私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(210)

Album: Travelling Without Moving
Artist: Jamiroquai
Genres: Acid Jazz, Soft Rock, Blue Eyed Soul

travelling without moving


イギリス、ロンドン出身のアシッド・ジャズ/ジャズ・ファンク/ポップスバンド。
1992年にリーダーのJason Kay(Vo)を中心として結成されて以来、
Incognito, Brand New Heavies, Corduroyなどとともに、90sのアシッド・ジャズ
(本来は同名のレーベルを指す言葉でしたが、現在ではジャンルとして捉えられている
と考えてよいでしょう)を代表するグループ。
1stから1996年作の3rdである本作まで、非常に大きなセールス(本作は700万枚)を
挙げており、98年にグラミー賞を受賞しています。
アシッド・ジャズと言うと音楽的に最も濃厚に影響を受けているのは60s後期の
ジャズ・ファンク(フュージョンという考えもありますが音像として倣っているのは
ジャズ・ファンクと考えられます)やモータウンやフィラデルフィア・ソウルであると言えますが、
個人的には、特にJamiroquaiはブルーアイドソウルからの影響が強いように感じます。
或いはJasonのヒップホップっぽさのある独特のタイム感のボーカリゼーションも
彼らの楽曲ならではの個性を与える要因となっています。
1stや2ndに比較するとキャッチーさではむしろ譲っている部分があり、
どちらかというとリズム主導で楽曲が製作されているように感じます。
#1Virtual InsanityはPVがMTVで5部門を同時受賞した大ヒット曲ですが、
楽曲だけ集中して聴いてみても、スラップを絡めたベースラインと所々に挿入される
ストリングスアレンジが濃厚なソウルフィーリングを持っていて、
繰り返しの鑑賞に堪えうる佳曲だと思います。
#2Cosmic Girlはハウス色のあるスペイシーなキーボードにひたすらにループする
ハイハットとディスコビートを強く感じさせるベースラインがリズムの間を埋める
女性コーラスと結びついて軽く浮遊感のあるグルーブを感じさせます。
意識的に音色を変えながら歌うボーカルも面白いです。
メロディもシームレスでキャッチーです。
Jamiroquaiと言えばやはりこの曲が最初に思い浮かびます。素晴らしい。
#3Use The Forceはパーカッションが複雑にするジャングルビートにワウを絡めた
コードカッティングとブラスが厚みを作るファンク色の強い小品。
#4Everydayは、音数の少ない単音カッティングと太く輪郭の滲んだベースに
さざ波のように鳴り渡るストリングスが仄かに味付けするスローテンポの一曲。
スウィート・ソウルを意識したようなファルセット気味のボーカリゼーションが洒脱です。
#5Alrightはブリブリしたスラップベースにバックビートの効いたドラムスが作る
重心の低いグルーブに乗せて絶妙にフェイクした歌メロが如何にも彼ららしいです。
うねうねしたキーボードの音色も楽しいです。
#6High Timesはディストーションの掛かったギターとロック寄りのドラムパターンの
異色な前半部からフュージョン臭の漂う中間部、そしてスクラッチを挟んでジャジーな
サックスソロ、ワウの強く掛かったカッティングと若干トーンを絞ったクリーンの
リードギターがリズムの中で遊ぶ後半部と目まぐるしい展開の一曲。お気に入りです。
#7Drifting Alongは、レゲエを意識したカッティングとうねるベースラインが
密室感のあるアレンジで迫ってきます。
#9DiDJital Vibrationsは短いインストの#8Didjeramaに続いてシンセのホーミーのような
音色のバッキングが鳴りつつ、徐々に淡々とリフを刻むベースが入っていきます。
途中でアコギのストロークやコーラスのメロディとユニゾンするようにして
ストリングスがゆったりと流れていくジャジーなハウスといった趣のインタールードです。
表題曲の#10Travelling Without Movingはエンジン音のSEから始まりデジタルな
16ビートと、トレブリーでジャキジャキとしたカッティング、背後で鳴るスクラッチが
ビート感を強調する饒舌なベースソロが聴き所です。エフェクト処理したボーカルも
適度にローファイで良いセンスしています。
#11You Are My Loveはクランチのギターリフを中心として手数の多いドラミングが
疾走感を生み出すフュージョン/ブラスロック色の強い一曲。
相変わらずハイハットの捌き方が素晴らしいです。
#12Spend A Lifetimeは、ピアノ弾き語りとストリングスを中心とした
シンプルなバラード。ソウルフルというよりはドリーミーでか弱さのある
ボーカリゼーションで、トラックに負けそうになりながら歌っているのが良い。
どの楽曲も、かつてのブルーアイドソウルに見られるような適度に緩い音像と、
ディスコやハウスに近いダンサブルなビート、キャッチーなリフやメロディに
溢れており、ドライブミュージックとして聴き流すにもピッタリですが、
しっかりリスニングしても聴くほどに様々なジャンルからの影響が見られ
非常に興味深い作品だと思います。

Virtual Insanity

Cosmic Girl

Everyday

High Times

Travelling Without Moving

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  1. 2013/10/29(火) 13:40:19|
  2. Jamiroquai
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今日の一枚(209)

