私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(263)

Album: Love & Groove Delivery vol.2
Artist: UNCHAIN
Genres: Pops, Sot Rock, AOR, Acid Jazz, Soul

Love Groove Delivery


このサイトでも過去に何度か取り上げている京都の4ピースロックバンド、UNCHAINが
リリースしたばかりのカヴァーアルバム第二弾です。(バンドの紹介は以前の記事を参照して下さい)
前回のカヴァープロジェクトで録音された、椎名林檎の初期の名曲である「丸の内サディスティック」
(無罪モラトリアムのレビューは椎名林檎の項を参照)の
カヴァーがYoutubeで65万回再生(2014年2月現在)されて大ヒットとなり、
すっかりライブでも定番となった彼らですが、今回新たに発表された本作では、
(洋楽ではDoobieにEmotionsにStevie WonderにDonny Hathaway、邦楽ではキリンジに岡村靖幸に宇多田ヒカル
などなど、筆者の大好きなアーティストだらけの)洋楽のカヴァーが多かった前作よりも、
邦楽の、しかも有名作品のカヴァーが多くを占めていて、少し毛色の異なるものに仕上がっています。
個人的にはファンである山下達郎や久保田利伸の大ヒット曲が収録されているのには
思わずテンションが上がりました。正直申し上げて本当に「トコトン俺得なバンド」というか
自分の趣味と丸被りしまくっていて少し怖いぐらいのバンドです。
内容としては、どの楽曲も見事に彼らのスタイルでリアレンジされていて、
スリリングなキメもあり、リズムギターが心地良いグル―ヴィーな仕上がりになっています。
東京事変のカヴァー、#1能動的三分間(2010)(収録アルバム「スポーツ」については東京事変の項を参照)
は、吉田昇吾(Dr)のボスっとしたドラムスで、原曲のファンクと言うよりは、
より疾走感のあり、ロックフィーリングがあるグルーブを作っており、
左チャンネルのトレブリーなカッティングも、ジャリ付いた音ではなくスムースです。
ベースラインは原曲に割と忠実です。相変わらずコーラスワークの美しさはロックバンドの域を超えた
透明感で素晴らしいです。
久保田利伸のヒット曲#2LA・LA・LA LOVE SONG(1996)(収録アルバム"La La La Love Thang"は
久保田利伸の項を参照)は、ナオミのパートをファルセットのコーラスで補っていて、
これがまた溜息が出るほど上手いです。生演奏ならではの揺れのあり、裏拍の強調された
グルーブが付加されていて、ベースラインの歌いっぷりが際立ちます。
スピッツの大ヒットシングル#3ロビンソン(1995)は、原曲から大胆にアレンジした緊張感のある
リズムワークと、派手にワウの掛かったカッティングでファンキーに仕上げています。
谷川正憲(Vo)も、これほど高い音域でも楽々と(オリジナル曲のキーを考えれば当たり前か…)歌っています。
米米Clubの#4SHAKE HIP!(1986)はゲストとしてお笑い芸人コンビであるダイノジが参加しています。
クレジットにエアギターと書いてありますが音を聴いても勿論分かりません…しかしエロいボーカルです。
Jamiroquai全盛期の代表曲である#5Virtual Insanity(1996)(収録アルバム"Travelling Without Moving"に
ついてはJamiroquaiの項を参照)は、如何にも彼らがカヴァーしそうな曲だと前から思っていましたが、
やはりやってくれました。最近オリジナル曲では英語詞の曲を書いていないので、
久しぶりにお洒落ロックバンドな彼らの演奏を楽しめます。
コーラス部分でのフュージョンっぽい疾走感やベースのフレージングは、ピアノとストリングスが目立つ
原曲のソウルっぽく落ち着いたアレンジとはまた異なる魅力を放っています。
ギターソロも弾き過ぎずジャジーで最高。アウトロのファルセットとコーラスの絡みなんかはお家芸。
一刻も早くライブで大音量で聴きたいです。
自身の主演映画の主題歌となった山崎まさよしの#6One more time, One more chance(1997)は、
弾き語りの静謐で淋しげな原曲のアレンジを損なわず、ゆったりとしていながらエッジの立ったドラムスと
艶のある佐藤のボーカルが非常に印象的です。サビでのオブリガートは歌詞の中に出てくる
星の落ちそうな夜をイメージさせます。
山下達郎のRCA/AIR期を象徴するヒット曲#7RIDE ON TIME(1980)は、松木恒秀が弾きそうな短音カッティングの
フレーズが印象的なメロ部分のアレンジと、サビでの細く柔らかいコーラスワークの再現度に
ただただ驚かされます。サックスが居ないためスッキリとしたオケです。
ドラムスは青山純に比べると軽い音ですがハイハットの刻み方は極めて丁寧でこちらもクールです。
アルバムヴァージョンを元にして作っているため、アウトロはいつも達郎がライブでやっている感じに
近づいています。メロディのフェイクのさせ方や粘り気のある歌い回しはかなり本人を意識した作りに
なっていてニヤニヤしてしまいます。Love SpaceとかBomberのカヴァーも個人的には
聴いてみたくてしょうがないですねこれは… 堪りませんね、何度聴いてもオシャレな進行ですねこの曲。
80年代のアメリカ西海岸の産業ロックを代表するJourneyの#8Don't Stop Believin'(1981)は、
左右に振られたアコギのカッティングが強烈な疾走感をもたらすメロ部分と、
グル―ヴィーでポップな、弾けるようなサビの対比が心地良いソフトロックです。
TOTOのDavid PaichとDavid FosterがプロデュースしたCheryl Lynnの、
知る人ぞ知るディスコ・クラシックであるGot To Be Real(1978)を元ネタとして作られた、
Dreams Come Trueの初ミリオンセラーを記録したシングル#9決戦は金曜日(1992)
(因みにこれは、当時TOKYO FM系のラジオ番組のMCであった中村正人と佐藤竹善が、
Got to be realを元にして楽曲を作ろうという企画に基づいて作られたもので、
同時にSing Like Talkingの代表曲の一つRiseが作られています。)
は、原曲のディスコっぽさは薄くなり、よりジャジーなアレンジになっており、
タイトなリズム隊の演奏が手伝ってこれもロックに生まれ変わっています。
奥田民生を始めとして数多くのアーティストにカヴァーされた斉藤和義の#11歌うたいのバラッド(1997)は、
強めに歪みんだギターのバッキングと重さのあるドラムスでどっしりと展開するシンプルな
ロックバラードです。ギターソロは普段弾かなさそうなフレージングでまた違った側面が見られます。
MOON CHILDのヒット曲#12ESCAPE(1997)は、原曲から大胆にテンポダウンして、
メロウでソウルフルなバラードにアレンジされています。アコギの煌びやかなソロは最高です。
こうして見てみると、彼らの世代を考えるにリアルタイムで聴いて影響を受けた邦楽と
思われるような楽曲が至る所にあって、彼らのルーツの一端を垣間見ることができます。

Love & Groove Delivery Vol.2 unofficial trailer

公式サイトにて全曲試聴できます。

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  1. 2014/02/28(金) 01:38:57|
  2. UNCHAIN
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音楽理論を学ぶ上で役に立っているおすすめ書籍・HPなど

私的名盤紹介にお越しくださいました皆様、
Twitterにて交流して下さっている皆様、お世話になっております。
管理人のSystematic Chaosです。

訪問者数も9000を超え、いつもコメントして下さる方もいらっしゃって大変嬉しく思っております。
年が明けてからは少し更新速度が落ちておりましてすいません。
来月からはペースも回復できると思います。

これからもジャンルの壁を意識せずに様々な私的名盤をレビューして参ります。

と、いうわけで、今回の記事では「音楽理論を学ぶ上で役に立っている書籍・HPなど」と題しまして、
普段私が音楽理論の勉強をするのに使っているサイトや書籍(まだ読んでいる最中のものも多くありますが)を
簡単にではありますが紹介していこうと思い立って書いてみました。
もし興味がございましたらどうぞ。
                
ホームページ様

1. あいうえ音楽理論
音楽理論の基礎の基礎が非常に解りやすく、図がついて簡潔に記されています。
五線譜アレルギーのある方でもかなり取っ付きやすいレイアウトになっています。
特にモードとスケールの解説はとても分かりやすいです。必読。

2. 楽典.com
あいうえ音楽理論よりももう少し踏み込んで用語の解説が行われていて、
五線譜での説明が基本となっています。ある程度分かっている人が見ても復習になります。

3. Jazz Guitar Style Master
ギタリスト向けのページではありますが、ジャズスタンダード曲のコードアナライズや
スケールチェンジの方法など、より実践的な視点で書かれた解説が多く書かれていて、非常に解りやすいです。

4. 音楽理論のソニカ 
音楽理論の基礎知識からマクロ音楽理論、DAW(AudacityとLogic Pro X)の基礎的な使い方や
音楽理論にまつわるブログ記事(コード進行の傾向など)など、非常に情報量の多いサイトです。
既に基礎的な知識のある方には索引もありますし、調べ物をするにも最適なサイトだと思います。
解説は図と音源付きで分かりやすく、これの準備編かあいうえ音楽理論をまずは読むと良いでしょう。

5. れみぼいす
ボイストレーニングのサイトですが、歌唱の基礎を大まかに学ぶには役に立つサイトだと思います。
ボーカルテクニックの解説や用語の解説が充実しています。


Youtubeで見られる動画

6. 坂本龍一 スコラ~音楽の学校~シリーズ
用語解説や理論的な説明は少ないですが、バッハやジャズ、ブルースにロックと
ポピュラー音楽史を簡単に振り返りながら楽しくマクロ的な理論の理解ができると思います。
現在もNHK教育で放送されています。

7. 音楽の正体 シリーズ
フジテレビ系列で93年頃に深夜番組として放映されていた番組のようで、
とてもTV番組とは思えない深い部分まで解説しています。
映像が古く画質はイマイチですが取り扱っているテーマが非常に面白く、
また実際の楽曲を聴き、その楽譜を画面で同時に見ながら解説を聞ける、という貴重な番組です。
ナレーションの言い回しもオシャレでカッコいいです。
実際の番組用に録画されたバンド演奏を見ながら、サウンドのエッセンスの
有り無しによる変化を見ることもできる、という豪華な仕様になっています。

