私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(353)

Album: The Minstrel Show
Artist: Little Brother
Genres: Hip Hop, Alternative Hip Hop

Minstrel Show

アメリカ、ノースカロライナ州ダーラム出身のヒップホップグループ。2001年結成。
メンバーはPhonte(MC, 1978-), Big Pooh(MC, 1977-),
9th Wonder(DJ, Producer, 1975-)の三人です。

三人はもともとダーラムにあるNorth Carolina Central University(NCCU)の学生で、
NCCUと、Michael Jordanの出身校としても知られているNorth Carolina Universityの
学生が集まってできたヒップ・ホップサークルであるJustus Leagueで知り合い、
2001年にグループ結成に至りました。同年には、カリフォルニア州オークランドにある
インディーレーベルのABB Reccords(Sound Providersなどのプロデュースで知られる)と
契約を結び、作品をリリースするようになります。
本作は2005年作の2nd。US#56, 発売週間売り上げは18000枚。

本作のタイトルとなっているMinstrel Showとは、アメリカで1830年頃から行われていた
踊りや音楽、寸劇などを交えたショーのことで、南北戦争の後は
主に黒人たち(それ以前は、顔を黒く塗った白人が行っていました)によって
演じられていたようです。本作ではこのショウの模様を放映する
という体裁に則って、黒人奴隷の生活ぶりを風刺するような内容が含まれています。
リリース当初はサウスヒップホップグループであるBun Bから、
黒人差別を象徴するミンストレル・ショウを扱う事への批判もあったようです。

この後、2007年に9th Wonderはグループを離れ、
メジャーどころでは Jay-Z, De La Soul, Destiny's Child等と仕事をするようになり、
ソロキャリアを重ねていくようになります。次第に活動は停滞し、
2010年には解散を余儀なくされてしまいます。

音楽性としては、90年代のニューヨークで隆盛を見せたA Tribe Called Quest, De La Soul,
Jungle Brothersを始めとするNative Tongueや、Black Moon, Smif-N-Wessun,
Heltah SkeltahなどのBoot Camp Clickと呼ばれるスタイルに影響を受けたサウンドで、
Bobby Womack, Rufus, Stylisticsなどの定番のソウルをサンプリングしながらも、
ビートは複雑に入り組んでいます。ゲストボーカルには9th Wonderとかかわりの深い
Erykah Baduのバックコーラスを務めていたYahZarahをボーカリストに迎えたり、
Lauryn Hill, The Roots, Common, John Legendなどとの仕事でその名を轟かせている
James Poyserをプロデューサーに迎えたりしており、起伏に富んだ音像で、
生演奏も取り入れられ、レイドバックしたラップとの絡みついて得も言われぬ
グルーブを生み出しています。

#1Welcome to the Minstrel Showは、YahZarahによる柔らかいボーカルをフィーチャーしたイントロ。
サンプルにはNo Stronger Love/The Floatersが使われています。
メンバーの紹介とともにシームレスに#2Beautiful Morningへと繋がって行きます。
フィリーソウルを代表するグループであるThe StylisticsのWhats Happening, Baby?の
美麗なストリングスがゆったりと流れるバックで鋭いフロウが楽しめます。お気に入り。
さらにシームレスにChaka Khanの所属していたRufusのCirclesがリフレインする
#3Becomingは、ソリッドで強い低音の出たリズムにレイドバックしたラップが絡みます。
The Isley BrothersのボーカリストであるRonald Isleyの蕩けるようなファルセットが取り入れられた
#5Cheatin'は、一気に密室的でモダンな音像になったR&Bです。最高。
Jealous Love/Bobby Womackをサンプリングした#6Hiding Loveは、
後半に長い会話のSEが挿入されています。
64年から68年までTemptationsでリードボーカルを務めたDavid RuffinのSlow Danceを
大胆に中低音をカットしてサンプリングした#7Slow It Downは、ローファイで強く揺れるシンセの
バッキングがコズミックな感触があります。シンセのごくごく短いループと女性コーラスの
ループがまとわりついてくる#8Say It Againは、とびきりメロウな一曲です。
1:20程度の短いスキット#95th & Fashionは、コズミックなシンセに断片化された女性コーラスが
散りばめられています。同じくThe StylisticsのOne Night Affairを大胆に、
そのまま用いたイントロから始まる#10Lovin' Itは、
コーラスにエフェクトが掛けられていてヴォコーダーのような効果が得られています。最高。
子供と父親の長い会話のスキット#11Diary of a Mad Black Daddy(すんごいタイトル)があり、
I Really Hope It's You/Michael Franksのコーラスワークを繋ぎ合わせて作った
#12All For Youは、ファルセットの歌唱にどことなくD'Angeloを思わせるような
部分もあります。お気に入り。元々はStevie Wonderの1966年の曲ですがこれのMichael Jacksonによる
1973年のカバーWith a Child's Heartを用いた#13Watch Meは、DJ Jazzy Jeffによる
激しく細やかなスクラッチが聴き所です。
#15Still Lives Throughは、同時代的に影響を受けてきたと思われるA Tribe Called Questの
Oh My Godからサンプリングした一曲で、歯切れの良くスカスカなスネアと、
粘りつくベースライン、凍り付くような冷たさを感じるシンセの残響が
絶妙なスパイスになっています。お気に入り。
再び冒頭の#1と同じ展開で出演者に謝辞を述べて拍手喝采の中で終わっていく
#16Minstrel Show Closing Themeで終わっていきます。
ボーナストラックも収められており、Jermaine JacksonのSitting On The Edge Of My Mindを
サンプリングした#18Hold On(Tellin' Me)、
Curtis MayfieldのAin't No Love Lastをサンプリングした#19The Olioは、
2006年にリリースされたEPのThe Commercial Freeに収録されており、
かなり派手に取り入れられたストリングスが堪りません。
これはアルバム収録曲に負けず劣らずお気に入りです。

