私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

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今日の一枚(277)

Album: Court & Spark
Artist: Joni Mitchell
Genres: Folk Rock, Rock, Pops, Fusion

Court Spark


カナダ、アルバータ州フォート・マクラウド出身のシンガーソングライター、画家。1943年生まれ。
1965年にアメリカに移住し、フォークシンガーとして68年にデビューを果たします。
ミュージシャンとしてだけでなく、自身のアルバムのアートワークを手掛け、
個展をも開くほどの絵画の才能も有しています。音楽的な内容としても、
女性の視点から見た世代や社会に対する鋭い批判や風刺に満ちた詞世界に加えて、
アコギ一本のフォークロックだけに留まらず、
本作のように豪華なスタジオミュージシャンを集めたジャズ・フュージョン色の強いものから、
クラシックやR&B、ロックなどのハーモニーやリズムを積極的に消化した複雑なものが多く、
The Hissing of Summer Lawns(1975, Robben FordやLarry Carlton等が参加)や
Hejira(1976, Larry Carlton, Jaco Pastorius, Tom Scottなど多くのジャズメンが参加した傑作)
のような、フォーキー・ジャズ路線を極めた作品も、今聴いても全く色褪せないクールさ、
先進性を湛えています。本作は1974年作の6thで、彼女の数あるオリジナルアルバムの中でも
最も「売れた」作品で、どちらかというとフュージョンと言うよりはポップスの感覚に近く
聴きやすい作品だと思います。時代を考慮すると、AORやソフトロックの全盛期を迎える、
70年代後半から80年代前半の音よりはまだゴツゴツとした複雑さがまず感じられ、
バックのTom Scott(Woodwinds)やJoe Sample(Key), Larry Carlton(G)の音を聴いていると、
さながらSteely Danのようであり、或いはあのZappaのHot Ratsで叩いていたJohn Guerinのドラムスは
ジャズロックから続く繊細なシンバル捌きと、時にパワフルなスネアのドライブ感あるフィルを
聴かせていて、彼も重要な役割を果たしています。
ピアノ弾き語りから徐々にドラムスが入ってくる#1Court & Sparkは、低音に独特の響きのある
ボーカルの倍音の豊かさや気怠い感じが素晴らしい。
アコギのジャキジャキしたストロークと、Larry Carltonの抑制されながらも歌心のあるギタープレイ
が映えるシングルの#2Help Meは、サビでTom Scottが前に出てきて完全にフュージョンしています。
さりげないキメの複雑さやコードワークの面白さは、ただのポップスとは完全に異質です。お気に入り。
#3Free Man In Parisは、David CrosbyとGraham Nashによるサビでの分厚いコーラスワークが聴き所です。
Jim Hughartのベースラインもフィルが多く心地良いです。左チャンネルを流れるJosé Felicianoの
歪んだリードギターも素晴らしい。
煌びやかなアコギの音がさざ波のように耳を撫でる#4People's Partiesから続いて、
ピアノ弾き語りを中心とした#5Same Situationへとシームレスに続いていきます。
後半に入ってくるストリングスのクラシカルな美麗さは見事です。
#6Car On A Hillは、イントロのキーボードのフレーズやサックスが完全にSteely Danな
空気を感じさせますが、歌メロとつかず離れずフレージングされるWayne Perkinsのラウドな
リードギターや、インスト部分でのドラムスのロックフィーリングなフィルは、
もはやそれまでの彼女のイメージを一新していると言って過言ではないでしょう。お気に入り。
と言いつつ曲の展開は彼女らしさ満載です。
長く力強いピアノのイントロが印象的な、弾き語りにストリングスを加えた#7Down To Youは
箸休め的な一曲です。
#8Just Like This Trainは、ヴォリューム奏法を絡めたLarry Carltonのギターと、
フォーキーなアコギのバッキングの中で、透明なコーラスワークと軽快なホーンが爽やかです。
時々出てくる半音階的な進行が独特な浮遊感を生み出しています。
完全にロックンロールな#9Raised On Robberyは、一層パワフルになったボーカリゼーションと、
ガシガシとリフを弾くRobbie Robertson(The Band, G)も楽しそうにハジけています。
一方で完全にジャズを指向した#11Twistedは、定番のウォーキングベースと4ビートに、
動きの激しく殆どブレスする余地のないメロディを軽々と歌いこなしています。
妖しげなChuck Findleyのトランペットも良いです。
どの作品にも多種多様な音楽からの影響が感じられ、フォーキーで温かいサウンドと、
複雑で個性的なハーモニーの高度な融合に加えて、優れたスタジオミュージシャンの作る
グルーブがアルバム全体を流れている70年代半ばから80年あたりの時期の彼女の作品は、
インテリジェントでグルーブもあり、かつポップさやメッセージ性を失わないという、
ポップミュージックの目指すべき一つの完成形として永遠に評価され続けるのでしょう。

Help Me

Free Man In Paris

Car on a Hill

Just Like This Train

Raised On Robbery

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  1. 2014/03/31(月) 02:37:46|
  2. Joni Mitchell
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

今日の一枚(276)

Album: Karyn White
Artist: Karyn White
Genres: R&B, Pops, New jack swing

Karyn White


アメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス出身の女性シンガー。1965年生まれ。
元夫はJimmy Jam and Terry LewisのTerry Lewisです。
(Janet Jacksonや、日本では宇多田ヒカルのAddicted To You, Wait&See ~リスク~の
プロデュースでも知られる)
80年代後半から90年代前半にかけて、Bobby BrownやWhitney Houston, Soul Ⅱ Soul, Brandy,
Tom Jones, R. Kelly, Cheryl Lynnなどのプロデュース、楽曲提供を務めたTeddy Rileyによる、
いわゆるニュージャックスウィングと呼ばれるジャンルのシンガーの一人として
(日本ではブラック・コンテンポラリーと呼ばれることが多かったようですが)知られています。
このニュージャックスウィングというのは、80年代におけるヒップホップの台頭をきっかけとして、
リズムマシーンによるリズム構築と、シンセサイザーによるバッキングを中心としながら、
打ち込み然としたサウンドの中で、既存のファンクに近いグルーブを生み出したり、
或いはゴスペルや洗練されたソウルのハーモニーの重ね方をも取り込んだR&Bを指しています。
Michael JacksonのDangerous(1992)などを代表する、当時としては革新的な音楽性であり、
現在のR&B系シンガーのサウンドプロデュースにまで深い影響を与え続けるムーブメントとなります。
Karyn Whiteはもともとジャズ/フュージョンを代表するキーボーディストであるJeff Lorber
(詳細はJeff Lorber Fusionの項を参照)のバックコーラスとして、シングルFacts of Love(1986)などで
レコーディングに参加していました。本作でも#8Tell Me Tomorrow, #9One WishはJeff Lorberが
プロデュースしています。1988年作の1st。Top R&B/Hip-Hop Albumsで1位、
Billboard 200では19位の大ヒット作となりました。
プロデュースは、本作でのヒットをきっかけとして、90年代R&Bを代表する
ソングライター/プロデューサーチームとなり、TLCやBoyz Ⅱ Men, Mariah Carey, Jay-Z
Justin Bieber, Rihanna, Kanye West, Usher, Ne-Yoなどの楽曲を手掛けることとなる、
L.A. & Babyface( L.A. Reid(1956-)とBabyface(1958-)による二人組)が担当しています。
今挙げたようなアーティストの楽曲からすると、本作のイメージとは少し異なりますが、
初期のBabyfaceの作風を窺い知ることができる貴重な作品だと思います。
ダンサブルで、ギラギラとした潔い打ち込みのサウンドは、80年代末と言う
ディスコブームの空気感をまだ色濃く残しています。
#1The Way You Love Me(US R&B#1)は、冒頭から脳天を直撃するシンセの音の雨に、抜けの良いスネアと
細かく入ったキックの作るグルーブに対して、タイトなリズム感の伸びやかなボーカルが絡みます。
シンセベースの存在感や、サビに入る瞬間のコーラスの定位感もど真ん中です。最高。
続く#2Secret Rendezvousは、如何にもMichael Jacksonの曲にありそうな進行と、
ブレス音のエロティックさ、メロディとユニゾンするシンセが時代を感じさせるダークで
キャッチ―なパターンミュージックです。ここでもやはりシンセベースが良い仕事しています。
中盤ではBabyface自身によるギターソロが光ります。アウトロのパワフルな歌唱は、
ソウルフルさの中にシティ・ミュージックの香りが湧き立っていて、これもカッコ良いです…
Steve Harveyプロデュースによる#3Slow Downは、少し落ち着いたリズムトラックと、
Steveのエスニックな香りを漂わせるフレージングが印象的なキーボードが聴き所です。
テンポを落として彼女のボーカルがフィーチャーされたバラードの#4Superwoman(US R&B#1)は、
高音域で僅かに歪むトーンのリードヴォーカルと、透き通った柔らかいコーラスが対比的です。
再びダンサブルな#5Family Manは、シンフォニックなBabyfaceのキーボードが耳に残ります。
Babyfaceとのデュエット曲#6Love Saw Itは、彼の、豊かなチェストから独特なファルセットへの
抜き方に耳を奪われます。その反面ハイトーンの伸びは非常にパワフルです。
#7Don't Mess with Meは、サビでのコーラスが疾走感を作る一際ファンキーな一曲です。
ドラムスの音も一層大きくなっています。
Dann Huff(G, Taylor Swift, Celine Dion, Mariah Carey, Michael McDonald etc)の
一点の曇りもないトーンのバッキングが映える#8Tell Me Tomorrowは、クワイエットストームな
バラードですが、ドラムは結構手数が多いです。
シンフォニックなシンセの分厚い音も良く合っています。
飛び切りポップなJeff Lorberの#9One Wishは、彼自身のガラスの弾けるようなキーボードのバッキング、
ハーモニカソロのような温かさのあるソロが最高です。
偶然中古CDショップで見つけて購入した一作ですが、時代の音と言う感じがして、
録音も良くてこれは文句なしの収穫でした。

