私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(230) by Systematic Chaos

同人誌とゲームと音楽のにっこにっこブログ」への書き下ろし

Album: アクアテラリウム
Artist: やなぎなぎ
Genres: Pops

アクアテラリウム


日本のシンガーソングライター、ボーカリスト。1987年生まれ。
2006年ころからアマチュアでの音楽活動を開始し、作曲を行う傍ら、いわゆる歌い手としてもガゼル名義で
ニコニコ動画にボーカロイド関連の作品をはじめとする自作動画をアップロードしていました。
2008年に動画サイトでの活動から身を引き、supercellのゲストボーカルとして
(詳細はsupercellの項を参照して下さい)3枚のシングルと、アルバムToday Is A Beautiful Dayの
レコーディングに参加しています。
2012年にメジャーソロデビューを果たし今年の7月に1stアルバムを発表しています。
テレビアニメ「凪のあすから」EDとしてのタイアップシングル6th。2013年作。
表題曲は作曲で石川智晶さんが参加しておられます。
先日リンク先のブロガー様から彼女の作品についての記事を書かせて頂きましたので、
その流れを汲んで、たまには歌詞の話にも少し触れてお書きしたいと思います。
まず原作アニメは、「海の中で生活する民」と、「地上で生活する民」の二項対立を、
許されぬ恋愛や、祭りなどの儀式になぞらえて描いています。
#1アクアテラリウムとは、「一つの水槽の中に水中部分と陸地部分とを混在させた飼育の方法」を
指しています。繭になるという歌詞の内容から推測するに、閉鎖された空間の中に籠り切って、
誰かを守ろうとする、というような淋しさを内包したような意志や覚悟を描いていると捉えれば良いでしょうか。
デトリタスとはプランクトンの死骸からなる粒子のことで、水中を舞うことによって生じる「マリンスノー」を
表現していると考えられます。
このことからも、やなぎなぎ自身の作品への頽廃的なイメージがテーマとなる海にまつわる心象風景を介して
幻想的に描写されています。
サウンドとしては石川さんならではのコーラスワークが話題(?)を呼んでいるようですが、
なんと"hi"の音でリフレインするというまた変わった手法を用いています。
aやuの音でコーラスを作ることは多くありますが、hiの場合だと口を横に開いて発声する
ため音量の調節や高音発声が難しくなりますが、見事に歌いきっておられます。
アコギとJacoのようなハイの出た強いベースラインが印象的な生々しいイントロに始まり、
打ち込みの淡々としたリズムの中で、浮遊感のあるボーカルの定位が
声域を意識させない均一なトーンの印象的な彼女の声の魅力を引き出しています。
メロ部分でのアコギのシャリシャリとした音も素晴らしい。
サビでの、滑らかで若干ファルセットに入るノートベンドが、彼女のボーカルの無垢さや透明感を体現しています。
記憶術を意味する#2mnemonicは、彼女の音楽のルーツに近い無機質な電子音といかにもブレイクビーツっぽい
打ち込みのリズムが印象に残りますが、ベースとピアノは生演奏で好対照をなしています。
#3You can count on meは、一転して前ノリなドラミングとギターリフが空間を支配する
爽やかなポップロックに仕上がっています。
コーラスの部分は確実にコール&レスポンス用に作ったなという感じで、ライブのための曲という感じ。
シンセの音色は懐かしい香りが漂っています。
ちょっとストリングスにシンセと上物が鳴り過ぎな印象を受けました。
彼女の声量やスタイルを考慮すると、密室的な音像の方がしっくりくるように感じます。
ただ単に音のバランスの問題といってしまえばそれまでですけれど、
ポップロックでももう少しオルタナっぽいすっきりしたアレンジにするとか、ストリングスを使うとしても
歌に被せないように、間奏で大きな音量にして鳴らす(星が瞬くこんな夜に のように)のが良いかもしれません。
ソロ1stもバラエティに富んだ作品で、提供される曲も良質なものに恵まれていると思います。
ライブでどんな歌唱を見せてくれるのか、今からとても楽しみです。

アクアテラリウム

mnemonic

Written By Systematic Chaos

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  1. 2013/11/29(金) 16:19:29|
  2. やなぎなぎ
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今日の一枚(229) by Systematic Chaos

同人誌とゲームと音楽のにっこにっこブログ」への書き下ろし

Album: LANDSPACE
Artist: LiSA
Genres: Pop Rock, Punk, Alternative Rock

LANDSPACE.jpg



以前にも一度記事を書いておりますがニューアルバム発売に合わせてお書きしたいと思います。
岐阜県関市出身の日本の女性ロックシンガーのソロ2nd。2013年作。
前作から比較的短い期間でリリースされた本作ですが、
今回も作家陣は前作と大きく変化は見られず、前回も担当したUNISON SQUARE GARDENの田淵智也氏や
渡辺翔の他にベーシストとして、またはアニメソング方面の作曲家として活躍する黒須克彦、
初音ミクを使用した楽曲製作を行うwowaka氏(前作のEgoistic Shooter)などが参加しています。
ただ全体の音像としてはデジタル色の強いアレンジの楽曲や
ストリングスを配したような現代的なアニメソングらしい壮大なバラードというものよりも、
生のバンドアンサンブルを重視した肉体的な音作りが目標とされているように感じます。
リズムの構成やベースラインは、彼女の音楽のルーツでもあるメロディック・ハードコアや
パンク・ロックのそれよりも複雑なものであり、この辺が彼女らしいサウンドの個性に
繋がっているように感じます。Girls Dead Monsterの頃のジャリジャリとした
ギターサウンドが印象的なUKインディーを思わせるような音色とも異なって、
楽曲ごとの多彩さの中にも一貫したサウンドプロダクションが見えてきているようで安心です。
最後にはLiSA自身による作詞曲#12winding roadも収録されています。
#1Canvas boy × Palette girlは、シンプルなポップロックで、前作とはまた違って
楽しげな曲でスタートします。ギターの音色は綺麗な歪みでコーラスの掛かり具合が気持ち良いです。
ブリッジの盛り上がりからゴリゴリと展開する間奏を挟んで堅いスネアが印象的なフィルへ繋がります。
適度な軽さで良いドラミングです。
#2コズミックジェットコースターは性急でタイトなドライブ感のあるドラムスと、刻みの多いパンキッシュな
ブラッシングがスピード感を煽り、シンセがちょっぴりデジタル感を与えます。
サビでのコーラスの可愛さも華があります。ギターソロは派手にワウ掛かっていますがフレーズはシンプルです。
アウトロのスキャットも一風変わっていて面白いです。
#3crossing fieldは渡辺翔と、とく氏のタッグによるアニメソングな一曲ですが、
ドラムスは非常に手数が多くサビ前の連打やサビでのリズムワークはメロコア的です。
それに対してベースは太くブリブリとうねっていて存在感があります。
ストリングスは控え目でデジタルな感触が強いです。
ブレイクがありボーカルにエフェクトを掛けるという王道な展開もサビメロが独特なので映えています。
#4DOCTORは、シンセの奇怪なリフと前ノリなドラムスにシャウトからウィスパーまで
ボーカルのトーンコントロールの巧みさが映える一曲。
#5僕の言葉では、アコギのバッキングを中心にして静かにストリングスが鳴るスタティックなバラード。
閉鎖の弱めで高音をファルセット気味に歌っていて、また違った一面が見られます。
先行シングルの#6best day, best wayは、田淵智也のメロディセンスが光るキャッチ―で爽やかなミドル。
ここでもバッキング特にリズム隊のタイトさが際立っています。サビの構成は
少し変わっていて、2つのフレーズに分かれています。コール&レスポンスもできるライブ映えしそうな一曲。
#7ヒトリワラッテはwowaka氏による提供で、イントロからのピアノのリフから轟音へと変化していく
ダイナミックな展開が面白い小品。メロ部分のオブリガートの多さや
キメでの絶妙なボーカルワークがテクニックの高さを感じます。
低い音域での歌唱が続き難度は高いと思います。
#8say my nameの片想いはファンキーなギターリフにシンプルなリズムパターンがダンサブルなグルーブを作る
ポップロック。これも田淵作曲で勿論キャッチ―です。定番の作風と言う感じ。
#9うそつきの涙は、リズムの間を縫うように挿入されつつ次第に存在感を増すストリングスと
キーボードが前に出たバラードで、グル―ヴィーな揺れのあるリズムが心地よい異色な一曲。
ブレイクを挟んで音数が減り、ラストサビに向けて静かに盛り上がっていきます。隠れた良曲。
#10逆光オーケストラは、中音の詰まったミュートの効いたメロのリズムギターと、
トレブリーなリードが引っ張るギターオリエンテッドなポップロック。
#11traumereiは冒頭から印象的なギターリフが絶え間なく鳴リ続ける如何にも彼女らしい
バッキングですが歌メロは渋いと思います。ギターソロの音遣いも結構変わっています。
LiSA自身による作詞作曲の#12winding roadは、アルペジオ主体で静的なギターサウンドを
中心に徐々にドラムスもへヴィ―になっていき厚みが出ていきます。
ボーカルも気怠く始まる冒頭から力がこもって間奏直前のロングトーンが
彼女のボーカルの特徴を端的に表現しています。
ギターロックが中心になっているため、コード鳴らしっぱなしだと
バッキングがどうしても起伏が無く似たようなサウンドになってしまいがちですが、
(或いは逆にギラギラしすぎた音になってしまいがち…)
アレンジが非常にすっきりしていて、適度に上物が入っているので飽きることなく
聴き通せるように工夫されています。ライブに行ってみたいと思わせてくれる爽やかな佳作。

コズミックジェットコースター

crossing field (Live)

best day, best way

Träumerei

Written By Systematic Chaos

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  1. 2013/11/28(木) 00:49:42|
  2. LiSA
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今日の一枚(228)

Album: All Night Wrong
Artist: Allan Holdsworth
Genres: Jazz, Fusion, Progressive Rock