8. JPOPサウンドの核心部分が、実は1つのコード進行で出来ていた 
いわゆるJPOPの王道進行について、その進行を用いた楽曲を演奏しながら
解説しています。

9. 使える音楽理論  
3つ動画があり、モーダルインターチェンジに関するものと、
魔女の宅急便の「海の見える街」(久石譲)のコードアナライズを行ったものがあります。
ダイアトニックコードとドミナントモーション、チャーチモードといった
基礎を理解した状態で見ると、とても分かりやすく、復習もできます。素晴らしい動画です。
デモ音源を聴きながら、作曲の際のコードアレンジのエッセンスを勉強できます。

10.  プチ音楽理論講座  
afterbeat music schoolというギタースクール(他の楽器の指導もやられているようです)の
ギター教則動画の一環として音楽理論を解説した動画です。
もともとギターの教則も最高に解りやすく丁寧なので、当然理論の解説も平易な言葉で、
ゆっくりと解説しています。ギターを弾く方なら知っていることも多いかもしれませんが良い動画です。

11. Voice Training Channel シリーズ 
ボイストレーニングの教則チャンネルですが、動画の一部に
発声におけるフォルマントや喉の筋肉の協調運動に関する解剖生理学的な解説など、
興味深いものがあります。
発声における生理学に関しては私的名盤紹介でも、「発声に必要な筋肉と声区の捉え方」として
記事にまとめておりますので興味がありましたらどうぞ。

書籍

12. 最後まで読み通せる音楽理論の本/宮脇俊郎
初めて読んだ理論の本ですが、ギタリストにとってこれほど分かりやすい本は他にないと思います。
一冊で完結した内容になっていますし、講義形式になっていて小ネタを挟みながら解説しているので楽しいです。
CD付きで、デモ演奏を聴いて、演奏しながら音楽理論の基礎を習得できます。


ギター・マガジン 最後まで読み通せる音楽理論の本(CD付き) (Guitar Magazine)ギター・マガジン 最後まで読み通せる音楽理論の本(CD付き) (Guitar Magazine)
(2008/11/25)
宮脇 俊郎

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13. 最後まで読み通せるジャズ理論の本/宮脇俊郎
12.のシリーズ本ですが、ツーファイブワンのコード進行や部分転調、
モードによるソロやスケールチェンジなど、ジャズギターならずともアドリブをするのであれば知っておきたい
知識がしっかりと詰まっています。
12.を読んだ後に読んだ方が確実に理解できますが、こちら一冊だけでもある程度フォローはしてあるので理解は
可能です。

ギター・マガジン 最後まで読み通せるジャズ理論の本 (CD付き)ギター・マガジン 最後まで読み通せるジャズ理論の本 (CD付き)
(2010/06/25)
宮脇 俊郎

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14. コード作曲法"藤巻メソッド"/藤巻浩
3時間に及ぶオーディオレッスンやMIDI音源、PDFによる楽譜までついた作曲解説書ですが、
理論の基礎とリハーモナイズを学ぶ上では非常に中身が濃くて、説明も丁寧なのでお勧めです。
コード理論の基礎的なことは理解していないと、付いていくのは厳しいと思いますので、
まずは上記HPなどで基礎を学ぶことをお勧めします。
鍵盤が手元にあって弾ける人であれば、練習曲も充実していて大変便利な本です。あって損はありません。


コード作曲法 ~藤巻メソッド~コード作曲法 ~藤巻メソッド~
(2010/03/12)
藤巻 浩

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15. コード進行スタイルブック/成瀬正樹
循環コードや王道進行、ツーファイブといった基本的なコード進行と、それに代理コードを用いたパターンから、
裏コードや分数コード、テンションの使い方など実際の有名曲を例に挙げながら、
「使える」定番のコード進行が多数収録されています。
定番の進行が、実際にどの曲のどの部分で使われているか明確に理解できるので、
イメージが湧き易く作曲にも活用できる良書だと思います。


決定版 コード進行スタイル・ブック決定版 コード進行スタイル・ブック
(2011/12/22)
成瀬 正樹

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16. ギターコードまるわかりBOOK−フォームと進行の両面から迫る! CD付き!/渡辺具義
名前の通りギター用の教則本ですが、実際の曲の中で使えるコードワークが多数収録されていて、
さらに同じコードでもポジションごとに自分の弾きやすいフォームを覚えながら練習できるので、
理論と実践を一冊で勉強できる素晴らしい本です。


ギターコードまるわかりBOOK−フォームと進行の両面から迫る! CD付き!ギターコードまるわかりBOOK−フォームと進行の両面から迫る! CD付き!
(2006/02/23)
渡辺 具義

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普段大して練習もせず、ロクに弾けもしないのに本ばかり読んでいる怠惰な私ですが、
それだからこそ「頭で」理解できる理論を先に固めてしまう、というのも一つの手ではないかと
思ったり思わなかったりします。
因みに今気になっているのは藤巻メソッドシリーズの編曲編です。
コード作曲法を読破して理解したら読んでみたいと思っています。

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  1. 2014/02/26(水) 02:29:14|
  2. 雑記(音楽関連)
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今日の一枚(262)

Album: 音楽図鑑
Artist: 坂本龍一 
Genres: Experimental, Electronica, Techno

音楽図鑑


東京都中野区出身の音楽プロデューサー、作編曲家、キーボーディスト、ピアニスト。
1952年生まれ。東京芸術大学大学院修士課程修了。
YMOでの活動だけでなく、結成以前のスタジオミュージシャン
(大瀧詠一、山下達郎、大貫妙子、細野晴臣らの作品に参加)としての活動、
ソロ活動、映画音楽での楽曲提供など、ここで語り尽くすことは不可能に近いほど
幅広い活動をしており、政治思想的な活動も多い彼ですが、以前(といってもかなり前です)
彼のソロ2ndであるB-2 Unitのレビューを書いてから、
他にも80年代のソロ作品を何かしら書きたいと考えておりました。
1983年にYMOを解散(散開)した翌年、1984年作のソロ5th。
テクノやテクノ・ポップ、ニューウェーブ界隈での活躍が知られ、
クラシックを自身のルーツとする彼ですが、
演奏者としてはR&Bやファンクのような黒人音楽的なプレイから
7thの未来派野郎(1986)で見られるようなフュージョンっぽいプレイをしていた時期もあり、
楽曲によっては、沖縄音楽的(YMOの作品にも時折見られますが)であったり
ボサノヴァ的であったり、或いはパンク・ロック的であったりするようなこともあるなど、
作品ごとに非常に振れ幅が大きく、前衛的な、実験的な音楽への取り組み方と考えるよりは、
関心の赴くままに、既存の音楽のスタイルの探究と、作品の中でのその音楽性の統合を
自身の目標として、音楽活動を行っていたように感じます。
本盤を選んだのは、当時坂本がレコーディングを行っていた隣のスタジオで
山下達郎が妻である竹内まりやのソロ作Varietyのレコーディングを行っており、
そのことがきっかけで数曲に達郎がギターを弾いているから、というのもあります。
他にもYMOの高橋幸宏、細野晴臣に、大村憲司、近藤等則、清水靖晃、
ムーンライダーズの白井良明と武川雅寛など多彩なスタジオミュージシャンが参加しています。
立花ハジメがデザインした、ピアノを弾く坂本の影が蟻の形をしているジャケットは、
自分をハタラキアリに喩えて表現したものということです。
タイトル通りチベットの少女のダンスをイメージしたという#1TIBETAN DANCEは、
ハンドクラップとタンバリンの入った複雑なイントロから、
正確無比で抜けの良い高橋幸宏(Dr)のドラムスと、スラップを絡めた歌う細野晴臣(B)ベースという
リズム隊の作るゆったりとしたリズムに、大村憲司(G)のカッティングが随所に絡みます。
メロディ自体は極めてシンプルですっきりとした音です。
至る所にテープの逆回しによるフレーズの構築が見られるのも興味深い所です。
#2ETUDEは、淡々と刻まれるビートに、ジャズというよりはフュージョンっぽい軽快さのある
サックスがメロディを吹いています。キラキラとしたキーボードのリフが前に出てきて
スラップベースでファンキーになったかと思うと、
一気に山木秀夫の叩く4ビートへとリズムチェンジし、また元に戻っていきます。
#3PARADISE LOSTは、John Miltonの同名叙事詩から取った一曲で、
ヤン富田の叩くスティールドラムの堅く弾けるようなレゲエのリズムに、
裏拍でカッティングするギターは山下達郎が弾いています。
ブロウが特徴的なトランペットは、フリージャズ界隈で活躍する近藤等則が吹いています。
ノイズの入ったフリーキーで妖しい魅力を放っています。
#4Self Portraitは、高橋幸宏のストレートな8ビートにピコピコしたシンセのリフと、
達郎の声をサンプリングしたというシンセがメロディを奏でています。
他の曲と比べて非常にはっきりとした進行ですが、音像には浮遊感があります。
#6M.A.Y. IN THE BACKYARDは、手数の多いマリンバの奏でる、丸みのあって生々しい
メロディが左右に振られて広い空間を感じさせるのに対して、
強くリヴァーヴの掛かったシンセと細切れに入ってくるSEが強烈な存在感を
放っています。4分が過ぎたあたりで機械音のようなノイズが入ったりと不安を掻き立てる
ピアノのフレージングも相まって得も言われぬ不気味さがあります。お気に入り。
#7羽の林では、山下達郎のコードカッティングと、古典的なミニマルっぽく配置された
パーカッションが、ドラムスの作るシンプルなリズムパターンと絡みついていて、
リズムに独特な奥行きが出現しています。ポエトリーリーディングに使われている詩は
Peter Barakanが翻訳しているようで、当初から交流があったとは知りませんでした。名曲。
#9A TRIBUTE TO N.J.P.は、ジャズっぽいメロディをサックスとピアノで奏でていく無調の曲で、
N.J.P.は韓国系アメリカ人の現代芸術家であるNam June Paik(1932-2006)を指しているようです。
一部彼自身の声がサンプリングされています。
ミニマルアンビエントの#10REPLICAは、タイプライターの音をサンプリングして作られた
リズムに、種々の管楽器(ホルンでしょうか…)の作るクロマチックなベースライン淡々と
ウォーキングしています。
#11マ・メール・ロワは、子供達の合唱によって流れる主旋律に、コラージュされるようにして
入る近藤等則のサックスとシャッターが閉まる音を高くしたようなSEが時折入ってきます。
筆者には幽玄さのある東洋的なメロディに聴こえます。
#12きみについては、1分30秒近くから自身のボーカルが入り糸井重里の歌詞を歌っています。
フルートの繊細なリフと疾走感のあるベースライン(坂本自身が弾いています)が印象的です。
#13TIBETAN DANCE (VERSION)は、#1のリミックスですが、中間部では山下達郎のあの
テレキャスのジャキジャキしたカッティングが配されていて、耳が気持ちいいです。
以前書いたB-2 Unitや1stの千のナイフのような刺々しい前衛性は若干削がれている感はありますが、
それでも、各楽曲ごとに様々な国、民族の音楽をミクスチャーにしながら、
当時最新鋭のサンプラーをフルに活用された音作りがなされていて、
初めて聴くにも最適なポップさを兼ね備えた大傑作だと思います。
坂本の80年代の各ソロ作品は、毎回音楽的なコンセプト、やりたい音楽の像が
明瞭に現れていて、それを実現するだけの機材とミュージシャンが揃っていた
奇跡の連続であったと考えて、間違いないと思います。