The Way You Love Me

Secret Rendezvous

Superwoman

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  1. 2014/03/25(火) 02:36:03|
  2. Karyn White
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

今日の一枚(275)

Album: ROTATION
Artist: Shogun
Genres: Fusion, Rock

Rotation.jpg


1979年に作曲家、ギタリスト、ボーカリストの芳野藤丸(1952-)を中心として、
スタジオミュージシャンを集めて結成された日本のフュージョンバンド。
前身となったのは、同じく芳野がリーダーを務めたOne Line Bandと言うバンド(メンバーは同じ)で、
Yellow Magicというハワイ録音の唯一のAORのアルバムを発表しています。
当時日本テレビで辣腕を振るっていた音楽プロデューサーの飯田則子に見出され、
テレビドラマ「俺たちは天使だ!」(1979)の音楽を担当することとなります。
主題歌となった男達のメロディーは、50万枚を超える大ヒットとなり、
続いて松田優作主演の同年のテレビドラマ「探偵物語」の音楽、主題歌#6Bad Cityも
任されることとなります。
それゆえ、1stのShogun(1979年6月)と2ndのROTATION(1979年12月)は、番組のサウンドトラックとしての
意味合いが強いと考えられます。実際に、楽曲の多くがBGMとしてアレンジされ、使用されています。
3rdのYou're the One(1980)はノンタイアップで制作されましたが、その後まもなくメンバーの
麻薬所持が発覚して活動を休止することとなります。
彼らの存在を知ったのは、意外なことにも以前当サイトで紹介しましたJohn Valenti
(詳しくはJohn Valentiの項を参照)のI Won't Change(1980)と言う楽曲が、
Shogunの有名曲「男達のメロディー」(1979)と酷似しているという指摘を両親から受けたことでした。
両者の作品は極めて録音時期が近く、そもそもJohn Valenti自体が日本での知名度で持っている
(というかI Won't Changeのアルバム自体が日本でしか発売されなかったという代物ですし)
ようなアーティストであることを考慮すると、偶然の一致ではないような気がしてならないのですが…
実際はどうなのか解りません。まあ今となっては時効なのでしょう。
Curtis MayfieldのTripping Outと山下達郎の甘く危険な香りとかも偶然の一致だと
おっしゃっていますし。気にする方が野暮なのかもしれません。歌詞は全編英語詞です。
#1As Easy As you Make Itは、ミッチー長岡のギラギラしたスラップを絡めたファンキーなリフを
中心として、緊張感のあるブラスが厚みのあるフュージョンです。
#2Imaginationは、椎名林檎のレコーディング参加や吉田美奈子のプロデュースでも知られる
山木秀夫(Dr)のスピード感あふれるフィルと、大谷和夫のスペイシーな音色のキーボードによる
キャッチ―なテーマが繰り返される中で、ファルセットで巧みに歌う長岡のボーカルもジャジーな
空気を演出します。それにしても隙のない演奏です…お気に入り。
#3Sailor-Sailorは、ヴィブラフォンのような音の印象的な不穏な冒頭から、
パーカッシブでファンキーなホーンでポップに進行し、サックスのロングソロがあります。
やはり山木秀夫のスネアやタムのボスっとした音は最高です。
#4Yesterday, Today And Tommorowは、フェイザーの掛かったようなシンセがうねる中で、
朗々と歌う芳野の豊かな低音が包み込むような前半と、ミュートの効いたリズムギターや
シンコペーションの効果的に入ったベースラインがゆったりとした曲の中にグルーブを作ります。
#5Margaritaは、キメの大仰さに流石に時代を感じるもののフュージョンらしい疾走感のあるパートから
メロウなコーラスが絡んで来るパートへと変化しながら、絶妙にアクセント移動しつつずらしてくる
リズム隊の妙も堪能できます。これもお気に入り。
探偵物語の主題歌#6Bad Cityは、ハーモニカソロによる哀愁漂う導入から、歯切れの良いコーラスと、
ノリノリなベースラインで腰に来るグルーブがあります。右チャンネルを流れる歪んだギターの
バッキングはパンキッシュな響きがありながら、ホーンが大袈裟に盛り上げています。
ストリングスをバックに切々と歌うバラード風の冒頭から、一気にハードロックなギターリフで疾走する
展開に驚かされる#8I Should Have know Betterは、サビでのコーラスが作る蕩けるようなハーモニーに
続いてパワフルなフィルが入り、長いギターソロでクライマックスを迎えます。
ソウルっぽいフィーリングのある#10Lonely Manは、合間合間に手数の多いキメが入って行き、
ダンサブルに展開していく一際黒い一曲です。息の長いカッティングフレーズが印象的で、
入り組んだリズムの中を軽々と歌いこなしていくボーカルもかなりの上手さだと思います。これも最高。
当時の優れたスタジオミュージシャンを集めて録音されていることもあって、
70年代末のフュージョン/ディスコブームの時代が訪れる直前の熱気を感じる音だと思います。
ドラマのファンだけでなく、同世代にももっと広まって欲しいところです。

As Easy As you Make It

Imagination

Bad City

Lonely Man

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  1. 2014/03/24(月) 23:19:20|
  2. Shogun
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今日の一枚(274)