All Night Wrong


イングランド、ウェストヨークシャー州ブラッドフォード出身の
プログレ系/ジャズ系テクニカルギタリスト。1946年生まれ。23歳の時にデビューして以来、
その卓越した演奏技術(特に独特な運指とアウトフレーズに溢れた非常に難解なフレージング)と、
深い機材や音色へのこだわりで数多くのTempest, UKのようなプログレッシブ・ロックバンド
他にもIan Carrなどのジャズ・ロック界隈のミュージシャンのプロジェクトや
Soft Machineに代表されるようなジャズ・ロックバンドのメンバーとして渡り歩いていました。
1976年にはアルバムVelvet Darknessでソロデビューを果たし、それ以来12枚のオリジナルアルバムを
発表しています。現代に至るまで、 数えきれないほどのプロギタリストに絶大な影響を与え続けています。
1983年にRoad Games(EP)発売時に協力を得たEddie Van Halenを始めとして、
Joe Satriani, Greg Howe, Shawn Lane, Richie Kotzen, John Petrucciなど、
当代最高水準のギタリスト達が口を揃えてHoldsworthからの影響を公言するほどです。
本作は2002年に日本の六本木PIT INNで行われたライブの模様を収録した初めてのライブアルバムです。
Chad Wackerman(Dr, Frank Zappa, Steve Vai), Jimmy Johnson(B)とのトリオ編成で録音された本作は、
ジャズ・フュージョン色がどうのというよりは、完全に彼の個性が剥き出しになった
フリーキーでありながらテクニカルで、プログレ色の強い作風に仕上がっています。
本作のために書き下ろした楽曲の他に、彼の定番曲である#2The Things You Seeや
#6Water On The Brainや完全なる即興演奏の#5Zoneなども収録されていて、
彼の個性溢れるギタープレイが一枚に凝縮されています。
リズムはゴリゴリの変拍子がそこら中にみられ、その中で左手のみで息の長いフレーズを
流麗に弾きこなしていくとてつもないレガート奏法で速弾きしていきます…
用いられるスケールもどこか不思議な響きのする聴いたことのないようなものが多く、
どうやらフィンガリングの流れから新たなスケールを探っては記録を取って独自のものを
作り上げているようです。
一つのフレーズ内でスキッピングして演奏することもしばしばで、この辺のテクニックも
近年のテクニカル系ギタリストに与えた影響は大きいと思います。
ピッキングは柔らかく、音と音の切れ目が殆ど解らないようなプレイをすることも多いと感じます。
ギターの指板をピアノに見立てて演奏するという考え方を基準にしているため、
コードを弾く際にも奇妙なフォームで弾いているとのことですが、あまりにも高度すぎて
正直言いまして筆者にはさっぱり…と言う感じです。
さすがPIT INNでの録音ということもあり、音色はライブ盤とは思えぬほどに良好で厚みのある音です。
#1Lanyard Loopは、頭から凄まじく手数の多いフィルが入り、2:30あたりから
摩訶不思議なギターソロが入ってきます。突然のリズムチェンジは当たり前のように訪れ、
ベースもそれに完璧に付いてきていて、ただただ信じがたいばかりと言う感じです。
ギターの音色はかなり太い音で丸みのあるものですが、ベースはそれに比べて抜けの良く非常に好みの音です。
古くから演奏してきた#2The Things You Seeは、原曲とはかなり異なるフレーズ、コード進行、
構造に置き換わっており、Chad Wackermanは軽めの音色のスネアが印象的なドラミングで
自由自在にノリを変えていきながらウネウネと進行していきます。
速弾きのフレーズには如何にもHoldsworthらしい癖のあるフレーズもありニヤニヤしてしまいます。
書き下ろしの#3Alphrazallanは、シンセのようなトーンのクリーンからアドリブソロの
こもったような歪みはお約束です。
アーミングを絡めたフレーズが奇怪でスローな一曲で、ベースはかなり動いていて聴き所です。
おなじみの#4Funnelsは、クリーンの柔らかい音色がとても好みです。やりなれた曲ということもあるのか、
Chadのドラミングはギターのフレーズの強弱に瞬時に、見事に合わせた抑揚の付いたもので白眉です。
#5ZoneはChadのイカれたドラムソロが楽しめる完全なるインプロビゼーションです。
どんなにタムをどんなに叩いてもうるさくなく、耳が気持ちいいです…最高のドラムソロです。
ギターとベースが入ってくると一気に激しく展開していきます。途中フリーキーなパートが
長く続き口が開きっぱなしですが(笑)
#6Water on the Brain Pt.IIは、各パートのソロが激しくぶつかり合うハードフュージョンな一曲です。
リズムのアクセントが複雑過ぎてキメをかますのは相当難しそう、というか普通の人間には無理だと思います。
ベースソロはかなりしっかり歌っていて特に印象に残ります。高音が澄み渡っていて聴きやすい。
とてもギターとは思えないスペイシーなシンセ風の音のソロで始まり、4分程別の世界に連れて行かれる
#7Above & Belowは、リズム隊が入ってくると表情が変わってメロディアスな
ベースがメロウに歌うように弾かれています。
#8Gas Lamp Bluesは、速いテンポで展開されるブルース形式に則った珍しい構成の一曲です。
しかしながらギターソロは勿論気味が悪いので安心。ここでももはや神の領域といっても
過言ではない超絶レガートを見せてくれます。
対照的に淡々としたクールなベースラインがまた何とも面白いです。
紛れもないAllan Holdsworthというジャンルを端的に知るにはとても解りやすく入りやすい作品だと思います。
彼の頭の中がどうなっているのか、とっても気になります…知りたいような、
知ってしまったら中毒になりそうな、そんな傑作です。

※CDの音源と異なるライブしかヒットしなかったものも多いですがご了承下さい。

Lanyard Loop

The Things You See

Water On The Brain PT. II

Gas Lamp Blues


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  1. 2013/11/27(水) 01:36:40|
  2. Allan Holdsworth
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今日の一枚(227)

Album: Let's Stay Together
Artist: Al Green
Genres: R&B, Soul

Lets Stay Together


アメリカ、アーカンソー州フォレスト・シティ出身のソウル/ゴスペルシンガー。1946年生まれ。
幼少期から家族でThe Green Brothersというグループでゴスペルを歌っていた彼は、
1969年にHi RecordのプロデューサーであるWillie Mitchellに見出され、
Al Green Get Next To You(1971), Let's Stay Together(1972)が大ヒットを記録し、
メンフィス・ソウルを代表するシンガーとして一躍その名を馳せることになります。
70s初頭はモータウンやスタックスが低迷し始める時期でもあり、
これはちょうどフィラデルフィア・インターナショナルと、このハイ・レコーズの
台頭とちょうど重なっているという風に捉えて良いと思います。
そのハイ・レコーズもWillieの脱退により勢いを失っていき、ついには活動を終えることとなります。
現在でもその時代のカタログは創始者の子孫の手によって再発され、その歴史を伝えています。
本作は1972年作の4th。上記の2作品を皮切りとして、数多くのヒットアルバムを世に送り出した彼ですが、
74年にプライベートの女性問題で大きな傷を抱えてから徐々に売り上げが落ち始め、
本作を最後にHi Recordsを離れることとなってしまいます。
本作はWillieプロデュースによる70年代2作目の作品で、最も有名な作品です。
80年代はゴスペル界隈でのリリースが続くようになりますが、
90年代半ばになると再びソウル路線の楽曲を発表するようになります。
バックを固めるのはHodge Brothersと呼ばれる3人兄弟(Leroy Hodges(B), Charles Hodges(Piano, Organ)
Teenie Hodges(G)の3人で、Hi Recordsの殆どの作品で演奏しています)と、
Howard Grimes(Dr)という定番のメンバーです。
鋭く歯切れの良いドラミングと、メロディアスなベースラインが作るアーシーなグルーブは
正しくサザン・ソウルと言われて真っ先に思い浮かぶサウンドの一つだと思います。
その中でも、コンセプチュアルで華麗なストリングスを配したようなニューソウルの作品が誕生する
70s初頭という時代を反映した、洗練された香りのあるサザンソウルのグルーブを堪能できます。
Al自身のボーカルスタイルは、(Willieからの指示もあり)非常にスムースで柔らかいものと
なっており、激しくシャウトしたり太いチェストヴォイスで押し切るというサザンソウルの
スタイルとは少し違うものになっています。ファルセットでの艶やかさが強調され、
囁くように歌うパートから、野太くシャウトするパートまで、非常に考えられた起伏のあるスタイルで、
何をやらせても完璧なボーカルテクニックを有しているシンガーだと思います。
アルバム全体を通じてバラードが多く、Bee Geesのカヴァーである
#7How Can You Mend a Broken Heart?やEddie Floydのカヴァーである
#6I've Never Found A Girlも収録されています。
#1Let's Stay Togetherは、言葉はシンプルでありながら深く胸を打つ歌詞が印象的な名バラード。
ゆったりとしたテンポの中でも硬さがあるHoward Grimesのドラミングと、
サビで鳴り渡る朗々としたコーラスが優しいグルーブを湛えています。
繊細なアルペジオが徐々に曲を盛り上げ、背後になるオルガンが神聖な空気を醸し出します。大名曲。
#2La-La For Youは、囁くように歌う冒頭部からホーンが入っていくにつれて力強い歌唱へと表情を変えていきます。
#3So You're Leavingは、トレブリーなカッティングと動きの多いベースラインがファンキーな前半から
息の長いフレーズを語るようにしっかり歌い上げる中間部を経て
切れ目切れ目でホーンの入るファンキーなパートへと戻っていきます。
相変わらずパワフルなドラムスが最高です。
#5Old Time Lovin'は、多重録音によるシンプルなコーラスワークとパーカッシブなホーン、
瑞々しいオルガンをバックにゆったりと進行していきます。
#6I've Never Found A Girlは、適度にハネたドラムスとメロディとユニゾンするベースラインがクールです。
#7How Can You Mend a Broken Heart?も原曲とはまた一味違ったフィリーでありながら
哀愁のあって切ないトラックになっています。
ファルセットのセクシーで甘いトーンが本曲を見事にソウルバラードへと昇華しています。
名カバーだと思います。
#8Judyはイントロのストリングスが幻想的で当時流行していたMavin Gayeのような音を思わせます。
サビでのハスキーで切々とした歌唱は圧巻だと思います。
アルバム最後を飾る#9It Ain't No Fun to Meはパワフルで豊かなチェストとシャウトが際立つ
一層ファンキーな一曲。
この時代にしか生み出すことのできないグルーブがきっとある、とそう思わされるような
サザン・ソウルの洗練の極みであると感じています。

Let's Stay Together

So You're Leaving

How Can You Mend A Broken Heart

Judy

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  1. 2013/11/26(火) 16:07:00|
  2. Al Green
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今日の一枚(226)

Album: Transformation
Artist: Tal Wilkenfeld
Genres: Fusion, Jazz, Blues Rock

Transformation.jpg


オーストラリア、シドニー出身のベーシスト、作曲家。1986年生まれ。
14歳の時にギターを始めてから高校中退の後、単身アメリカに移住しその1年後に
エレキベースに転向することになった彼女は、2004年にLos Angeles Music Academy Collegeを
卒業してなんと僅か数カ月にしてSadowskyからFender Jazz Bassの形状を模した
シグネイチャーモデルを受注するようになります。
(ギターではJim HallやJohn Abercrombie,日本では増﨑孝司、ベースではWillie Weeksを始めとして
ベテランでありかつ世界トップレベルのプレーヤーにのみ受注を許すSadowskyには例外的なことです)
本作は若干20歳の時に録音された初のリーダー作品です。2007年作の1st。
同年には本作のデモテープを送ってFrank GambaleやAntonio Sanchezらとともに
Chick Coreaのツアーに帯同しています。その直後にJeff Beckのツアーに参加したり、
Eric Claptonの公演でバックバンドとしてライブをこなしたり、
2010年にはHerbie HancockとのImagineプロジェクトにも参加しているなど、
キャリアに比して非常に多くの場面で活躍する今を時めくベーシストと言えそうです。
基本的に多弦のベースは使わず、クロマチックに速弾きしたり派手にスラップしたり…というよりは
2フィンガーでしっかりと弾きこまれた渋くソフトなフレージングを基本として、
コード奏法やヴィヴラート、そして特にスライドを多用している印象があります。
音色として一番近いものを感じるのがJaco Pastoriusでした。
クリーンの音色の透き通った綺麗さとかフィルのリズムに対する入れ方なんかは、
間違いなくジャコパスっぽさを感じます。
アルバム全体としてはインプロビゼーションが多いロックよりのフュージョンという音像ですが、
ハードフュージョンのようなテクニック披露大会(こういうのも大好きでアルバム集めていますが)という
感じではなく、ソロもメロディックで歌心があり、アンサンブルを重視して弾いているあたりが、
とても自分たちと同世代の若いミュージシャンとは思えぬ円熟ぶりで、ただただ敬服するばかりです。
タイム感は極めてジャストで、逆に正確すぎるかもしれないと感じるほどです。
今回はKeith Carlock(Dr, Sting, John Mayer, Steely Dan etc)や
Wayne Krantz(G, Steely Dan, Michael Brecker)といった純然たるジャズ系のプレーヤーというよりは
クロスオーバーやフュージョン界隈で活躍しているメンバーを引き連れてのレコーディングが行われています。
作曲・編曲は全てが彼女自身の手によって行われています。
リズム面でのアプローチは変拍子をさりげなく入れていますが、フュージョンのそれというより
プログレのフィーリングが強いように感じます。
#1BCは冒頭のフィルからがっちり掴まれ、緊張感のある展開が続き、元ギタリストらしいメロディックで
長いベースソロがあります。とにかくスネアの音色が好み過ぎてドラムスに耳が行ってしまいがちではあります。
うねうねとしたギターソロは音の選び方が個性的で非常に面白いです。ストラトの音色も最高に好み。
#2Cosmic JokeはWeather Reportを思わせるようなSeamus Blake(Sax)のテーマが中心となっており、
その中にもドラミングはドライブ感があるブライトな音色でロックフィーリングがあります。
ベースラインは多分にJacoしていてニヤニヤが止まりません。
後半部はキーボードのフリーキーなバッキングが印象的で難解なパートへと繋がっていきます。
スローテンポでGeoffrey Keezerのピアノが静かに鳴るイージーリスニング風バラードの
#4Serendipityもキーボードの饒舌で洒脱なソロとサックスのかっちりとした演奏に、
対照的なうねりの多いギターサウンドが対比的で面白いです。
ベースソロは控え目ですがキメが多くバックで相当面倒なフレーズを弾きこなしています。
#5The River Of Lifeは、サックスとの完璧なユニゾンやテンポダウンした中間部から後半部での
フィルが気持ち良いです。テーマを吹くサックスもどことなく懐かしいフュージョンの香りがします。
#6Oatmeal Bandageはワウの絡んだギターとサックスのユニゾン、複雑なキメから始まる爽やかな一曲。
ベースが弾くメロディラインはどことなく日本のフュージョンっぽさがあります。
長いピアノソロのバックでも手数多く叩くドラミングが疾走感のあって素晴らしいプレイです。
演奏のレベルやテクニックに関しては、これからも確実に上達していくことと思いますし、
大御所からも大切にされ、将来を嘱望されているベーシストなのだと思います。
若手の1stとしては熟練された作品だと思いますが、さらに暴れているところも見てみたいと
思っていたりします。
ルックスも立ち振る舞いも愛らしいですし、間違いなく彼女はスターになれると思います。良作。