基本的にはサンプルする楽曲もマニアックなものは少なく、ビートの感触も
90sのNative Tongueを思わせる硬質で乾いた感触があり、ローファイなトラック、
レイドバックしたラップの生み出すフロウは懐かしい感じがあります。
00年代ヒップホップの愛聴盤の一つです。傑作。

Welcome to the Minstrel Show

Beautiful Morning

Becoming

Lovin' It

All For You

Still Lives Through

The Olio

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  1. 2014/12/02(火) 03:05:51|
  2. Little Brother
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今日の一枚(333)

Album: The Score
Artist: Fugees
Genres: Hip Hop, Soul, Reggae

The Score

アメリカ、ニュージャージー州サウスオレンジ出身のヒップホップグループ。1992年結成。
メンバーはLauryn Hill, Wyclef Jean, Pras Michelの三人で、三人ともラップを担当するだけでなく、
HillとMichelはボーカルも担当しています。活動期間は短く、結成5年目の97年で解散してしまいますが、
1996年作の2ndである本作は1700万枚を売り上げる大ヒットとなり、97年のGrammy Awardで
Best Albumを受賞、Roberta Flackの同名曲をサンプリングしたシングルである、
Killing Me Softly With His SongがBest R&B Groupを受賞しました。
この直後からメンバーはソロ活動を活発化させ、メンバーであったLauryn Hillはソロデビュー、
1stアルバムであるThe Miseducation of Lauryn Hill(1998)はGrammy Awardで11部門を受賞、
1200万枚を売り上げる結果となりました。
Wyclef JeanはDestiny Child, Carlos Santanaなどのプロデュース活動を中心として活動を続けています。
Fugeesとしては2004年に一度再結成を果たしており、そのライブの模様は
映画Dave Chappelle's Block Party(2004)に収録されていますが、ゲストとして
Kanye West, Jill Scott, Erykah Badu, The Roots, Common, John Legendなど、
ネオソウルやヒップホップ界隈の名だたるミュージシャンが参加しています。
大ヒットした本作では、サンプリングネタのセレクトに大ネタ(有名曲)が多く、
ソウル色、レゲエ色が濃厚な作品に仕上がっています。
オルタナティブ・ヒップホップ(Native Tongueとも言います, A Tribe Called Quest,
De La Soulの項を参照)を代表する作品として、Ramsey LewisやThe Headhuntersのような
ジャズファンクの作品や、The Flamingosのような1950年代のドゥーワップ、
スパニッシュギターの名手であるFrancisco Tarrega、レゲエの神様であるBob Marley、
ニューソウルではRoberta Flack、Enyaなどを取り上げて、独自の世界観を創り上げています。
ラップを中心としたメロ部分と、Lauryn Hillのソウルフルなボーカルを中心としたサビとの
対比が明確に行われた構造を持っており、ポップで聴きやすい作品に仕上がっているので、
これほどのビッグヒットになったのも納得できます。
短いピアノループと、サスティーンの短いスネアが乾いた感覚のある#1Red Introから始まり、
#2How Many Micsは、トレブリーなシンセのリフに幾重にも重ねられた訥々としたMC、
トンネルを走る車のブレーキ音のようなSE、咳の音が印象的です。
ヒット曲の#3Ready Or Notは、フィラデルフィアソウルの知る人ぞ知るグループとして、
Aretha Franklin, Jackson 5, Swing Out Sister, Manhattan Transferなど、