Album: The Story Goes...
Artist: Craig David
Genres: R&B, Pops, 2-Step, House

The Story Goes


イングランド、ハンプシャー州サウサンプトン出身のMC, シンガーソングライター。1981年生まれ。
デビュー当初の90年代後半は、当時流行だったハウスミュージックの形態である2-Step
(UKガラージとも言い、特徴的なキックの配置と、それによるリズムのズレで
特有のグルーブを生み出します)の代表的なユニットであるArtful Dodgerのアルバムに
参加するなどして活動を始めます。彼らのシングルのIt's All About the Stragglers(1999)が
全英2位の大ヒットとなり、ソロデビューのきっかけとなります。
その後もメンバーのMark Hill(1972-)とはタッグを組んで活動しており、彼のソロ作の多くの
楽曲を共作し、プロデュースしています。
1stのBorn To Do Itは世界20か国以上で200万枚、トータルでは800万枚の売り上げを記録し、
2009年のMTVが選ぶ歴代ベストアルバムではThriller/Michael Jacksonに続いて2位を獲得するなど、
鮮烈なデビューを果たすことになります。本作はTelstarからWarnerへとレコード会社を
移してから初めて発売された2005年作の3rd。1stの印象ではダンスミュージックやハウスなど、
ダークな雰囲気で、クラブミュージック寄りなサウンドのイメージが強い彼ですが、
本作ではかなりオーガニックなサウンドに変化しており、80年代後半のブラックコンテンポラリーに
近いポップス寄りのR&Bで、メィディアムからスロウな楽曲が多い構成になっています。
発売当初は戸惑ったファンが多かったのかもしれませんが、筆者としてはこういう作風も大好物です。
とはいえ、#9Just Chillin'のようなアップテンポなクラブミュージックも収録されています。
入り組んだメロディを軽々と歌っていく#1All The Wayは、ナチュラルで軽さのあるミックスの
コーラスが耳を優しく撫でるモダンなR&Bです。
#2Don't Love You No More(I'm Sorry)は、アコギのキラキラとしたソロが聴き所です。
打ち込みの生々しいキックに対して、フィリーな感触のあるストリングスアレンジがリラクシングです。
お気に入り。#3Hypnoticは、手数の多いキックとパーカッションの作る複雑なリズムの中で
文字通りセクシーなボーカルが炸裂しています。息漏れ感の強いファルセットは素晴らしい。
ここでも右チャンネルにはアコギがフィーチャーされています。
自身の幼少期の暗い過去を描き出した歌詞が刺さる#5Johnnyでも、アコギの音が悲しげに響いて来ます。
後半部のコーラスの心地よさは極上です。
弾き語りから始まってストリングスとスネアが入ってくる#7One Last Danceは、
禁断の愛を描いた歌詞とは対照的に穏やかなサウンドでこのギャップが素晴らしいです。
左チャンネルの鮮やかなアルペジオが心地良い#8Unbelievableは、
シンプルなアレンジで、ブレイク後のストリングスの盛り上がりも穏やかです。
冒頭から強調されたビートでダークに始まる#9Just Chillin'も、途中からはアコギのカッティングが
入ったり、電子音による修飾が入ったりとまた少し異なる味付けがされています。お気に入り。
#10Thief In The Nightは、忙しない歌メロと強調されたキックが作るソリッドなサウンドで
背後で鳴るローファイなストリングスと、隙間を縫うようにキーボードやアコギが入ってくる
アレンジも、無駄な音が無く洒脱です。
サビでのボーカルの包み込まれるような定位感が心地よい#12My Love Don't Stop、
ブリッジからの展開は王道ですが、ファルセットでの透き通ったロングトーンは最高。
#13Let Her Goは、ベースのリフと、繰り返しの多いメロ部分でゆったりと進行し、
見せどころのファルセットで聴かせるクワイエットストームっぽい空気のある佳曲です。
キャッチ―で中毒性のある楽曲は少ないですが、聴くほどに彼のボーカルの、
弱々しく聴こえながらも、よれずに芯を失わない巧みなボーカルに浸れる作品に仕上がっています。

All the Way

Don't Love You No More(I'm Sorry)

Hypnotic

One Last Dance

Just Chillin

Let Her Go

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  1. 2014/03/24(月) 00:49:50|
  2. Craig David
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今日の一枚(273)

Album: Munia: The Tale
Artist: Richard Bona
Genres: Jazz, Fusion, World Music

Munia The Tale


カメルーン東部、ミンタ村出身のジャズ/フュージョンベーシスト、マルチプレーヤー、
シンガーソングライター。1967年生まれ。幼いころから教会で歌い、バラフォン(瓢箪を共鳴体として、
蜘蛛の糸による膜を張った木琴の一種で、主に西アフリカで用いられる民族楽器)などの
楽器を演奏していた彼は、カメルーン最大の都市であるDualaへと移住したのち、
ジャズに触れることになります。初めはギターを弾いていましたが、Jaco Pastoriusのソロ作に出会った
ことをきっかけにしてベースを始めるようになったと言われています。
22歳でドイツのデュッセルドルフ、フランス(同郷のサックスプレーヤーであるManu Dibango、
マリ出身のシンガーソングライターで、本作にゲストボーカリストとして参加しているSalif Keita、
70s初頭のフレンチポップを代表するシンガーソングライターの一人であるJacques Higelin
などと知り合います)そしてニューヨークへと渡り歩き、2002年にはPat Metheny Groupにボーカリスト、
パーカッショニストとして参加することになります。
他にもMike Sternや渡辺貞夫のツアーメンバーとして、渡辺香津美、Horacio Hernandezとの
トリオとしても活動し、Joe Zawinul, David Sanborn, Brecker Brothers, George Benson,
Chaka Khan, Steve Gaddなど、名だたるミュージシャンとの共演を果たします。
ニューヨーク大学Steinhardt School of Culture, Education, and Human Development
のジャズ科教授も務めています。超絶技巧のベーシストとしても知られる彼ですが、
ボーカリストとしての才能もずば抜けたもので、繊細な中に優しさや暖かみを感じさせるような
倍音の豊かな声質と言い、一糸乱れぬ安定感のあるコーラスワークに思わず
夢中になって聴いてしまいます。本作も、技術を見せつけるようなハードフュージョンではなく、
自身のルーツとなる母国カメルーンの音楽とジャズフュージョンの極めて高度な融合が図られた、
完成された上品な歌ものに仕上がっており、ベースのフレーズ一つ一つはそれを最大限に引き出すために、
無駄な音は一音たりとも無く構築されています。2003年作の3rd。
柔らかいウィスパーボイスによるコーラスに生々しく包み込まれるアカペラの#1Bonatology(Incation)に
続き、#2Kalabancoroは、Vinnie Colaiuta(Dr)の、聴いた瞬間彼と分かる鋭く抜けの良いドラムスが
印象的な冒頭から、中間部のアシッドジャズっぽい展開でカッティングソロやFulani Fluteの
空気漏れのある独特な高音が印象的なソロが素晴らしいです。
とにかく録音が最高に良いです。ここ最近聴いた中で間違いなく一番です。
#3Sona Mamaは、アンビエントのように空間に散りばめられたミュートの効いたカッティングや、
抑制されたフレージングの中でキラキラと光るスラップの音の粒がただただ気持ち良いです。
なんて上品な音のベースなんでしょう…コーラスの生々しさも見事です。
#4Painting A Wishは、Kenny Garrettのサックスが歌うインスト曲で、Jacoを思わせるような
独特の音作りです。ピアノソロがあってからは繊細なシンバルレガートを絡めながら
フリーキーに展開していきます。
#5Engingilayeは、キャッチ―なギターリフを中心としていながらも、ベースのツボを押さえた
歌わせ方が最高です。緊張感のある大仰なキメを繰り返して行きながら、
合間合間に入ってくるコーラスは鳥肌ものです。
#6Dina Lam(Incantation)は、アルペジオと少し不穏なキーボードが微かに鳴る中で
切々と歌い上げられる前半から、パーカッションが入ってベースのリフが密室的なグルーブを作る
中でダークに展開する後半へと色合いを変えていきます。
#7Balemba Na Bwembaは、Colaiutaの叩くストレートなリズムに、歪んだギターが遠い位置で鳴る定位と、
耳元で囁くようなコーラスの定位感が心地良い一際ポップな一曲です。
ポリリズミックに聴かせるアフリカンなパーカッションの入り方も素晴らしいです。
A.T.Nによるアコーディオンの楽しげな音、軽やかなスキャットが聴き所です。
アコギ弾き語りから始まる#8Muto Bye Byeは、2:30あたりからピアノとベースによる長い
インタープレイが入っています。
赤ん坊の笑う声から始まる#9Bona Petitは、右チャンネルを流れる音数少ないカッティングや、
雨だれのような柔らかなドラムの音が作るリズムに、
ピアノによる短いテーマのフレーズで曲にメリハリが付いています。アコギのソロは白眉。お気に入り。
子どもたちがワイワイと遊ぶ音がSEとなりつつRhodesっぽいキーボードと、
本作では珍しく前面に出たベースがサックスとユニゾンしながらメロディを弾いていく#11Playgroundは、
シングルノートの音の消え際やプリング時のアタック音のような、
一つ一つの音が生まれてから消えるまで、全ての瞬間瞬間の非常に細かい部分まで
神経が行き渡ったような、それでいてリラックスしたプレイを聴くことができます。
どの楽曲も、モーダルな、と言うべきなのかどうか分かりませんが、独特の浮遊感があって、
繊細で、生々しい録音やアレンジの妙も相まって、奇跡的なグルーブに浸ることができます。
現代の大天才の一人と言って、間違いないのでしょう。

