私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(302)

Album: Urban Renewal
Artist: Ramsey Lewis
Genres: Jazz, Fusion, Hip Hop, R&B, Funk

Urban Renewal

アメリカ、イリノイ州シカゴ出身のジャズピアニスト、作曲家、ラジオパーソナリティー。
1935年生まれ。DePaul大学卒。キャリアの中で7つのゴールドディスクと、3度のGrammy Awardを
受賞しています。4歳の頃にピアノを始め、15歳のときにThe Cleffsというジャズバンドを
結成し、そのメンバーであったIsaac "Redd" Holt(Dr)とEldee Young(B)とともに、
Ramsey Lewis Trioとして1956年に1stアルバムを発表し、活動を開始します。
その後、彼のトリオはCleveland EatonやEarth, Wind & Fireを結成する以前のMaurice Whiteなど、
様々なメンバーを迎えて活動し、恐るべき多作家ぶりを発揮して作品をリリースしています。
特に1965年作のThe In Crowdは、それまでのストレートアヘッドなジャズからポップ路線へと
切り替え、全米2位のヒットを記録し、Grammy AwardのBest Jazz Performanceを
受賞しています。70年代に掛けてはColumbia Recordsへと移籍して、
エレクトリック・ピアノを中心としてRoy AyersやHerbie Hancockなどがそうしたように
ファンクやR&Bへと接近していき、1966年と1973年にはR&Bのアーティストとしても
Grammy Awardを受賞しています。1974年作のSun Godnessはプロデューサーとして
かつてのバンドメンバーであるMaurice Whiteを迎えて制作されています。
本作はColumbiaからGRP Recordsに移籍する直前期の作品で、1989年作の59th。現在は廃盤。
この時期の彼は、Hip Hopの台頭と、その影響を受けたニュージャックスウィング
(ニュージャックスウィングについてはKaryne Whiteの項を参照)のサウンドへと接近しており、
打ち込み然としたリズムトラックや、スクラッチを効果的に取り入れたサウンドを
指向しながらも、Steve Cobbによる生ドラムやElliott Randall(Steely Dan)のギター、
自身によるテクニカルなピアノソロやBill "The Buddha" Dickens(B)の
ベースプレイによる強烈なグルーブもあって、スリリングなサウンドに仕上がっています。
プロデュースはWynton Marsalis(Art Blakey & The Jazz Messangers, Herbie Hancock)と
タッグを組んでいることで知られるDr. George Butlerが担当しています。
#1Jagged Edgeは、リバーブの掛かったカッティングと、打ち込みによるソリッドなドラムスで
ファンキーに進んでいきますが、スクラッチが効果的に入ってヒップホップに近いグルーブを
創出します。ピアノは明瞭で力強いタッチで、巧みにスケールアウトしています。
ウネウネしたサステインの短いシンセベースも歯切れが良くキレッキレです。お気に入り。
如何にもフュージョン的(往年のジャパニーズフュージョンのよう)なテーマを吹くホーンと
女性ボーカルが断片的に登場する#2Eye on Youは、Steve Cobbの鋭く切り裂くような
スネアがストレートなグルーブを見せ、最後にはロボットボイスも出てきて楽しい。
冒頭の速弾きから、ハンドクラップとドラムスの作る複雑なリズムの中で
軽妙に歌うボーカルのポップな#3Dr. Ramseyに続いて、
クリーントーンのギターとドラマティックなピアノのフレージングのバックで、
抑揚の付いたシンセが大仰でニュージャックスウィング的な#4 2-Slamは、
後半でRamseyの長いキーボードソロが用意されています。
サンプリングされたヴォイスが短くループされ、ビシビシとしたキックが多く刻まれる中で始まる
#5Livin' Largeは、男女のツインボーカルが妖しく歌う前半部から、
弾きまくりのピアノソロを中心にした後半部へと展開していきます。
一転して甘美でゆったりとしたバラードの#6Bernieceは、ここまでのシンセバリバリなサウンドから
一気にアコースティックになっています。フィリーなストリングスと、
低音が良く出ていて輪郭の滲んだBill Dickensのベースが素晴らしい。
ギターソロはおとなしいですがこれも繊細で透き通った音で、曲のクライマックスに向かって
激しくなっていきます。電車の走っていくSEが入って終わっていきます。お気に入り。
晩年のMiles Davis/Do Bopを思わせるようなトランペットのイントロが印象的な
#7Make A Wishは、高音の硬質な音が印象的なピアノのテーマのバックで微かに聴こえて来る
ギターのバッキングも素晴らしい。
ピアノソロによるバラードの#8There's No Easy Wayは、穏やかな前半から徐々に
左手のパートが激しくなり、一気にへヴィーなリズム隊が入ってきます。
そして再びピアノソロへと戻ったりしつつ、絶妙にリズムチェンジしながらストーリーを
作っています。お気に入り。
Elliot Randallの、穏やかなアコギのバッキングに、ブライトで力強いピアノがテーマを
絶妙に崩しながら弾く#9Love Songも前曲に続いて抑揚の付いたSteve Cobbのドラムスに
耳が行ってしまいます。
耽美的で暖かいバラード曲と、キレキレでソリッドな曲が絶妙なバランスで
織り交ぜられていて、すっきりと聴けてしまいます。
スムースジャズ・フュージョンとポップス、ヒップホップの間で巧みに揺れ動く
都会的なクロスオーバー作品。

