私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(98)

Album: Bitte Orca
Atist: Dirty Projectors
Genres: Post Rock, Experimental Music

Bitte Orca


2002年に、アメリカニューヨーク州ブルックリンで結成された
インディー・ロック/ポスト・ロックバンド。2009年作。元々は、イェール大学に在学していた
デイヴ・ロングストレスのソロ・プロジェクトとして始まりましたが、メンバーは流動的で、
一時的にはVampire Weekend(こちらも現在のインディー・ロックの先端を行く音楽性で興味深いですが)
のメンバーも在籍していたことがありました。ビョークとのライブでの共演(2007)や、共作の発表も、
彼らが有名になるきっかけになったと言えるでしょう。
本作を評価するのは、大変難しいことだと思います。如何せん前例のない摩訶不思議な音使いの連続で、
これほど不思議な気持ちになった作品は久しぶりです。
変拍子の多用されたリズム・パターンと、浮遊感を強く感じる、一筋縄ではいかない独特なコード進行、
それに、女性のコーラス隊が作り出す、まるで50sから60s初期にかけて隆盛したドゥー・ワップを
(Moonglowsのような)思わせるようなハーモニー、それを切り裂くように乾いたトーンで、
スペイシーに舞う、Steve Howe(Yes)のようなフレーズを弾くリード・ギター。
こうして音の特徴を書き連ねても、あまり説明にはなっていませんね。
というか、どうしてこのリズムに、こういう上物を乗せればいいという発想になるのか、
考えても全くわかりません・・・・・・。
でも、なぜかクセになってしまう、「グルーブ」がそこにはあります。
一つ言えることは、彼らの曲作りの核には、ソウルミュージックの影響が強いということでしょうか。
その中に、ファンク、ドゥー・ワップ、ハード・ロックの要素や、アフリカ、東欧、中東の民族音楽、
の要素が混じり合っているという印象です。
いずれにせよ、彼らの作り出す音楽は摩訶不思議ではありますが、
決して混ぜてみただけの「デタラメ」にはなっていません。
ワールド・ミュージックへの深い洞察に裏打ちされた、強烈なインテリジェンスを感じます。
「グルーブとは何か」という問いへのヒントが、このアルバムの中にあるのかもしれません。

Cannibal Resource

Useful Chamber

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  1. 2013/03/03(日) 17:30:10|
  2. Dirty Projectors
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今日の一枚(89)

Album: Stylus Fantasticus
Artist: sgt.
Genres: Post Rock, Instrumental Rock

無題


1999年結成の、日本のインストゥルメンタル・ロック/ポスト・ロックバンド。2008年作。
日本のポスト・ロックのバンドとしてはtoeがよく知られていますが、メンバーの一人である
美濃隆章(G)が、エンジニアとして参加していることからも、同系統のバンドと捉えて良いと思います。
ROVOなんかも近い傾向ですが、あちらがトランスやダンス・ミュージックよりであるのに対して、
彼らは古典的なプログレに近い音楽性と考えれば良いかと思います。
ヴァイオリンの生み出す幻想的なバッキングに、バリバリの変拍子を固いトーンから生み出す大野 均(Dr)と
正確無比な変態ベースラインを弾く明石 興司 (B)の(King CrimsonのLARKS' TONGUES IN ASPICやRedを
意識したような)プログレ的なリズム隊に、強くディストーションの掛かったシューゲイザー色を感じる
ギターと、フリーキートーンを多用したブロウが特徴的なサックス、ジャズ臭を漂わせるキーボートが
カオティックながらも聴きやすさを残した構成となっています。
曲調の多彩さに若干欠ける部分が無きにしも非ずですが、よりフリージャズ的なアプローチや、
メタリックな方向に進む、とか、或いはエスニックなサウンドを試行するなど、
彼らのテクニックをもってすれば、いくらでもチャレンジできるのだろうと思います。
日本のポストロックの未来を背負っていって欲しいバンドです。

囚人達のジレンマゲーム

銀河を壊して発電所を創れ

ムノユラギ

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  1. 2013/02/23(土) 23:08:28|
  2. sgt.
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

今日の一枚(33)

Album: Kid A
Artist: Radiohead
Genres: Post Rock
Everything In Its  Right Place
Kid a

1985年に、イングランド、オックスフォードで結成。'90年代以降のモダンロックを代表する
エレクトロニカ/ポスト・ロックバンド。彼らの音楽的ルーツは、オルタナティブ・ロックや、
ポストパンク/ニューウェーブ【単純に言えば、ガレージロック(グラムロックをイメージすると良いでしょう。例えばDr.Feelgoodなど)的なローファイなサウンドに、黒人音楽やレゲエ、クラシック等の影響を付加したもの。U2や、XTCが代表的】にあります。ポストパンク/ニューウェーブの音楽性に、
さらに従来のロックの範疇を大幅に逸脱するような電子音楽、ノイズミュージックのテイストが混ざった、
とでも言うべきでしょうか。彼らの作品を見ていくと、アルバムごとに、かなり音楽性が異なるため、
ここで全てを紹介するのは難しいですが、大きく分ければ、Kid A以前か、以降かということになると思います。
このアルバムの音楽性に最も影響を与えているのが、Aphex TwinやSquarepusher、Autechreなどの、
アンビエント・ミュージックでしょう。音楽の「機械的」側面に着目した(演奏という概念から対極にある)
音楽を電子音楽と呼ぶわけですから、ロックンロールという、(ジャズもR&Bもそうですけど)
ポピュラー音楽の中でもとりわけ「人力によるビート感」に頼る音楽とは相入れぬものがあるように、
誰もが感じることと思います。事実、The Bendsのようなギターロックを好むタイプのファンからは、
当時このアルバムは酷評されたようです。プラスティックのように無機質なトム・ヨークのボーカルに、
歪められた楽器の音というような、抽象的で難解なアンビエントの要素と、ポップで耳から離れないメロディが
不気味で冷んやりとした対照を成しています。
ともかく、古代ギリシャ(プラトンとアリストテレス)から現代に至るまで、哲学や芸術の重大なテーマであり続けてきた、「精神と物質の二項対立」という問題に、このアルバムは一つの答えを与えているように感じます。
「何が人間的で、何が機械的なのか?」(この音楽は、両者の境にあると僕は感じましたが)、そして、
「真理とは一体どこに(具象or抽象、すなわち肉体or精神)有るのか?」という問いを、投げかけていると言えそうです。
夜中に聴くと、背筋が寒くなります。

Everything In Its Right Place

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  1. 2012/12/25(火) 02:31:58|
  2. Radiohead
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  4. | コメント:0

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
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