Kalabancoro

Sona Mama

Engingilaye

Balemba Na Bwemba

Bona Petit

Playground

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  1. 2014/03/22(土) 01:36:10|
  2. Richard Bona
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今日の一枚(272)

Album: The Life And Soul
Artist: Mamas Gun
Genres: Pops, Funk, Soul, Folk Rock, Soft Rock

The Life And The Soul


イギリス、ロンドン出身の5人組ポップス、ファンク、ソウルバンド。2008年結成。
イギリス国内での人気よりも、特に日本のラジオでのパワープレイの影響も相まって、
国内での人気の高いバンドの一つだと思います。
ソウルとはいってもブルーアイドソウル色の濃い内容で、レコードショップなどの売り文句では
Jamiroquai meets Maroon 5などという何ともミーハーなキャッチフレーズで紹介されたバンド、
ということらしいですが、実際大きく外れてこそいないものの、Jamiroquaiに代表されるような
90年代のUKソウル、すなわちアシッドジャズと言われる音楽自体がSly & The Family Stoneのような
サイケデリック・ソウルや初期のYoung Rascalsのようなブルーアイドソウル、
James Brown流のファンク、或いはディスコと言ったような音楽のクロスオーバーであり、
Maroon 5に至っては、彼らが最も影響されたStevie Wonderの諸作や80sのアメリカのR&B、ポップス
と言った音楽を遡って考えていく必要があると考えます。
(本作はJamiroquaiのようなダンサブルなクラブミュージックとしての色合いは薄いです。
そうしたSamuel Purdey的なものを求めるなら1stのRoots To Richesがおすすめです。)
リーダーであるAndy Platts(Vo)は、作編曲とプロデュース、アルバムアートワークなども
同時に手掛けるマルチプレーヤーで、 Rex Horan(B)はオーストラリアのファンク・メタルバンドである
Cinema Pragueのテクニカル系ベーシストです。バンド結成のきっかけとなったのは、ギタリストの
Terry LewisとAndy Plattsが共にネオソウル、サイケデリックソウルのシンガーであるLewis Taylorの
ファンであったということらしく、彼の作品も、今後探していきたいと思っております。
#1Reconnectionは、And Plattsの美麗なファルセットのソウルフルな歌唱が際立ったポップロックで、
アウトロのコーラスが爽やかです。Dave Oliberのハモンドがソウル色を漂わせています。
表題曲の#2The Life And The Soulは、シングアロングするコーラスと、ゆったりとした
コードカッティングの作る温かいグルーブが印象的です。
イントロからのキメを中心にしてメロウに展開していく#3We Make It Look So Easy、
パワープレイに選ばれた#4On A Stringは、シンセベースの独特な音色と、
耳を撫でるようなリズムギターのバッキングの中で、フィリーソウルなストリングスが遠くで鳴る
トラックで、リフレインするサビメロもキャッチ―で素晴らしい。
#5Infernoは、裏を弾くカッティングと、太くスラップを絡めたベースラインでどっしりと進行する
前半部分から盛り上がるにつれて、よりスウィンギーに展開してきます。
スペイシーなMoogシンセサイザーの音がアクセントになっています。お気に入り。
#6Heavy Handsは、キーボードの激しいバッキングと、ワウの掛かったギターソロが聴き所です。
アウトロでのゴスペルライクなコーラスをバックに歌い上げるボーカルも素晴らしい。
ハモンドオルガンの弾き語りで始まるノスタルジックなウェストコーストサウンド、
#7Sending You A Messageに続いて、ファルセット気味なStevie Wonderとでも言うような思い切った
ボーカルと、一段と肉体感を増したファンキーなリズム隊の作るグルーブが楽しい
#8Rocket To The Moonは、JBっぽいカッティングソロもあり、シャウトあり、
George Clintonのような低音ボーカルありのハイブリットなファンク。お気に入り。
現代の英国ソウルのメインストリームで活躍する女性ソウルシンガーBeverley Knight(1973~)との
デュエット曲#9Only Oneは、大仰なストリングスアレンジとピアノの目立つシンプルなバッキングで
二人の掛け合いを楽しむことができます。これもまた良いです。
#10The Artは、ピアノ弾き語りにストリングスを加えた内省的な歌詞のバラードで、
右チャンネルを微かに流れるローファイなリズムがモダンなテイストを出しています。
ベースのリフとパワフルなボーカルのみでずっしりと始まっていく#11Get A Highは、
徐々にラウドになっていき、Keith Moonばりの手数の多いフィルが入るなどロックになりつつ
戻りつつを繰り返しながら盛り上げていきます。配されたコーラスもサイケデリックさを演出します。
日本版ボーナストラックとして収録された#13Karmaは、鮮やかなシンセを背後にして
太いベースとディスっぽいダンサブルなリズムとキャッチ―なサビや歪んだギターの
サイケデリックなソロが同居した一曲です。これも最高。
多くの曲で古いアナログシンセの音色が積極的に活用されていたり、
古典的なソウルの影響が大きくみられること、69年に鳴っている音を再現したいという本人たちの
言葉通り、90sUKソウルの派生と考えるよりも、そうしたソウルミュージックの源流から派生した
現代型のポップミュージックと捉えるべきだと思います。非常に面白い若手バンドです。

Reconnection

On A String

Inferno[Live]

Rocket To The Moon

Only One

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  1. 2014/03/21(金) 15:11:00|
  2. Mamas Gun
  3. | トラックバック:0
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今日の一枚(271)