TIBETAN DANCE

ETUDE

Paradise Lost

Self Portrait

M.A.Y In The Backyard

羽の林で 

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関連記事
  1. 2014/02/26(水) 00:42:16|
  2. 坂本龍一
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今日の一枚(261)

Album: 革命的ブロードウェイ主義者同盟
Artist: 上坂すみれ
Genres: Pops, Techno Pop, Heavy Metal, 歌謡

革命的ブロードウェイ主義者同盟


神奈川県鎌倉市出身の声優、歌手。1991年生まれ。 スペースクラフト・エンタテインメント所属。
上智大学外国語学部ロシア語学科在籍中。
元々、筆者が水樹奈々さんを始めとする声優のソロ・アルバムを聴くきっかけになったのは、
高校1年の在学中に深夜ラジオ「水樹奈々のスマイルギャング」を偶然聞いたことでした。
それ以来、アニメ作品を徐々にではありますが継続的に見るようになり、
ここ数年間は意識的にソロ・アルバムを友人に借りるなり購入するなりして聴いております。
自分も20歳を過ぎて、自身と世代の近い声優が次々と有名になっていくのを見て、
同世代でありかつ、ミュージシャンとしてのキャリアを見守っていきたい、
と思えるような声優を見つけよう、と最近になってソロ作品を出し、
音楽活動を大々的にしている方のラジオを意識的に聞くようにしていました。
彼女の存在は代表作となった「中二病でも恋がしたい!」の凸守早苗(でこもり さなえ)役で
知ることとなり、雑誌等でその強烈な個性と音楽的素養に衝撃を受けたため、
東海ラジオ他で放送されている「上坂すみれの乙女ムジカ」という番組を聞くことにしました。
そこでは、70年代末のノイズ・ミュージック黎明期からパイオニアとして活躍を続ける
非常階段のJOJO広重や、80年代後半から、ニューウェーブ・ポストパンクの精神性と文学性を持ち、
へヴィ・メタルやハードロックとの独特なミクスチャーを見せた筋肉少女帯の大槻ケンジ、
プログレッシブ・ロック的とも言われるトータリティを有する作風で
ニューミュージック勢の中でも頭一つとびぬけた前衛性を有するシンガーソングライターの谷山浩子、
Black Sabbath直系のハード・ロックと、King Crimson的なプログレ、
或いはドゥームメタルやサイケデリック・ロックとのクロスオーバーで唯一無二の
音楽性を有する、日本のアンダーグラウンド・ロックを代表するバンドである人間椅子など、
極めて豪華絢爛なゲストが来ていましたが、そういった御仁たちに聞き手として彼女は
正鵠を得た質問をしており、各ジャンルの背景となるミュージシャンの知識もある程度持っている
と想像されることも、彼女自身の音楽に興味を持つきっかけとなりました。
音楽的な嗜好としては筋肉少女帯、戸川純、ザ・スターリン、P-Model(平沢進)、
、YMO、電気グルーヴ、谷山浩子、ALI PROJECT、桃井はるこ、Black Sabbath, Judas Priest,
Metallica, Kraftwerk等が挙げられていますが、ラジオ等での発言を聞いていると、
ジャンルとしては日本のニューウェーブ・ポストパンク、ハードコア・パンク、
テクノ(とりわけテクノ・ポップ)、サイケデリック・ロック、
へヴィ・メタル(とりわけNWOBHMとPantera系のオルタナティブ・メタル、メロスピ)、
昭和歌謡、演歌、トランス(ゴアトランス)、ゲームのサウンドトラックなどと考えてよいと思います。
本作は2014年作の1stで、多彩な作家陣が参加しており、総出で彼女の嗜好する上記のような
音楽を提供しているというような、ありきたりな声優の1stとは異なって非常に
アグレッシブなプロデュースが行われているのが特徴的です。
とっ散らかったと言われればそれまでですが、そういうことは声優のソロアルバムには
ごく当たり前のようにあることなので気にするべきものではないと思います。
参加している作家陣を見ていくと、
新谷良子のサウンドプロデュースで知られる、元OLDCODEXの飯田龍太(R・O・N)、
バンダイナムコゲームズ所属の音楽プロデューサーとして
鉄拳シリーズや塊魂シリーズ、リッジレーサーシリーズのゲーム音楽を制作した遠山明孝、
声優として、シンガーソングライター、アレンジャー、プロデューサー又は文筆家として
いわゆる秋葉原界隈でその名を知らない者は居ない桃井はるこ、
作曲家、ピアニストとしてロマンシング サ・ガシリーズ、FINAL FANTASYシリーズや
聖剣伝説シリーズに関与した伊藤賢治、
京都アニメーションのアニメ作品、THE IDOLM@STERでの音楽制作で知られる神前暁など、
まさに当代一級の作家がこぞって参加しています。
インストによる導入の#1予感は、強くリヴァーブの掛かったダブっぽいドラムパターンと
スクラッチ、SEに対して扇動的な台詞が重ねられています。
遠藤氏作曲の表題曲#2革命的ブロードウェイ主義者同盟は、ハウス的な打ち込みのトラックと
歪みの入ったベースラインでノイジーに進行するメロ部分と、トランスっぽい
高揚感のあるサビの対比が面白いです。淡々と歌うボーカルはシンプルなコード進行に対して
捻ったメロディになっていてこれも一筋縄ではいかないです。
続いて遠藤氏作曲の#3サイケデリック純情は、メロ部分のYMO丸出しなシンセのリフが
キャッチ―です。しょぼい感想ですが坂本龍一の80年代のソロ作にありそうな音色です。
ベースラインはディスコっぽいビート感があるのもグル―ヴィーです。
解釈次第ではライブで映えるかも。
桃井氏作曲の#4テトリアシトリは、矢野顕子、YMO、坂本龍一、細野晴臣、松任谷由美、
Moonridersなどの錚々たる御仁の、重要作品のレコーディングに参加した
松武秀樹のアレンジが光るテクノポップです。シンプルなサビのリフレインの
バックで弾かれるオブリガートのフレージングが最高にクールです。
ついついシンセのメロディアスで縦横無尽に動く演奏に耳が行ってしまいます。お気に入り。
加工されたボーカルと生々しい打ち込みのダンサブルなハウス#5Theme of Dr.AKASO(Instrumental)
を挟んで伊藤氏の#6我旗の元へと集いたまえは、ハイハットの刻みで疾走感を作るドラミングと
古典的なハードロックのリフで展開するメロ部分が聴き所です。
サビ前から歌謡に一気に傾いていく流れも面白い構成です。ボーカルの細さはご愛嬌。
#7SUMIRE #propagandaは、高速ドラムンベースと静かになるシンセが近未来的な音像の小品
普通なら90年代のレースゲームのような、ゲームミュージックなんかに使いそうなトラックです。
田中秀和作曲の行進曲風#8我らと我らの道を、は勇壮な歌詞と
柔らかいボーカルの対比がコミカルです。
リズムトラックはもっとパワフルな音でも良いかもしれません。
桃井氏作曲の爽やかなポップロック#10げんし、女子は、たいようだった。は、
クランチのパワーコードでのバッキングからアルペジオと基本に忠実です。
サビの最後はちょっぴり捻りがあって、たいようたいようと連呼するボーカルは実に可愛らしい…
岡部啓一作曲にアイドルソング、特撮界隈で著名な森雪之丞作詞による
#11哀愁Fakeハネムーンは、橋幸夫プロデュースの80年代のアイドルユニット、
セイントフォーを意識した曲に仕上がっており、時代の空気感が出まくったシンセドラムと
クサクサなリードギターでタイムスリップできます。
光田康典氏作曲の#13FLYERSは、一気にモダンな音色で歪んだバッキングに乗せて、
スパニッシュなパーカッションが疾走感を煽るハードロックな一曲ですが、
この手の曲だと、高音成分は出ていても低音成分が少ないためか、
やはりボーカルのパワー不足が目立ってしまいます。ギターソロは若干の粗さはありますが熱いです。
神前暁作曲、畑亜貴作詞の鉄板コンビによるプログレ風味の#14七つの海よりキミの海は、
52秒にもわたるスラップベースとフュージョンっぽい軽快なドラムスのイントロから掴まれ、
高田龍一によるストリングスアレンジでドラマティックに展開します。
コードは部分転調が雨あられのごとく繰り返されておりこのあたりの構成は如何にも神前さんらしいです。
サビ前のメタリックなギターリフに、デスヴォイスは誰の声なのか解りませんが迫力があって良いです。
サビは少しいじってますがカノン進行になっていてキャッチ―。
何度聴いても飽きない面白さがあります。名曲。
アクの強い作品ではありますが、それは逆に彼女の音楽の嗜好が素直に表れた
偽りのない作品であると取ることも出来ると思いますし、
上手くインタールードを入れたりして、
作家やアレンジャーの力で一枚通して聴けるように仕上がっていると思います。
ボーカルに関しては成長途上と言う感が否めませんが、
打ち込み系の音でメロディの動きが小さいものであればむしろ今のように細い方が
映えるかもしれないとも感じます。いずれにせよ唯一無二な作品です。
それに上坂さんは面白い人物です。これは間違いない。 