BC

Cosmic Joke

Serendipity

Oatmeal Bandage


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  1. 2013/11/24(日) 01:57:29|
  2. Tal Wilkenfeld
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今日の一枚(225)

Album: Black Radio 2
Artist: Robert Glasper Experiment
Genres: Jazz, Hip Hop, Neo Soul, Electronica

Black Radio

アメリカ、テキサス州ヒューストン出身のジャズ・ピアニスト、作曲家、音楽プロデューサー。1978年生まれ。
2012年作品であるBlack Radioが第55回グラミー賞(Best R&B Album)を受賞しています。
幼いころからジャズ/ブルースシンガーであった母に連れられて教会でピアノを弾くようになってから、
既に彼はゴスペルとジャズのハーモニーを共存させることを考え始めていたようです。
2003年にデビューを果たし、2ndのCanvasからは名門Blue Noteから作品をリリースするようになります。
2013年作の6th。前作からに引き続き、個人名義ではなくRobert Glasper Experimentという名義で
製作されており、Derrick Hodge(B)とMark Colenburg(Dr)というリズム隊に
Casey Benjamin(Sax, Vo)を加えたバンドによる生演奏でのトラックを中心として、
様々なゲストミュージシャン(その多くはシンガーかラッパーです)
を招いて実験的な音楽性の作品を作ろうというプロジェクトです。
(ドラマーは前作のChris Daveから変わっていますが)
音楽性としてはシンセサイザーによるアンビエントな電子音もありますが、
演奏は基本的に人力によるものでアコースティックな手触りのトラックが多く、
Glasper自身はファンキーな楽曲ではFender Rhodesを用いたり、
或いはオーセンティックなジャズピアノを中心としてラップが主役になる
トラックに乗せていくというスタイルをとることが多いようです。
Jill Scottに代表されるようなネオ・ソウル界隈のミュージシャンであったり、
BrandyのようなR&Bとは言えど90sのポップスの世界でスターとして活躍してきたボーカリスト、
はたまたNoah Jonesのようなジャズ・シンガーなど、今回集めてきたゲストは殆どが30代半ば~40代前半の
Glasper自身と世代の近いミュージシャンが多くを占めています。
前作からの流れで聴いた方にとってみればとげとげとした実験性は薄く、
それほど新鮮味はないかもしれませんが、逆に言えば、ジャズピアノとヒップホップ、
ネオソウルやブレイク・ビーツやアンビエントといった音楽がフュージョンした彼独自のスタイルが
非常に洗練されてきて、洒脱で極めて質の高いアーバンミュージックに仕上がっています。
そういった意味では、本作は「ジャズピアニストの前衛的な作品」と捉えるのではなく
あくまで黒人音楽を中心とした現代的なクロスオーバー・ミュージック
(AORといってしまっても良いかもしれない)のスタンダードと考えてよいでしょう。
#1BabyTonight(Black Radio 2 Theme)/Mic Checkは、前半部と後半部で違った構成になっています。
前半はFender Rhodsから始まってリラクシングなピアノのフレージングにヴォイス・ヴォコーダーの
掛かったエフェクトが入ります。後半はゲスト・ヴォーカリストのマイクチェックを
サウンドコラージュして作ったアンビエントなオーバーチュア。
幼いカウントから始まる#2I Stand Aloneは、短いピアノループと低音の強調された
ドラミングの作るミニマルなグルーブにCommonによる歯切れの良く冷ややかなラップと
サビでのPatrick Stumpのソウルフルな歌唱が対照的なネオソウル。
Brandyとの共作#3What Are We Doingは、彼女のドスの効いた低音部の歌唱とコーラスを中心に据えて
オルガンのバッキングが存在感を放っています。イントロはキャッチーで懐かしい感じでこれもまた良い…
#4Callsはサビでのリフレインが印象的なJill Scottとの共作でリードシングルでした。
まさにJill Scottお得意の一曲。
ブリッジでベースが前に出て来るところなど、起伏の少なく浮遊感のある楽曲の中で
高揚感があって良いと思います。
#5No Worriesは、90s末頃からメジャーシーンに登場し始めた男性R&BシンガーのDweleが起用されていますが、
これもRhodesのバッキングがスペイシーでクールです。
ちなみに打ち込みっぽいリズムですが人力で叩いています。
豊かな響きの中にもハスキーさがあって良いシンガーです。
#6Trustは、サビへの鮮やかな展開にハッとさせられます。
Marsha Ambrosiusの伸びやかで冷徹なハイトーンが静謐なバッキングに見事に嵌っています。
#7Yet To Findは、ピアノの静的で優しいリフが支配する中で抑揚の付いた低音部の豊かなトーンで
朗々と歌い上げるAnthony Hamiltonのボーカリゼーションのおかげで、
ネオソウルというよりは正統派なR&Bの香りが漂っています。
ゴスペルライクなコーラスワークもエモーショナルで素晴らしい。
アウトロのファルセットも儚くて良いです。お気に入り。
#8You Own MeはFaith Evansとのコラボレーションで、
こちらはGlasperのサウンドに彼女が合わせている感じです。いつもより抑えめのボーカリゼーションで
クールに仕上がった小品。アウトロの饒舌なピアノソロは白眉。
#9Let It Rideは、冒頭から入る速いブレイクビーツを人力で叩くMark Colenburg(Dr)と、
所々に面白い音使いのあるピアノをバックに時に気怠く、時にパワフルに歌う
Norah Jonesのボーカルが冴えわたります。名曲だと思います。
ピアノもかなりアドリブ感が強く後半部では緊張感のあるインタープレイを楽しめます。
アウトロのドラムソロは空いた口が塞がらない…
Emeli Sandeの参加した#11Somebody Elseは、囁くような音色で定位されているコーラスが生々しいです。
アルバム最後に収録されているStevie Wonderのカヴァー#12Jesus ChildrenはLalah Hathawayを招き
ジャジーなハーモニーを作るピアノとスタティックなドラムスのシンプルなバッキングの中で
鈍く光る低音が強調されたボーカルが悲痛で深刻な歌詞に強烈な説得力を与えています。
このカヴァーは昨年にコネチカット州の小学校で起きた銃撃事件に対する追悼の意を込めて製作されてそうです。
90年代末から00年代においてHip Hopの革命があり、ニューソウルがありという
現代ブラック・ミュージックの同時代的なクロスオーバー作品の教科書になりうる紛れもない傑作。

Stand Alone

What Are We Doing

No Worries

Yet To Find

Let It Ride

Jesus Children

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  1. 2013/11/22(金) 14:53:46|
  2. Robert Glasper Experiment
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今日の一枚(224)

Album: Lady Put The Light Out
Artist: Frankie Valli
Genres: Pops, Soft Rock, Blue-Eyed Soul,R&B

Lady Put The Lights Out


アメリカ、ニュージャージー州ニューアーク出身のシンガー。1934年生まれ。
1960年に結成された、非常に長い歴史を持ち、1億枚以上の売り上げを記録している
知る人ぞ知るボーカル・グループ/ロック/ポップスバンドであるFour Seasonsのリードボーカリスト。
1967年ころからソロ活動も並行して行うようになります。1977年作のソロ7th。
60年代初頭に初めての1位を獲得したシングルSherryを皮切りとして、
いわゆる黒人のストリート・ミュージックであったドゥー・ワップのコーラススタイル取り入れた
楽曲を数多く生み出し、The Beach Boysらと共に、The Beatles初期のヒット前夜に
当時としては非常に先進的なブルー・アイド・ソウルの奔りとも言える音楽性を見せていました。
その後60年代後半からソフトロック/AOR寄りの作風が多くを占めるようになり、
ソロ作である本盤もその傾向を顕著に見せた音楽性となっています。
アレンジはFrank Sinatra, Al Kooper, Bruce Springsteen, Laura Nyro, Ray Charles,
Barry Manilowなど数多くの伝説級のシンガーを担当してきたCharlie Calleloが行っています。
(因みに、ソロデビュー時に渡米した山下達郎の1stであるCircus Town('75)のプロデュースも
Charlie Calleloが行っています。このことが彼の音楽性やアレンジの基礎を形成する原体験になった
ことは、ファンにはよく知られているところでもあります。
一部のレコーディングメンバーはCircus Townとも重複しています。)
バックを固めるスタジオミュージシャンも、Steve Gadd(Dr), David Spinozza(G),
Michael Brecker(Trumpet), Richard Tee(Key, Stuff),Wilbur Bascomb(B, Jeff Beck)
など非常に優れたメンバーが結集しており、水も漏らさぬ鉄壁な演奏を楽しむことができます。
楽曲提供もCharlie関連の人物が担当しているものが多いです。
個々の曲紹介の中で見ていくことにしましょう。
#1I Need Youは、Eric Carmenが初期に組んでいたバンドであるRaspberries結成時に
書いた曲で、大サビの前からドラマティックに盛り上がりを見せるストリングスのアレンジは神業です。
ピアノの柔らかいフレージングと、共鳴の強く暖かいハイトーンがメロウです。
#2Second Thoughtsは甘く透き通った右チャンネルのギターとシングアロングする女性コーラスが
印象的な短いバラード。
#3I Could Have Loved YouはAlbert HammondとCarol Bayer Sagerの共作で、
中音域の圧倒的な伸びの良さを見せつけてくれるスロウテンポのフィリーサウンド寄りな一曲。
#4With YouはKen Ascher(Key)の作品で、The Moments('76)がリリースしたもののカヴァーで、
自身によるエレクトリック・ピアノのエッジの立った存在感のあるバッキングにメロディックなベースラインが
ストリングスの生み出す甘美な音の中にも洗練されたグルーブを感じます。素晴らしい。
#5Native New Yorkerは本作の中でもハイライトに当たる一曲ですが、ハイハットの刻みが鋭くタイトな
ドラミングと所々に挿入されるホーンやワウの絡んだカッティングにファンキーさを感じながらも、
メロディックなサックスソロがあり複雑なコーラスワークがあり、一瞬たりとも飽きさせません。大名曲。
ブレイクからエモーショナルなボーカリゼーションで終わっていくアウトロも最高。本当に最高。
表題曲の#6Lady Put The Light Outは、Blood, Sweat & Tearsのアルバムでも録音されていますが、
ボーカルの表現力の高さではこちらに軍配が上がりそうです。
#7Boats Against The CurrentはEricの作曲で、エレガントなイントロからピアノ弾き語りで静的に
進行していきながら、徐々にギターやストリングスが入りノスタルジックな響きのある
メロディの綺麗さを最大限に盛り上げています。
軽くビブラートの掛かったサビの朗々とした歌唱は堂々としていて、
こんな風に歌ってみたい、と素朴にそう思います。これも名曲です。
雷のイントロから入りキャッチ―なギターリフを中心としてグル―ヴィーに展開する#8Rainstormは
肉体的なサウンドでこれもまた良い。
#9I'm Gonna Love Youは、コーラスとの掛け合いが楽しい冒頭と、Michael Breckerの
フュージョン色のあるサックスのリードプレイが聴き所です。ベースプレイもノリノリで楽しいですし、
音色も存在感がありながら邪魔しておらず耳に優しいです。
ラストを飾る#10There's Always A Goodbyeは、リムショットの際立つ穏やかなドラミングと
リラクシングなストリングスをバックにして、得意のファルセットでのロングトーンが映えています。
アウトロのスペイシーなキーボードサウンドも洒脱です。
ジャケットは何とも言えない感じですが、内容は勿論完璧です。
どんなに名盤の多い70年代という時代においても、こんなに完璧なポップス、そう他にはありません。
こんなに洒脱で甘く蕩けそうなトラックを用意されたら、本当にボーカル冥利に尽きると思います。
これからも聴き続けていきます。

Second thoughts

Native New Yorker

Rainstorm

Boats Aginst The Current

T'm Gonna Love You

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  1. 2013/11/22(金) 01:05:42|
  2. Frankie Valli
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今日の一枚(223)