有名アーティストにカバーされることの多いThe DelfonicsのReady or Not, Here I Comeを、
EnyaのBoadiceaを用いて再構築するという試みが行われています。
フックの部分は原曲の雰囲気を余り崩さず、シンフォニックなアレンジが施された原曲よりも、
ソリッドで歯切れの良いドラムと、左右に揺れたストリングスが不穏な空気を醸し出しています。
Laurynの気怠いボーカルも最高。お気に入り。
#4Zealotsは、The Flamingosの1959年の名曲、I Only Have Eyes For Youからサンプリング
(日本人的には山下達郎がOn The Street Cornerというドゥーワップのカヴァーアルバムの
中で取り上げています)された、リヴァ―ブの掛かった美麗なコーラスをバックにして、
徐々にビートが強くなっていきます。パトカーのサイレンの音が入ってシームレスに
#5The Beastへと続いていきますが、こちらは冒頭の派手なスクラッチから始まって、
牧歌的なHeadhuntersのサンプルをバックにして、ドラムスの叩きだすグルーブにはカリブっぽい
香りがしていて素晴らしい。お気に入り。
Ramsey Lewisの浮遊感たっぷりなエレピの音と、ブルーアイドソウルを代表するシンガーソングライター
の一人であるTeena Marieのヒット曲、Ooo La La La(1988)のポップなフックをサンプリングした
#6Fu-Gee-Laなんかには、00s初頭のネオソウルに繋がっていく部分が多いように感じます。お気に入り。
ノイズ混じりのトラックとドライなラップ、アウトロのアコギのトレモロ奏法が
不安感を煽る#7Family Businessも良い。ファミコンのようなシンセを挟んで、
Roberta FlackのあのKilling Me Softlyの声がもう入ってきています。
#8Killing Me Softlyは、Lauryn Hillのボーカリゼーションが前面に押し出された一曲で、
無機質なドラムスのビートとボーカルのみでサビまで進み、元のレコードのリヴァ―ブの
感じを生かしたサビのバックに、巧みにラップが重ねられています。お気に入り。
表題曲の#9The Scoreは、70sに活動したファンクバンドのCymandeのDoveからサンプリングした
弾けるようなトーンのギターがアクセントになっていますが、トラック全体は非常に渋い魅力があります。
Everybody Plays The Foolのヒットで知られるThe Main Ingredientの楽曲を
サンプリングした#11Cowboysは、冒頭から入ってくるシタールのフレーズが頭から離れません。
アコギの弾き語りを中心にしたBob Marleyのカヴァー#12No Woman, No Cryは歌詞も変えられ、
原曲よりもジャジーなアレンジになっています。
最後を飾る#13Manifest/Outroは、80s末に結成したヒップホップグループである
Poor Rightenous Teachersの楽曲がサンプリングされており、
本作の中でもとりわけアグレッシブなラップと、フックでは激しいスクラッチが楽しめます。お気に入り。
サンプリング元の楽曲に有名作も多く、メロディックでポップな感触もあって、
ヒットするべくしてした作品だということをひしひしと感じます。傑作。

Ready Or Not

The Beast

Fu-Gee-La

Killing Me Softly

Manifest/Outro

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  1. 2014/09/10(水) 01:35:52|
  2. Fugees
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  4. | コメント:0

今日の一枚(311)

いつも私的名盤紹介にお越しくださっている皆様、
コメントくださっています皆様、Twitterにて交流下さっております皆様、お世話になっておrます。
管理人のSystematic Chaosです。
ここ一週間ほど更新が止まっておりまして申し訳ありません。
少し私生活がストレスフルでしたので滞っておりましたが、色々とまた素晴らしい作品に出会っておりますので、
また地道に更新して参ります。どうぞ宜しくお願い致します。
それでは、いつも通りどうぞ。今日はヒップホップです。