Album: Flapper
Artist: 吉田美奈子
Genres: AOR, Pops, Soul

flapper.jpg


埼玉県大宮市出身の日本のシンガー、作詞家、作曲家、アレンジャー、音楽プロデューサー。1953年生まれ。
実兄はレコーディング・エンジニアの吉田保。1976年作の6th。
高校在学時に細野晴臣と松本隆といったはっぴいえんどにのメンバーとなる
面々に出会ったことがきっかけとなり、
72年に大瀧詠一のソロ1stアルバムに収録されている指切り
(後にSugar BabeのSongsリマスターにもカバーが収録されることになります)
のフルートソロの演奏でデビューを果たすことになります。
シンガーとしてもほぼ3オクターブの音域を自在に行き来する能力を持ち、
コーラスや作詞家として、デビューから山下達郎のRCA/AIR期の作品やライブの多くに関わっています。
デビュー時からRCA/AIR期の彼女の作品は、Laura NyroやCarole Kingのような、50s~60sを代表する
女性のシンガーソングライターを習った都会的でハイファイさを強く感じる
スタイルの楽曲やアレンジが多いように感じます。
80sにかけてALFAに移籍した後のファンク路線のへヴィーな演奏やアレンジも素晴らしいものがあると思います。
(またの機会にご紹介します)
バックを固めるスタジオ・ミュージシャンも70年代から現在に至るまで日本のポピュラー音楽を牽引してきた、
細野晴臣(B)、鈴木茂(G)、林立夫(Dr)、村上"PONTA"秀一(Dr)、松任谷正隆(Key)、佐藤博(Key)、
矢野顕子(key)、浜口茂外也(Per)、山下達郎(cho)、大貫妙子(cho)、松木恒秀(G)といったまさに、
伝説級の御仁が多数参加して存分に腕を振るっています。
吉田自身による作曲は3曲にとどまっており、山下達郎、細野晴臣、佐藤博、矢野顕子、大瀧詠一
といったメンバーが楽曲を提供しています。
もう本当に夢のようなことが現実に起こっていた時代だと思います。
このうち、細野晴臣や佐藤博といった多くのミュージシャンは当時バンド兼
音楽プロデュースチームとして活動していた
Tin Pan Alley(73~)というユニットに参加していた人物ということもあり、
彼らのプロデュース作品として本作を聴いても、大きな問題はないかと思います。
#1愛は彼方は、ピアノソロとフリーソウルっぽいストリングスから始まり、山下達郎によるコーラスと
ジャジーで時にパーカッシブなピアノのフレージング、林立夫(Dr)のキメの多いリズムワークと
鈴木茂の繊細でトレブリーな音色のギターソロが存在感を放つソウル寄りのクロスオーバーという感じ。
いきなり良曲。
#2かたおもいは、矢野顕子(Key)の捻くれて歌唱難度の極めて高いメロディーラインを
見事に歌い切るボーカリゼーションと、
一聴してそれとわかるトーンやフレージングの細野晴臣(B)のご機嫌なベースラインが
クラシカルな進行に見事に嵌って素晴らしいです。ストリングスのアレンジも音数が絞られた鮮やかなものです。
#3朝は君には、アルバム中で特に存在感を放っている作曲者の佐藤博
(Key, ソロ作品も素晴らしいものばかりです。これもまた後ほど)
によるキーボードのフュージョン色の強い饒舌なフレーズや煌びやかな音色で聴かせる一曲という感じです。
松木恒秀(G)の最早職人芸であるところのカッティングの音の切り方のセンスの良さには溜息が出ます…
#4ケッペキにいさんは、打って変わって重厚なファンクナンバーです。こんな曲まで入っているとは…
特に意味のない歌詞を連呼するボーカルとぶっといベースやハネたドラミングが楽しい。
達郎の声が若くて冴えない感じで、心の底からダルそうなのがのがまた何とも言えないです。
思わず笑ってしまいます。
#5ラムはお好き?はこれまた如何にも細野さんが書きそうな進行の一曲という感じで、
最後の掛け合いは外国の人が聴いたらどうなるんだろう(笑)そんなクレイジーな一曲。
#6夢で逢えたらは鈴木雅之やキンモクセイなど様々なアーティストにカバーされる代表曲の一つですが、
実は作曲は(このアレンジを聴けば一発で納得すると思いますが)大瀧詠一氏で、最初はアン・ルイスのために
書き下ろした楽曲だったということだそうです。
#7チョッカイは、高水健司によるベースのリフと村上秀一のパワフルなドラミングが圧倒的な存在感を放つ
スロウテンポなファンク。意図して作ったのは間違いないでしょうが、
完全にSly & The Family Stoneの楽曲という感じの音像です。
それにしてもこのグルーブを日本人が出せるというのが夢を感じます。その位完璧な再現度です。
#8忘れかけていた季節へは吉田自身のピアノ弾き語りから始まりニューヨークのシンガーソングライターっぽい
暗澹とした空気を湛えたバラード。個人的にはかなりお気に入りの一曲です。
シンプルに彼女のボーカルの巧みさやトーンの清澄さが伝わってきます。
#9Last Stepは、山下達郎作曲の西海岸をイメージさせ、ホーンセクションが光る短い一曲。
アルバムの最後を飾る#10永遠に はLast Stepとともに山下達郎作曲で彼のソロ1st
(詳しくは山下達郎の項を参照)にも収録されています。
ガラスの弾けるようなストラトのクリーントーンと、アンビエントなグルーブを創出するキーボード、
タムのへヴィーさがリズムに緊張感を与えています。最高。
アルバム全体を見渡すとかなり幅の広い楽曲が収められていますが、
どの楽曲にも明確なイメージやコンセプトがあって作曲されており、
演奏もそれに合わせて無駄な音が一切なく、当時のアメリカ東海岸のスタジオミュージシャンと
比べても、まったく遜色ないレベルに達していると言って過言ではないと、私は思います。
この時代を生きてみたかった、ライブに行ってみたかったと心の底からそう思わされた作品。
(何度もそう思わされていますけどね)

愛は彼方

朝は君に

ケッペキ兄さん

夢で逢えたら

チョッカイ

ラスト・ステップ

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  1. 2013/10/24(木) 12:53:18|
  2. 吉田美奈子
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今日の一枚(208)