Album: Relief 72 Hours
Artist: 国分友里恵
Genres: Pops, AOR, Soft Rock

Relief 72 Hours


日本の歌手、作詞家。1983年にAIRレーベルからデビューの後、12枚のオリジナル・アルバムを発表しています。
自分は、山下達郎、竹内まりやのツアーサポートメンバー(コーラス)として彼女の存在を知ることになりました。
先日レコードショップのソフト・ロック、ニューミュージック特集と称した企画で、
本盤が初めてリマスターされ、Blu-Spec CDとして再発されたということを知り、早速購入に至りました。
1983年作の1st。デビュー作にあたる本作は、80年代の(アイドル)歌謡曲・ポップス界において非常に
重要な役割を果たした音楽プロデューサーである林哲司氏がプロデュースを行っています。
(プロデュースしたアイドルや歌手はあまりにも数限りなくあり
有名どころは殆ど含まれるためここでは紹介しません)
作曲、アレンジの両面で林氏がサポートを行っていますが、
バックを固めるスタジオ・ミュージシャンの方々は
青山純(Dr)、村上秀一(Dr)、林立夫(Dr)、伊藤広規(B)、高水健司(B)、今剛(G)、長田進(G)、
野力奏一(Key)、富樫春生(Key)など、
当時の日本を代表するフュージョン系のプレーヤーが数多く参加しており、
非常にタイトで洗練された演奏を楽しむことができます。
音像としてはフュージョン色やリゾート・ミュージック色の強い典型的なシティ・ポップスですが、
山下達郎のバッキングであった青山純(Dr)、伊藤広規(B)のリズムによるハッキリとしていて
ファンキーな音が印象的です。リマスターの効果は覿面で、非常にクリアで抜けのいい音で楽しむ事ができます。
#1スノップな夜へは一聴してそれと分かる青山純のへヴィーでボスッとしたスネアが印象的なドラミングと、
低音の多くキラキラとした伊藤広規のベースラインと、イントロのギターリフがファンキーです。
メロディやホーンの使い方に如何にもシティポップスという空気感と懐かしさを感じます。
#2恋の横顔は、テレキャスのまろやかなカッティングフレーズにスラップベースが絡む前半部から、
Jake Concepcion(フィリピン出身のスタジオ・ミュージシャンで
荒井由美、中島みゆき、大瀧詠一ら数多くのニューミュージック関連の作品に参加しています)
のメロウなサックスソロが聴き所です。
ミドルテンポのバラード#3Weekend Loveは、作曲も担当している佐橋佳幸(G)の
単音カッティングのバッキングが印象的です。シンセのキラキラしたバッキングとコーラスが柔らかい音色です。
アナログレコーディングならではの良い音です…
#4Love Songは、林哲治らしいストリングスが映えるシンプルなバラードで、ボーカルの低~中音部の艶やかさや
ロングトーンでのソウルフルなトーンマニピュレーションはとてもデビュー・アルバムの
出来とは思えない円熟ぶりです。素晴らしい。
#5とばしてTaxi Manは、富倉安男(B, Paradigm Shift)の抜けの良く粒の細かいスラップが
特徴的なベースラインと今剛のこれまた完璧な音作りのカッティングが冴えわたるファンクで、
荒々しいボーカリゼーションが圧倒的な存在感です。
#6回転扉は、フュージョン色の強いキーボード主体なAORですが、
キーボードのリフがパーカッシブなプレイであるため
暗さを湛えたなメロディの中でキメが強調されてこれも黒い感触があります。
コーラスの定位感が瑞々しく、ギターソロの音色はシルキーで鳥肌もの。
#7Dancing Tonightは、Michael Jacksonの楽曲にありそうなサビの展開に加え、
繰り返しの多いベースラインとダンサブルなドラムスが80sR&Bのイメージに綺麗に嵌っていて
ニヤニヤが止まりません。良曲。
#8パーティーにひとりは、野力奏一(Key)作曲のブラコン色が強い一曲で、
ジャジーな香りのするアレンジを纏ったちょっと毛色の変わった一曲です。
キーボードのロングソロは透き通った音色でスムースで洒脱です。
一転して#9Just A Jokeは山達が好きそうなベースラインとソリッドなドラミングによるサビ前のキメが
ドライブ感があります。
#10Last Womanは、高音の煌めきがあるシンセと緩やかなストリングスが味付けするバラードです。
リズム隊が正確で重さがあるためこういった柔らかい曲でも輪郭がはっきりしていて
引き締まったグルーブがあります。
彼女の他のソロ作品も、CD化されることが強く望まれます。
80s初頭におけるフュージョンやファンクの奔流と、日本人特有のエモーショナルで、
ノスタルジーのあるメロディセンスが見事に溶け合ったブラック・コンテンポラリーの隠れた名盤。

スノップな夜へ

恋の横顔

とばしてtaxi man

回転扉

パーティーにひとり

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  1. 2013/11/19(火) 15:55:40|
  2. 国分友里恵
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今日の一枚(222)

Album: Pentagram
Artist: ivory7 chord
Genres: Alternative Rock

pentagram.jpg


2009年に結成された日本のオルタナティブ・ロックバンド。
大西俊也(Vo, G)と野田剛史(B)は、元々はWrong Scaleという
パンク/メロディック・ハードコアバンドのメンバーとして
10年余りのキャリアがあります。その他には当サイトでも何度か取り上げさせて頂いている
UNCHAINの吉田昇吾(Dr)が参加しています。
UNCHAINとは昨年対バンツアーも行ったりと、メンバー間の交流も見られるようです。
他には歌謡っぽい濡れたメロディが特徴的なメロディック・パンクバンドのUNLIMITSとも
合同ツアーを行っています。2012年作の2ndフルアルバム。
メロコアのバンドとしては、儚げなファルセットの特徴的な歌唱や伸びのあるハイトーン、
コーラスワークも器用で面白く、リズム隊の演奏もドライブ感がありながら
うるさすぎず音のバランスが非常に良いと感じました。疾走感に溢れるようなパンキッシュな楽曲もありますが、
個人的には静かな曲の方が魅力的に感じます。コード感で聴かせる楽曲もありますし、
リズムの複雑でパートの多いソリッドな楽曲もあって飽きさせません。
特にドラムスの音色はUnchainの時よりももっと思い切りが良くへヴィーに叩いているようで、
スタイルとしてはこちらの方が得意なのかもしれないと感じます。
ギターの音色はあまり強く歪ませすぎず、軽さのある音色で聴き疲れしにくいです。
歌詞には英語詞のみのものから日本語交じりのものが出てきており、
メロディラインへの乗せやすさで選択しているようです。
いずれにせよWrong Scale時代のバリバリとしたパンクサウンドからかけ離れたものに
なっているため、ファンの間では意見が割れそうな気もしないでもありません。
しかしながらTriangle To Square(2005)やbed and board(2007)などに代表されるような
メロディセンスは健在です。野田脱退後、ベーシストはサポートの新井遼一が勤めていますが、
これがなかなかに面白いサウンドで、多めに低音が出ている中にも輪郭のある音色で、
リズムへのノリ方やずらし方が重心の低いグルーブを生み出しています。
#1Bloom for 3 daysは冒頭からクリーンの印象的なリフがテーマとして流れ、キーボードやギターでループ
されながら進行していきます。ドラムスは疾走感があり激しく叩いていますが、
リズムに対してはかなりスクエアで丁寧です。
サビ後のコーラスからエフェクトの掛かった電子音が流れるパートと、エモいサビとの対比が楽しい。
#2The virtual worldは速いテンポで手数の多いドラミングと太く動きと音数の多いベースラインが作る
ソリッドで前のめりなリズムに細いファルセットが絡んだサビのメロディがキャッチーです。
#3Invisible raysは、透き通ったファルセットのコーラスがループする中で静かに始まっていきます。
ピアノ入れるならもう少し活躍させてあげても良かったかもしれないです。
コードを弾くギターサウンドがピアノとぶつかっておらず清涼感があって、
ブリッジはソウルっぽさもあります。佳作。
#4Season of childは、フォーキーな香りのするアコギのイントロからすっきりとしたアレンジの中に
練られたコーラスがあってサビのメロディの綺麗さが際立っています。
ちょっと張り上げ気味のヘッドボイスからファルセットに抜けていく感じが切なさを演出していて素晴らしい。
#6Re:lightは、へヴィーで連打の多いドラムスが存在感を放つ冒頭部と間奏でのベースラインが楽しいです。
左チャンネルのトーンはジャズマスターっぽく高音寄りな中に少し太さのある音色で気持ちいいです。
#7Clashは2分半程度の小品で、ジャングルビートな冒頭部とサビでのリフレインをバックに
ダンサブルに展開して行きます。スキット的なインストの#8A means of escapeに続いて
#9 4 wordsは日本語詞のミドルテンポな楽曲です。
アレンジはいたってシンプルです。ギターソロは音数少なく上品で、
ポストロックっぽい感じを出したかったのかも。
#10You're gone so fastは、イントロのアルペジオから少し異色な一曲で、
ギターの音作りは標準的で参考になりそうです。
#11white appleは頭のカッティングからしてエイベックス期のUNCHAINを思わせるようなフレージングで、
ワウの絡んだ右チャンネルと、フェイザーの掛かったような左チャンネルの音の輪郭が対比的で良いです。
ギターソロは音作りまで含めてしっかりアンチェインしております。
コーラスもあらゆるところに入っていますが、こちらの方がロック色の強く直線的なグルーブを感じます。
#12u.s.oは一風変わったボスッとした打ち込みのリズムにエフェクトをかけたコーラスの音処理やリフレインが
90sダンスミュージックの雰囲気を感じます。ちょっと散漫かもしれません。
聴いていて目新しい音楽性というわけではないですが、メロディの綺麗さとさっぱりした
アレンジでさらっと聴けますし、ボーカルも音域がきちんと合っていればとても映えると思います。
コーラスのハーモニーの追求やもっとアコースティックなサウンドを指向するのも良いかもしれません。
メンバーチェンジを経て過渡期にある彼らですが、もう少し追ってみようと思っています。

Bloom for 3 days

Season of child

white apple

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  1. 2013/11/18(月) 16:00:51|
  2. ivory7 chord
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

今日の一枚(221)

Album: Wild Cherry
Artist: Wild Cherry
Genres: Funk, Soul, Funk Rock

wild cherry


アメリカ、オハイオ州ミンゴジャンクション出身のファンク・ロックバンド。
1970年結成、1980年に解散。1976年作の1st。USR&Bチャートで1位を獲得しています。
活動開始から長くヒットに恵まれませんでしたが、
76年にエピック・レコード配給のSweet Cityというレーベルから
メジャーデビューを果たした際に発売された本作で、#1Play That Funky Musicが大ヒットを記録し、
グラミー賞ノミネートも手伝って一躍彼らの名が知れ渡ることとなりました。
レーベルが消滅し大幅なメンバーチェンジが行われた80年には僅か4枚のオリジナルアルバムを残して
解散してしまいます。
音楽性としてはSly & The Family Stoneに影響を受けたドロドロなファンクの中に
ロック色を感じる楽曲が殆どを占めており、
70年代半ばから後半にかけての黒人音楽の流行に乗った作りになっています。
バンドメンバーはギターボーカルのRob Parissiを含めて全員白人で、
ブルーアイドソウルというわけではないですが、
白人によるファンク・ロックバンドと考えて頂ければ問題ないかと思います。
ただ急なヒットからのアルバム制作であったためか、
収録曲9曲のうち3曲はカバー曲という構成になっております。
彼らの唯一の大ヒット曲である#1Play That Funky Musicは、
左チャンネルを流れるクラシック・ロックな単音リフと、
右チャンネルをひたすらに流れるトレブリーなカッティングに重く揺らぎのあるベースが
ねっとりと絡み付きとても白人が作っているとは思えない強烈なグルーブを放っています。
ギターソロもハードロックっぽいクサさがあって素晴らしい。
コーラスとの掛け合いから転調していく展開もクールです。
#1のシングル・カップリングとして収録されていた#2The Lady Wants Your Moneyは、
テンポを落としさらに強いバックビートを感じさせるドラム・ベースとソウルフルな女性コーラスが
作るトラックに、鋭くソリッドなトーンのギターソロがリズムの間を縫うように鳴り渡ります。
#4Don't Go Near The Waterは、空間系のエフェクトが掛かったギターのバッキングと、
一風変わったギターソロが印象的なロック色の強い一曲。
#5Nowhere To RunはHolland–Dozier–Holland作曲のMartha and the Vandellas(1965)による、
60sモータウンを代表するヒット曲の一つですが、
複雑なコーラスワークも良いですがキャッチーなシンセのリフがポップで聴きやすいです。
#6I Feel Sanctifiedは、Lionel Richieの所属していたファンクバンドThe Commodores
(元々はJackson 5のバックバンドでした)のカヴァーで、
四つ打ちのバスドラムとJB風なカッティングフレーズがループしながら、
切れ目切れ目で入ってくるホーンが緊張感を演出しています。
サビでの朗々としたコーラスやSEとして入ってくる観客たちの盛り上がりっぷりは聴いていて楽しいです。
#7Hold Onはフィリー色の強いメロウなミドルテンポのバラードで、フィルでよく動くベースラインと
緩いビートのドラミングに合わせてスペイシーなシンセを背後にして、
印象的なギターリフが随所で鳴っています。
#9What in the Funk Do You Seeは、ひたすらにハードロックなリフが繰り返される中で
重さのあるフィルを起点にして展開していくスロウ・ファンクです。
一発屋認定されている感のある彼らですが、ブリテッシュ・ハードロックと
ダンサブルなファンク・ミュージックのフュージョンとしての
ファンク・ロックの一つのひな形であり、ギタープレイの参考にもなると思います。
彼らの楽曲は時代を超えて聴く価値のあるものだと感じています。