Album: The Low End Theory
Artist: A Tribe Called Quest
Genres: Alternative Hip Hop, Jazz Rap

the low end theory


アメリカ、ニューヨーククイーンズ出身の4人組ヒップホップグループ。
MC/プロデューサーのQ-Tip(1970-)を中心として1985年に結成されました。
以前De La Soulの記事にも書きましたが、彼らやJungle Brothersなどと並んで、
80年代後半から90年代にかけて、ジャズ・ラップ/オルタナティブ・ヒップホップとも言われた、
いわゆるNative Tonguesを代表するグループとして知られています。
Jungle Brothers, Kool DJ Redalert(1956-)らに才能を見いだされた彼らは、
1989年にシングルDescription Of A Foolでデビューを果たします。
東海岸のオルタナティブ・ヒップホップグループの中では最も商業的な成功を収めており、
90年代の中で最もインテリジェントでアーティスティックなグループであると評されています。
De La Soulのメンバーとはデビュー以前から交流があり、98年の解散、2006年の再結成後には
Kanye Westのツアー2013 The Yeezus Tourに参加したり、Esperanza Spaldingの
アルバムプロデュースを手掛けたりなど、リリースはありませんが現在でも活動を続けています。
音楽性としては、Cannonball Adderleyのようなストレートアヘッドなジャズや
Roy AyersやRamsey Lewisのようなジャズファンク、Lee MorganやWeather Reportのような
ジャズロック/フュージョン、の作品を大胆にサンプリングしたサウンド、
とりわけウッドベースの倍音の多い鳴りが印象的なリズムトラックに鋭いスネアと、
リヴァーブの大きいキックが特徴的で、レイドバックしたラップは、拍のずらし方、
フレーズの歌わせ方に強烈な個性を感じます。
他にもAretha FlanklinやP-Funk, JBなど勿論ソウルやファンクの大御所も名を連ねており、
ジャズファンク~ファンク界隈ではKool & The Gangの作品からの引用が目立つ印象があります。
ラップの内容はリアルタイムな社会問題を取り上げたもの、
菜食主義について歌ったものや幼少期の記憶を辿ったものなど様々ですが、
過激で反社会的なものや、左翼的思想の強い内容は含まれていないようです。
Raphael Saadiq(Raphael Saadiqの項を参照)やD'Angelo, Beastie Boysらも
彼らの作品の制作に関わっており、与えた影響の大きさは計り知れない部分があります。
本作は1991年作の2nd。
A Chant For Bu/Art Blakey & the Jazz Messengersをサンプリングした
#1Excursions, Young and Fine/Weather Reportを用いた#4Butter,
Aretha Franklinの名曲Rock Steadyの入った#6Show Business,
The Steam Drill/Cannonball Adderleyの#8The Infamous Date Rape,
挙句の果てにJimi HendrixとMilesを同じ曲にぶち込んで調和させてしまうという
#14Scenarioなど、非常に特徴的なサンプリングが施されています。必聴盤。

Excursions

Butter

Show Business

The Infamous Date Rape

Scenario

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  1. 2014/07/06(日) 14:29:14|
  2. A Tribe Called Quest
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今日の一枚(304)

Album: 3 Feet High and Rising
Artist: De La Soul
Genres: Hip Hop, Alternative Hip Hop

