)もあり、沼澤尚は初期からドラマーとして
レコーディングに参加しているなど、SLEとの結びつきの強いメンバーです。
Cat Grayは日本では佐藤竹善との仕事が知られていますが、他にもJames Brown, Prince, Sheila E,
Earth, Wind & Fire, Maurice White, Sly Stoneなどブラックミュージック周辺のビッグネームの
サポートやアレンジ、プロデュースなどにも関わっており、現在ではテレビ番組の音楽制作を
主な領域として活動しているようです。パーカッション奏者のKarl Perazzoはセッションマンとして
Santana, Dennis Chambers, Sheila E., Mariah Carey, John Lee Hookerなどの作品のレコーディングに
参加しています。そして現代の日本のセッションドラマーの中でも屈指の多忙さを誇ると言われる
沼澤尚は、海外ではChaka Khan, Bobby Womack, The Emotions, Hiram Bullock, Robben Ford,
Will Lee, Paul Gilbert, Al McKay, Verdine Whiteなど、国内では、土岐英史、山岸潤史、大村憲司、
宮沢和史(AFROSICK)、角松敏生、スガシカオ、山崎まさよし、槇原敬之、井上陽水、高中正義、
奥田民生、平井堅、くるり、河村隆一、安藤裕子、吉田美奈子、岩崎宏美、大貫妙子、
矢野顕子、椎名林檎、Original Love、つじあやの、中島美嘉、YUIなど、
有名アーティストのバッキングを無数にこなしています。
その人脈もあってか、ゲストにはSly Stone, 山岸潤、Sheila E.,タブラ奏者Zakir Hussain,
David T. Walkerを迎えて制作されるという豪華っぷりです。
現在は活動を休止している13Catsですが、再び作品をリリース(というよりCat Grayの活動)する
姿を見てみたいという思いが、個人的はあります。
音楽性としては、EWFのようなポップネスとファンクのグルーブが同居したサウンドとも
言うべきで、まさにSLTの7th-9thの時期の作品がお好きな方であれば間違いなく嵌ると思います。
基本的にはファンク寄りのフュージョンといった感じですが、
マーチ(タイトル通り)、ハードロック寄りのギターソロもあったりと
飽きさせない多彩なサウンドで、意表を突いたハーモニーの面白さもあります。

#1Marchは、アルバム全体のイントロダクションといった趣で、かなりきちんとマーチしています。
分厚いホーンの音と乾いたスネアロールの音が心地良いです。
一気に音圧が上がってファンキーな#2Blind Faithは、ウネウネした粘りのあるベースと
沼澤尚のへヴィ―なキックが腰に来るグルーブを作ります。お気に入り。
ギタリストとして山岸潤をゲストに迎えた#3Anything For Youは、鋭くファンキーなドラムスと
低音の厚いベースの作るグルーブと、ダークな雰囲気を湛えたメロ、キラキラとしたシンセが
ユニゾンするサビに続いて、ラップまで飛び出してきます。お気に入り。
Earth, Wind & FireのギタリストであるAl McKayをゲストに迎えたバラードの
#4When Love Is Overは、音数の少なくトレブリーなカッティングとエレピが
70sを思わせる音像です。ブリッジの後はドラムとパーカッションのソロが入っています。
#5DJ~Split Decisionは、McKay得意の単音カッティングとリヴァ―ブの掛かったスネアに
JBマナーなシャウトが流れるミニマルなDJからシームレスに歌メロが入ってきます。
アタックの強くうねったベースが強いグルーブを放ちます。お気に入り。
なんとSly Stoneご本人が参加して歌っているカヴァー、#7Thank Youは、
派手なシンセでモダンな音になっていて、Catによるジャジーなピアノソロと、
ファンキーなギターや野趣あふれるボーカルと見事な対照をなしています。お気に入り。
#8Inside Outは、乾いた、歯切れの良いフラムが堪らないグルーブを生み出すドラムスが
支配する中で、シンプルな繰り返しをひたすら続けるメロディが頭に残る
ダンサブルな一曲。これも良い。
#9Out Of Controlは、粘りつくベースラインに、デジタルでハウスを思わせる音色(人力ですが)
のリズムが絡みつくファンク。そのまま濃度を落とさず肉体的な#10Back On Trackへと
繋がって行きます。Al McKayのカッティングと巧みなコーラスワークが聴き所です。
シームレスに続く#11The Love That You Haveは、分厚いシンセのバッキングと、
メロディの間を縫って入ってくる山岸潤のブルージーなリードギター、ギターソロが素晴らしい。
Sheila E.がティンバレスで参加している#12Galaxyでは、ドラムソロの後、
Karl PerazzoとSheilaによる激しいインタープレイが入っています。
アウトロではザッピングするように今までの曲が流れた後テンポダウンして
ヒップホップ的なグルーブへと変わり終わっていきます。
Zakir Hussainがタブラで参加している#14Take The Timeは、グッとテンポを落とした一曲で、
スラップの入ったベースともたれかかったドラムス、奇怪でエスニックなトーンのシンセソロが
あり、後半ではドラムンベースの如く、激しく、細かいビートを刻むタブラソロが待ち受けています。
メロウに歌うボーカルとゆったりとしたドラムスにDavid T. Walkerの渋いギターが
絡みつくAOR的な#15Love Is The Answerは、サビ前で少しファンキーになって、
ソウルフルで物憂げなサビへと繋がって行く展開が鳥肌ものです。最高。

アルバム全編を通じて、鋭く乾いたグルーブが流れており、SLTのファンにとっては
堪らないサウンドだと思いますし、ファンキーでキャッチーなフュージョン作品としても
非常に良質だと思います。隠れた名盤。

※CD音源が見つかりませんでしたのでライブ映像を貼っておきます。御容赦下さい。

Split Decision[Live]

13Cats Live Tour 1999

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  1. 2014/09/24(水) 23:59:28|
  2. 13Cats
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
https://twitter.com/privategroove
こちらでもおすすめの音楽など情報を流しております!
フォロー下さると嬉しいです。
可能な限りフォローバック、コメントしに参ります。
※放送企画として「私的名盤放送」というラジオを配信しております。
ツイートキャスティングホームページをご覧下さい。不定期に配信、Twitterにて情報を呟いております。ハッシュタグは「#私的名盤放送」です。宜しくお願い致します。
http://twitcasting.tv/privategroove

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