Eyes on You

Berniece

There's No Easy Way

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  1. 2014/05/28(水) 14:34:03|
  2. Ramsey Lewis
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

今日の一枚(290)

Album: Radio Music Society
Artist: Esperanza Spalding
Genres: Jazz, Fusion, Bossa Nova, Soul

Radio Music Society


アメリカ、オレゴン州ポートランド出身のベーシスト、マルチプレーヤー、
作曲家、ボーカリスト。1984年生まれ。
2011年にはGrammy Awardで最優秀新人賞を受賞しています。
5歳からバイオリンを始め、名門ノースウェストアカデミーの奨学金を
得たことをきっかけとしてベーシストに転向することとなります。
日本で言うところの大検(General Educational Development)で卒業資格を得て
16歳でポートランド州立大学に入学、その後教授の勧めでオーディションを受け、
バークレー音楽大学へと特待生として転入を果たします。
その後Pat Methenyに見出され、音楽活動を行う傍ら奨学金を得てバークレーを
飛び級で卒業し、20歳で最年少の講師として複数の講義や練習のサポートを行うなど
多忙な生活を送ることとなります。黒人系の父と、ヒスパニック系の母を持つ彼女は、
ブラジル音楽やフュージョン(特にWayne Shorterの大ファン)へと傾倒しており、
彼女の音楽性の重要な一部を成していると言えるでしょう。
ジャズフュージョンからのクロスオーバーの中に、オールドスクールなR&Bから
ヒップホップに至るまでの黒人音楽をも取り込んだ広大な音楽性を有しています。
他にはElla Fitzgeraldへのトリビュートコンサートを
行っていたPatti Austinの世界ツアーにサポートボーカリストとして参加したり、
Mike SternのソロアルバムであるBig Neighborhood, All Over The Peace
(詳細はMike Sternの項を参照)にベースとボーカルで参加するなど、
極めて広い音域を持ち、力強いハイトーンや音域ごとの独特なトーンの変化のある
歌手としての表現力の高さも高く評価されています。
それ以外にもFourplay/Energy(2008), Stanley Clarke/Toys Of Men(2007),
Christian Scott/Anthem(2007)などの諸作品にも参加しています。
本作は2012年作の4th。Radio Music=流行音楽 Society=同好会という名の通り、
Wayne Shorterが70年代にやっていたブラジリアン・フュージョンを消化しながらも、
緻密な計算によって作られたであろう、浮遊感があり、掴み所のないコード感は、
Donald Fagenのような感覚がある、というべきなのか、或いはクラシックの和声が
中心としてあり、むしろジャズはその中に取り込まれて存在している(前作)
というべきなのかは分かりませんが、
兎にも角にも非常に個性的なサウンドだといってよいのだと思います。
ベースラインは非常にメロディアスで素晴らしいのですが、
黒人ベーシストらしいシンコペーションの入れ方、休符の解釈というような
タイム感によって生み出される強烈なグルーブは特筆すべきものがあると思います。
前作のChamber Music Societyではウッドベースを中心にして演奏していますが、
今作ではフレットレスのエレキベース(62年製のジャズベースということらしいですが)
も多用しています。ゲストにはサックスにJoe Lovano(1952-),
ボーカリストではLalah Hathawayを迎えて制作されています。
プロデューサにはA Tribe Called QuestのラッパーであるQ-tip(1970-)が
起用されています。