De La Soul


アメリカ、ニューヨーク、ロングアイランド出身の3人組ヒップホップユニット。
1987年結成。メンバーはPosdnuos, Dave, Maseoの三人です。
多様な音楽からの影響を取り入れて肥大化していったヒップホップの中で、
R&B, ソウルやレゲエに加えてカントリー、ジャズ、フュージョン、ソフトロックなどまで
取り入れて1980年代後半に大きなムーブメントを起こしたイーストコーストの
オルタナティブ・ヒップホップを代表するグループとして、
A Tribe Called Questなどと並んで挙げられることの多いグループと言われています。
彼らの影響を受けたグループとしてはCamp Lo, The Black Eyed Peas, Digable Planets,
Mos Defなどが挙げられ、現代のヒップホップを牽引しているグループ/ラッパーに
与えた影響は計り知れません。ジャジーヒップホップなど、クロスオーバー的な音楽性を指向
するようになっていったOutKast, Kanye Westといったビッグネームからも影響が窺えます。
2006年にはGorillazとのコラボレーションシングルFeel Good IncでGrammy Awardを受賞しています。
80年代中ごろからヒップホップのメインストリームを成していたギャングスタ・ラップは、
反社会的行為の推奨とマッチョイズム、ドラッグに象徴されるような、ストリート独特の精神性を
有した音楽として、ともすれば攻撃的で排他的な印象を与えかねなかったわけですが、
彼らに代表されるようなオルタナティブ・ヒップホップはこうしたイメージを払拭し、
軽やかで底抜けに明るくスムースで、浮遊したグルーブが充満しており、とても魅力を感じます。
これは、彼ら自身が比較的裕福な家庭環境で育った人物であることと、
無縁ではないのかもしれません。乗せられたライムも決して下品な言葉は無く、
サンプリングにもSteely DanやらHall & Oates, Rascalsと、とても耳に
優しい音楽がセレクトされており、ヒップホップ素人の筆者にとっても驚きの連続といった
感のあるアルバムです。EmotionsにP-FunkにOtis Reddingなど、ソウルやR&Bの
有名どころが多数取り上げられていて、元ネタが分かりやすくニヤニヤ出来ますし、
メロディもキャッチ―で聴きやすいと思います。1989年作の1st。
打ち込まれたビートにはディスコミュージックの影響が見られるものから、
ブレイクビーツの配された複雑なものまであり興味深いです。
ハモンドのローファイな音に始まり、観客の熱狂をよそに自己紹介を続ける#1Introから始まります。
本作のタイトルの元ネタとなったJohnny CashのFive Feet High And Risingからサンプリングした
#2The Magic Numberは、後半になるにつれてスクラッチが激しくなり、ヴォイスの加工が幾重にも
施された作りになっています。 お気に入り。
#4Cool Breeze on the Rocksは、極めて短い時間に、テレビのチャンネルをザッピングするかのように
曲が詰め込まれています。MJのRock With Youの使い方には思わず笑みがこぼれます。
Got to Get a Knutt/New Birthが流れる中で囁くように歌う#5Can U Keep a Secretを挟んで、
Isley Brothersの初期の名曲Shoutをサンプリングした#6Jenifa Taught Me (Derwin's Revenge)では、
レイドバックしたリズム感のラップと、ブレイクを上手く挟んでいて、グルーブが腰に来ます。素晴らしい。
JBのビートにKraftwerkの電子音を取り入れてしまうという強烈なセンスで惹き込まれる#7Ghetto Thangも
これまたお気に入り。ベースリフのダークな感じがピッタリです。
彼らの楽曲の中でもとりわけ有名な#9Eye Knowは、Steely Dan/Peg, Otis Redding/The Dock Of The Bay,
Sing A Simple Song/Sly & The Family Stoneという誰もが知る楽曲をふんだんに織り交ぜながらも、
見事な調和を見せています。
続いてHerbie Hancockの同名アルバムにレコーディング参加したメンバーによる
ジャズファンクバンドThe HeadhuntersのGod Make Me Funkyのビートを入れた#10Take It Off,
R&Bのスタンダード Ben E. King./Stand By Meのベースラインの入った#11A Little Bit of Soap,
#13Potholes in My Lawnでは、Parliament/Little Ole Country Boyのヨーデルをそのまま入れた
牧歌的な雰囲気が楽しい。
まさかのI Can't Go for That (No Can Do)/Hall & Oatesをサンプリングした#14Say No Goは、
断片的にEmotionsのコーラスが入り、細かくスクラッチが入ってきます。お気に入り。
Billy Joelのピアノが形を変えられて不穏な音になって挿入された#16Plug Tunin,
Parliamentに続いてFunkadelic/(Not Just) Knee Deepをほとんどそのまま使った#20Me Myself And Iは、
シンセのフレーズのキャッチ―さで殆どポップスのようです。これも最高。
The Rascals/My World(Once Upon A Dream収録)を使った#23D.A.I.S.Y. Ageは、
スクラッチとソリッドなリズムにラップを乗せていきながら、途中で原曲のゆったりとしたグルーブが
見え隠れしてくるバランスが堪りません。
基本的にはJBやP-Funkのようなレイドバックしたファンクのリズムトラックを絶妙に用いながらも、
所々にポップスやソフトロックの印象的なテーマやリフレインが散りばめられていて、
元ネタの分かる人は勿論楽しめますが、これだけ多彩な曲を混ぜておきながら一切の違和感なく
ポップでありながら洒脱で気怠いラップで聴かせてしまうセンスの良さに、
オルタナティブ・ヒップホップの面白さに誰もが目覚められるのではないかと思ってしまいます。大傑作。

The Magic Number

Jenifa Taught Me (Derwin's Revenge)