Album: Picture Book
Artist: Simply Red
Genres: Pops, Blue-Eyed Soul, R&B

Picture Book


イングランド、マンチェスターで1985年に結成されたポップロック、ブルーアイドソウル、
ソウルバンド。ボーカリストであり、2010年の解散まで在籍していたオリジナル・メンバーの
Mick Hucknallを中心としたソロ・プロジェクトの色合いが強いバンドで、
長い歴史の中で幾度もメンバーチェンジを繰り返しながら活動してきました。
初期にはJames Brownのオープニングアクトとしても活動していました。
解散時のメンバーには日本人ギタリストである鈴木賢治も在籍していたり、
90年代にはドラマーとして屋敷豪太が参加するなど、邦人のメンバーも在籍していました。
彼らの最初期のヒット曲である#6Money's Too Tightは、The Valentine Brothersによる
ソウルの楽曲のカヴァーでしたが、Billboard R&B chartsで41位を獲得し、
40か国以上でトップ40に入ることになります。
続く3rdシングルHolding Back the YearsもUS Billboard Hot 100で1位、
UK Singles Chartでは2位を獲得し、その名が知れ渡ることととなりました。
ジャズシンガーのJimmy Scottのカヴァーでも知られています。
メンバー全員が白人と言うわけではないですが、Paul Youngなどと並んで
英国のブルーアイドソウルの代表的なグループの一つだと思います。
2ndアルバムのMen And Womenでは知る人ぞ知るモータウンのプロデューサーLamont Dozierが
作曲に関わるなど、キャリア初期から大きな期待を寄せられていたことが窺われます。
Simply Red結成以前、彼らはSex Pistolsに影響を受けたThe Frantic Elevatorsというパンクバンドで
活動をしていたこと、若くしてスタックスなどのソウルを始めとするブラックミュージックに
惹きつけられ、ジャズ的な色合いを持ったサウンドを生み出していったことなどを考えると、
同時期にイギリス国内で活躍していたPaul Weller率いるStyle Counsilを思わせる
部分があります。(サウンドの指向性は異なっていますが)本作は1985年作の1stです。
プロデュースはThe Crusaders, B.B. King, Sly Stone, Boz Scaggs, David Sanbornなどで
知られるStewart Levineが行っています。
#1Come To My Aidから、Tony Bowers(B)とChris Joyce(Dr)の生み出すグルーブはソウル色は薄く、
むしろロック色の強いパワフルなバッキングで、歯切れの良いカッティングや
時代を感じさせるシンセが絡みつくことによって仄かなブラコンっぽさを漂わせています。お気に入り。
ダークなベースのリフで、ノーコードで始まって行く#2Sad Old Redは、
抑制されたSylvan Richardson(G)のバッキングが際立つジャジーな一曲。
アメリカンプログレハードの如くソリッドなイントロから始まる#3Look At You Nowは、
ブラスが入ってファンキーになっていく展開が意外性があってまた良いです。
レゲエの影響がみられるリズムワークとカッティングが異色な#4Heavenに続いて、
再びブラコン色の強く、ファルセットのメロウなボーカリゼーションが素晴らしい#5Jerichoへ。
キーボードのキラキラした音作りや単音カッティングのフレージングは完璧にツボです。
ヒット曲の#6Money's Too Tightは、やはりリズム隊のへヴィ―な演奏が伴って、
ファンキー中にロックグルーブがあります。荒々しいボーカルも最高。
テンポを落としたジャジーなバラード#7Holding Back The Yearsは、
音の隙間を縫うようにして配されたストリングスと、レゲエっぽいグルーブを創出するカッティングが
独特な浮遊感を生み出しています。伸びやかで曇りのないハイトーンで聴かせます。
ドロドロしたファンクなサビと、キーボードのリフでひたすらに押しまくる#8Red Box、
イントロからのギターリフを保ったまま一気にパワフルに歌い上げる#9No Directionは、
間奏の怪しげな掛け合いに思わず笑みがこぼれます。コール&レスポンスできそう。
ストリングスと重いリズム隊の作るグルーブだけで聴かせる#10Picture Bookは、
途中からブラスが入り、壮大に終わっていきます。
如何にもブルーアイド・ソウル的な作風を求めるならA New Fame(1989)などが良いでしょうが、
本作にはまだ影響を受けたジャンルの音楽が完全に消化され切らずに混じり合っている感じがあり、
そのテイストが楽曲の多彩さになって表れていると思います。

Come to My Aid

Look at You Now

Jericho

Money's Too Tight

Holding Back The Years

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  1. 2014/03/16(日) 23:47:12|
  2. Simply Red
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

今日の一枚(270)

Album: MODERN MUSIC
Artist: ムーンライダーズ
Genres: Rock, Post Punk/New Wave

Modern Music


1975年に鈴木慶一(1951-)を中心として結成された日本のロック/ニューウェーブバンド。
71年から3年間活動していた、はちみつぱいというバンドが前身で、
結成当初はアグネス・チャンのバックバンドとして活動を続けていました。
76年に火の玉ボーイ(鈴木慶一とムーンライダーズ名義)でデビューを果たしてから、
ポストパンクやニューウェーブ、テクノの台頭という時代のムーブメントにリアルタイムで影響を受け、
1979年作に発表された5th。次作のカメラ=万年筆(1980)では徹底した欧州的な(違う言い方を
すればハイファイで、プログレ的な)ロマンチシズムの排除と、XTCのようなニューウェーブ特有の
グルーブのあるリズムパターン、ローファイな音の中に、
当時YMOの坂本龍一などが取り入れていたダブなど手法の影響が見られる、
「洗練された」音楽性へと進んでいくことになりますが、今作ではまだそういったロマンチシズムが
随所に残っており、見方によってはプログレ的であったり、ハードロック的であったり
フォークロック的であったりと様々なイディオムが見られ、
かなり流動的な手法でニューウェーブに迫った、ダークで掴みどころのない
不思議な作風になっていると思います。
冒頭のギターリフからクラシックロックかと思わせながら、中間部ではボーカルエフェクトの
強くかかったKraftwerkなテクノポップへと展開していく#1Video Boyから驚かされます。
ただリズム隊はきちんとロックしておりドライブ感があるのがまた非常に個性的です。素晴らしい。
岡田徹(Key)作曲の#2グルーピーに気をつけろは、歌謡曲っぽい湿り気があるメロディに、
淡々としたリズム隊の演奏をよそに、中間部でのアンビエントな電子音が陰鬱な印象を与えます。
鈴木博文のベースラインがディスコビートを感じさせるフレーズで、
ダンサブルなグルーブがある中に、淡々とした低音コーラスが渋い#3別れのナイフは、
ディレイによる長いギターソロが聴き所です。左右で交互に鳴るギターのバッキングがスペイシーです。
お気に入り。随所に入ってくるトレブリーなギターリフがキャッチ―な#4Disco Boyは、
名前ほどディスコしているかというと微妙ですがフェイクしたボーカルといい、
これもまた妖しい魅力があります。
#5Virginityは、すっきりとしたバッキングで、メロウなファルセットのコーラスやシンコペーション
の多いベースラインが際立っています。ギターソロはNiel YoungやBruce Springsteenのバンドで
弾いていたNils Lofgrenを意識しているそうですが、素晴らしい泣きっぷりです。
サビでのキメが時代を感じさせる#6Modern Loversは、本作の中でも特にコーラスの定位感が
素晴らしい一曲です。エモーショナルで喉頭の開いた力強いボーカリゼーションも圧巻です。
ハードロック的なイントロのギターがエモーショナルな#7Back Seatは、
ボーカルが入った途端にアンビエントな世界観に変わるのに驚かされます。
テープを途切れさせて作ったようなストリングスの音や、フリーキーに鳴り渡るシンセの音色が、
シルキーなギターサウンドと鮮やかな対比を見せています。お気に入り。
#8Burlesqueは、低音よりのブラスの音が作る分厚いトラックに、キュートな女性コーラスが
彩りを添えるヨーロピアンなメロディが異色な一曲。
#9鬼火は、一層へヴィ―になったドラムスの作る端正なグルーブに対して、
揺らめくシンセのバッキングや多種多様な音遣いはプログレ的ですらあります。名曲。
ニューウェーブと一口に言っても、ムーンライダーズの音楽はその範疇のみで語れるバンドとは
考えにくいと思います。むしろ70年代後半の東京と言う都市の生み出した音楽であるとだけ
定義した方が良いのかもしれません。音楽に対して遊び心があり、他の文化との文脈の中で、
享楽的に接していながら、その内側に(80sには薄かった)冷ややかな自己批判性と
先の見えない朧げな不安さを抱えたような、若者たちの
独特な空気を今にリアルに伝えてくれている気がするからです。
何度聴いても不思議な気持ちになる一枚です。

Modern Lovers

Video Boy[Live]

Back Seat

鬼火

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  1. 2014/03/16(日) 02:32:20|
  2. Moonriders
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今日の一枚(269)