革命的ブロードウェイ主義者同盟

テトリアシトリ [J-FEST 2013 Live]

げんし、女子は、たいようだった。

七つの海よりキミの海

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  1. 2014/02/23(日) 04:46:09|
  2. 上坂すみれ
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今日の一枚(260)

Album: Free Soul ~2010s Urban-Mellow
Artist: Various Artists
Genres: R&B, Soul, Neo Soul, Hip Hop

Free Soul


普段コンピレーションのCDを購入することは少ないのですが、このFree Soulのコンピレーションの
シリーズはいくつか所有しており、洒脱でセンスのいい選曲と感じていたので、
この2010年代に発表された作品のみから選曲したUrban-Mellowシリーズを購入しました。
Free Soulと言う言葉はいわゆる和製英語で、90年代初頭の渋谷系ムーブメントの一端として、
渋谷のDJ Bar Inkstickというクラブで行われていた、
Free Soul Undergroundと言うイベントの名前が由来であると言われています。
このイベントの中心的な人物であったDJ、音楽ライターの橋本徹(1966~)が、
世に隠れたソウルやR&Bの珍盤奇盤に加えて、ヒップホップやボサノヴァ、ラテン音楽、ディスコ、
ソフトロック、フュージョン、ジャズファンクやアシッド・ジャズといったようなものまで含めた
個性的な選盤で作品を紹介するSuburbiaというフリーペーパーを刊行し、
これが渋谷系界隈のファンに人気を博したことで、今では一般的に知られている
Free Soulの名を冠した無数のコンピレーションを世に送り出すこととなります。
他にもTower RecordsのフリーペーパーBounceの編集、
執筆に関与するなど、良盤の発掘と有名作の再解釈という点において、
90年代から氏の果たした功績と影響は非常に大きいものと考えてよいと思います。
(当時の雑誌の記事にはPizzicato Fiveの小西康晴やFlipper's Guitarの小山田圭吾など、
渋谷系を代表するミュージシャンが多数参加していることからも明らかでしょう)
一般にFree Soulのコンピレーションは、アーティスト別に作品をコンパイルしたもの
(邦人ならキリンジやNona Reevesなど、洋楽ならCurtisやIsleyなど無数にあります)と、
タイトルに合わせたイメージでテーマ(Party, Travel, Lifeなどがタイトルに付いています)を決めて、
様々なジャンルの楽曲から選曲したものに大別されます。
そのため、発売からある程度時間が経った旧譜から選曲することが
殆どですが、本作のように同時代的な音楽の中から選曲したコンピレーションも存在しています。
Free Soulのコンピレーションにセレクトされるような曲の特徴は何かと言われると
難しいですが、基本的にはクラブでのDJプレイを想定しているために、
「踊れるお洒落な音楽」が詰まっていると考えて頂ければ問題ないと思います。
音楽的に難解なもの、キャッチ―さに欠けるものは選盤から外れていることから、
良くも悪くもファッション的な側面が強いと個人的には感じます。
黒人音楽を基礎としているということは、どのコンピレーションにも共通していますが、
これも実際にはかなり流動的な解釈で、むしろ黒人音楽にルーツを持つ、「都会的でグル―ヴィーな」
クロスオーバーミュージックに対して敏感に選曲しているようです。
兎にも角にも、アクの抜けたソウルやR&Bの派生音楽に触れる、という意味では
Free Soulシリーズのコンピ以上に優れた選曲のものはそうないと考えてよいので、
シンプルに何かオシャレな音楽を探しているという方に最適と思います。
実際筆者もコンピレーションからファンになったミュージシャンは沢山いますし、
おそらく今の若いミュージシャン達にとっても、Free Soulが原体験となっている人は
相当数いると想像されます。
「雑食」などと厚顔無恥なタイトルを冠したこのブログが、ジャンルレスな選盤をしようと
試みているのも、Free Soulや渋谷系の音楽と、その精神性への憧れが少なからずあるからだと、
最近になって感じております。
というわけでかなり前置きが長くなりましたが、本作の紹介に移りたいと思います。
これは2013年に発表されたコンピレーションで、文字通り2010年代にリリースされた
作品のみから、90年代的なフィルターと、Free Soul的なフィルターを通して18の楽曲が
セレクトされています。店頭で本盤を購入すると、アーティストの簡潔な
Biographyとレビューが書かれた小冊子が付属されてきまして、こちらを是非とも読んで頂きたい
(というかこれを読めばこの記事は不要と思えるくらいです)ので解説は最小限に留めておきます。
全体的な印象としては、アンビエント色の強いソウルやJames Blake的な、
ポスト・ダブステップの影響を受けたような電子音楽とのクロスオーバーが印象的で、
静かな都会の夜中にある音楽、というようなイメージの作品が選ばれています。
90年代のジャズ・ファンクやディスコ、或いはヒップホップに影響を受けた選盤のコンピレーションとの
連続性がかなり色濃く打ち出されたものになっていると感じます。
アーティストのラインナップは有名どころが多いため、本作から各アーティストの作品に
アクセスしやすいという点でも良いコンピレーションだと思います。

Game Over(Daley)

Neverland(Quadron)

Sweet Life(Frank Ocean) (詳細はFrank Oceanの項を参照)

Heaven For The Sinner(Bonobo Feat. Erykah Badu)

Man In The Middle(Roos Jonker) [Live]

Lovely Day(Jill Scott) (詳細はJill Scottの項を参照)

Who's That Lady(Lucas Arruda) (The Isley Brothers; Album 3+3より)

All That I Can Say(Gretchen Parlato)

Love Judge(The Slakadeliqs Feat. Tingsek And Ebrahim)

If Only(Snow White Blackbird)


楽曲一覧

1. Game Over(Daley)
2. NYC Tonight Version Shintaro Sakamoto (Dump)
3. Neverland(Quadron)
4. Sweet Life(Frank Ocean)
5. Get Lucky(Hyleen Gil)
6. Heaven For The Sinner(Bonobo Feat. Erykah Badu)
7. Amygdala(DJ Koze Feat. Milosh)
8. Summer's Loss(Ben Westbeech)
9. There's Nothing Like This(Omar Feat. Pino Palladino)
10. Man In The Middle(Roos Jonker)
11. Sitting On Shore(Finn Silver)
12. Lovely Day(Jill Scott)
13. Money(Lady)
14. Who's That Lady(Lucas Arruda)
15. Trust(Inc.)
16. All That I Can Say(Gretchen Parlato)
17. Love Judge(The Slakadeliqs Feat. Tingsek And Ebrahim)
18. If Only(Snow White Blackbird)


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  1. 2014/02/23(日) 02:07:54|
  2. Various Artists
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今日の一枚(259)

Album: Ⅲ(Melt)
Artist: Peter Gabriel
Genres: Progressive Rock,New Wave, Noise

Melt.jpg


イングランド、サリー州ウォーキング出身のシンガーソングライター、ボーカリスト。
1950年生まれ。1967年から1975年の間、伝説的なプログレッシブ・ロックバンドである
Genesisで結成当初からフロントマンとして活躍し、ライブパフォーマンスにおいて
その奇抜な衣装や照明演出、メイクといった視覚効果での演出や演劇性を取り入れた
斬新なステージングを行ったことでも知られています。
1974年のコンセプトアルバム、The Lamb Lies Down on BroadwayではGabrielが中心となって
作詞を行い、なんとライオンの衣装を着てライブを行っています。
その当時からディレクターのWilliam Friedkinと映画音楽の制作に取り組むため
一時的にバンドを離れたりと、他のメンバーとの音楽性の違いもあり、
75年にGenesisから脱退することになります。
ソロ活動開始後は、ワールドミュージックと、当時導入され始めていたアナログ・シンセサイザーを
用いた電子音楽への接近が見られ、本作では最新鋭の技術であったGate Reverbと言われる
リヴァーヴを極限まで小さくするドラムエフェクトを初めて用いています。
このエフェクトを使った曲では、元GenesisのPhil Collinsが叩いています。
(#5Family Snapshotではスネアドラムのみ、#10Bikoではスルドというサンバやボサノヴァなどの
ブラジル音楽で使われる打楽器を用いています。)
他にも当時はまだThe Jamに在籍していたPaul Wellerが
#6And Through the Wire でギタリストとして参加しています。
コーラスにはイングランドのアートロックを代表するシンガーソングライターであるKate Bush、
King CrimsonのギタリストでありリーダーであるRobert Frippなど、
超一流のミュージシャンがこぞって参加しています。
プロデュースには後に5度グラミー賞を受賞することになる、当時弱冠25歳の
Steve Lilywhite(U2, The Rolling Stones, Talking Heads, XTCなど多数)を起用し、
アフリカ民族音楽と、ニューウェーブ、ノイズミュージックをリアルタイムに
経験したロックの極めて高度な融合が試みられています。
リズムトラックには一切の金物(シンバル類)の音が入っていない点も特徴的だと思います。
アルバムジャケットはPink Floydでお馴染みのHipgnosisが担当しています。
元々彼の1stから4thまでの作品にはアルバムにタイトルがついておらず、この顔の半分が
溶け出したようなジャケットのイメージからMeltと呼ばれています。1980年作のソロ3rd。
#1Intruderはゲートリヴァーヴの掛かったひたすらにシンプルなパターンを重く叩くドラムスに
合わせて、低音の響きが豊かなGabrielのボーカルが訥々と歌います。
短く音の切られたギターのフレーズと、掛け声を発する雄雄しい男たちの声が
不気味さを演出しています。後半の悲痛で叫ぶようなボーカリゼーションは圧巻です。
サックスのリフレインとノイズ、Kate Bushのコーラスで幕を開ける#2No Self Controlは、
歌い上げるメロディには奇妙なポップネスがありつつも、巨大な音圧で迫ってくるタムの音が
圧倒的な存在感を放っています。最高にクールです。
1分20秒のサックスによるメロウなバラード#3Startを挟んで、
#4I Don't RememberではRobert Frippの激しくフランジャーの掛かったギターのバッキングと、
Tony Levinのチャップマン・スティックの生み出す太くうねりのあるベースラインが作る
ハードロック的なグルーブの中に、種々のノイズやエフェクトを施したコーラスが
上手く混じりこんでいて異様な高揚感を与えてくれます。名曲。
キーボード弾き語りで静かに始まる#5Family Snapshotは、途中からバンドが入ってきて
盛り上がっていきます。メロディの綺麗さは本作中でも随一です。
アンビエントな電子音から一気にパンクロックに変貌する#6And Through The Wireは、
若き日のPaul Wellerのギターリフが聴き所です。金物の音が無いこともありながら、
メロディやコーラスのハーモニーは完全にロックになりきらずエスニックな空気を残しています。
#7Games Without Frontiersは、アンビエントなイントロと、耳に残るコーラスのリフレインが
生々しく鳴る背景で、サスティーンの効いたギターが異彩を放ちます。
よく動くベースラインとギターのストロークの軽快さと、
ドラムスの重さが対照的な#8Not One Of Usも、音が塊になって流れてくるような感じではなく
各楽器の音が分離されて聴こえてくるアレンジになっています。
南アフリカの反アパルトヘイト活動家であり、壮絶な拷問を受け77年に30歳の若さで亡くなった
Steve Bikoへの追悼の意を込めて制作された#10Bikoは、Bikoの理不尽な死への怒りと悲しみ、
彼を殺しても反アパルトヘイトの活動は止むことは無いという強いメッセージが込められています。
Phil Collinsの叩くスルドのアフリカンなリズムと、極限にまで削ぎ落とされたサウンドが、
神聖さを感じさせているのかもしれません。
現代にいたるまで極めて怪しげな魅力と新鮮さを放ち続けていながらも、
ムーブメントとしては非常に短い時間で形骸化せざるを得なかった
ニューウェーブの誕生は、それまで様式美の極致であった
プログレッシブ・ロックを生業としていた彼自身に強烈な創作意欲を注ぎ込んだに違いありません。
そういった意味で、ニューウェーブ通過後のロックのクロスオーバーとしてのサウンド面でも、
不法侵入者や暗殺者の心情を描くことを通じて、歪曲した民主主義へのアンチテーゼを反映した、
悲痛さを滲ませる詞世界の面でも、80年という時代を、彼が生きていたからこそ生まれ得た奇跡的な
作品であると考えて間違いないと思います。