#1Radio Songから非常にクリアでファンキーなグル―ブを生み出すベースラインをバックにして、
甘いトーンのスキャットが素晴らしい。いきなり捻くれた一曲で形容しがたい浮遊感があります。
後半のLeo Genoveseのピアノソロでこの曲がジャズを内包していることを思い起こされます。
#2Cinnamon Treeは、Jef Lee JohnsonのブルージーなギターとLeo GenoveseのFender Rhodes
がフィーチャーされており、時折フィリーなストリングスが入ってきます。
中低音で僅かにハスキーなフィーリングのあるボーカルがこれまた変わった
メロディを歌っています。アウトロの速弾きシンセがサイケデリックさを感じさせます。
Terri Lyne Carringtonの強いバスドラムやタムの叩きだすビートと、
メロディアスで激しいソロを取るトロンボーンに僅かにスラップの入ったベースライン、
ブライトなピアノのヴォイジングで端正なグルーブを作る#3Crowned & Kissedはお気に入り。
James Weidmanのオルガンとボーカルのみによる短いバラード#4Land Of The Freeに続いて、
ゲストのAlgebra Blessett(Vo)とのボーカルの掛け合い、同じくゲストの
Lionel loueke(Vo, G)のスキャットを入れた、会話するようなギターのフレージングが楽しい
#5Black Goldは、もう少しキャッチ―でソウル色の強い一曲に仕上がっています。
この曲のベースラインも最高のタイム感だと思います…溜息が出ます。
テーマとなっているメロディはどことなく東洋の香りが漂っていて、
不思議なフィーリングがあります。これもお気に入り。
Michael Jackson/Off The Wall(1979)に収録されている(作曲はStevie Wonder)
#6I Can't Help Itは、大胆なリズムチェンジを加えており、緊張感あるフィル、
ハイハットの刻みが心地良いLyndon Rochelleのドラムス、 Ricardo Vogtの
単音カッティングを絡めたギターリフが原曲よりも疾走感を生み出しており、
ドリーミーなボーカルはMichaelのそれにかなり迫るような音で、
アウトロではベースの上昇フレーズにハイトーンで静かに、
しかし熱く盛り上げていきます。最高のカヴァー。
#8Vague Suspicionsは、アコギの静かなバッキングとウッドベースの太く
メロディアスなフレーズに、突き抜ける高音のフルートやトロンボーンが代わる代わるソロを
取っていきます。ベースソロからは不安定な進行が続いていきます。
Wayne Shorter/Atlantis(1985)に収録されているカヴァー#9Endangered Speciesは、
ブラジリアンなリズムを叩きながらも、フィルではしっかりロックしている
Terri Lyne Carringtonのドラミングに、コラージュのように散りばめられた複雑で曲の
ダイナミズムを決めているコーラスワークにLalah Hathawayの渋いボーカルが加わります。
ベースラインは曲の展開と共に徐々に音数を増して行き、幾通りものパターンを聴かせます。
メロ部分での拍の取り方の上手さは完璧過ぎて鳥肌が立ちます。
Parilamentのような突拍子のない入り方と、ベースラインのもたれ掛かったタイム感の
ファンキーな#10Let Herは、キャッチ―でありながら忙しなく動くサビの展開も
かなり捻くれていて堪りません。
#11City Of RosesではプロデューサーのQ-tipがボーカルとグロッケンシュピールで参加しています。
Anthony Diamondのかなり長いサックスソロは聴き所です。
#12Smile Like Thatは、Gilad Hekselmanのトレブリーでアウトなギターソロを堪能できます。
滑らかなビブラートを多用したベースラインがグル―ヴィーです。
こうした多様な音楽からのクロスオーバーであり、かつ和声的にもリズム的にも構造が
入り組んだ緻密な作りでありながら非常に耳触りが良く、柔らかで透き通った歌声で、
歌ものとしても聴かせてしまう才能は、極めて奇跡的なものであるに違いありません。