Album: 25
Artist: 花澤香菜
Genres: Pops, Soft Rock

25.jpg


東京都出身の声優、歌手。1989年生まれ。ネオ渋谷系の関連作品として前作も当サイトで
紹介しましたが、1年ぶりに待望のニューアルバム発売ということで中身を見てみて
2枚組ということでまず驚きます。2014年作の2nd。今作のタイトルと収録曲数は、
彼女の現在の年齢から決められたらしく、また今回は多くの楽曲で作詞を岩里祐穂
(今井美樹、坂本真綾、中山美穂、布袋寅泰、他多数)が担当しており、彼女と相談しながら
自身の思い出や具体的なエピソードを歌詞に反映させて制作するなど、
作家指向の強かった前作からより内省的な作風を指向しているように感じます。
サウンドプロデュースは今作もRound Tableの北川勝利が担当しており、
渋谷系の香りが湧き立つ楽曲も多くありますが、前作よりもロックグルーブのある
オルタナやシューゲイザーっぽい音作りの曲やボーカルとサックスのみの楽曲、
R&Bっぽい打ち込み系のトラック、パンクロックなど、大きく変化が見られています。
彼女自身のボーカル表現はかなり成長が見られ、楽曲ごとに演じ分けるが
如く曲のイメージに合わせた歌唱ができていると思います。
前作に続いて非常に音質が良く、特に打ち込み系の音は輪郭がハッキリとした音で、
密室的な音像が彼女の耳元で囁くようなボーカルと完璧に嵌っていて最高です。
得意のポエトリーリーディングも素晴らしいです。
作家陣は、北川勝利の他にあのポスト渋谷系の伝説的なバンドであるCymbalsの矢野博康と沖井礼二、
Nona Reevesの奥田健介、カジヒデキ、中塚武、宮川弾など、40台前半の、90年代から活躍し続ける
凄腕のポップス作家達が今回もこぞって参加しています。
収録楽曲が多いため、掻い摘みつつ解説していきます。

[Disc1]
一人多重コーラスによるドゥーワップ風のイントロダクション#1バースデイから始まり、
軽やかなポップロック#2 25 Hours a Day、リバーブの掛かったスネアとブレイクビーツ風に
配置されたハイハットの作るグルーブに、入り組んだメロディを軽やかに歌っていく
#3Brand New Daysは矢野博康作のR&B風な一曲です。お気に入り。
北川勝利作編曲の先行シングル#4恋する惑星は、パーカッシブで疾走感のある
ストリングスのアレンジと、サビの泣きのあるメロディが王道ですが素晴らしいです。
ドラムスは軽めでフュージョンライクです。
#5マラソンは、前作には無かったようなロック的なダイナミクスのあるパワフルで手数の多い
ドラミングに、スペイシーな定位感のコーラスとギターのバッキングでオルタナっぽく
進行していきます。異色な一曲。西寺郷太と奥田健介のNona Reevesペア制作の
#6Yesterday Boyfriendは、打ち込みの生々しいトラックと、後半部のサックスソロが
印象的なメロウなR&Bに仕上がっています。
ピアノのベースリフがキャッチ―でブラスが前に出た#7無邪気なキミと真夏のメロディは、
アニソンっぽいメロディラインと打ち込みに、ぬくもりのあるブラスの音と好対照を成しています。
少し歪んだシンセベースによるベースラインと、声の加工を施した電子音やコーラスが
ニューウェーブっぽさを滲ませる#8Make A Defferenceは、サビのバックでウィスパーによる
コーラスが入っているあたりが上手く彼女のボーカルを活用していると思います。良曲。
沖井礼二作曲の#9旅立つ彼女と古い背表紙は、キラキラとしたSEとコーラスの作るポップな音像の中で、
ドライブ感のあるドラムスとメロディックなベースが際立ちます。ストリングスアレンジは長谷泰弘です。
左チャンネルを流れるカッティングがグルーブを支配する#10Summer Sunsetは、
メロ部分のフレーズのカッコ良さに思わず耳が行ってしまいます。
ポップスのバッキングで、ミュート加減を調節しつつ単音カッティングを絡めながらジャジーに
弾いていくようなフレーズは、個人的に大好物です。気持ち良いです。
アウトロのキーボードのロングソロソロのバックでトレモロするギターもまた良いです。
宮川弾作曲の#11同心円状のディスタンスは、随所にキュートな台詞が入ったりしつつ
ネオアコ風にまとめています。アコギのバッキングも生々しい音です。
間奏部分の電子音の配置で個性的に仕上がっていて面白いです。メロディも結構捻りがあります。

[Disc2]
宮川弾作曲の#1片思いが世界を救うは、相変わらず音の重ね方が多彩で面白いポップスに
仕上がっています。断片的に用いられたコーラスと、フォーキーなアコギの中で、
クランチのギターサウンドが映えています。
カジヒデキ作曲の#3パパ、アイ・ラブ・ユー!!は、16ビートの軽やかなカッティングと
フュージョン風のビートの中で、高音の煌びやかなトーンで入り組んだメロディを巧みに歌っていきます。
やはりコーラスの定位感は鳥肌もの。
高校時代から個人的に親交のある、声優の浅沼晋太郎が作詞を担当した#4Eeny, meeny, miny, moeは、
ドラムンベースなリズムトラックに、ディレイとリバーブの掛かったギターのバッキングは
シューゲイザー的です。サックスとボーカルのみの編成で録音されたインタールード#5粉雪を挟んで、
北川勝利には珍しい作風の爽やかなパンクロック#6Young Oh! Oh!は、ボーカルの声量の少なさを
感じさせない透明なコーラスアレンジで聴かせます。
一転してジャジーなクリーントーンのカッティングと、フィルの心地よいベースラインで
妖しく展開する#7曖昧な世界は、途中で何度かテンポチェンジが繰り返されており、
ドラムスのベロシティの変化も伴って曲に見事な起伏が付いています。お気に入り。
サックスソロが入ってからの展開も渋いです。
打ち込み然としたリズムに、スペイシーなキーボードや、単音リフとアコギのバッキング、
サックスの温かさのあるバックでメロウにアレンジされた#8真夜中の作戦会議は、
オクターブを絡めたギターソロが白眉です。これも素晴らしい。
Base Ball Bearの小出祐介提供した#10last concertは、ノイジーなディストーションギターが
ノイズのように流れる中で、ストリングスが緩やかに流れる中で歌い上げるボーカルが異色な一曲。
曲後半に長いポエトリーリーディングが入った#11花びらに続いて、
耳に残るシンセのリフで始まるテクノポップ的なニュアンスが漂う#12Good Conversationへと
繋がっていきます。
25曲どれをとってもそれぞれに個性とコンセプトがあり非常に濃密な内容ですが、
彼女の25年間の人生の場面場面を鮮やかに切り取りつつ詩的に構築する岩里祐穂の作詞と、
軽妙で洒脱であり、彼女の声を殺さない絶妙なアレンジを見せた北川勝利の功績は、
さらに評価されるべきものだと感じています。 

恋する惑星

Yesterday Boyfriend(CM)

Make A Difference

Official Youtube(CMサイズの試聴が出来るようになっています)

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  1. 2014/03/15(土) 22:10:54|
  2. 花澤香菜
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  4. | コメント:2

今日の一枚(268)

Album: Chet Baker Sings
Artist: Chet Baker
Genres: Jazz, Jazz Vocal, Cool/West Coast Jazz