Intruder

No Self Control

I Don't Remember

Family Snapshot

Biko

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  1. 2014/02/20(木) 02:48:12|
  2. Peter Gabriel
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今日の一枚(258)

Album: Ⅱ Grande Gioco
Artist: Albero Motore
Genres: Progressive Rock, Fusion, Jazz Rock, Psychedelic Rock

2 Grande Gioco


ギタリスト、プロデューサー、シンガーソングライターとして60年代初頭からイタリアン・ロックの
黎明期に活動を開始し、現在まで活発にリリースを続けているRicky Gianco(1943-)に見出され、
イタリア、ローマで1973年に結成されたプログレッシブ・ロックバンド。
メンバーはMaurizio Rota (Vo, Per), Adriano Martire (Key), Fernando Fera (G)
Glauco Borrelli (B, Vo), Marcello Vento (Dr,後のCanzoniere Del Lazio(72年から78年
まで活動していたフォークロック、プログレバンド)のメンバー)
という、後にイタリア国内で腕を振るう事となるスタジオミュージシャン5人です。
Albero Motoreとは、イタリア語でピストンの往復運動を回転力に変えるための
軸であるクランクシャフトを指すようです。
1974年作の1stにして彼らの唯一の作品です。本作は新宿のDisk Unionでたまたまジャケ買いした
作品の一つで、色々と調べてはみましたが情報のソースの殆どがイタリア語しかなかったため、
正確な情報をお書きできるかどうか定かではありませんが御了承下さいませ。
発売年に関しては、店頭の商品紹介では67年と言う手書きの表示があり、
Disk Unionの公式ウェブサイトによっては69年作品とも書かれていたのでもともと
ハッキリとしていないのであろうと思います。
私の持っているCDは2007年にリマスターされたイタリア輸入盤なので、
おそらく本国ではそれなりの知名度のあるバンドだと考えてよいと思います。
イタリアン・プログレと言って一般に思い浮かべられるようなスペイシーな音像ではなく、
むしろ作品の内容としてはロック色が強い作品で、
キーボードの派手な音遣いに見られるようなサイケデリック・ロックからの影響や、
アメリカのクラシックロックに多くあるようなギターリフの構造が見受けられます。
Marcello Ventoのドラミングは軽いながらも非常に手数が多く難しいことをやっていますし、
他のメンバーも当時としてはかなりテクニカルな演奏難度の高い曲が多いことも特徴と思います。
とりわけクラシック・ロック色の強い#4Landruや、カントリーからの影響が色濃い
#6Nel giardino dei LillaにはFrank Zappa或いはSteve Winwoodの在籍していた
ブリティッシュ・プログレバンドのTraffic(1967-1974)にあるようなイディオムが散見されるのも、
特徴的と感じます。
他にも#7Capodanno '73はロック寄りのフュージョンとも取れるような音を感じ取れて、
なかなか時代の先端を行っていた音であることを想像させてくれます。
#1Cristoforo Colomboは、左右に振られたパーカッシブなキーボードのリフと、
モータウンっぽい香りのするGlauco Borrelliのモコモコしたベースラインがクールです。
ギターソロはストラトらしい透き通った音色でブルージーで、
弾き過ぎていなくてかっちりしたグルーブがあります。 プログレじゃないですが良い曲です。
最後1分30秒はシャウトがあり、キーボードのファンキーなロングソロがあります。
フェードインと共に始まる#2Le Esperienze Passateは、フォーキーなストロークに乗せて
軽やかなキーボードソロが聴ける前半部から左右に分けられた歌の掛け合いと、
スペイシーなキーボードで静かに進行する後半へと展開してきますが、
バスドラムが生み出すリズムはかなり入り組んでいて、プログレ臭を漂わせます。
#3Una Vita Di Notteは、軽くはありますが切れ味鋭く攻撃的なフィルが印象的なドラムスが
暴れる中でピアノソロが光ります。コーラスのハーモニーにはBeatlesの影が見え隠れしていて
時代の音と言う感じです。
#4Landruはシャキシャキしたトレブリーなリズムギターと歌うようなベースラインが堪らない
クラシックロックですが、ドラムスは相変わらずフュージョン的な疾走感があり、
軽快で手数が多く、緊張感があります。ノリノリな女性コーラスと、Maurizio Rotaのパワフルで
しゃがれたボーカルが綺麗な対比をなしています。アウトロの饒舌なキーボードソロ、
ワウを絡めたサイケデリックなギターソロと熱いドラムが絡みつきます。最高。
カントリーっぽい速弾きのギターソロと、哀愁漂うメロディにイタリア語の巻き舌な発音で
掻き立てられる#5Israeleは、エフェクトの掛かったコーラスで不気味に進行したり、
激しくフランジャーの掛かったギターソロでサイケデリックに終わっていきます。
#6Nel Giardino Dei Lillaは、左チャンネルを流れるアコギの高音の透き通ったバッキングと、
消え入りそうなハーモニカによるフォーキーなソロが印象的です。
カンタベリーっぽい音像も魅力的です。
2分40秒の短いインスト#7Capodanno '73は、メンバーのテクニックが炸裂するフュージョンで、
クリーンのカッティングを絡めたリズムギターと、煽り立てるようなスネア連打が作る
疾走感あふれるリズムに、火花の散るようなキメを繰り返していきます。これもお気に入りです。
たまたま購入するに至った作品で、レコードから音を起こしたためか所々にノイズが
入ってしまっていますが、Sgt. Pepper'sのようなサイケデリックな前衛性もありながら
フュージョン風の洗練された曲や、フォーキーで温かい曲もあって、
今聴いても斬新さのあるサウンドだと思います。正に掘り出し物の名盤でした。
これだからジャケ買いはやめられません。

Cristoforo Colombo

Le esperienze passate

Landrù

Israele

Capodanno '73

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  1. 2014/02/19(水) 21:48:31|
  2. Albero Motore
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今日の一枚(257)