Album: Electric Joy
Artist: Richie Kotzen
Genres: Fusion, Funk

electric joy


アメリカ、ペンシルベニア州フィラデルフィア出身のシンガーソングライター、ギタリスト。
1970年生まれ。89年に、当時若手のテクニカル系ギタリストの才能を探し求めていた
シュプラネル・レコードからソロデビューを果たします。
おそらく彼の活躍で一般に最もよく知られているのは、99年~02年の時期に、
Paul Gilbertに代わって加入していたMr. Bigでの活動でしょう。
ポールがスウィープやスキッピングを用いた、非常に粒のそろった正確でクラシカルな速弾きを
得意とするのに対し、リッチーはさらにブルースやファンクからの影響が濃く見られ、
左手のレガート奏法やチキン・ピッキング、スウィープの技術は圧巻だと思います。
或いはフレーズの至る所にジャズっぽいアプローチが見られたり、Allan Holdsworthを思わせるような
絶妙なアウト感のあるフレーズが飛び出したりと、非常に個性的なものだと思います。
使用機材は主にFender系のギターを用いることが多く、ストラトかテレキャス
(共にFender Japanからシグネイチャーが発売されています)でのクリーンからクランチでの音作りは
個人的にも非常に好みです。
彼は卓越したギタリストとしてだけではなく、ボーカリストとしても優れた才能を発揮しており、
ソウルフルで力強いボーカルと、ブルージーなソロやカッティングを絡めたバッキングが作り出す
ファンキーな中にも理知的な空気の漂うグルーブは唯一無二だと思います。
1991年作の3rd。本作は完全なるインストの作品で、彼のテクニックの高さが
前面に押し出されたものになっています。
他のインスト作品に比べてフュージョン色の濃い音作りやアレンジになっており、
初期の作品の中では一番面白いものではないかと感じています。
#1B Funkは冒頭から変拍子だらけのリズムワークに、
こういうシュレッド系には珍しいジャキジャキトとしたトーンの
速弾きが非常に心地よいです。テレキャスを弱く歪ませたカッティングや
ここぞという時に入ってくるレガートのスムーズなフレージングが素晴らしいです。
表題曲の#2Electric Toyは、テーマになっているスウィープの絡んだフレーズにも面白いですが、
音数は少なくブルージーなチョーキングの光るソロや後半部でのさりげなく入ってくる
タッピングやハーモニクスの音の綺麗さは特筆すべきと思います。
#3Shufinaは、シャッフルのリズムに、SRVを思わせるようなブルージーで乾いた
ギタープレイが冴えわたっています。
所々に速弾きのオカズのフレーズがあって彼らしい個性が加わっていると思います。
#4Acid Lipsは軽くワウの掛かり中音域が詰まった歪みの音色で、
ファンキーな中にもVaiのようなスライドのフレーズが面白いです。ザクザクとしたテーマの音は最高。
#5Slow Bluesは、名前の通りスローテンポのメロウでメロディックな一曲で、
現在のバラードの楽曲に近い構成になっていると思います。
ソロもゆったりとしていて、なかなか渋い趣味をしておられます。
#6High Wireは、本盤の中でも一番へヴィーな音色になっており、
テーマを弾くクリーントーンのハイフレットでのトーンが透き通って美しい…
荒々しくてファンキーなリフをバックに、これまたフュージョン色満載な縦横無尽な速弾きで
鮮やかに味付けしていきます。
#8Hot Railsは、テンポの速くベースのよく動くバッキングにスライドギターの映える一風変わった曲です。
ハードロック色の強いメインのリフとテンポチェンジからのスペイシーなソロがクールです。
#9The Deece Songは、ミュートの効いたリズムギターと、後半の絶妙なアウト感のあるソロが印象的です。
現在のコッツェンとは音作りや音数など異なる点も多くみられますが、
やはり基本になる手癖とかタイム感といった点では既にその基礎が完成しているように
見受けられます。
ハードフュージョンなギターインスト好きなら絶対外さない高品位な作品ですし、
コンパクトに彼のギタープレイの美味しい所を網羅できる名盤と思います。

B Funk

Electric Toy

Shufina

Acid Lips

High Wire

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  1. 2013/10/21(月) 14:17:15|
  2. Richie Kotzen
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今日の一枚(207)