Crowned & Kissed

Black Gold

I Can't Help It

Endangered Species

Let Her

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  1. 2014/05/09(金) 00:25:31|
  2. Esperanza Spalding
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

今日の一枚(289)

Album: We Get Requests
Artist: Oscar Peterson Trio
Genres: Jazz, Bebop

We Get Requests


カナダ、ケベック州モントリオール出身のジャズピアニスト、作曲家、歌手。
1925年生まれ。Duke EllingtonをしてMaharaja of the keyboard(鍵盤の皇帝)と
言わしめ、60年以上にも渡るキャリアの中でレコーディングした作品は200以上、
Grammy Awardでは8回の受賞を成し遂げています。
カナダの国鉄に勤めていた移民の父の元に生まれ、モントリオール郊外で
黒人の多く住んでいた地域に育った彼は、5歳のころからピアニストであった姉
(Daisy Sweeney)とトランペット奏者であった父に習ってピアノとトランペットに
親しんでいました。7歳のときに病気のためトランペットが吹けなくなり、
その後はピアノに集中して一日4,5時間の練習を怠らず続けていたようです。
地元モントリオールでピアノ教師として働いていた姉の影響もあり、
J.S Bachのフーガやプレリュードを弾きこなして行く中でクラシックの和声法について
学んでいたようです。若き日にはTeddy WilsonやNat "King" Cole, Art Tatumなどと
交流を深めつつ、バーやホテルのラウンジでピアノを演奏していました。
彼のデビューのきっかけとなったのはNorman Granzとの出会いでした。
偶然ラジオで放送されていたPetersonの演奏を聴いて衝撃を受けたNorman Granzは、
タクシーを飛ばして彼の演奏していたバーへと直行し、彼を飛行機に乗せて
アメリカに連れて行ったという逸話があります。
こうして、Granzを中心として44年から83年まで行われていたジャズコンサートの
プロジェクトであるJazz at the Philharmonicに参加、彼の運営していたVerveレコード
に所属したことが、その後の華々しいキャリアのきっかけとなります。
彼の演奏スタイルは幼いころからリアルタイムに影響を受けてきたスウィング・ジャズ
のリズムやハーモニーの中に、演奏のレパートリーであったクラシックの和声が
効果的に取り入れられ洗練されたもので、鋭く明瞭なタッチと、音数の多く、
鍵盤の端から端まで縦横無尽に動き回る卓越したテクニックも含めて、
あらゆる時代において最高のピアニストの一人であると言われます。
デュエットやカルテットでも多くの名作を生み出している彼ですが、
その活動の中心を成していたのはトリオとしてのコンサートでした。
Ray Brown(B), Joe Pass(G), Herb Ellis(G),Ed Thigpen(Dr)などメンバーを
少しずつ変えながら活動していました。本作は1964年作で、メンバーとしては
Ray Brown(B), Ed Thigpen(Dr)を迎えて制作されています。
内容としては当時のポピュラーソングやボサノヴァ、映画音楽のカヴァーが
多くを占めており、非常に聴きやすい作品の一つでもありますし、
かつ時代を考慮すると、録音の良さが際立っています。