Album: Nightmare
Artist: Avenged Sevenfold
Genres: Heavy Metal, Metal Core

Nightmare.jpg


アメリカ、カリフォルニア州ハンティントン・ビーチで1999年に結成されたへヴィ・メタルバンド。
初期はメタルコア的な音楽性のバンドでしたが、3rdアルバムのCity Of Evil(2005)では
メロディックで展開の多い楽曲が印象的な、Guns N' RosesやIron Maidenに代表されるような
古典的なへヴィ・メタルの音楽性に回帰していくことになります。
ただメロスピほどクサクサのメタルになり切ることもなければ、
スラッシュ・メタルのようにひたすら疾走するというわけでもなく、
美味しいところを上手くミックスしたものになっており、商業的な成功を収めている
バンドの一つであると思います。楽曲によってはメロウなピアノバラードから、
パンクやスクリーモっぽい曲、ブラスやストリングスを大胆に取り入れた楽曲、
アコースティックで暖かみのあるバラードまで、非常に振れ幅も大きいと思います。
2009年には結成当初からのメンバーであったThe Rev(Dr, Vo)が若くして命を落としたため、
知る人ぞ知る元Dream Theaterのドラマー、Mike Portonoy(Dr)がサポートに入り、
2010年に制作された5thです。本作はBillboard200で初登場1位を記録し、
一週間で16万枚もの売り上げを記録した大ヒット作となりました。
メンバーもまだ30代前半と若く、PanteraやMachine Head, Slipknotなどと並んで、
メロデスやメタルコア、プログレ、スクリーモ、エレクトロなどの音楽のミクスチャーとしての
NWOAHM(New Wave of American Heavy Metal)のムーヴメントの中に位置づけられ、
今後の活躍が嘱望されるバンドの一つと目されています。
表題曲、先行シングルの#1Nightmareは、メタルコアらしいブレイクダウンを随所に挟みながらも、
へヴィに展開するグルーブメタルです。ツーバスこそ踏んでますがサビメロはかなりキャッチ―で
メタルとは言えないものになっています。 マイクのドラムについつい耳が行ってしまいます。
M.Shadowsの雄雄しくしゃがれたボーカルはJames Hetfieldのようでもあります。
シームレスに続く#2Welcome To The Familyは、メロディアスなツインギターの映える
キャッチ―なサビと、Panteraっぽいザクザクしたバッキングのメロ部分のバランスが良いです。
速弾きギターソロはフレーズは癖のないものですが疾走感があります。
冒頭の生々しい刻みで掴まれる#3Danger Lineは、音数の少ないところからマシーンのような連打を
見せるドラムスと線の細い音のリードギターがコーラスを際立たせます。
途中でピアノ弾き語りになってから、ギターソロがあって、
口笛で淋しげに終わる展開はちょっぴりプログレ風味です。
#4Buried Aliveは、哀愁あるアルペジオとストリングスの作るスペイシーな前半と、
ギターが歪むと同時に歌い上げていく盛り上げ方は秀逸です。
Zacky Vengeanceのリズムギターの歪みの音は個人的に大好きな音です。
内容はシンプルなバッキングですけど言い音してます…
#5Natural Born Killerは、冒頭のリフからPortnoyのフィルが炸裂するスラッシュ寄りの
メタルコアと言った感じで、こういう曲でブラスト交じりのドラムスを聴くことができるのは
貴重だと思います。ただしサビはきちんとあり、思いっきり張り上げてへヴィに展開します。
この辺のバランス感覚も素晴らしいです。
ギターソロも会心の出来と言う感じで、お気に入りの一曲です。
箸休めのアコースティックなバラード#6So Far Awayは、タッチノイズが心地良いアコギのソロから
ギターソロへと繋げていて飽きさせません。
本作の中でも特にZacky Vengeanceのリフが冴えわたる#7God Hates Usは、あまり使用してこなかった
Frying Screamを多用したボーカリゼーションで聴かせてくれます。
重く溜めるようなドラムスとベースの作るグルーブを一番はっきりと聴きとれる一曲です。
ギターソロもフリーキーで好みです。良曲。
7分間と本作の中では長尺な#8Victimは、Scorpionsのようなノスタルジックさのある
ミディアムテンポのハードロックです。ギターソロの泣きっぷりも見事。
アウトロの、やり過ぎなまでのファルセットでのスキャットも熱いです。
翳りのあるフレージングのピアノを中心とした#10Fictionは、
コーラスの一風変わったハーモニーの付け方が浮遊感があって異色な一曲です。
アルバム最後を飾る大作#11Save Meは、NWOBHMの影響がはっきりと出たリードギターのフレーズと、
メタルコアっぽいリズムトラックやリズムギターの密度感のある音色での刻みが綺麗に融合した
個性の出たものになっています。5~6分あたりのユニゾンしたギターソロは白眉です。
若手のバンドとしてはかなり演奏も堅く、さらにキャッチ―な曲が多いので、
商業的成功を果たしたのも納得できます。(個人的にはもうちょっとポートノイに叩きまくって欲しかったですが)
楽曲の多彩さに合わせたアレンジのバリエーション、ギタープレイのバリエーションが見られれば
さらに化けるバンドだと思います。佳作。

Nightmare

Danger Line

Natural Born Killer

God Hates Us

Save Me

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  1. 2014/02/19(水) 00:43:17|
  2. Avenged Sevenfold
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今日の一枚(256)

Album: Re; Story
Artist: 喜多村英梨 
Genres: Pops, Melodic Metal, Power Metal, Visual

Re;Story


東京都出身の日本の声優、歌手。1987年生まれ。
声優としてのデビューは2003年で、それ以前には子役としてテレビドラマ、特撮作品などに
出演した経験もあります。デビュー当初からキャラクターソングを多く残している他に、
2004年には、早くもポニーキャニオンからソロ名義で2枚のシングルを発表しています。
その後ランティスからも2枚のシングルを発表していた彼女ですが、事務所の移籍問題もあったのか、
フルアルバムはスターチャイルド(キングレコード系レーベル)に
移籍してからのシングルを中心とした、2012年作の本作が1stとなります。
2011年にスターチャイルド移籍1stシングルBe Starters!をリリースして以来
ハイペースでリリースが続き、3枚目のシングルHappy Girlはオリコンシングルウィークリーで
初登場5位、本作も週間アルバムランキング5位とスマッシュヒットを記録しています。
音楽的には本人が普段から愛聴しているというパワー・メタルやメロディック・メタル
とりわけシンフォニック・メタルの影響が色濃く見られますが、
サウンドのアレンジやボーカルのスタイルから想像するにヴィジュアル系への指向性が窺われます。
実際は声優のソロアルバムらしく、へヴィな音像の作品(アルバム前半)のみに留まらず、作家による
個性が多種多様に出た作風になっており、メインの作家である新進気鋭の山崎寛子に加えて、
テレビアニメ「みなみけ」シリーズなどの作曲でも知られる山口朗彦、ギタリストの河合英嗣を
迎えて、ダンサブルでデジタル色の強いポップスからバラード、
ジャジーでスウィンギ―な楽曲まで幅広く制作されています。
基本的に生演奏による録音で、スタジオミュージシャンは、表題曲#1re;storyでは
日本を代表するへヴィ・メタルバンドGalneryusのSyu(G, #1)が、ストリングスアレンジでは
現在のポップス界隈で最も忙しい人物の一人と目される室屋光一郎(#1,#5,#9,#11)、
他にも作家、アレンジャーとしても知られる黒須克彦(B, #1), 水樹奈々のバックバンドでも
知られる福長雅夫(Dr, #3)など名の通った御仁が部分部分でいい仕事をしておられます。
#1re;storyは、全編を流れる高域の透き通った流麗なストリングスと、かどしゅんたろう(Dr)の
手数の多く前のめりなドラミングが作る疾走感で一気に聴かせるシンフォニックスピードメタル。
ソロはSyuがいつも通りバリバリにピロピロ弾き倒しています。
低音の艶やかなボーカルのキー設定もダウンチューニングしたギターとかっちり嵌っています。
耽美的なウィスパーが入って緩急が付く展開もクールです。
#2Veronicaは、Ikuo(B)の作る太いベースラインとフュージョン系のプレーヤーならではのスラップ、
そして相変わらずツーバス踏みまくりのアグレッシブなドラムスが忙しないハードロック。
河合英嗣自身によるギターソロも弾き過ぎず見事です。
#3紋は柴崎コウの作曲で知られる市川淳によるキャッチ―で哀愁あるメロディに対して、
和琴によるサスティーンの短くパーカッシブなリードプレイと、単音リフでゴリゴリと展開する
ギターのフレージングが厚みのあるサウンドを作ります。ワウを強くかけたギターソロも
暴れていてこれも良いです。福長雅夫のドラムスは手数抑え目でジャストで、
端正なプレイでこれも好みの音です。
#4足跡は、Ikuoの音数の多いフィルで前に出てくるうねるベースラインと、
ピコピコしたシンセ、柔らかいコーラスの定位が瑞々しいポップロック。
サビ前の歌詞の引っ張り方が印象的。
#5aliveは、緩やかなイントロからストリングスがドラマティックに鳴り渡りながら
メロコアっぽく進行するメロ部分は、キメを繰り返しながら繰り出される河合英嗣(G)の
バッキングの音が心地いいです。この辺の展開は如何にもヴィジュアル系と言う感じ。
サビでのノートの曲げ方も器用で巧みなボーカリゼーションです。張り上げはもう少し
パワーが欲しいところです。
#6Baby Butterflyは、冒頭の喧噪のSEからピアノで一気に掴まれます。
佐野康夫(Dr)はキラキラしたシンバルレガートでしっかりスウィングしたあとは、
情熱的にタム回しで轟音を作りつつ手数多く、ホーンも入って賑やかになります。
間奏はお決まりのウォーキングベースとトランペットソロ、かと思いきや
ギターソロへと雪崩れ込んでいくという展開も楽しい。高音域に入るときに薄くなっていく
トーンの変化や、ブレスのエロさが伝わってきます。お気に入り。
#7LOVE&HATEは、シンセの分厚いバッキングに、デジタルな歪みのカッティングが歯切れの良い一曲。
サビのリフレインも印象的です。
#8brand-new bloodは、#1, 2にも増して更にリズム隊が硬質な音になっていますが、
オクターブとカッティングを絡めたギターソロもテンションを引き上げてくれます。
ここまでオケが重いと、歌い続けるライブ後半では声が負けそうになってしまう
可能性もあるかもしれません。
一転して山口朗彦作曲の1stシングル#9Be Starters!は、甘く、鼻腔共鳴の強いトーンで
柔らかく歌うスタイルへと一気に変わり、シンセのキラキラとしたポップロックになります。
サビメロのロングトーンの伸びやかさや切なさを内包したボーカルは表情豊かで素晴らしい。
ギターソロはやっぱりハードでそこが良いんです。
本人作詞の#10→↑(My Way)は、手拍子が入り、サビの軽やかに韻を踏んだ歌詞で覚えやすく、
ライブ向けに作られた曲でしょう。ただ彼女が歌うとこういう曲でもどこか淋しげな空気を
醸し出すのが魅力と思っている人は私だけだろうか…
ライブでLALALAと歌ってみたくなりました。これは術中に嵌っておりますね。
ヒットシングルの#11Happy Girlは、ますますキュートな声になって、スタッカートの効いた
メロディをスイスイと歌っていくメロ部分と、中毒性の高くダンサブルなサビのバランスで
心を掴まれます。
#12My Singingは、アコギのバッキングにスクラッチと電子音を上手く重ねたロックバラード。
ベースはRIZEのTOKIEが弾いています。
#13Be A Diamondは、メロコア風のドラムスにブリブリしたベースラインの作る
ソリッドなグルーブで聴かせるシンプルなガールズロック。
サビの歌詞はライブでのコール&レスポンスを意識したような展開になっています。
メタル曲にせよポップスにせよメロコアにせよ、どの楽曲もリズム隊が非常にタイトな演奏で、
ロックグルーブのある仕上がりになっています。
多くの曲でギターを担当した河合英嗣のギタープレイが素晴らしく、個人的にとても気になりました。
ボーカルは声優の方らしく引き出しの多さを見せており、楽曲に合わせてトーンを作っても、
それで完璧に歌いきってスタイルにしてしまうという能力は言うまでもありませんが、
耽美主義的な音像で音の密度の高い前半に限らず、ポップで甘くいい意味でアニメソング然とした後半も、
彼女自身の地声の低さゆえか、メロディに独特の切なさが付加されているような印象を受けます。
兎にも角にも、2ndアルバムも含めて今後の活躍が注目されるに違いない方だと思います。良作。
ライブにも参加してみたいです。 

re;story

Happy Girl (TV Spot)

Be Starters! [Live]