Play That Funky Music

The Lady Wants Your Money

Don't Go Near The Water

I Feel Sanctified

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  1. 2013/11/15(金) 16:19:23|
  2. Wild Cherry
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今日の一枚(220)

Album: Exit
Artist: Pat Martino
Genres: Jazz

Exit.jpg


アメリカ、ペンシルベニア州フィラデルフィア出身のイタリア系アメリカ人のジャズギタリスト。
1944年生まれ。オリジナル曲にジャズ・スタンダードを加えて演奏したリーダー作品。1977年作。
1959年に僅か15歳にしてプロデビューを果たしてから、ハード・バップを代表するジャズ・ギタリストとして
Footprints('72)やVisit('72),屈指の名演と言われるBobby HebbのSunnyが収録されたLive!など
優れたリーダー作を残しましたが、76年に脳動脈瘤によって倒れ、手術後に記憶喪失を起こすという
大きな困難をも乗り越え、87年に活動を再開するまでに至ります。
奏法に関しては、いわゆるマシンガン奏法と称される(奏法というべきなのかフレージングというべきなのか…)
単純に言うと一小節に徹底的に音符を詰め込んだ非常に息の長くかつリズムに対してスクエアで正確な
リードプレイが特徴的です。
そしてもう一点取り上げられることの多いマイナー・コンバージョンと呼ばれる方法ですが、
これは文献によってかなり解釈に幅があるため詳しく定義することは難しいですが、敢えて言うならば
キーによって定まってくるダイアトニック・コードに対して代理コードを想定し、
それに対応するモードでアドリブを行う(つまり用いるモードは一種類に定まる)という説明がありますが
実質は後付けの「奏法」と捉えるべきではないかと私は感じています。
彼の演奏自体はWes Montgomeryに代表されるビバップのスタイルへの深い理解を背景として、
後期のコルトレーンに代表されるようなフリー・ジャズの影響をもろに受けたリズム・コードワークの
パートもあり、60sのR&Bやロックの空気を吸っていながらも、あくまでサウンドにハードさや冷徹さを失わず、
シンプルですが本当の意味で個性的なプレイだと思いますし、コピーは難しいと思います。
表題曲の#1Exitは、冒頭からRichard Davis(B)を中心とした奇怪でフリーな展開が続き、
弾きまくりのギターソロがアドレナリン出まくりな、かなりテンポの速い4ビートへと繋がっていきます。
ソロのマシーンのようで正確無比なフレージングは圧巻です。
#2Come Sundayは、打って変わって非常にゆったりとしたテンポで演奏されています。
徐々に鋭さを増していくパタパタした音色のドラムスと、
ソリッドでエッジの立ったトーンで絶妙にメロディラインを崩していくギター、
Gil Goldstein(Piano)はシングルノートのブライトで音数を絞り込んだソロで、
キーボードを演奏する時の彼とはまた違った一面を見せてくれます。
へヴィ―なウォーキングベースとハイハットが疾走感を演出する
#3Three Base Hitは、スウィンギ―なドラムソロを挟んでピアノとギターがそれぞれにソロを見せていきます。
フェードアウト際までメカニカルに弾き倒しています。
#4Days of Wine and Rosesは、バラードと言えどかなり饒舌に弾いていてかなり好みのアレンジです。
とにかくこのトーンが大好きなのです…
チョーキングやフレーズの中でリズムに対して繊細に動きながら泣かせていく技術に惚れ惚れします。
#5Blue Bossaもかなり早いテンポで演奏されており、シンプルでどっしりとした2拍子のベースラインを
バックにして絶妙なアウト感でソロを魅せるピアノがエモーショナルで最高。
#6I Remember Cliffordは、本盤の中でも特に素晴らしい演奏だと思います。
ブルースフィーリングの強いピアノソロや一つ一つの音の輪郭がハッキリとした几帳面なギターソロは、
まるで1分1秒の時間が過ぎるのを惜しむように空間の全てに隙間なく音を詰めているようですが、
決してうるさくなく、クールで都会の夜を思わせるサウンドに帰着しています。
ストレートアヘッドなジャズギタリストのソロ・アルバムの中で最も愛聴している盤の一つです。

Exit

Three Base Hit

Blue Bossa

I Remember Clifford

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  1. 2013/11/13(水) 01:34:53|
  2. Pat Martino
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今日の一枚(219)

Album: Figure Number Five
Artist: Soilwork
Genres: Melodic Death Metal, Alternative Metal

Figure Number Five


スウェーデン、マルメヒュース県ヘルシンボリ出身のメロディック・デスメタルバンド。
1995年結成。2003年作の5th。Children Of BodomやIn Flamesらと共に、
北欧メロデスを代表するバンドであり、現在もメタルコアやモダン・へヴィネス界隈の
若手に多大なる影響を及ぼし続けています。
デビュー当初から2ndのころまで見られたArch Enemy的なブルータルさやデスヴォイスの濃度は
低下し、歌唱はクリーンを多くもちいたメロディックなものになり、
サンプリングを活用したニュー・メタルっぽい音使いも見ることができます。
本作ではこのメロディック路線が特に顕著に表れており、Sven Karlsson(Key)によって
多くの作曲が行われたことに起因するものと思われます。
Devin Townsend(Strapping Young Lad)によるプロデュースの前作からの流れを
引き継ぎつつ、本作ではさらにコーラスワークにおける複雑さや透明感、
クリーンでの中音域の清澄さを見せるBjörn "Speed" Stridのボーカリゼーションが
強く取り上げられています。
#1Rejection Roleは、スクリーム寄りのデスヴォイスで歌うメロから、
サビでのメロディックな歌唱へと変化していく典型的なメロデスという感じですがとにかくメロディが綺麗です。
#2Overloadは、ポップさをさらに増しており、ピコピコのシンセやPeter Wichersの
クサクサなギターソロが聴き所です。
表題曲の#3Figure Number Fiveは、ツインギターの絶妙な多重録音とピロピろなソロ、
ブラスト気味のドラムスで疾走しまくるスラッシュ色を感じる数少ない一曲。
#4Strangerは、冒頭の超ポップなリフから始まりリズム隊のへヴィ―さの中でも
きっちりとメロディを歌いきるボーカル、ツインギターの緻密なハーモニーの構築があり様式美を感じます。
#5Light The Torchは、シンセの電子音によるリフとダウンチューニングのザクザクとした
刻みが対照的で面白いです。サビのメロディはどことなく浮遊感があって、グロウルと交互に
掛け合うようにして歌われていて疾走感を演出しています。
#6Departure Planは、荘厳な空気を醸し出すオルガンの右チャンネルと、アコギのフォーキーなバッキングに
フラッシュバックするようにして流れる分厚いコーラスを中心に展開され、
少ない音数とブルージーなフレージングのギターソロがありテーマを繰り返して静寂へと至っていきます。名曲。
#7Cranking the Sirensは、手数の多いフィルとデスヴォイスから入っていきます。
しかしすぐに#6と合わせてメタルなのかかなり怪しいポップな展開になっていきます。
#8Brickwalkerは、軽めのFlying Screamを鳴らすボーカルとひたすらに低音リフを鳴らすギターで
スラッシュする前半部から鮮やかにシングアロングしたくなるようなサビへと移行していきます。
非常に緻密なユニゾンが心地よく、タッピングを絡めたギターソロも弾き過ぎず素晴らしい。
#9The Mindmakerは、クラシカルなハードロックを思わせるギターリフが印象的です。
至る所に多重録音によるコーラスを配したメロウなクリーンヴォイスがキャッチ―です。
#10Distortion Sleepはミドルテンポのメロディック・ハードロックのようなキーボードのキラキラとした
バッキングに、デスとクリーンで交互に歌う展開は彼らの王道。
#11Downfall 24は、溜めるようなリズム隊のグルーブと、軽く歪んだトーンでの如何にも北欧な
哀愁漂うギターソロがあり、荘厳にサビを繰り返した後、静かな電子音で終わっていきます…
数あるメロデス(というよりもはやオルタナティブ・メタルとか、メタル・コアというべきか)の
作品の中でも、本作が今流行のメタル・コアの教科書として、
後進たちに与えた影響は測り知れないものがあります。
前作の4thも合わせて聴けば、こういったジャンルの楽曲の大枠を理解できるといって過言ではないと思います。
特にメロディの綺麗さ、キャッチ―さで右に出る作品は少ないと思います。良作。

Rejection Role

Figure Number Five

Departure Plan

Brickwalker

Downfall 24

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  1. 2013/11/12(火) 02:00:03|
  2. Soilwork
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今日の一枚(218)