雰囲気こそ全体的に艶やかで穏やかな演奏が続いていますが、
フレーズ自体は滑らかな速弾きが多く、極めて正確なプレイだと思います。
この三人による録音は、これが最後の作品という事になります。
Antonio Carlos Jobimの#1CorcovadoからベーシストのRay Brownの抑制されつつも
スウィンギーで絶妙な音の切り方のプレイに集中してしまいます。
元々は映画音楽でありPetersonを代表するスタンダード#2Days of Wine and Rosesは、
ブライトなコードヴォイジングが煌めく冒頭部から、シンバルレガートの高音部の繊細な響きが
耳を撫でるEd Thigpenのドラムスで緩やかに進んでいきます。お気に入り。
#3My One and Only Loveは、緩急の付いた冒頭のフレージングで鳥肌が立ちます。
ゆったりとしたベースが鳴る中でピアノは明瞭で透き通ったトリルの目立つフレーズや
クライマックスでオクターブの入る部分など、盛り上げ方も最高です。ずっと聴いていたい…
不安定なイントロとベースの長いフレーズから始まる#4Peopleは、エモーショナルな
コード弾きを中心として進んでいき、ウォーキングベースが前に出てくるスウィンギーな
パートへと移り変わっていきます。スネアドラムの乾いた鳴り方など録音の良さから生々しさ
がひしひしと伝わってきます。
中盤の繰り返しで絶妙に強弱をつけていく中でそれにシンクロしてバスドラムが派手になっていく
#5Have You Met Miss Jones?, Ray Brownが微かに口ずさむ声が聞こえてくる楽しげな
#6You Look Good to Meは、パーカッシブで4ビートへとリズムチェンジしていくベースと、
安定したグルーブの中に時折入れてくるハイハットやスネアのフィルが、
速弾きするピアノに緊張感を加えています。これも最高。
#1と同じくAntonio Carlos Jobim作曲のボサノヴァの名曲#7The Girl from Ipanemaは
モーダルで複雑なドミナントモーションのあり、予想を裏切るコード感でありながら、
極めてスムースに進んでいくアドリブの難しい構造にも関わらず、
自在にリズムの中で動きながらフレージングしていきます。凄過ぎる…
中盤でベースが派手に出てくる#8D. & E.は、やはりアウトロの饒舌なドラムスが聴き所でしょう。
メロディも一際ポップで、静かにボリュームダウンしていく終わり方もクールです。
高音部のシングルノートの輝きを心行くまで堪能できる#9Time and Again、
そしてアルバムの最後で一気に盛り上がりを見せる#10Goodbye J.D.は、
本作の中でも一際熱いプレイを聴かせてくれます。
全体を通して有名曲が殆どで入門としても良く挙げられる作品のようですが、
有名でキャッチ―であろうが、最高のメンバーによる洗練されたアドリブがしっかりと味わえる
作品として愛聴していきたいです。

Corcovado

Days of Wine and Roses

My One and Only Love

You Look Good to Me

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  1. 2014/05/08(木) 01:16:25|
  2. Oscar Peterson
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

今日の一枚(268)

Album: Chet Baker Sings
Artist: Chet Baker
Genres: Jazz, Jazz Vocal, Cool/West Coast Jazz