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関連記事
  1. 2014/02/12(水) 23:57:45|
  2. 喜多村英梨
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今日の一枚(255)

Album: Seventh Dimension
Artist: Dimension
Genres: Jazz Fusion, Jazz Funk

Seventh Dimension


1992年に結成された日本のフュージョンバンド。
メンバーはBeing系のアーティストのレコーディング、ライブサポートで知られる
スタジオミュージシャンの小野塚晃(Key)、勝田一樹(Sax)、増﨑孝司(G)の三人です。
結成当初からドラムとベースはサポートメンバーを迎えて録音されることが多く、
2005年頃までは亡くなられる直前まで青木智仁氏が参加しておられました。
ドラムスは石川雅春氏(渡辺貞夫, 高中正義,角松敏生)を迎えて制作されています。
本作は1996年作の7thフル。90年代にはシンガーソングライターの栗林誠一郎などを
始めとしてメンバー全員でツアーサポートを行っていたこともあります。
このSeventh Dimensionを含めて、6thから8thまでの間は、
一か月ごとにアルバムがリリースされており、彼らの活動が最も軌道に乗っていた時期と
考えてよいと思います。
6thは、数多くの素晴らしいライブレコーディングを生み出した
クロスオーバー・ミュージックの聖地、六本木PIT INNでのライブレコーディングによるもの、
8thはAOR寄りのメロウな楽曲が多く収録されていますが、本作はテクニカル指向が非常に
強く出たものとなっており、激しいロングソロをしっかり聴ける構成です。
彼らの代表曲の一つである#1Cricket Smokerは、頭から高速ユニゾンの嵐で、
ガチガチのリズム隊の疾走感と相まって凄まじい緊張感があります。
それにしても、増﨑孝司のディストーションはファットな音でいつ聴いても
涎が出るような音していますね…文句なしの名曲です。
最後のキメなんかはBrecker Brothersを聴いているかのようです。日本の誇りです。
#2Double Visionは、打ち込みライクでダンサブルなリズムパターンに、
サックスのロングソロを中心に展開する前半、後半のギターソロで構成されています。
90年代っぽい音像が時代を感じさせます。
アウトロの高速フルピッキングの間にタッピングを絡めたフレーズには目玉が飛び出そうになります。
#3Grey Jazzも、前曲と同じくアシッド・ジャズを意識したようなファンキーな
リズムトラックに乗せたキーボードの煌びやかなソロが聴き所です。
#4Bird Islandは、訥々と紡がれるベースラインと、エスニックな香りを感じさせるドラムは、
リムショット澄み渡った音色が心地良いです。テーマのところでデジタルなシンセが入ってくるのも
面白いアレンジです。3分過ぎくらいからのクリーンからクランチでのギターソロは、
独特な太さのある音でこれもまた良いです。
ジャジーなテーマを吹くサックスと、クリーンのカッティングが爽やかな如何にも
ジャパニーズフュージョンな#5Parable、一瞬Greg Howeを感じる冒頭のリフで一気に掴まれる
#6Parallel Wordsは、テクニカルでありながら聴きやすいです。
#7Leggyは、カセットテープっぽい音でテーマをローファイな音で導入して、
キーボードのソロで遊ぶ前半から、短いサックスソロを通してテーマを崩して展開していきます。
青木智仁の、聴いた瞬間に彼の音と分かるスラップベースがフィーチャーされた
#8T.A Jingleは、アグレッシブに弾き倒すピアノソロとサックスソロを挟んで、
ウォーキングベースも楽しめて最高です。
#9Keep That Same Old Feelingは、ファンキーなスラップとボリューム奏法を効果的に使った
ギターに対してスペイシーなキーボードと打ち込みのリズムが近未来的な音像で洒脱です。
テクニカルフュージョンとは言っても聴きやすさ、メロディックさが同居していて、
ドライブミュージックにも最適な、熱くなれる一枚です。

Cricket Smoker

Double Vision

Bird Island

T.A Jingle

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  1. 2014/02/12(水) 13:15:32|
  2. Dimension
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今日の一枚(254)

Album: Roberta Flack & Donny Hathaway
Artist: Roberta Flack & Donny Hathaway
Genres: Soul, R&B, Folk

Roberta Flack Donny Hathaway


アメリカ、ノースキャロライナ州ブラックマウンテン出身の女性シンガーソングライターである
Roberta Flack(1937~)と、イリノイ州シカゴ出身のキーボーディスト、シンガーソングライターの
Donny Hathway(1945~1979)によるデュオ名義で発表された1972年作品。
元々ハワード大学でクラシックや声楽を学んでいた二人は在学時からの知己であったようで、
1970年のFlackのソロ2ndであるchapter Twoに、Hathawayがアレンジ、ピアノ、コーラスで
参加していたりと、今作以前でも深い親交があるようです。
自身のアルバムの中で白人の曲をカヴァーしたものを収録したりと、
いわゆる人種の壁を超えたニューソウルの旗手として知られるHathawayと、
ジャズやファンクの他にフォークやブルース、ポップスと幅広い音楽からの影響が
窺われるソロ作品を生み出したFlackは、ピアニストであることも含めて
音楽性を見ても共通項の多い人物だと考えてよいと思います。二人の自作曲に加えて、
James Taylorのカヴァーで知られるCarole Kingの#2You've Got A Friendや
Ralph MacDonald, William Salterによる#7Where Is the Love,
(元々はFifth Dimensionへの提供曲として書かれたもの),
ジャズスタンダードの#6For all we knowなど、二人の影響を受けた音楽が如実に出た作品
に仕上がっています。参加しているスタジオミュージシャンも豪華で、Eric Gale(G),
Chuck Rainey(B)というモータウンサウンドの担い手である2人に加え、
Bernard Purdie(Dr)やDavid Spinozza(G, on #2),
Billy Cobham(Dr, #2, Miles Davis, The Mahavishnu Orchestra), Joe Farrell(Sax on #5,
Return To Forever)などジャズ・フュージョン系のミュージシャンも多く参加しています。
ストリングスアレンジは Queen, The Bee Gees, Anita Baker, Aretha Franklin, Rascals(Groovin')
やHall & Oates, Norah Jonesなどを担当したArif Mardinです。
ただサウンドは、緊張感のあり複雑なリズムやキメのあるファンクサウンドというものではなく、
あくまで二人の歌とハーモニーの魅力を引き出すことに専念されて作られていて、
非常に内省的な色の強い作品となっています。
どこまでも真っ直ぐで力強く、朗々としたFlackの歌唱と、Hathawayの、内からあふれ出る葛藤や
苦悩の感情がそのままフェイクしたメロディに出てくるような歌唱の対比も最高にクールです。
Tom Jonesのカヴァー#1I (Who Have Nothing)は、流麗なストリングスにEric Galseの渋い
ギターソロと、ブルージーに、エモーショナルに歌い上げます。
名カヴァーの#2You've Got a Friendは、Hathawayの音数少ないエレピの響きが抜群の存在感
を見せています。Billy Cobhamの軽やかなドラムミングの作る緩いグルーブも素晴らしいです。
Aretha Flanklinのヒット曲#3Baby I Love Youで一気にアップテンポになり、
楽しげなギターリフとフィルの多いドラムスがファンキーです。
二人の共作によるオリジナル#4Be Real Black for Meは、意味深なタイトルとは対照的に
暖かみのあるサウンドで、完璧に息の合ったハモリを堪能できます。
Barry Mann, Cynthia Weil, Phil Spectorというまた恐るべき御仁たちによる共作で
The Righteous Brothers('64)のカヴァー#5You've Lost That Lovin' Feelin'は、
原曲から大きく離れたアレンジとなっており、モータウン色満載のベースの
リフやフィルのフレージングがとても面白く、浮遊感のある独特な響きのハーモニーが不思議な
気持ちにさせる一曲です。アウトロではワウの絡めたカッティングが入ったり、
忙しなくピアノ弾き倒していたり、ダイナミックにストリングスの音が入ってきたりと展開も多いです。
FlackのピアノでHathawayが歌う#6For All We Knowは、自然と掛かったヴィヴラートの
あの揺れ方の深さや速度の完璧さといい、低音の豊かな倍音といい、
高音の伸びも圧倒的な声量にも感動しっぱなしです。もう最高です。言う事なしです。
一気にバンドサウンドになりとびきりグル―ヴィーに進行する#7Where Is the Loveは、
メロディックに主張するストリングスと、やはりChuck Raineyのベースのフレージングが個人的には
気になってしょうがないです。本作でもとりわけキャッチ―でポップな一曲です。お洒落です。
ストリングスによる間奏がMarvin Gayeっぽさを感じる#8When Love Has Grownは、
明るく健全な雰囲気でまたこれも良い。
トラディショナル・ソングの#9Come Ye Disconsolateは、ピアノにベースのみを加えて
二人の掛け合いで聞かせるバラードに仕上がっています。
7分に渡るインストの#10Moodは、Flackがピアノ、Hathawayがエレピを弾いています。
清澄なトーンで弾かれる悲しげでありながら情熱的なピアノのクラシカルなテーマと、
輪郭のおぼろげで水の滴るかのような音のエレピが、二人の人間をそのままに映し出しています。
どの曲も彼ららしく大胆なアレンジが施されていて、歌唱も、演奏も、二人の素晴らしい個性が
立った奇跡の作品なのだと、強く感じています。カヴァーとはかくあるべきものなのでしょう。
Hathawayの人生について思いを馳せながらこの優しい歌声を聴くと、
そのたびに切なさがこみ上げてきます。素晴らしい作品です。

You've Got a Friend

You've Lost That Loving Feeling

For All We Know

Where is the Love

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  1. 2014/02/09(日) 01:45:21|
  2. Roberta Flack & Donny Hathaway
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今日の一枚(253)

Album: Larsen-Feiten Band
Artist: Neil Larsen, Buzz Feiten
Genres: Soft Rock, AOR, Blue-Eyed Soul