Album: スポーツ
Artist: 東京事変
Genres: Alternative Rock, Funk Rock, Pops

スポーツ


シンガー・ソングライターである椎名林檎(1978~)を中心として2003年に結成された日本の
オルタナティブ・ロックバンド。2012年1月に解散。2010年作の4th。
このタイミングで彼らの作品を書くというのは何とも間の抜けた感じではありますが、
折角ソロ作の記事を書かせて頂きましたので、事変の作品も取り上げようと考えました。
全てのオリジナルアルバムをもう一度聴いたうえで考えると、
世間でよく言われるソロと事変での音楽性の違いや好き嫌いは、サウンドの向いたベクトルが
内向的・収束的であるかそれとも外向的・発散的であるかということにあると言えそうです。
バンドメンバー達による作曲が多く椎名はボーカルと作詞に集中しているということが
最も大きなファクターであるというのは当たり前ですが、基本的にはオルタナティブ・ロックや
シューゲイザーっぽいバッキングの中にジャズっぽいフレージングと
ポップなメロディーを乗せたような楽曲が多く、アレンジも分離良好でモダンな音(良い意味でギラギラした音)
であるため受ける印象も明るいものになるのだろうと思います。
ただメロディこそキャッチ―ですが、コード進行自体は捻くれたものが多いので、
(というか変わった進行にしようという意図が全面的に出ています)それほどメジャーになるバンドとは
思ってもみませんでした。
特にキー上ではないドミナント・セブンスや分数和音の多用、テンションコードの効果的な使用は
進行を考える上で参考になる部分も多いのではないかと思います。
本盤では浮雲(長岡亮介)(G)と伊澤一葉(Key)の作曲が多くを占めており、
プロデューサーの亀田誠司(B)は演奏に集中しているいうこともあって、
かなりロック寄りの音像になっています。特に多用されるシンセの音作りや
テレキャスのクリーン~クランチの音が、本作の印象を決定付けているように思います。
リズムのアプローチはかなり黒人音楽を意識した作りになっていて、
#7能動的三分間のようにもろにファンクしているものもあります。
ベースも、あのジャズベースを歪ませた音作りは勿論ですが随所でのスラップのタイム感も
非常に面白いですし、間違いなくファンクベースを意識的にやっています。
#1生きるは、多重録音を駆使したゴスペルライクなコーラスにエフェクトを掛けていくこと
によって複雑さを演出しています。張り上げ気味に高音を歌う林檎が素晴らしい。
リズム隊が入ってからは、あえてローファイにした音像のバッキングを背景にして
スウィンギーに、ラウドに進行していきます。
#2電波通信は、思わず笑みが零れるような忙しないベースラインにシンセのピコピコなリフが面白い。
間奏のギターでむしろ安心するという構成。刄田綴色(Dr)もスラッシュばりにフィル叩きまくりなのが
振り切れていて楽しいです。
#3シーズンサヨナラは、ジャズ臭いピアノのフレージングとそれに合わせて気怠さを残して歌う
ボーカルがありながらも、ソロ作での音色よりずっと聴きやすく、リズムも派手なキメからの
抑揚の付け方が見事で、揺れすぎずかつドライブ感があります。
ギターのカッティングはあくまでシンプルです。これも名曲。
英語詞のロックンロール#4勝ち戦は、クラシック・ロックを意識したtwangな音のテレキャスの
山達リズム(Curtis Mayfieldというべきか)を刻むリフに、後半部でのコーラスの一人多重録音が
変わったコードワークで面白い。ソウルっぽさがあるのは個人的に訴えてくるものがあります。
#5雨天決行は、いつにもまして健全な歌詞を歌う椎名林檎のボーカルのかわいさ(?)がフィーチャーされた
感のあるリラクシングな一曲。コーラスの定位が柔らかくて非常に気持ち良い。
ギターソロもかなり弾いてますが適度にトーンが絞れているのでうるさくはないです。
やはりこの曲にもソウルフィーリングがあって素晴らしい…
ヒットシングルの#6能動的三分間は、文字通り収録時間3分間の一曲ですが、
コード進行の面白さやベースの太いけれどもメロディを邪魔しない音作りに感動します。
左右に極端に振り分けられたキーボードのハモンドっぽいファンキーなトーンもファンクしていて素晴らしい。
東京事変の最高傑作の一つではないか、と個人的には思っています。
やはりこの曲もCurtisっぽい音像を意識してアレンジが行われている印象を受けます。
#7絶体絶命もコード進行のかなり面白い曲と思います。歌詞も歯切れがよくて好みです。
ギターソロはこれぞ浮雲というべきクランチのバリバリしたトーンで安心します。
自分にとって理想的な音作りの一つです。スペイシーで音と音の間を非常に繊細に感じています。
#8FAIRは、ジャジーなピアノのフレーズに、ワウを絡めつつ強めに歪ませたギターが
気ままにカッティングしているのが洒脱です。メロディも捻くれていてジャズボーカルを意識しているようです。
#10乗り気は、前半のポップな部分に騙されますが後半では完全なるプログレになっているという構造の
また何とも奇抜な一曲。これも思わず笑ってしまう。
#11スイートスポットは、ハイの綺麗なアコギのシンプルなストロークにブルージーなキーボードが
音数少なく鳴り響き、AORっぽい空気感を演出しています。ベースの入りからは
ロック寄りにサウンドは変化していきます。ともかくこの曲は歌唱難度が圧倒的に高いです。
音域だけでなくてかなりソウルフルに歌ったりフェイクしなければならないために、
彼女のボーカリストとしてのテクニックの高さがはっきりと聴き取れます。
#12閃光少女は、唯一の亀田誠司作曲で、彼が目指しているところの、
イントロの刻みからグッと掴まれる、如何にも個性の出た爽やかでキャッチ―な一曲に仕上がっています。
疾走感の溢れるキーボードのフレージングと刹那的な切なさや焦燥感を煽る歌詞が綺麗に嵌っています。
彼らのアルバムは全てお気に入りのものばかりですが、
一枚選ぶとしたらファンク・ソウルの香りが強く湧き立ってくるこの4thを手に取ると思います。
聴けば聴くほどに東京事変というバンドが演奏・楽曲・アレンジの全ての面で
バランスのとれた奇跡的なバンドであったということを、噛みしめています。邦ロックの愛聴盤の一つ。

生きる

電波通信

勝ち戦

能動的三分間

スイートスポット

閃光少女

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  1. 2013/11/11(月) 00:54:32|
  2. 東京事変
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今日の一枚(217) by Systematic Chaos

同人誌とゲームと音楽のにっこにっこブログ」への書下ろし

Album: 革命デュアリズム
Artist: 水樹奈々×T.M.Revolution
Genres: Heavy Metal, Hard Rock

革命デュアリズム


発売されてから期間が空いてしまいましたが水樹奈々の最新シングルです。
前回のPreserved Rosesからかなり短い期間での西川貴教氏とのコラボレーション・シングルとなりました。
初回限定盤ではPVを収録したDVDが収められています。
#2にはテレビにオンエアされた別バージョンが収録されています。
すっかりメタルシンガーとして安定したボーカリゼーションを見せている彼女ですが、
#1革命デュアリズムは、上松範康氏(Elements Garden)作曲の完全なる水樹さんの楽曲という感じで、
シンフォニックなスピードメタルの色が濃い一曲です。
ギターの歪みの音作りは今流行のデジタルな歪みですが、派手にソロは取っておらず、
スラッシュっぽい刻みや随所に入るハーモニクスでスピード感を出すことに重点が置かれています。
とんでもなく手数の多いドラムスも、バスドラムで結構遊んでいて軽くなりすぎず聴きごたえがあります。
サビでのキー設定の関係上、どうしても水樹さんの方が前に出ているように感じます。
相変わらず倍音の多い西川と少なく鋭い水樹のトーンが対照的で面白い組み合わせです。
定番化するかもしれませんね。良曲と思います。

Written By Systematic Chaos

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  1. 2013/11/10(日) 22:49:19|
  2. 水樹奈々
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今日の一枚(216)

Album: Between The Sheets
Artist: The Isley Brothers
Genres: R&B, Soul, Funk

Between The Sheets


以前にも一度記事を書きましたが、このブログの最初期の記事であったこともあり、
内容の充実が見られなかったので、もう一度違う作品で彼らのレビューを書こうと考えておりました。
1954年にアメリカ、アイオワ州シンシナティで結成されたファンクバンド・ソウルグループ。
名前の通り、教会で聖歌隊として歌っていたIsley一家の兄弟を中心として
Erine Isley(G), Marvin Isley(B)やO'Kelly Isley(Key)らを加えてバンドとしての活動を
始めていきます。
デビュー当初は3人でいわゆるドゥーワップ(無伴奏のコーラス(アカペラ)を3人で行うスタイル)
の形式で出発しますがヒットに恵まれず、レーベル移籍後にあのThe Beatlesのカヴァーで知られる
Twist And Shout(1962)のヒットを出したことが、彼らが有名になるきっかけとなりました。
その後メンバーは64年にT-Neck Recordというインディーレーベルを立ち上げ、
楽曲制作に取り掛かるようになります。
そして当時ギタリストとして彼らのレコーディングに参加していたのがJimi Hendrixその人でした。
65年までの短い期間ですが、シングルTestifyでその演奏を聴くことができます。
Motownへの短い移籍期間を経て、69年のIt's Your Thingのヒットや、
白人のブルースロックをどこまでも黒い音像でカヴァーしたアルバムのGivin' It Back、
Brother, Brother, Brother, Live It Up, The Heat Is On, Harvest For The Worldなど
70年代に最大級のヒットを生み出し、そして1983年作の22ndである本作は、
後にヒップ・ホップの定番サンプリングネタとして
多くの楽曲で用いられることになります。(70年代の作品もいずれ記事をお書きします)
その後90s, 00sとEternal(2001), Body Kiss(2003)など、活動は衰えを知らず、彼らは
1950年代から2000年代まで連続でビルボードのシングルチャートに登場し続けてきた
唯一のバンドでもあります。
なぜか日本では知名度が低く、なかなか存在を知っている方が少なくて非常に非常に残念に思っています。
他ならぬ山下達郎はIsleyの大ファンでもあり、特に79年作のMoonglowなどRCA/AIRの初期で
かなり色濃い影響を受けていると思われます。
というわけで、本作は当時ブラック・コンテンポラリーの最先端であったクワイエット・ストームの
音像を完璧に表現しきったアルバムと考えてよいでしょう。
彼らの全盛期の体制であった3+3(Erine, Marvin, O'Kelly)による最後のアルバムということになります。
#1Choosey LoverはErnie Isley(G)のエモーショナルでシルキーなギターソロが印象的なバラード。
強くリバーブのかかったドラムスと、甘く蕩けるようなファルセットと脱力したコーラスが絡みつく
いきなり名曲。ところどころに配された電子音が幻想的で頽廃的な空気感を演出しています。
#2Touch Meは、シンセのキメが流石に時代を感じますが、太いベースラインや鋭く溜めるような
ドラミングが重いグルーブを醸成しています。後半部でのリズムへの乗り方や崩し方は、
ソウルシンガーでなければ絶対にできないものと思います。
#3I Need Your Bodyは、シンセベースの饒舌なフレージングとパーカッシブなシンセのリフに
サビのメロディのリフレインが非常に印象的です。短い単音カッティングの絡んだバッキングから
アウトロでブルージーなソロをかますギターも良い仕事しています。
隠れた名曲だと思います。
表題曲の#4Between The SheetsはJay-Zを始めとして数多くのヒップ・ホップのミュージシャンに
サンプリングされる彼らの代表曲の一つです。イントロから鳴り響くキーボードの音作りは
本当に天才的だと思います。
特にサビ後のキラキラしたフレーズ、後半部のひたすら同じメロディをリフレインする構成といい、
これほどエロくてカッコいい曲を見たことがないです…
ベースも太くてサスティーンの長い音でゆったり弾いているのがまた良いです。
サビでのRonald Isley(Vo)のファルセットや息遣いのエロティックさや透明感は
神業としか言いようがありません。R&B史に残されるべき珠玉のバラード。
#5Let's Make Love Tonightは前曲からの繋がりを思わせるキーボードにカッティング中心のギターと
良く動くベースラインが、バラードでありながらもその中にドロドロとしたファンクを感じます。
#6Ballad For The Fallen Soldierは、歌謡曲に近い大仰なメロディとディストーションの掛かったリフ、
語りから始まり、スリリングなキメが繰り返される本盤中でも一番ハードな一曲。
バリバリの速弾きとチョーキングしまくりなギターソロはやはりそこはかとないジミヘン臭が漂っています。
Ernie Isley(現在では音楽活動を続けながらバークレー音楽大学で教鞭を取っています)のギターは、
音作りも含めてブルースロック系のギタリストの中でも個人的にかなり好きです。
#7Slow Down Childrenは以前のアルバムに近いファンク色の強い楽曲でワウの掛かったベースと
低音弦を絡めたクラシックロックなカッティングフレーズ、複雑なコーラスワークで強烈なグルーブを放ちます。
#8Way Out Loveはリズム隊主導の打ち込みなバッキングがひたすら繰り返される中で、
シンプルな歌詞で遊んでいくコーラスワークが鮮やかです。
#9Rock You Goodは、打ち込みのクラップ音にエフェクト処理したボーカル、
メロディックでキャッチ―なベースライン、
ギターがフラッシュバックするようにリフを鳴らすミニマルなグルーブを定位したモダンなインスト曲。
80年代Isleyの、ひいてはクワイエットストームの至高の名盤にして最高のバラード集。

【補足】
彼らの作品に触れてみるにも、おそらくレンタルではコンピレーションを手に入れるのが
限界ではないかと思います。その中でも、特に
Groovy Isleysと、Mellow Isleysの2枚は大きい店舗ならよく置いてありますので
是非お聴きになって下さい。
もしCDを購入されるのでしたら、ベスト盤のEssential Isley Brothersが圧倒的におすすめです。
こちらは2枚組で音質も非常に改善されていますので高い音圧と綺麗な解像度で名曲たちを堪能できます。
こんな宣伝文句を言うことは珍しいですが彼らの楽曲は本当に本当に大好きなので、
心よりお勧め申し上げます。

Choosey Lover

I Need Your Body

Between The Sheets

Ballad for the Fallen Soldier

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  1. 2013/11/10(日) 21:42:52|
  2. The Isley Brothers
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今日の一枚(215)