Chet Baker Sings


アメリカ、オクラホマ州イェール出身のトランペット奏者、ヴォーカリスト。1929年生まれ。
米軍兵士だった彼は終戦後まもなくロサンゼルスにあるEl Camino Collegeで音楽理論を学び、
サックス奏者のStan Getzと共にVido Mussoのバンドで音楽活動を始めます。
1951年には、ビバップ革命を引き起こしたあのCharlie Parkerにトランぺッターとしての
才能を見出され、彼のウェストコーストでの作品群に参加することになります。
他にもGerry Mulliganのカルテットへの参加を経て、53年ごろからソロ(リーダー)作品をリリースする
ようになっていきます。本作は、彼自身がデビュー当初から興味を示していたヴォーカリストとしての
活動が形となった1956年作です。中性的なルックスと、その細く、儚げな甘さのあるボーカルで
人気を博していた彼ですが、60年代にはデビュー当初から服用していたヘロインなどの麻薬に
溺れていき、80年代にカムバックを果たすまで、堕落の一途を辿ることとなります。
収録されているのはミュージカルの楽曲やジャズスタンダード曲で、
自身は歌うだけでなくトランペット演奏も聴くことができます。
映画となったミュージカルVogues of 1938の主題歌#1That Old Feelingは、
インスト部分でのKenny Drewのピアノソロが光ります。Baker自身のトランペットは淀みのない
素朴な音で素晴らしいです。それにしても妖しい魅力のある声です。
映画Belle of the Yukon(1944)の#2Like Someone in Loveは、ゆったりとしたウォーキングベースと、
最小限の音数のピアノのバッキングに対して、息の長いフレーズをブレスを感じさせず囁くように
歌っていきます。#4My Idealは、Russ Freemanのチェレスタによる、オルゴールのように
耳を優しくなでるようなバッキングが印象的で、歌い終わった後のトランペットソロは、
夢の中の世界から醒めて、一瞬現実に引き戻されるような不思議な感覚に陥ります。
ミュージカルのGuys and Dolls(1950)からのデュエット曲#5I've Never Been in Love Beforeは、
Frank Sinatraのヴァージョンも勿論良いですが、こちらの方が柔らかく輪郭の細い感じが
似合っていて好みです。1922年のオールディーズソング#6My Buddy、MilesのBags' Grooveや
ColtraneのMy Favorite Thingsなどでも取り上げられた#7But Not For Meでは
かなりポップでアップテンポでスウィンギーなアレンジになっています。#8Time After Timeは、
トランペットソロの清澄なトーンを堪能できます。本作の中でも特に有名なカヴァーとなった、
ミュージカルBabes in My Armsの劇中歌#10My Funny Valentineは、他のどのバージョンとも
異なる気怠さと、それに伴う究極的な現実味の薄さ、浮遊感があります。
特別なボーカルテクニックやフェイクがあるわけではないのですが、この揺らめく感じというか、
各フレーズの語尾が空間に消え入っていく感じは何物にも代えがたいものだと思います。最高です。
キャッチ―なイントロのメロディで掴まれる#12I Fall in Love Too Easilyは、
一音一音が明瞭に分離され、淡々としたクールなトランペットと、ボーカルの間に挿入される
ピアノのフレージングは都会的です。再びポップになった、#14Look For The Silver Liningでは、
楽しげで動きの多いなベースラインと、中間部のピアノソロが聴き所です。
どの楽曲でも、圧倒的な声量があったりテクニックがあったりと言うわけではないですが、
夢うつつの状態とでもいうような、正しく薬物のような魔力があるボーカルだと思います。
バッキングは、クールジャズの流れを汲んだ、50年代のウェストコーストジャズ特有の
理性的で、冷ややかなサウンドをそのまま形にしていて、時代の音を切り取った作品になっています。

That Old Feeling

Like Someone in Love

My Ideal

I've Never Been in Love Before

My Funny Valentine

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  1. 2014/03/11(火) 02:34:46|
  2. Chet Baker
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  4. | コメント:4

今日の一枚(267)

Album: Head Hunters
Artist: Herbie Hancock
Genres: Jazz Funk,Electric Jazz, Fusion