Chet Baker Sings


アメリカ、オクラホマ州イェール出身のトランペット奏者、ヴォーカリスト。1929年生まれ。
米軍兵士だった彼は終戦後まもなくロサンゼルスにあるEl Camino Collegeで音楽理論を学び、
サックス奏者のStan Getzと共にVido Mussoのバンドで音楽活動を始めます。
1951年には、ビバップ革命を引き起こしたあのCharlie Parkerにトランぺッターとしての
才能を見出され、彼のウェストコーストでの作品群に参加することになります。
他にもGerry Mulliganのカルテットへの参加を経て、53年ごろからソロ(リーダー)作品をリリースする
ようになっていきます。本作は、彼自身がデビュー当初から興味を示していたヴォーカリストとしての
活動が形となった1956年作です。中性的なルックスと、その細く、儚げな甘さのあるボーカルで
人気を博していた彼ですが、60年代にはデビュー当初から服用していたヘロインなどの麻薬に
溺れていき、80年代にカムバックを果たすまで、堕落の一途を辿ることとなります。
収録されているのはミュージカルの楽曲やジャズスタンダード曲で、
自身は歌うだけでなくトランペット演奏も聴くことができます。
映画となったミュージカルVogues of 1938の主題歌#1That Old Feelingは、
インスト部分でのKenny Drewのピアノソロが光ります。Baker自身のトランペットは淀みのない
素朴な音で素晴らしいです。それにしても妖しい魅力のある声です。
映画Belle of the Yukon(1944)の#2Like Someone in Loveは、ゆったりとしたウォーキングベースと、
最小限の音数のピアノのバッキングに対して、息の長いフレーズをブレスを感じさせず囁くように
歌っていきます。#4My Idealは、Russ Freemanのチェレスタによる、オルゴールのように
耳を優しくなでるようなバッキングが印象的で、歌い終わった後のトランペットソロは、
夢の中の世界から醒めて、一瞬現実に引き戻されるような不思議な感覚に陥ります。
ミュージカルのGuys and Dolls(1950)からのデュエット曲#5I've Never Been in Love Beforeは、
Frank Sinatraのヴァージョンも勿論良いですが、こちらの方が柔らかく輪郭の細い感じが
似合っていて好みです。1922年のオールディーズソング#6My Buddy、MilesのBags' Grooveや
ColtraneのMy Favorite Thingsなどでも取り上げられた#7But Not For Meでは
かなりポップでアップテンポでスウィンギーなアレンジになっています。#8Time After Timeは、
トランペットソロの清澄なトーンを堪能できます。本作の中でも特に有名なカヴァーとなった、
ミュージカルBabes in My Armsの劇中歌#10My Funny Valentineは、他のどのバージョンとも
異なる気怠さと、それに伴う究極的な現実味の薄さ、浮遊感があります。
特別なボーカルテクニックやフェイクがあるわけではないのですが、この揺らめく感じというか、
各フレーズの語尾が空間に消え入っていく感じは何物にも代えがたいものだと思います。最高です。
キャッチ―なイントロのメロディで掴まれる#12I Fall in Love Too Easilyは、
一音一音が明瞭に分離され、淡々としたクールなトランペットと、ボーカルの間に挿入される
ピアノのフレージングは都会的です。再びポップになった、#14Look For The Silver Liningでは、
楽しげで動きの多いなベースラインと、中間部のピアノソロが聴き所です。
どの楽曲でも、圧倒的な声量があったりテクニックがあったりと言うわけではないですが、
夢うつつの状態とでもいうような、正しく薬物のような魔力があるボーカルだと思います。
バッキングは、クールジャズの流れを汲んだ、50年代のウェストコーストジャズ特有の
理性的で、冷ややかなサウンドをそのまま形にしていて、時代の音を切り取った作品になっています。

That Old Feeling

Like Someone in Love

My Ideal

I've Never Been in Love Before

My Funny Valentine

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  1. 2014/03/11(火) 02:34:46|
  2. Chet Baker
  3. | トラックバック:0
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今日の一枚(267)

Album: Head Hunters
Artist: Herbie Hancock
Genres: Jazz Funk,Electric Jazz, Fusion

Headhunters.jpg

アメリカ、イリノイ州シカゴ出身のジャズピアニスト、キーボーディスト。1940年生まれ。
ゴスペルやR&B、フォークとジャズとのクロスオーバーに取り組んだトランペット奏者である
Donald Byrdに見出され、1960年にデビューを果たします。63年にはMiles Davis Bandに、あの
Kind Of Blueセッションに参加したBill Evans(というよりKind Of Blueは
彼の作品と考えた方が良いかもしれませんが)に代わって参加することになります。
Hancockはモードジャズ黎明期からその何たるかを完璧に理解し、Maiden Voyage(1965)や
Speak Like A Child(1968)で見事なアンサンブルを聴かせています。
他にも80年代にはヒップホップとジャズのクロスオーバーを図ったFuture Shock(1983)など、
常に時代の先を読んだ先進的な作品を世に送り出しています。本作は1973年作のソロ13thで、
楽曲に#3Slyの名がある通り、ファンクとの大胆なクロスオーバーが図られており、
また当時最先端であったArp OdysseyやArp Soloistといったシンセサイザーや
Fender Rhodesといったようなエレクトリック・ピアノによる徹底的な電化路線が貫かれています。
シンプルなリフレインとコード進行をひたすらに繰り返す中で生まれる、
頭がクラクラするような強烈なグルーブの中で、流麗で繊細なアドリブをかましていきます。
バンドの中ではとりわけHarvey Masonのツボを押さえた攻撃的なフィルが印象的なドラミングが
アンサンブルを引っ張っています。
#1Chameleonは、イントロから繰り返されるベースのリフと、ワウの掛かった右チャンネルの
キーボードのバッキングに乗せて、バスクラリネットの低音が際立ちます。
7分あたりからharvey Masonのドラムスは激しくなっていき、同音連打の多いフレージングへと
変わっていきます。ベースソロがあり、ジャズドラマーならではのスネアの細やかな音色の作る
グルーブの中でハモンドのロングソロが一番の聴き所かもしれません。
残り2分20秒でまたドラムベースのみになるところも最高に痺れます…
#2Watermelon Manは、縦笛のような音色のキャッチ―なイントロに始まり、重くモタるようなドラムスの
と複雑に鳴るパーカッションの作るグルーブの中で、サックスがロングソロを取っていきます。
単音カッティングのようなパーカッシブなキーボードのバッキングが堪りません。
もろに名前を出してしまった#3Slyは、タイトル通りしっかりSly & The Family Stoneのような
ドロドロのファンクなっています。2分過ぎあたりから一気に手数が増えてポリリズミックに
展開していき、Bitches Brewセッションにも参加したBennie Maupinのサックスの
荒々しいブロウが光ります。中間部ではサンバキックを踏みながらのシンバルレガートで疾走しながら、
アウトしまくり、弾きまくりの激しいアドリブを聴くことができます。これも勿論最高です。
ブレイクがあって終わったかと思いきや、怪しげでエスニックな進行になり、
キメを繰り返しながら終わっていきます。
#4Vein Melterは、心臓が脈打つようなバスドラムと、強くワウの掛かったシンセが印象的な
冒頭から、左右に揺らめくシンセの残響が頭に響くアンビエントなパートへと繋がり、
またバスドラムだけになって静かに終わっていきます…
MilesのOn The Cornerなどと並んで、 エレクトリックジャズ、ジャズファンクからフュージョンの流れを
語る上で絶対に外せない、Billboard Jazz Chartで1位を獲得した彼の最大のヒット作にして問題作の一つ。

Full Album(高音質)

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  1. 2014/03/09(日) 22:12:04|
  2. Herbie Hancock
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

今日の一枚(266)