Album: Dimensionaut
Artist: Sound Of Contact
Genres: Progressive Rock

dimensionaut.jpg


2009年にアメリカ、フロリダ州マイアミで結成されたブリティッシュ・プログレに
ルーツを持つプログレッシブ・ロックバンド。
2013年作のデビューアルバム。あの伝説的なプログレッシブ・ロックバンドである
GenesisのPhil Collins(Dr, Vo)の実の息子であるSimon Collins(Dr, Vo)を中心として
結成されたバンドの1stアルバムですが、彼の歌声は一聴して父であるPhil Collinsの声を思わせるもので、
往年のGenesisファンの方であれば感慨深いものがあるのではないかと思います。ドラミングのスタイルも、
ロック・オリエンテッドでパワフルな音色を
素地としながら、複雑なキメやフィルも難なく叩ききっており、ポリリズムを多く
取り入れたリズム構成を中心とした非常に面白いものだと思います。
このあたりのドラマーとしての特徴や個性も、やはりかなり父に似た部分を持っていると
言えそうです。Steve HackettやPhil Collinsとの共演やGenesis参加を通じて、
70s~80sのブリテッシュ・プログレの何たるかを極めて深いレベルで解しているように感じます。
楽曲はインストの#2のようにかなり高度な演奏テクニックを必要とするものもありますが、
全体としてキーボード主体に作られている部分があってシンフォニックでキャッチーな
ものが多い印象です。
#1Sound of Contactは2分程度の短いインスト。冒頭の歪んだギターの音色から
ハードなものを想像しますが、一気に密室的なコーラス定位とアコギのストロークが
印象的なパートへと移っていきます。キーボードの音色はポストロックっぽさもあります。
#2Cosmic Distance Ladderは、変拍子ゴリゴリのリズムにメロディックなリードギターが絡み付く
ハードロック寄りのインスト。
リフはプログレメタルっぽさがありDream Theaterをもっとスペイシーでクラシカルな
プログレ寄りにしたらこんな感じになりそうという曲。ドライブ感溢れるドラミングもお気に入りです。
#3Pale Blue Dotは、アンビエントなキーボードのフレーズに始まりサビのメロディ
のリフレインが印象的な一曲です。ギターのバッキングは如何にもハードロック的で
インスト曲に比べると圧倒的に聴きやすいと思います。
#4I Am Dimesionautは、Simonの父譲りの透き通ったファルセットがメロウな冒頭から
徐々に盛り上がっていくミドル。これもやはり歌のメロディはキャッチーですが、
曲間のドラムソロになると一気に複雑さが増してプログレらしくなっていきます。
フィルも無駄な音がなくかなりへヴィーで強烈な存在感を放っています。
#5Not Coming Downは、一気にポップス色を湛えた楽曲へと変わっていきます。
トラックはキーボードとアコギが前に出ていてスペイシーな音像です。
チェロやアコギ、オルガンのアコースティックな肌触りが異色な一曲。
アウトロのドラムスが地味に激しいフレーズを叩いているのが面白いです。
#7Beyond IlluminationはボーカリストとしてHannah Stobartを迎えており、
甘く無垢な彼女のボーカリゼーションが、SFをテーマとした本作の雰囲気に
見事に溶け込んでいます。Simionの方は共鳴の多い力強いものになっていて
好対照をなしています。レゲエっぽいリズムアプローチも面白い佳曲。
#9Realm of In-Organic Beingsは、ピアノのループにソウルフルなシャウトや
スキャットが入る短いインスト。
エッジの立ったドラミングとノイズ交じりのボーカル処理が一風変わっていて面白いです。
#10Closer to Youは、ピアノ弾き語りを中心にしたバラード。ドラムの入りから徐々に盛り上がっていきます。
トレモロの絡んだグランジっぽいギターソロまで飛び出します。
バッキングのギターのフレーズもどこかシューゲイザーの香りがする音色です。
最後を飾る#12Mobius Slipは19分にも及ぶ大作主義な一曲で、最初の3分間はImages & Wordsや
Yesの90125を思わせるようなスペイシーで壮大な分厚いオルガンとキーボード中心のパート、
その後静寂が訪れシンバルの中を枯れたギターが鳴るポストロックなパートを挟み、
クリーンのカッティングが鳴る中でボーカルが入ってきます。
スパニッシュなアコギがあり、一気にキメの多くメタリックでハードなパートに移っていきます。
強くエフェクトの掛かったボーカルと粒の揃った刻みが気持ち良いです。
そしてシンバルで遊びまくっている鬼畜なドラムソロへと繋がっていきます。
この辺のセンスもPhil Collinsを思わせる部分があってニヤリとしてしまいます。
音もへヴィーで素晴らしいです。
そしてDave Kerzner(Key)によるイタリアン・プログレっぽさのあるシンフォニックなパートは
次第にクライマックスに達していきます… 文句のつけようもありません。
80sのブリティッシュ・プログレの複雑さの中にあるポップネス、
イタリアン・プログレのような幻想的なキーボードの音色、
それにモダン・へヴィネスやシューゲイザー、ポストロックにオルタナと、
現代的なロックの香りを纏わせ、アップデートされた現代人のための正統派プログレの旗手。

Cosmic Distance Ladder

I Am Dimesionaut

Beyond Illumination

Mobius Slip

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  1. 2013/10/17(木) 14:17:05|
  2. Sound Of Contact
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今日の一枚(206)

Album: Quantum
Artist: Planet X
Genres: Progressive Rock, Fusion, Progressive Metal