Headhunters.jpg

アメリカ、イリノイ州シカゴ出身のジャズピアニスト、キーボーディスト。1940年生まれ。
ゴスペルやR&B、フォークとジャズとのクロスオーバーに取り組んだトランペット奏者である
Donald Byrdに見出され、1960年にデビューを果たします。63年にはMiles Davis Bandに、あの
Kind Of Blueセッションに参加したBill Evans(というよりKind Of Blueは
彼の作品と考えた方が良いかもしれませんが)に代わって参加することになります。
Hancockはモードジャズ黎明期からその何たるかを完璧に理解し、Maiden Voyage(1965)や
Speak Like A Child(1968)で見事なアンサンブルを聴かせています。
他にも80年代にはヒップホップとジャズのクロスオーバーを図ったFuture Shock(1983)など、
常に時代の先を読んだ先進的な作品を世に送り出しています。本作は1973年作のソロ13thで、
楽曲に#3Slyの名がある通り、ファンクとの大胆なクロスオーバーが図られており、
また当時最先端であったArp OdysseyやArp Soloistといったシンセサイザーや
Fender Rhodesといったようなエレクトリック・ピアノによる徹底的な電化路線が貫かれています。
シンプルなリフレインとコード進行をひたすらに繰り返す中で生まれる、
頭がクラクラするような強烈なグルーブの中で、流麗で繊細なアドリブをかましていきます。
バンドの中ではとりわけHarvey Masonのツボを押さえた攻撃的なフィルが印象的なドラミングが
アンサンブルを引っ張っています。
#1Chameleonは、イントロから繰り返されるベースのリフと、ワウの掛かった右チャンネルの
キーボードのバッキングに乗せて、バスクラリネットの低音が際立ちます。
7分あたりからharvey Masonのドラムスは激しくなっていき、同音連打の多いフレージングへと
変わっていきます。ベースソロがあり、ジャズドラマーならではのスネアの細やかな音色の作る
グルーブの中でハモンドのロングソロが一番の聴き所かもしれません。
残り2分20秒でまたドラムベースのみになるところも最高に痺れます…
#2Watermelon Manは、縦笛のような音色のキャッチ―なイントロに始まり、重くモタるようなドラムスの
と複雑に鳴るパーカッションの作るグルーブの中で、サックスがロングソロを取っていきます。
単音カッティングのようなパーカッシブなキーボードのバッキングが堪りません。
もろに名前を出してしまった#3Slyは、タイトル通りしっかりSly & The Family Stoneのような
ドロドロのファンクなっています。2分過ぎあたりから一気に手数が増えてポリリズミックに
展開していき、Bitches Brewセッションにも参加したBennie Maupinのサックスの
荒々しいブロウが光ります。中間部ではサンバキックを踏みながらのシンバルレガートで疾走しながら、
アウトしまくり、弾きまくりの激しいアドリブを聴くことができます。これも勿論最高です。
ブレイクがあって終わったかと思いきや、怪しげでエスニックな進行になり、
キメを繰り返しながら終わっていきます。
#4Vein Melterは、心臓が脈打つようなバスドラムと、強くワウの掛かったシンセが印象的な
冒頭から、左右に揺らめくシンセの残響が頭に響くアンビエントなパートへと繋がり、
またバスドラムだけになって静かに終わっていきます…
MilesのOn The Cornerなどと並んで、 エレクトリックジャズ、ジャズファンクからフュージョンの流れを
語る上で絶対に外せない、Billboard Jazz Chartで1位を獲得した彼の最大のヒット作にして問題作の一つ。

Full Album(高音質)

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  1. 2014/03/09(日) 22:12:04|
  2. Herbie Hancock
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  4. | コメント:2
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
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こちらでもおすすめの音楽など情報を流しております!
フォロー下さると嬉しいです。
可能な限りフォローバック、コメントしに参ります。
※放送企画として「私的名盤放送」というラジオを配信しております。
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