Album: 爆弾こわい
Artist: 在日ファンク
Genres: Funk

爆弾こわい


日本のインストバンドSAKEROCKのトロンボーン奏者である浜野謙太(Vo)を中心とするファンクバンド。
2007年結成。これまでに2枚のフルアルバムと1枚のミニアルバムを残しています。
浜野謙太自身が強く影響を受けたJames Brownのファンクのスタイルから完全に影響を受けた
肉体的なサウンドが特徴的で、バンド名は「日本に在りながらファンクを演奏する」
という意味で名付けられたようです。2011年作の2nd。
もともとライブバンドとして活動していたこともあり既にアンサンブルは非常に
無駄がなくちゃんとJBしていると思います。
「爆弾こわい」のPVでも見られるようなハマケンのコミカルなパフォーマンスも
見ていて思わず笑みがこぼれます。
音像自体は抜けの良くモダンな音で、かなり聴きやすいと思います。
音が良いお蔭でJBとはまた違った説得力があるようです。
全編を通じて流れるペーソスやコンプレックス、社会への疑問に右往左往し、
やり場のない憤りを抱いているかのような歌詞も、所々に言葉遊びがあって
パーカッシブな発音と組み合わさることで独特なグルーブ感を生み出しています。
#1イントロの才能は、1分程度の短い導入。ミドルテンポのバックビートに
メロウで都会的なメロディを奏でるホーンがグルーヴィーです。
#2こまくやぶれるは、鼓膜内側から吸ってよという謎の歌詞と共にひたすら
同じリフを刻む仰木亮彦(G)のカッティングでゴリゴリ進行しながら、
高音のコーラスとドラムスのタメのあるフィルが印象的な後半では、
激しくブロウする福島“ピート”幹夫のサックスが荒ぶっていて素晴らしい。
シャウトは本家に比べるとだいぶパワーが落ちますが独特の鋭さがあってこれはこれで良いです。
表題曲の#3爆弾こわいは、頭から単音カッティングを絡めたスピード感のあるリズムギター
(これはタイム感の練習になりそう!)とシンプルなファンクベースですが
太くブリブリした音が気持ち良い村上啓太(B)のベースソロが聴き所。
歌詞にならないスキャットがよくJBを研究されており
(むしろ本家よりだいぶ干渉しまくっているのが堪らん)クールです。
#4マルマルファンクは、完全なる下ネタな歌詞に(野暮なのであえて説明はしません)対して
意外にもジャジーなトロンボーンが面白いです。日本語での語りと掛け合いはもしJBが日本語で歌っていたら
こう聞こえるのかと思うとなんとも不思議な気持ちになります。
エロい歌=黒人音楽ってのは典型的な日本人の勘違いでまた面白い。
#5城は、これまでの雰囲気からは一転してきちんと展開のあるポップスになっています。
楽しげなベースラインとかすかにエスニックな香りがするバッキングのホーンが爽やかで異色。
#8はやりやまいは、粒の細かいカッティングと字余り気味(?)にヤバいヤバい言いまくりなボーカルと
間の抜けたようなトロンボーンソロやタイトなスネア連打の絡んだフィルが引き締まったグルーブを作っています。
#9毛モーショナルは、ローファイな音色のドラミングと、如何にもジミヘン臭い左右に音を振って歪ませた
ギターでサイケデリックにするという懐かしい方法が用いられています。
ワウのかけ方なんかは完全に彼のそれです。
歌に合いの手を入れるようにテーマを鳴らすホーンが楽曲に統一感を与えます。
#10むくみは、前作の「きず」に続き今度はむくみが止まらない人の歌です。
インスト部分のラウドなアンサンブルから一気にブレイクしてテレキャスの
硬い単音カッティングが鳴る王道な展開です。
後半部の進行は結構凝っていて楽しいのですが歌詞が気になって曲に集中できない(笑)
#11ピラミッドは、片言のようにピラミッドと気怠く歌うハマケンとサックスのロングソロが洒脱です。
シャウトも曲調に合ってどこかもの悲しい空気を纏っています。
#12才能あるよは、本作の中でも歌詞が意味深で一番のお気に入りです。特に冒頭の部分のようなことは
誰でも一度は感じたことがあるのではないでしょうか。テレビに出たいとは思いませんけど。
強烈なバックビートとメロディックなベースラインがモータウンっぽくて好きです。
最後の長々した会話(?)はかなり面白いです。あんなこと言って笑ってますが勿論皆さん才能あると思います。
個性が強烈すぎるゆえになかなか純粋なフォロワーが現れないJames Brownですが、
日本語でこれをやるバンドが誕生してくれたことを単純に嬉しく思っています。

こまくやぶれる (Live)

爆弾こわい

むくみ

才能あるよ

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  1. 2013/11/06(水) 15:11:14|
  2. 在日ファンク
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今日の一枚(214)

Album: The Perfect Element, Part 1
Artist: Pain of Salvation
Genres: Progressive Metal, Progressive Rock

The Perfect Elements


スウェーデン、セーデルマンランド県エスキルストゥーナ出身のプログレッシブ・メタル/ロックバンド。
1991年結成。緻密に構成された物語性を持つアルバムコンセプトと、時に攻撃的で
時に幻想的な、メタルのみに捕らわれない多彩な音楽性で数多くのフォロワーを生み出した、
北欧プログレメタルを代表するバンドの一つ。出世作となった2000年作の3rd。
複雑怪奇なリズムアプローチの中にも各楽曲にキャッチ―さを兼ね備えており、
この手の音楽の中ではかなり聴きやすい部類に入ると思います。
音作りもパートごとにへヴィ―になり過ぎず、ストリングスやオペラティックなコーラスを配置したりと
飽きさせません。Johan Langell(Dr)の正確無比で端正なドラミングによるリズムワークや、
(変拍子は案外少なめです)インスト部分でのJohan Hallgrenのギターソロが目立つバンドではありますが、
Daniel Gildenlöw(Vo, G)の突き抜けるような透明感のあるハイトーンや、
声を枯らすようにしてトーンコントロールするエモーショナルなボーカリゼーション、
静的なパートでのFredrik Hermansson(Key)のクラシカルなフィーリングのあるキーボードも
聴き所で、本作はどちらかというと古典的なプログレッシブ・ロックの影響下にある作品と捉えられる
楽曲が多いように感じました。(前2作品はDream Theaterの影響が強くメタル色が濃い印象があります)
とにかくどの楽曲もメロディが非常に美しいです。
そして13年前のCDとしては音質もクリアで、録音状態の良さも特筆すべきものがあると思います。
重厚なパートでのリフワークやギターの音作りのハイファイさ、クリアさ、ボーカルの音処理、
鮮やかでスリリングなリズムチェンジや複雑なコード進行と、どの点をとっても死角のなく
かなり高いレベルでそれらが同居しています。
個人的にはリーダーのDanielのボーカリゼーションが素晴らしすぎて声も出ません。
このころから既に、James LaBrieと共に本当にメタルボーカルのお手本にしたいような
テクニックや正確さです。ただテクニックだけでなく表現力も十二分にある。素晴らしいシンガーだと思います。
本作のコンセプトとしては、3人の登場人物が登場しその人物達が幼少期における
発達課題や葛藤を描いていくという内容になっています。
このコンセプトの続編であるアルバムScarsick(2007)では、この登場人物のうちの"he"の
視点から物語が描かれています。
#1Usedはジャングルビートのイントロ部からドライブ感のあるドラミングで変拍子が脳を直接揺らしてきます。
ラップのように吐き捨てるようなボーカルが印象的なパートでは低音チューニングされた刻みが疾走感を
生み出し、キーボードがクラシカルに鳴る中でのギターソロは線の細く若干のフュージョンっぽさのある
音使いです。メロディックに歌うボーカルはもはやメロウで朗々としています。この対比が最高に素晴らしい。
#2In The Fleshは、クリーンでリバーブの効いたバッキングが空々しく鳴る中で
ハイハットで遊ぶドラムスと共に囁くように優しく歌う前半部(めっちゃポップです!)から、
徐々にへヴィ―になって行きます。中間部でのソウルシンガーのファルセットのような鋭いシャウトは圧巻。
大名曲。ピアノ弾き語りから、キラキラとしたアコギのリードが鳴り終わっていく
アウトロは往年のプログレのようです。
#3Ashes(登場人物のhe, she以外の人物の名前)は、#2から続く、もの悲しげなアルペジオを中心として
暗いメロディに対してキーボードがセンセーショナルに鳴って、激しいシャウトを導いていきます。
#4Morning Earthは、ブルージーなギターリフと静かな中に独特のタメや起伏があるボーカルと
透き通った音色のキーボードのリフが耳に残ります。
#5Idioglossiaは、難解な変拍子に軽々と乗っていく、タッピングの鮮やかなギターリフと、
機械的で直線的なグルーブを支えるベースラインに舌を巻きっぱなしの一曲。これもお気に入り。
ソロでのハーモニクスの透き通った綺麗さやチョーキングの音の安定感、
メカニカルな速弾きでも削ぎ落とされていて無駄な音のないフレージングに感服します。
ハイトーンの美しさは言わずもがな素晴らしい。
#6Her Voicesはミドルテンポのバラードで、声を絞り出すような歌唱と分厚いコーラスが織りなす
前半部から、変態的なタム回しを起点にして5拍子のリフを様々にアレンジしながらメカニカルに弾いていく
緊張感の張りつめた後半部、その緊張感を保ったままオペラティックなコーラスが入ってくるアウトロと
ドラマティックに展開していきます。
#8King Of Lossは、太いべースラインと歯切れの良いボーカルがリズムを切りながらピアノが徐々に
激しいフレーズを弾いていき、強く歪んだギターが轟音を鳴らし若干グロウル気味のシャウトが飛び出したかと
思えばまた淡々とした陰鬱なバッキングに戻り展開していきます。慟哭のようなシャウトは夢に出そう…
#9Reconciliationは#4で登場した印象的なリフを中心として北欧バンドらしい煌めくようなシンセが
ありながらも、へヴィ―なリズム隊はきっちり変拍子で捻くれているので、この構成は彼らならではだと思います。
最後のハイトーンのシャウトは非の打ちどころのないスーパーヘッドヴォイスです。
アルバムの最後を飾る大作の表題曲#12The Perfect Elementは、
SEやウィスパーヴォイスが入り、左チャンネルをギターが目前を通り過ぎるように流れる冒頭、
焦燥感を煽りつつ神秘的なコーラスが中心に定位されるパートを経て、
7拍子のリフに絡めて緊張したアンサンブルが楽しめる中間部、
アルペジオがあり、次第にソウルフルになって行くチェストの響きで聴かせるパートと目まぐるしく展開します。
単純なテクニックという点でも全員が非常にレベルの高い位置にいるバンドと思いますが、
整ったメロディセンスやボーカリストの表現力を生かした曲構成、
インストパートでの激しい掛け合いによるカタルシスと、
一枚のアルバムの中にこれほど緻密な配慮がなされたプログレメタルの作品は、そう多くないと思います。
プログレメタル史に遺されるべき永遠のマスターピースの一つ。

Used

In The Flesh-Ashes

Idioglossia

Reconciliation

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  1. 2013/11/06(水) 01:27:58|
  2. Pain Of Salvation
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今日の一枚(213)