Quantum.jpg


アメリカ、カリフォルニア州出身のキーボーディスト、
Derek Sherinian(1966~, ex Dream Theater)とオーストラリア出身のドラマー、
Virgil Donati(1958~, ex Allan Holdsworth)を
中心として結成されたプログレッシブ・ロックバンド。
Derek自身は一時期Dream Theaterのメンバーとしても活動しており、
A Change Of Seasons(‘95)、Falling Into Infinity(‘97)といった作品に
参加しています。他にもYingwie MalmsteenのバンドであるRising Forceや
Alice Cooperのバックバンドとしても活動しています。
もともとはDream Theater脱退後にDerekのソロ・プロジェクトとして始動したPlanet Xですが、
2000年にギタリストとしてTony MacAlpine、ベーシストにBilly Sheehanなど、
アルバムごとに様々なゲストを迎えてバンド形態で活動するようになっていきました。
2007年作の4th。本作ではBrett Garsed(G)、Allan Holdsworth(G,#2, 7)や
Jimmy Johnson(B, James Taylor, Kenny Loggins, Lee Ritenour etc)といった
フュージョンやクロスオーバーの方面で名の通ったスタジオ・ミュージシャンが
参加しており、音色もそれに合わせて良い意味で軽いものになっています。
ただし曲の構成や演奏は非常に難解なものが多く、特にリズム面では当たり前のように
繰り返されるリズムチェンジや変拍子の嵐といった様相を見せています。
アレンジとしてはシンフォニックな展開の静的なパートとメタル寄りの低音の強い
リフ中心の展開が繰り返されるようなものが多いです。
捻くれてはいますがかなりキャッチーな部類に入るプログレだと思います。
Derekもインタープレイでの非常にギタリストよりとも取れるようなピッチベンドを絡めたプレイというよりは
バッキングに徹したプレイが多い印象で、ギターオリエンテッドな音と言えるかもしれません。
#1Alien Hip Hopは冒頭のストリングスが鳴り渡るパートから歪みの刻みが中心となる
ハードなパート、リズムチェンジからエモーショナルなギターソロへと非常に展開の多い
一曲になっています。キーボードソロの後の嫌がらせのようなドラミングに思わずにやけてしまいます。
ツーバスの鳴るバックで弾き倒すベースのマシーンのような正確さには空いた口が塞がりません。
#2Desert Girlはシンコペーションの入ったクラシカルなピアノとアンビエントなシンセ音によるリフを
中心として徐々に疾走していきます。ミュートの効いたギターの
フレージングや、Weather ReportのJoe Zawinulを思わせるようなスペイシーな
キーボードの音色が好みです。素晴らしい!ジャズっぽい香りのする速弾きギターソロも
滑らかでよく嵌っています。
#3Matrix Gateは短いループを繰り返すキーボードに奇怪なリズムを踏むバスドラム、
随所で前に出て来て動きまくるベースラインに悶絶すること間違いなしです。
レガートしまくりの流麗なフレージングも軽快で楽しいです。
#4The Thinking Stoneは大ベテランであらせられるAllan先生の超絶ソロが聴き所です。
相変わらず癖ありまくりのアウトフレーズの応酬で、Derekのキーボードソロも一番好みかもしれません。
スケールの大きい一曲です。Brett Garsed(G)とAllanのバトルは鳥肌間違いなしです。
#5Space Foamは強く歪んだメタル色の濃いリズムギターと如何にもフュージョンらしい音色の
パーカッシブに鳴るシンセに始まり、インドとも中東ともつかぬスケールを絡めた長いキーボードソロが
強烈なグルーブを放っています。勿論キメは気持ち悪いまでの変拍子です(笑)
メランコリックで透き通った、シルキーなトーンのJimmy Johnson(B)のソロが堪能できる#6Polandに
アクセントに絶妙な強弱を付けながら小節の長さを錯覚させるようなDonatiのドラミングの
特徴をよく表している#7Snuff、バスドラム連打とそれにシンクロして弾かれるクロマチックな速弾きの
パートが印象的な#8Kingdom Of Dreamsと続いていきます。
#9Quantum Factorは、ギター中心のへヴィ―なトラックを中心として、
やや音数の少ないメロディックなリードが唸る前半部も恐ろしいですが、
後半では32ビートを中心にしながら巧みにアクセント移動を繰り返してシームレスに違う拍子に切り替えていく、
という神がかったドラミングを聴くことができます。
#10Li Zoはドラムソロによるボーナストラックです。もう何が何だか…
こればかりは演奏する様子が想像できず、音と結びつかないので何とも言えないといった感じであります…
テクニック面において、現在世界最高レベルのインストゥルメンタル・ミュージックといって、
全く間違いないと思います。


Alien Hip Hop

Desert Girl

The Thinking Stone

Space Foam

Quantum Factor

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  1. 2013/10/16(水) 01:20:41|
  2. Planet X
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今日の一枚(205)

Album: Big Neighborhood
Artist: Mike Stern
Genres: Jazz, Fusion

Big Neighborhood


アメリカ、マサチューセッツ州ボストン出身のジャズギタリスト。1953年生まれ。
バークレー音楽大学在学時に当時講師であったPat Methenyの紹介によりBlood, Sweat & Tearsの
メンバーとして活動し、その後81年にMiles Davisのバックバンドとして参加、さらに
83年~84年にはJaco PastoriusのWord Of Mouthツアー、92年からはBrecker Brothersのメンバーとして
活動するなど、数多くの華々しい実績を残しています。
83年のソロデビュー以降14枚のオリジナルアルバムを残しています。2009年作の14th。
プレイスタイルとしてはMilesバンドの時期に見られるような速弾きで歪みの強く、
ジャズギターというよりもむしろかなりハード・ロック指向の強いプレイから、
ビバップの色が濃いテンションやアウトフレーズ、部分転調を多用したフレージングまで
タイム感も含めて一聴しただけ彼とわかる非常に特徴的なフレージングだと思います。
フロントにダンカンが載ったテレキャスター・カスタム(YAMAHA Pacifica1511MS)から生み出される
コーラスの掛かったようなトーンや、コードヴォイシングの浮遊感のある音色は名人芸というべきでしょう。
エキセントリックな音使いや斬新なスケール選択で、頭が強い衝撃を受けて脳震盪が起きたかのような
強烈なグルーブを聴くことができます。
本作では、ゲストとしてはSteve Vai(G), Eric Johnson(G)という二人の大天才を初めとして
Richard Bona(B, Vo), Randy Brecker(Trumpet), Dave Weckl(Dr)など
優れたスタジオ・ミュージシャンを起用しています。
VaiやEJとのコラボレーションではこれまでの彼のプレイとはまた異なった側面を見ることができ、
後期の彼の作品を代表するものになるに違いないと感じました。
Steve Vaiとの共演の表題曲#1Big Neighborhoodは、至高の変態であるVai先生らしい
なんとも奇妙なサスティーンの長いアーミングを駆使したフレーズから
普段のスターンが弾きそうにない高速フルピッキングの速弾きフレーズまで飛び出します。
見事なケミストリーです。いきなりテンションは頂点に達します。
#2 6th StreetはEric Johnsonとのコラボレーションで、ブルース主体のエモーショナルなフレージングを
中心としてハモンドが鳴り渡るバッキングが心地よいです。テーマがキャッチ―で切ないメロディで、
EJのクランチの音が最高過ぎて…言葉が出ません。
#3ReachはRichard Bona(B, Vo)のスキャットがテーマを歌い上げるフュージョン色の強い一曲。
Dave Weckl(Dr)の堅い音色のスネアと、バックで忙しなく弾きまくるベースラインがクールです。
ひたすらオルタネイトで弾き倒すソロも良い。アウトロのスキャットの定位感が鳥肌もの。
#4Song For Pepperは冒頭からEsperanza Spalding(B, Vo)のスキャットとギターのユニゾンが
曲全体を支配しています。Terri Lyne Carrington(Dr)の繊細で軽やかな
シンバルワークがリラックスした空気を感じさせてくれます。
#5Coupe De VilleはJim Beard(Piano)のパーカッシブなフレージングとユニゾン、
性急な4ビートを基調としてあくまで最小限の音数を守りながら徐々に手数の増えていくドラムスと、
ウォーキングベースしながらリズムの間を縫って絶妙に動いていくベースラインがスウィンギ―な一曲。
再びVaiがシタールギターで参加した#7Moroccan Rollは、
エスニックな音使いとキーボードのねっとりした音が個性的で如何にもスターンの曲という感じで
素晴らしいです。キメもカッコいい。
うねうねしたソロも彼ならではという感じで、かなり飛ばして弾きまくっています。音も一番好みです。
#8Long Time Goneは#2に続いてEJが参加しています。こちらはスローテンポでへヴィ―なドラムスが
印象的な曲で、エッジの立ったEJの歪みと周囲の空気に滲み出るようなスターンのトーンが
代わる代わる空間を占有していきます。
#9Check Oneは冒頭部のBob Malach(Sax)の怪しげなフレーズが耳に残ります。
Cris Wood(B)のトーンも非常に存在感があってメロディックなリフがコシの強いグルーブを作っています。
#11Hope You Don't Mindは、Randy Breckerの饒舌なトランペットソロとどっしりとしたベース、
そしてやはり気持ち悪い(最大級の賛辞)リズム感のテーマで締めくくります。
ニヤニヤ笑いながら弾いているスターンの表情が浮かんでくるようです。
唯一無二の音を作り出すギタリストとして、いつまでも彼らしくあって
活躍し続けてほしいと心から祈っています。