Ghetto Thang

Eye Know

Say No Go

Me Myself And I

D.A.I.S.Y. Age

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  1. 2014/06/05(木) 22:11:03|
  2. De La Soul
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  4. | コメント:0

今日の一枚(237)

Album: Be
Artist: Common
Genres: Hip Hop, R&B

Be.jpg


アメリカ、イリノイ州シカゴ出身のラッパー、俳優。1972年生まれ。
同じくシカゴ出身のMC/プロデューサーであり、無数の有名作品に関わってきたKanye Westの立ち上げた
レーベルGOOD Musicに移籍し、彼のプロデュースの元制作された2005年作の6th。
本作は、2006年のGrammy Award for Best Rap Albumにノミネートされています。
2007年には引き続いてKanyeとのコラボレーションによるSouthsideで
Best Rap Performance by a Duo or Groupを獲得しています。
ネオソウル/ヒップ・ホップを扱う音楽集団であるSoulquariansとの録音によるオーガニックで
アフリカンなLike Water for Chocolateや、エレクトロニカへの傾倒(Electric Circus, 2002)を経て
本作ではオールドソウルの香りが強い、落ち着いたサウンドになっており、
90sからインディーシーンで地道に活動を続けてきた彼の個性に合わせたプロデュースになっているため、
セルアウトな気質の強くなりがちなパーティーチューンという感は全くなく、
メロウで、大人の鑑賞に十分耐えうる綺麗なメロディとオーガニックな
音色のリズムが全体を支配する暖かい音像です。
Albert JonesのMother Natureをサンプリングした表題曲の#1Beは、キャッチーなストリングスの
リフレインとローファイなスネアの醸し出すアングラな雰囲気がピコピコしたシンセと対照的です。
#2The Cornerは、サビでKanyeご本人が登場し見事な存在感を放っています。
バックに流れる早送り再生した声のサンプリングが生々しく、スネア音は大きくドライブ感があります。
John Mayerとのコラボレーションシングルである#3Go!は、空々しいエレピのループが淡々と流れる中で
Common自身の存在感が危ういですがこれも独特の浮遊感があって洒脱です。
フィリーソウルの香りが漂うストリングスと後半のゴスペルライクなコーラスが迫ってくる
#4Faithfulも、Kanye得意の、ボーカルをサンプリングして早回し再生するテクニックが使われています。
訥々としたラップがソウルフルなトラックに見事に嵌っています。
#5TestifyはHoney Coneのボーカルがサンプリングされひたすら繰り返される間を縫うようにして
語りかけるようなラップと手数の少ないドラムスが作るミニマルなグルーブが特徴的です。
#6Love is...は知る人ぞ知るMarvin Gaye/God is Loveをサンプリングした
緩やかなストリングスのバッキングに、変化の少ないリズムトラックに対して自在に乗っていく
繊細なラップが遊んでいて巧みです。
#7Chi Cityは、冒頭から派手にスクラッチが入り太いベースラインがうねるようにグルーブを作る中で、
オルガンの分厚いバッキングが消えてラップのみになっていく流れが最高にクールです。
アウトロの気怠いコーラスが作る緩さを鋭いスクラッチが切り裂いていきます。
ライブレコーディングによる#8The Foodは、サビでKanyeが出てくるデュエットソングで、
遠くに定位されたピアノの、オリエンタルな空気を感じるループがキャッチーです。
#9Real Peopleは元ネタのSweet Children/Caesar Frazierを大胆に使っており、
アーシーなホーンセクションによるリフと歌うようなベースラインがスムースで心地よいです。
これもお気に入り。
シームレスに入って行く#10They SayはKanyeのメロディセンスが光るボーカリゼーションと
Ghetto Childの面影を色濃く残すビブラフォンのような角が取れた音色の
シンセのリフが作るグルーブと軽いラップ、サビ終わりのコーラスの低位感の瑞々しさがメロウな一曲です。
これも素晴らしい。
#11It's Your World/Pop's Repriseは、様々な方向に定位された
ソウルフルなコーラスに全編をストリングスが流れる
トラックにアタックの強いベース音がシンプルにパターンを弾いており、
最後には夢を語る子供たちの言葉が聞こえ、壮大な語りが流れ終わっていきます。
終始穏やかでソウルフルでありながらも音の中にストリートな雰囲気を残しており、
肩の力を抜いて聴くことのできる、洗練された、古くて新しいヒップホップ・クラシック。

Be

Go!

Faithful

Real People

They Say

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  1. 2013/12/17(火) 16:12:31|
  2. Common
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
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