Album: Psychedelic Shack
Artist: The Temptations
Genres: Soul, Funk, R&B

Psychedelic Shack


アメリカ、ミシガン州デトロイト出身のソウル/ボーカルインストゥルメンタル・グループ。
1961年のデビュー以来、モータウンを代表するソウルグループの一つとして、
極めて優れたコーラスワークを駆使した数々のヒット曲を生み出し、幾度ものメンバーチェンジを
乗り越え、現在でも活動を続けています。
デビュー後しばらくはヒットに恵まれなかった彼らですが、64年にSmokey Robinson
(the Four TopsやMarvin Gayeなど数多くのアーティストに楽曲提供してきたモータウン生みの親の一人)の
プロデュースによるシングルMy Girl('65)が全米1位を獲得するに至り、スターダムを駆け上がっていきます。
デビュー当初から60年代末までの、ソウルの中にブルースっぽいフィーリングと泥臭さのないポップネスを秘めた
典型的なモータウン・サウンドが特徴的だった初期のサウンドがよく知られているかと思います。
70年代前半においては、本作(1970年作の12th, US/R&B#1)に代表されるような
サイケデリック・ロックの影響を同時代的に強く受けたものが多く見受けられます。
これはSly & The Family Stoneからの影響が如実に表れていると考えて問題なさそうです。
70年代後半以降はディスコ・ミュージックやブラック・コンテンポラリーへと接近していきます。
その時代の先端にあるブラック・ミュージックの空気を貪欲に取り込み、
優れた演奏能力とボーカリゼーションで常にUp-To-Dateされた楽曲を作り出す、
正にブラック・ミュージックのお手本のようなグループだと思います。
中期に当たる本作ではモータウンの楽曲らしい3~4分で、簡潔でポップな曲もありますが、
アルバムのキーとなる曲はかなり長めに尺が取ってあり、
粘り気のあるリズムセクションとファズの効いた歪みのリードギターが絡みつくような
濃厚なグルーブが堪能できます。一曲一曲も他の作品に比べて長いです。
当時時代の最先端の技術であったシンセサイザーを用いたサンプリングやステレオ録音による音源定位を
活用した空間的な音像は、今聴いても古さを感じないアレンジです。
ドアをノックするSEから始まる表題曲の#1Psychedelic Shackは、
クリーントーンのカッティングとシャウト気味にテーマを歌う歯切れのいいボーカリゼーション、
特にEddie Kendricksのファルセットが素晴らしい。のっけから最高の一曲です。
#2You Make Your Own Heaven and Hell Right Here on Earthは、
舌を噛みそうになりますが、Funk Brothersのメンバーたちによるタイトなリズムワーク
(特にドラムスのフィルは鳥肌もの)が聴き所の短い作品。
#3Hum Along and Danceは、Eddieのファルセットによるスキャットが炸裂する前半部と、
Melvin Franklinの語りと口ベースがドゥーワップっぽい空気感を残していてクールです。
ベースラインも動きが多くてメロディとのユニゾンが面白いです。最後のtwangな音のギターソロも良い。
#4Take a Stroll Thru Your Mindでは、不気味なウォーキングベースとEddieの線の細い
ウィスパーボイスから入って徐々にパーカッションが入り、
パーカッシブにコードを鳴らすコーラスワークは名人芸。
突然歪んだリードギターが鳴りエモーショナルなソロを聴かせます。
最近のロックではこういうクラシックな歪みの音をあまり聴かないなとふと思いました。
最後にまた静的なパートに移っていくのがまたカッコいい…
#5It's Summerは、右チャネルを流れる牧歌的なストリングスと語りから始まり、
透き通ったコーラスワークが楽しめるメロウな一曲。素晴らしく心地よい箸休め。
#6Warは、強烈なグルーブを叩き出すドラムスと荒くカッティングするリズムギターが
作るリフ、淡々とカウントするバスヴォイスに思わず笑みが零れる飛びきりファンキーな曲です。
#7You Need Love Like I Do (Don't You)は冒頭のキャッチ―なリフから始まり、
いかにもアナログレコード的な、音の塊が迫ってくるようなアレンジが見事です。
#8Friendship Trainは、疾走感を煽るパーカッションにホーンセクションと、
クリーントーンのギターのストロークが中心になって目まぐるしく変化していきます。
Dennis Edwardsの圧倒的なロングトーンからSEが入り展開していく後半部は至高。
コーラスを奏でる右チャンネルをよそに鳴り続けるアウトロのギターリフが最後まで攻撃の手を緩めません。
Slyも勿論素晴らしいのですが、彼らの作品はThe Funk Brothersという非常に優れた
スタジオ・ミュージシャン集団をバックに付けているため、
ひたすらにタイトで構築されつくしたアンサンブルで
サイケデリック・ファンクを聴くことができるので、彼らの作品の中でもかなり重要な位置を占める
作品であるに違いないと、私は思っています。

Psychedelic Shack

Hum Along & Dance

Take a Stroll Thru Your Mind

Friendship Train

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  1. 2013/11/05(火) 00:01:56|
  2. The Temptations
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今日の一枚(212)

Album: Sleep
Artist: Last Step
Genres: Breakbeats, Noise, Breakcore

Sleep.jpg


カナダ、マニトバ州ウィニペグ出身のミュージシャン、音楽プロデューサー。1975年生まれ。
普段はVenetian Snares(本名Aaron Funk)名義で活動していますが、
本作はLast Stepという別名義で発表された2012年作。
ブレイクビーツ(ドラムのリズムパターを分解し、シーケンサーを用いて任意の拍数で
単音やフレーズを並び替えて再配置することにより作られるもの)の発展形といわれる
ブレイクコアといったスタイルで楽曲制作をしている彼ですが、
その界隈では最も名の通ったミュージシャンということで、友人から薦められ昨年アルバムを手に入れました。
ドラムンベースにもハウスにもブレイクビーツにも疎い私ですが、
最近になってようやく一周聴いてみて率直に素晴らしい作品と思いましたので記事をお書きしたいと思います。
まずブレイクビーツのリズム構成の背景には、サンプリングのもとの素材となるドラム音源が
必要となりますが、最も引用されているのがJames BrownやSly & The Family Stoneといった
ファンクをやっている人たちのドラムの音であるようです。
Venetian Snaresの場合はサンプルを自分自身で用意する(彼はマルチ・プレーヤーでもある)ため、
例外的ではありますが、それを知って好きになるのは当然と、少し納得した思いです。
ブレイク・コアの場合には、通常のブレイクビーツに対して、ディストーションを掛けることに
よって生じる歪んだスネア音を多用する傾向にあり、彼の場合はノイズ・ミュージック的な
サンプリングの発想が作品の随所に見られます。
ジャケットの写真通り、本盤は睡眠におけるレム睡眠とノンレム睡眠、覚醒状態における
人間の感覚や心象世界の移り変わりを表現したような、サイケデリックな音色で、
催眠術をかけられたかのような特徴的な音像を呈しています。
#1XyremはSodium oxybateという薬剤の別名で、ナルコレプシー
(覚醒時に場所や状況を選ばず起きる強い眠気の発作を指す)
の治療について使用されるものですが、ループされるローファイなシンセベースと、
安っぽいリズムボックス、スペイシーなシンセの音色がアナログ感溢れる音色で、
70sのテクノを思わせるような趣を感じます。
#2Somnoは、前半部のワウのかかったような電子音によるテーマの部分と、
後半部の重厚感のあるスネア音が全体を支配する後半部の対比が鮮やかな一曲。
ハイハットの音色もキラキラしていて聴きやすいです。
#3Microsleepsは、文字通りいわゆる「うとうと」状態のごく短い睡眠状態を
指しますが、オルガンのような音の電子音の波が左チャンネルから聴こえて非現実な浮遊感を与え、
それに対してくぐもった音でリフを鳴らすシンセの音は生々しい音色です。
#4My Off Daysは、スローテンポでノイジーなバッキングが淡々と鳴り響くパートから、
心臓の鼓動のようなバスドラムとハット、冷徹にメロディを奏でるシンセで
盛り上がっていく展開が面白い。トラックの最後の音が不気味過ぎて鳥肌もの。
#5Obispoはアメリカカリフォルニア州の同名の場所にあるSleep Centerのことを
指しているのか、紙おむつのことを指しているのかは解りませんが短い小品です。
#6Lazy Acid 3は、淡々と鳴るバスドラムがファンキーさを湛えているリズムに、
金属をこすり合わせたようなトレブリーでノイジーな電子音が
フリーにメロディを奏でていきます。この曲もスネア音のドライブ感や、
飛び回るような電子音の配置が気持ち良い。お気に入り。
ストリングスが不気味な雰囲気を増強しています。
#7Avocadoは、文字通り野菜(?)のアボカドのことを指しているのでしょうが、
ねっとりとした電子音とエッジのたったシンセベースの組み合わせが絶妙な食感を生み出します…
#8Cimicdaeは、トコシラミのことを指しているのでしょうか。(微妙にスペルが違いますが)
いずれにせよこれもノイジーなベースラインとうねうねとしたメロディ、
強烈な音圧でぼすっとした重いスネアが作るグルーブが、徐々に音量を上げて迫ってきます。
#9Rohypnoは睡眠薬のロヒプノールのことを言っているのでしょうが、
水飛沫の飛び散るような音色の電子音が幾重にも重なったものをバックにして、
切れ味の鋭いキックやスネアが入っていきます。
全体として乱暴なアジテーションを感じるものではなく、
非常に静的な部分が強く冷徹な音像であるという印象を受けますが、
どの楽曲も強いビートとそれによるファンキーなグルーブがあって強烈な没入感を得ることができました。
聴くほどに不思議な作品です。

Xyrem

My Off Days

Lazy Acid 3

Cimicdae

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  1. 2013/11/04(月) 21:15:59|
  2. Last Step(Venetian Snares)
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今日の一枚(211)

Album: Computer World
Artist: Kraftwerk
Genres: Techno, Progressive Rock

Computer World


1970年に西ドイツ、デュッセルドルフで結成された電子音楽/テクノ/プログレッシブ・ロック音楽グループ。
デュッセンドルフ音楽院にて即興音楽を学んでいたRalf HütterとFlorian Schneiderを中心として
結成されたKraftwerkは、シンセサイザーを用いた観念的で抽象的で実験的な音楽性を持つグループとして
現在でも圧倒的な知名度を誇っていますが、彼らの音楽の根底には、黒人音楽やプログレッシブ・ロックからの
影響を同時代的に受けたクラウト・ロック(ジャーマン・ロック)への意識が常にありました。
そういった意味で、機械的な、実験的な手段を用いて制作された無機質で、冷ややかな虚脱感のある
彼らの楽曲の中には、どこか人間らしいグルーブの感覚や奇妙なポップネスが存在しています。
74年に4thのAutobahnが大ヒットを記録してから、Trans-Europe ExpressやThe Man Machineといった
彼らの代表作と呼ばれるアルバムでは、社会的なメッセージや皮肉を強く込めたジャケットイメージや、
巨大なアナログ・シンセサイザーを会場中に並べて行われたライブパフォーマンスなども相まって、
アート・ロックや前衛音楽としてのイメージが強く、
ダンス/クラブ・ミュージック色の濃い本作(81年作の9th)は、発売当初厳しい目で評価される
ことが多かったようです。
勿論上記の作品群も本作も、現代のポピュラー音楽の観点から見て、十二分に評価されるべき作品だと思います。
AutobahnやThe Man Machineが、プログレッシブ・ロックを電子音楽の立場から再構築するという
複雑で暗澹とした空気を湛えた側面が強いのに対して、本作では特にリズム面での
(厳密にはハウス・ミュージック的であるというべきか)ファンキーなアレンジや
リフレインの多用というような、現代的なテクノ・ミュージックやクラブ・ミュージック、
或いはヒップ・ホップのエッセンスにもなり得るようなグルーブが作品全体に満ち溢れています。
メロディも非常にポップになり、機材の進歩のおかげかリマスターのおかげか、
より抜けの良く立体感のある音で楽しむことができます。
81年というと、日本ではYellow Magic OrchestraがTechnodelicを発売した年でもありますが、
こちらがいわゆる音響系ポスト・ロックやニューウェーブといった(これはB-2 Unit/坂本龍一でさらに
ポスト・パンク寄りのアプローチとして実現しています)方向へのサウンドでありました。
いずれにせよ共通しているのは、「非人間的なビートによる非人間的なグルーブの構築」という
発想ではないかと私個人は感じています。
#1Computer Worldは、シーケンサーによる画一なビート、メロディをなぞるように繰り返される
ベースラインと、殆ど無意味な単語の羅列のよう(に聞こえるがよく考えると現代に対する警鐘に
聞こえなくもない)、エフェクト処理された声が不気味なグルーブを作ります。
Buisiness, Numbersのところのエフェクトが凄く気になる…
#2Pocket Calculatorは、ファミコンみたいな音が鳴る右チャンネルと、延々と同じメロディを
鳴らすサスティーンの短いピコピコシンセが気持ち良いです。
発売された国の言語で本曲がボーナス・トラックで収録されているのがまたなんとも面白い。
ダンサブルでクールです。
#3Numbersは、ファンクっぽいハネ気味のビートと耳を交互に撫でるキュッキュッとした音で
耳がくすぐったい一曲。色々な言語で数字を数えるだけというまたなんとも意味不明な歌詞。
イチッニッサンシュィと言われてしまうと日本語ではないように聴こえます。
#5Computer Loveは、当時シンセサイザーにVelocityの機能が搭載されたこともあって、
低音部のボリューム奏法のような音量変化や、淋しげなメロディのリフレイン、
そして意外にも手数の多いリズムトラックが不思議な焦燥感を与えます。
#6Home Computerはベースラインのリフが最高にカッコいいです。
展開も多くメロディにエスニックさを感じるのもお気に入りです。後半のインスト部分は彼ららしい
暗さや漠然とした不安感を湛えた音になっています。
#7It's More Fun To Computeは冒頭部に曲名を繰り返した後はひたすらインスト。
やはりどこか不気味な空気を纏っています。何とも言葉にしづらい…
私自身電子音楽は殆ど素人で詳しくないですが、間違いなく本盤には飽きのこないグルーブがありますし、
それを人間の演奏によらずに生み出そうとするには、とてつもない時間を注ぎ込んで
一音一音、各フレーズを配置していくかということを考えねばならないのだと思います。
"Communication"というフレーズが頭の中をループしています。
もう一度、聴いてみて、歌詞をきちんと解釈してみようと思います。

Computer World

Pocket Calculator

Numbers

Computer Love

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  1. 2013/11/04(月) 01:47:52|
  2. Kraftwerk
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
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