Big Neighborhood

6th Street

Reach

Moroccan Roll

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  1. 2013/10/11(金) 21:32:54|
  2. Mike Stern
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今日の一枚(204)

Album: Hacienda
Artist: Jeff Lorber Fusion
Genres: Fusion, Jazz, Smooth Jazz

Hacienda.jpg


アメリカ、ペンシルベニア州フィラデルフィア出身の音楽プロデューサー、
キーボーディスト。1952年生まれ。バークレー音楽大学卒。
79年に自身を中心とするフュージョンバンドであるJeff Lorber Fusionを結成し、
Kenny GやDave Koz, Art Porterといった優れたサックス奏者を輩出しています。
81年の活動休止からソロ活動、プロデューサーとしての活動を経て2010年に
Jeff Lorber Fusionとして再び活動を始めることになります。2013年作の8th。
Jeff Lorber(Key),Eric Marienthal(Sax,ex Chick Corea Electric Band),
Jimmy Haslip(B, Robben Ford, Renegade Creation), 三人を中心として録音された本作は、
Vinnie Colaiuta(Dr)やDave Weckl(Dr), Jean-Luc Ponty(Violin), David Mann(Flute)といった
錚々たるメンバーが参加しています。
音像としてはハッキリとして軽快で、聴きやすい典型的なフュージョンの音ですが、
演奏や進行は非常に良く練られた複雑なものになっていると思います。
#1Corinaldoは、Jeff自信による饒舌なキーボードソロやサックスソロ、
鮮やかなコードチェンジが聴き所な彼ららしい一曲。
カリウタ先生は若干抑え目なプレイという感じです。
#2Solar WindはLarry Koonse(G)のアウトフレーズを絡めた丸みのある音色のリフを中心として、
ハイハットの遊びが面白いドラミングと、弾きまくりなベースソロがクールなハードフュージョンです。
#3King KongはFrank Zappaのカバーですが、Zappaのオリジナルのバンドメンバーであった
Ed Mann(Marinba)やJean-Luc Pontyがエレクトリック・バイオリンで参加しています。
曲後半部ではドラムスがエモーショナルでパワフルなリフを叩きまくっています。
定位の面白くサイケデリックでパーカッシブなキーボードの音とマリンバの澄み切った音が
美しいコントラストをなしています。
表題曲の#5Haciendaは、ノリを決定づけるキーボードとサックスのユニゾンによるテーマを中心として、
ミニマルで引き締まったグルーブを定位するベースラインと、Michael Thompson(G)の軽く歪んだ
ギターの音作りが洒脱です。
#6Fab Gearは、ミドルテンポのリラクシングな一曲。サックスの吹くキャッチ―なメロディと、
Paul Jackson, Jr.(G)の右チャンネルのクリーンでのカッティングが、
リズムの間を上手く縫うようにして弾かれていて素晴らしいです。
#8Everlastは、パーカッシブなキーボードとベースがゴリゴリとした導入部から、
シームレスにメロディックなサビへと繋がっていきます。
音数の少なさゆえベースラインやドラミングの一音一音が非常に明瞭に聴き取れます。
お気に入りの一曲です。ギターとサックスのユニゾンも最高。
空間系のエフェクトが掛かったギターのバッキングがフラッシュバックするように
疾走感を煽り立てるのも楽しい。
#9Playa Del Falcoは、Jeffの複雑にオーバーダブされたキーボードの音色の多彩さやを堪能できる
スロウな一曲。前半部はリムショットの音が虚空に鳴り響くような静寂さがあり、
アウトロでは丸みのあるトーンのギターソロがフェードアウトしていきます。
#10Escapadeは、ファンクの香りがするビート感のブライトなドラムスと
リフレインの多いベースラインに、縦横無尽にリズムの間を行き来していくピアノソロ、
分厚い音色のシンセが太いグルーブを醸成しています。これもお気に入り。
#11DragonflyはドラムスにDave Wecklが参加しており、
抜けの良く多彩なスネアの音色で飽きさせません。
ワウが掛かったホーンやキーボードがファンキーで、捻くれたメロディの中に緩いグルーブを
楽しめます。
スムースジャズというほどにはポップになりすぎず、
かといってジャズロックほどにアヴァンギャルトにもならず素晴らしいバランスだと思います。
フュージョンを初めて聴くにも最適な佳作。