Larsen-Feiten Band


アメリカ、フロリダ州サラソタ出身のキーボーディスト、アレンジャー、作曲家の
Neil Larsenと、ニューヨーク、センターポート出身のギタリスト、シンガーソングライターの
Buzz Feitenの二人によるAOR, ソフトロックユニットの1st。1980年作。
Neil Larsenは、70年代前半から当時の東海岸を代表するスタジオミュージシャンとして、
George Harrison, Kenny Loggins, Whitney Houston, Jimmy Cliff, Rickie Lee Jonesなど
150を超えるアルバムレコーディングに参加しています。
80年代後半から90年代にかけては Al Jarreauのツアーサポートとして、
00年代以降はB.B. Kingのソロアルバムに参加したりRobben FordやGregg Allman、
Rickie Lee Jonesらのツアーに帯同したりと活発に活動しています。
Buzz Feitenは、後期Rascalsへの参加やそのメンバーであるFelix Cavaliere's group
(Felix Cavaliereの項を参照)、ジャズドラマーのDave Wecklのバンドメンバーとしての活動で
知られています。彼もまた東海岸を代表する超一流のスタジオミュージシャンとして、
Bob Dylan, Aretha Franklin, The Brecker Brothers, Gregg Allman,
James Taylor, Chaka Khan, Olivia Newton-John, Rickie Lee Jones, Stevie Wonder, David Sanborn,
Kenny Loggins, Jeff Lorber, Boz Scaggs, Mr. Mister(Pagesの項を参照)など、
数限りない超有名アーティストの作品で切れ味鋭い演奏を聴くことができます。
エレキギターをやっておられる方であれば、一度は聞いたことのあるであろう
Buzz Feiten Tuning System(BTS)も、彼の発案によるものであることは、
自分の世代の界隈では意外と知られていませんでした。
Neil LarsenとBuzz Feitenの二人は非常に長い付き合いで、
Neilがニューヨークへと移住した1971年当初に知り合ったようです。
ファンの方ならば知っていることと思いますが、Nielは、NY移住後すぐに、Buzzのバンドである
Full Moonという、エレクトリック・ジャズからフュージョンが生まれる前夜であった
当時としては、極めて革新的な音楽性であったジャズ・フュージョンバンド
(元々はBangという名前でした)に参加し、活動するようになります。
Full MoonはNY界隈では人気を博したものの、短命に終わってしまいます。
(現在ではFull Moonのアルバムが2008年に待望のCD化を果たし、私たちにも手に入るようになりました)
その後Neilは、Nick DeCaro/Italian Graffiti('74)のプロデュースでその名を知らしめた
プロデューサーのTommy LiPumaに見出され、ソロ1stのJungle Feverをリリースするに至ります。
このソロ1stと、2ndのHigh Gearのレコーディングの際にNeilはBuzzを呼び寄せ、
共にレコーディングしました。レーベルの活動停止と言う不遇のためワーナーへと移籍した
Neilは、再びLiPumaをプロデューサーとして迎え、Willie Weeks(B,ex Donny Hathaway,
The Doobie Brothers), Art Rodriguez(Dr),Lenny Castro (percussion, background vocals)を加えて、
Larsen-Feiten Bandを結成することとなります。サポートにはLarry E. Williams (Tenor Sax)や
David Sanborn(Alto Sax),Chuck Findley(Trumpet)など優れたホーンセクションを擁しています。
全米29位のヒットとなった#1Who'll Be The Fool Tonightは、極めて粒立ちの良い単音カッティングの
リフと、ブルージーなソロが最高に歌っていて素晴らしいです。
緩いグルーブを感じるドラミングは如何にもブルーアイドソウル的です。
#2Danger Zoneは、パーカッシブなRhodesのリフと、シルキーな歪みのリードギターが
歌の間を埋めるように饒舌にフレージングしていくファンキーな一曲。
2分40秒くらいから長いギターソロがあります。
キーボード中心のフュージョンライクでキャッチ―なインスト曲#3Further Noticeは、
Willie Weeksのモータウンっぽいメロディアスなベースラインが最高にクールです。
シンセの音はさすがに時代を感じさせますが今の時代に聴くと逆に(何が逆なんでしょう…)
また不思議な魅力があります。
#4Overは、透き通ったコーラスが印象的でメロウな冒頭から、サビに向かってハードロック的な
ギターリフが入って来ます。
ダンサブルなビートと、オクターブ奏法にスラップを絡めたベースラインの作る、
腰に来るグルーブで一気に掴まれる#5She's Not In Loveは、明らかにディスコを意識した音で、
これも時代の先を読んでいる音で驚かされます。サビのコーラスも少しジャジーで素晴らしい。
ギターソロもクサクサでお気に入りです。
レゲエを意識したクリーンのカッティングと、パーカッションの織り成す異色なノリに、
ウェストコーストっぽいノスタルジックな香りのするメロディと、オルガンのバッキングが
心地良い#6Mornig Starも名曲。夕暮れに聴きたい一曲です。アウトロのギターソロは白眉。
無駄な音が一音たりとも無い、弾き過ぎの一歩手前で完璧に止まる美学を、
Buzz Feitenのソロ全てに感じます。最高。
ホーンセクションが緊張感のある緻密なアンサンブルを見せる#7Make itは、
テーマの大仰な感じがまた良いです。
#8Aztec Legendは、壮大なテーマを弾く饒舌なキーボードと、重いリズム隊で
ドラマティックに終わっていくインストです。
8曲収録で歌ものとインストのバランスも良くて聴きやすい作品ですが、
全ての曲に、ポップス、ハードロック、R&Bやソウル、ファンク、ジャズ、レゲエと
様々な音楽への深い洞察が感じられ、今聴いても全く色褪せることのない音だと思います。
70年代末から80年代初頭の、クロスオーバーミュージックのスタンダードとして、
広く聴かれるべき重要な作品の一つだと、私は思います。

Who'll Be The Fool Tonight

Danger Zone

She's Not In Love

Morning Star

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  1. 2014/02/04(火) 21:53:34|
  2. Larsen-Feiten Band
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  4. | コメント:2

今日の一枚(252)

Album: Vital Tech Tones
Genres: Scott Henderson, Victor Wooten, Steve Smith
Artist: Jazz, Fusion

Vital Tech Tones


アメリカ、フロリダ州ウエスト・パーム・ビーチ出身のジャズ、フュージョン系ギタリスト。
1954年生まれ。Frank ZappaやChick Coreaと共に数々の作品を残してきたJean-Luc Pontyの
ソロアルバムであるFables(1985)に参加し、Allan Holdsworthのフォローワーとして
注目を集めることになります。他にも現代最高のジャズ・フュージョン、プログレ系
ベーシストの一人であるJeff Berlinのソロ作品や、Chick CoreaのElectrik Band期の作品、
Joe ZawinulのZawinul Syndicateに参加しています。
1984年に自身をリーダーとするTribal TechをGary Willisと共に結成し、
テクニカルフュージョンの優れた作品を制作していましたが、
90年代半ば以来、ブルース主体の作品(Dog Party, Tore Down House, Well To The Born)
も制作するようになっていきます。
本作は98年作で、Victor Wooten(B, Bela Fleck and The Flecktones),
Steve Smith(Dr, Journey, Mike Stern Band, Jeff Berlin)と
タッグを組んだVital Tech Tonesというグループ名義で録音されたものです。
音楽性としては、聴きやすいフュージョンというものではなく、
即興性の強いジャズロックをベースとしながら、アウトフレーズ満載の速弾きギターの
フレージングには、随所にブルースの香りが感じられます。
参加している御仁たちも存分にテクニックを見せつけており、超絶技巧のソロ、バッキング
による、極限まで張り詰めたアンサンブルを堪能できる作りになっています。
この辺は、以前にも紹介したGreg Howe, Dennis Chambers, Victor Wootenのトリオによる
Extraction(2002)にも近いコンセプトの作品といえるでしょう。
#1Crash Courseは、ダイナミックで連打の多いフィルが心地よい前半部と、
アウトフレーズ満載でジャジーな速弾きで展開する中間部も、
キャッチ―でこそないものの見事な泣きっぷりで素晴らしいです。
4分30秒あたりから長いベースソロがあり、ワウの掛かった奇怪な音色が耳に残ります。
しかしSteve Smithの、柔軟で軽やかでありながらロックドラミングでもあるという、
この独特な音色は魅力的だと思います。
ファンキーなグルーブを創出する#2Snake Sodaは、何とも変態的でモーダルなギターと、
Wooten得意の高速スラップで魅せるベースソロが聴き所です。最後のキメは鳥肌ものです。
端正なシャッフルで展開していく#3Dr.Heeは、激しいアーミングの絡んだフレーズを
起点にして様々なフィルが入りリズムチェンジしていきます。
9分40秒に渡る大作#4Evergladesは、最早ベースの領域を超越した超高速のソロが強烈な
存在感を放っていますが、ブレイクから全く拍が取れなくなるドラムのパッセージに
開いた口が塞がりません。どの音も極めて粒立ちが良く、一切のミスがありません。
#5Two For Oneは、1分30秒間のドラムソロから、ロータリー奏法(?)を用いた、
最早人間の領域を軽く超越したスラップベースを見せつけてくれます。
ポリリズムからジャングルビート、ダブルバスに展開していくドラムも最高。
シームレスに#6King Twangへと繋がっていきますが、タイトル通りのtwangな音の歪みで
心地よいです。ソロはブルース色が強いものですが、なぜここまで弾けてしまうのでしょう…
知る人ぞ知るコルトレーンの名曲カヴァー#8Giant Stepsは、かなり原曲から
変わったアレンジになっており、ここでもWootenのベースが饒舌に歌っていて
ニヤニヤしてしまいます。精密機械のような繊細なシンバルレガートから、
変態ドラムソロを挟んでパワフルになるリズムの中で、John Scofieldばりのアウトが
連発されています。
疾走しまくる#9Lie Detectorは、思わず吹き出してしまうようなベースの速弾きと、
完全にネジが外れて暴走しまくるスコヘンが見られます。最後にノイズが入って終わる感じも
狂気を感じます。カッコいいです。
らしいご機嫌な手癖が満載のJohn ScofieldやMike Stern、強力な左手でプレーを引っ張り
音の継ぎ目を感じさせないAllan Holdsworthといったような変態なジャズギタリストと
比較して、Scott Hendersonはピッキングする力が強く、フレーズの選び方にも
ハードロックやブルースを感じさせるものが多くて独特のダイナミックさがあると思います。
変態の多いShurの中でも、真に変態と言うべきギタリストだと思います。傑作。

Crash Course

Dr.Hee

Everglades

Giant Steps

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  1. 2014/02/02(日) 17:25:24|
  2. Scott Henderson
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
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