Corinaldo

King Kong

Hacienda

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  1. 2013/10/10(木) 20:17:12|
  2. Jeff Lorber Fusion
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今日の一枚(203)

Album: 3
Artist: キリンジ
Genres: AOR, Soft Rock, Pops

キリンジ

埼玉県坂戸市出身の日本のAOR/ソフトロックバンド。1996年結成。
結成当初から堀込高樹と泰行の兄弟で活動してきましたが、2013年に弟の泰行が脱退し、
現在メンバーは高樹と、これまでサポートとして活動してきた
楠均(Dr)、 千ヶ崎学(B)、田村玄一(pedal steel)、
弓木英梨乃(G)、 コトリンゴ(Key)となっています。2000年作の3rd。
和製Steely Danの異名にたがわず、複雑なコード進行と凝ったアレンジで独特の幻想的な
ポップスを制作し続けています。サポートメンバーにも真城めぐみ(Chorus)や
渡辺等(B, AIR, 塩谷哲)など優れたミュージシャンを多数起用しています。
彼らの楽曲の個性の源ともなっているのが、特に泰行の透き通った、ファルセット気味で
スウィート・ソウルの空気感を感じるハイトーンから生み出される、
無機質で、冷たいながらもリアリティや皮肉を滲ませたようなボーカリゼーションにあるように感じます。
キリンジの作品群には、アルバム全体を通して諦観や無常観が共通して流れています。
これが、彼らの掛け替えのない個性であり、キリンジが日本のソフトロックのシーンにおいて
唯一無二のアイデンティティを確立している要因ではないか、と私は思っています。
#1グッデイ・グッバイは、キーボードの淡々としたリフから始まり楽しげなホーンが鳴り渡るポップな一曲です。
それでも歌詞は誰か話を聴いてくれと虚しさや孤独が色濃く映った内容になっています。
緩いタイム感で叩き出すドラムスと、ハイフレットの
フレーズが楽しげなベースラインがうねるグルーブを創出しています。
ファンキーなコードカッティングとバックビートの効いたドラムミング、
フリーソウルっぽいホーンやストリングスが70年代を思わせる#2イカロスの末裔、
フォーキーなアコギのストロークとハイハットの細やかな刻みから徐々に
エモーショナルで枯れたクランチのリードが入ってくる曲展開が面白くロック色の強い
#3アルカディアも素晴らしいです。
#4車と女は、疾走感のあるストリングスとスペイシーなキーボードによるバッキング、
ワウの掛かったカッティングに複雑なキメを演出するフュージョンライクな
ドラムスがクールで洒脱な一曲。
艶やかなサックスソロのバックで弾き出されるベースのリフが印象的なパート、
ブレイク後のジャジーなコーラスとカッティングが冴えわたるパートともに
音の低位感が瑞々しくて最高です。
#5悪玉は、印象的な音色のスネアの作るデジタルなビートと対照的に
清涼感のあるコーラスやストリングスが一風変わった浮遊感を生み出します。
#6エイリアンズは彼らを代表する有名曲で、鬱々とした冷たさや静かな絶望の中に
僅かに体温を感じるような、意味深長な歌詞も魅力的ですが、
彼らのボーカルのトーンがこのメロウでミドルテンポの楽曲に本当に見事に嵌っています。
#7Shurrasco ver.3はハウス的な打ち込みのトラックにギターやベースの音がかぶさるようにして
展開していく短いインスト。
#8むすんでひらいては、ボサノバっぽくリラクシングな前半部からスキャットを起点にして
リズムチェンジする展開が非常に個性的で良いセンスです。
#9君の胸に抱かれたいは、冨田恵一が如何にも作りそうな、ポップなメロディの中に
ドライブ感のあるリズムセクションがブライトな、ある意味異色な一曲。
#10あの世で罰を受けるほどは、タイトな8ビートのシンプルなロック曲。
随所に配されたコーラスはやはり泰行氏らしいセンスを感じます。
#11メスとコスメは、エレピの不穏なリフとタイトでスクエアなドラムスに始まり、
太くどっしりとしたベースラインがグルーブの要になっています。
捻くれたコード・プログレッションが印象的でこちらは如何にも高樹氏が書きそうな曲
という感じがします。好みの音です。
#12サイレンの歌は、ピアノ弾き語りに始まり、リズム隊が入ってきてゆっくりゆっくりと
展開していきます。透き通って幻想的なコーラスは本盤の中でも最高かもしれません。
#13千年紀末に降る雪は は、非常にゆっくりとしたリズムを淡々と弾く存在感抜群な
ベースと、大きい音量で鳴り渡るストリングス、
そしてやはり複雑怪奇なコード進行が、サンタクロースへの皮肉を滲ませた
歌詞に説得力を与えています。隠れた名曲。
現代の「職人」として類稀なる才能を発揮し続ける兄弟の残した00年代ポップスの至宝。

グッデイ・グッバイ

イカロスの末裔

アルカディア

車と女

エイリアンズ

千年紀末に降る雪は

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  1. 2013/10/10(木) 15:13:07|
  2. キリンジ
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  4. | コメント:0

今日の一枚(202) 【祝】5000人突破!

いつもブログにお越し下さっている皆様、相互リンク、Twitterで相手して下さっている皆様、
ありがとうございます。良質な音楽の情報を交換してくれる友人の皆さん、ありがとう。

しばらく更新滞っておりすみません。テスト等で込み入っておりました。
昨年末からブログ私的名盤紹介は200枚の作品を独断と偏見と勢いで紹介して参りましたが、
総訪問者5000人を超えるに至りました。とても嬉しく思っております。
雑食を目指すというと、音楽に詳しい方々からすれば胡散臭く子供っぽいイメージがついて
しまうかもしれないという危惧は常に持っておりましたし、
一生の内に聴ける音楽は限られているので、真の意味で雑食を名乗ることなどできないのでは
ないかと悩む時期もありました。
ただ熱心にコメントに来て下さる方や拍手して下さる方のおかげで、幸い
「自分にとって熱くなれる名盤、心の動いた作品」を紹介するモチベーションを保てております。
これからも、このブログがライフワークの一部であり続けるよう、
理論の勉強も含めて(いずれは演奏の練習も熱心にしたいと思っています)自分のペースで
私的名盤をレビューして行きたいと思っています。

コメント、Twitterでの交流も楽しみにしております。
今後とも「私的名盤紹介」を宜しくお願い致します。    

2013年10月 自宅にて

というわけで、今日の一枚は再び大好きなオールド・ソウルです。

Album: Back Stabbers
Artist: The O'Jays
Genres: Soul, R&B

Back Stabbers


アメリカ、オハイオ州カントン出身のR&B, ソウルグループ。1958年結成。
1972年作の7th。全米10位、R&Bチャート3位。
デビューから本作のヒットを生み出すまで実に10年以上の時を必要としたわけですが、
そのきっかけとなったのがThree DegreesやSoul Survivorsなど、
後にフィラデルフィア・ソウルの代表的な作曲家チームとして知られることになる
Gamble and Huffによるプロデュースでしょう。
本作はフィラデルフィア・インターナショナルの正に最初期の作品であり、
録音は勿論フィラデルフィアのSigma Sound Studiosで行われ、
バックバンドはRonnie Baker(B)とEarl Young(Dr)という数々の
フィリ―ソウルの作品を支えてきた鉄壁のリズム隊を中心として、
73年に結成されるMFSBのメンバーの殆どが参加する形で行われています。
当時としてはかなり革新的なThom Bellによるストリングスアレンジと、
ロック・グルーブやディスコ・ビートを随所に感じさせるダイナミックで変化に富んだリズム隊の演奏、
スムースで曇りのないメロウな歌唱とメロディ。
どれをとっても紛れもないフィリ―ソウルの音像です。
本盤のリマスターを先日ようやく購入し聴くに至りましたが、今聴いても洒脱で
古びない音楽性だと思いました。
#1When The World's At Peaceは、Earl Youngのへヴィ―なバスドラムに代表されるような
もたるようなドラミングと、うねりのあるベースラインがファンキーで黒いグルーブを湛える一曲。
ハスキーで雄々しいシャウト気味なボーカリゼーションがクールです。
アカペラになって行くアウトロの構成もカッコいい…
#2Back Stabbersはジャジーなクリーンのギターと、
バックを流れるストリングス、what they do!という大仰なキメがちょっぴり時代を感じますが
こういう曲をフィラデルフィア・ソウルというべき名曲だと思います。
とにかくEddie Levertのソウルフルで威風堂々とした歌唱が素晴らしい。
ベースラインも結構遊んでいて面白いです。
スロウテンポなバラードの#3Who Am Iは、ファルセットの儚げなコーラスが複雑に重ねられたバックに、
左チャンネルのトレブリーで音数の少ないリードギターがブルージーなフレーズを聴かせてくれます。
曲が展開するに従って前に出てくるストリングスのバランスも良い。
#4 (They Call Me) Mr. Luckyは、全編を流れる透き通ったコーラスワークと、
Vincent Montana, Jrの清澄なビブラフォンが涼しげな音像を作り出しています。
#5Time to Get Downは、右チャンネルの単音リフとカッティングやホーンを中心として
少し字余り気味に歌いきるボーカルのノリやリズム感の良さに惚れ込んでしまいます。
#6 992 Argumentsは、ベースのメロディックで少しラテンっぽいノリが最高。
全ての音がアナログ的に一つの塊となり、重心の低いグルーブを伴ってキメに向かって猛進してきます。
個人的には一番お気に入りです。大名曲。何よりベースラインが最高ですが、
手数の多く長いビブラフォンのソロ、そのバックで流れるコーラスと、
グルーブ感を激しく煽り立てるパーカッシブなキーボードも良い。最後のカッティングも気持ちいいです。
#7Listen to the Clock on the Wallはストリングスの音が前面に出た前半部から
これまでにエモーショナルな歌い方があるだろうかという声量溢れるボーカルは溜息が出ます。
#8Shiftless, Shady, Jealous Kind of Peopleは、遊びのあるハイハットの刻みと
ブリブリとしてメロディックなベースがアンサンブルの主導権を握っています。
一転して爽やかなホーンセクションの音が前に出てくるパートも楽しいです。
#9Sunshineはサビ後のシンプルなリフレインを中心として、ギターのフレーズと絶妙にユニゾンした
ストリングスの音が特徴的な小品です。
最後を飾る#10Love Trainは、本作の中でも特にキャッチ―でポップな一曲です。
ここでも輪郭のはっきりとしたドラム・ベースと背後に鳴るスペイシーなキーボードや
コーラスが非常に好対照をなしています。
この一枚には、フィラデルフィアソウルの魅力と、
褪せることのない唯一無二のグルーブが詰め込まれています。素晴らしい。

When The World's At Peace

Back Stabbers

992 Arguments

Shiftless ,Shady,Jealous Kind of People

Love Train

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  1. 2013/10/04(金) 01:35:55|
  2. The O'Jays
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
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