Album: Jackson Sisters
Artist: Jackson Sisters
Genres: R&B, Soul, Disco

Jackson Sisters


1973年にアメリカ、ミシガン州デトロイトで結成された姉妹5人組による女性ボーカルグループ。
僅か一枚のみのアルバムを残して1977年に解散しています。本作は1976年作の1st。
名前からしてJackson 5の一家の実妹であるLa Toya, Janet, Rebbieの3人と勘違いされやすいのですが、
彼らとは血縁関係のないグループです。ただし、グループのコンセプトとしては、
Jackson 5へのガールズサイドからの応答ということでTiger Lily Records Label
(最も有名な作品は俳優のRichard PryorによるソロアルバムのL.A. Jail(1976)と言われています)
からデビューを果たしています。彼女たちは実際に活動していた70年代には
大きな成功を収めることは無く(全米89位)、本作も活動期間中のシングル作品を寄せ集めて作られた
編集盤であると考えて問題ないようです。彼女たちの名前がマニアによって知られるようになったのは、
イギリスでのいわゆる「レア・グルーブ」の発掘がムーヴメントとして行われるようになった
80年代後半から90年代にかけてであると言われています。
日本でもこの曲が元ネタとなった楽曲が幾つかあり、最も知られているものは
ハロー!プロジェクト系のアイドルグループであるモーニング娘。の大ヒット曲Loveマシーン
があると思います。他にも最近の作品では日本のヒップホップグループであるRhymesterの
12ndシングルThe Choice Is Yours(2012)なども知られています。
プロデューサーとしては60年代後半から70年代初頭にMotownのプロデューサーとして
活躍し、 Marvin GayeとTammi Terrellのコラボレーション楽曲や、Diana Rossの所属していたSupremes,
そして70年代後半(つまり本作と同時期)にはBoz Scaggsの名作Slow Dancerを手掛けていた
Jonny Bristolが作曲とプロデュースを担当しています。
筆者が所有しているのは1998年にリマスターが行われた際のもので、
たまたま訪れた中古レコードショップの店長さんのお勧めで入手したものですが、
ライナーノーツによれば本作のリマスターはあのFree Soulのコンピレーション盤企画の一端として
Free Soul Collectionのオリジナル・アルバム・リイシューと言う形で発売された
もののようです。(橋本徹氏のコメントが掲載されていました)
どうやら2012年にもデジタルリマスターが行われているようです。ぜひこの機会にどうぞ。
#1Where Your Love is Goneは、ゆったりとしたリズムに、弱冠11歳から16歳のメンバーとは
思えない正確さと声量の分厚いコーラスワーク、高音のハリには驚かされます。
メロディアスで洗練されたソウルです。
#2Maybeは、右チャンネルを流れる音数の少なくトレブリーなギターが心地良いこれも
スロウテンポなソウルです。ハーモニカの感じと言いどす黒さはそれほど感じず、
ブルーアイドソウルにも通じるような聴きやすさがあります。
一気にポップで弾けるような#3Why Do Fools Fall In Loveは、ドラムスもラウドになり、
カントリーっぽさのあるカッティングと歌うようなベースラインでグル―ヴィーに進行します。
リードボーカルは少年のような声でJackson 5を聴いているかのようです。
ディスコっぽいキャッチ―なイントロで引き込まれる#4Day In The Blueは、
後半部になるにつれてテンポチェンジして行く展開が面白く、フィリ―ソウルっぽい
ストリングスアレンジも施されている一風変わった一曲です。お気に入り。
#5Rockin' On My Porchは、饒舌なオルガンのバッキングとコーラスのサビでの掛け合いが
スリリングな、これも飛び切りポップな一曲です。これも良いですね…
Johny Bristolによる#6Boy, You're Dynamiteは、手数の多くファンキーなドラムスと、
喉頭の下がった太く、力強い朗々とした歌唱が堪能できます。インスト部分で存在感を
発揮するストリングスも先見性のある音です。
#7Rock Steadyは、David Garibaldiのように叩きまくるドラムスと、Al McKayの如く
鬼のようなカッティングが鳴る怒涛のリズムに乗せて、リズムの間を縫うようにミュートの効いた
ブラスが入ってくる緊張感あるファンクナンバーです。これも最高にクールです。
#8Miraclesは、あの有名なLoveマシーンで使われたスリリングなキメを随所に配置しながら、
幼さの残るコーラスで聴かせる部分と各メンバーのソロボーカルの対比を楽しめ、
ハードなグルーブがあります。大名曲。
テンポを落としたスウィートソウルな#9(Why Can't Be We Be)More Than Just Friendsは、
全体を覆うストリングスの大仰さが時代を感じさせますが、オケの音の厚さに打ち勝つ力強い
ボーカリゼーションです。
アルバム最後を飾る切なげな#10Shake Her Looseは、後半にかけて張り上げていくボーカルの
パワーにひたすら圧倒されます。言う事なしです。
レアグルーブとは言っても、全体的に非常に洗練されたソウルやファンクの楽曲が詰まっていて、
流石はJohny Bristolと言う感じです。
こんなに素晴らしい作品をマニアだけが知る存在にして置くのは単純に勿体ないと思うほどです。
これからも沢山レアグルーブを探して行きたいと思うきっかけになったと思います。
レアグルーブ最高峰の一枚と言っていいでしょう。

Where Your Love is Gone

Why Do Fools Fall In Love

Day In The Blue

Boy, You're Dynamite

Miracles

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  1. 2014/03/08(土) 00:01:51|
  2. Jackson Sisters
  3. | トラックバック:0
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今日の一枚(265)

Album: I Won't Change
Artist: John Valenti
Genres: Soft Rock, AOR, Blue-Eyed Soul

I Wont Change


アメリカ、イリノイ州シカゴ出身のシンガーソングライター、ドラマー。1951年生まれ。
アリオラレコードでのソロ活動以前には、Puzzleというバンドでフロントマンとして活躍し、
白人のバンドとしてモータウンと契約を結び、(契約のためバンドメンバーと共にLAに移住)
2枚のアルバムを残しています。Puzzleでは、初期のChicagoやBlood Sweat & Tearsに近いような
ファンキーなサウンドを指向していました。ボーカルのスタイルとしてはStevie Wonderの影響を
公言しており、1stを出す直前のBobby Caldwellを思わせるような甘さを含んだトーンで、
1stのAnything You Want(1976)では11曲中7曲が自身により作曲、
2ndである1981年作の本作は11曲中4曲が自身により作曲されています。
1stアルバムは、表題曲のAnything You WantがBillboard Hot 100で37位にランクインした
こともあって、U.S. Black Album Chartで51位と言うスマッシュヒットとなりましたが、
80年に録音された本作は、何と米国本国では発売すらされず、AORマニアの多かった
日本でのみ81年に発売された、という非常にレアな作品ということだそうです。
本作はプロデューサーにSmokey RobinsonのBeing With Youを手掛けたGeorge Tobinを迎えて
制作されています。80年代初頭にはNatalie Cole、80年代後半にはTiffanyのプロデュースで
知られる彼ですが、彼のプロデュース作品にほぼ必ずと言っていいほど登場するのが
ギタリストであり作曲家のMike Piccirilloで、この人は Chaka KhanやLa Toya Jacksonに
楽曲を提供していたことで知られています。
バックを固めるスタジオミュージシャンは、Bill Cuomo(Key, Kim Carnes),
Scott Edwards(B, Stevie Wonder,Donna Summer, Hall & Oates, Tom Wates, T-Rex)など、
当時LAの売れっ子が参加しています。ドラムスにはDonald FagenのNightflyでの
プレイを始めとして、Steely Dan, Frank Sinatr, Four Tops, Diana Ross
など数多くのアーティストのレコーディングに参加しているEd Greeneと、
若き日のVinnie Colaiuta(Frank Zappa, Jeff Beck, Joni Mitchell, Sting etc)が参加しています。
筆者が所有しているのは2001年のリマスター版ですが、
これほど高品位な作品がどうしてアメリカ本国で発売されなかったのか本当に疑問です。
#1Who Will It Beは、大仰なシンセのイントロが時代を感じさせるミディアムテンポの一曲です。
Ed Greeneの端正なドラミングとサビでのキメが懐かしい感じです。
軽くハスキーなトーンのボーカルも素晴らしい。ギターソロが入ってからの展開も面白いです。
2分45秒の爽やかな小品#2Did She Mention Meは、モコモコしたベースの存在感と
サビでの透き通ったコーラスワークに、Journeyっぽいドラマティックなメロディラインが光ります。
#3I'll Take You Backは、Vinnie Colaiuta(Dr)の普段に比べると抑え目ながらも、
極めて鋭い音色のハイハットに、Mike Piccirillo(G)の長いトリルを挟んだリードギターと
ジャキジャキしたカッティングがハードロック色を匂わせるValentiの自作曲。最高です。
一気にブラコン色を増した#4That's The Way Love Goesは、ソウルフルなコーラスが印象的です。
再び自作曲のゆったりとしたバラード#5Best For Youは、長めのサックスソロと、
スペイシーなキーボードの作る浮遊感のある都会的な一曲です。これも素晴らしい。
表題曲の#6I Won't Changeは、明らかにStevie Wonderを意識したトーンのボーカルが
特徴的ですが、ポップな中にも鋭いシンバルワークとキメの多いリズムはフュージョン的です。
#7Stephanieは、Kim Carnesのバックでキーボーディストを務めたBill Cuomoのプレイが
目立ち、少しRobert Byrneを思わせるような、ポップス寄りのAORです。
#9Make It Up To Youは、録音状態の影響もあって少しくぐもった音質で、
一層ソウルフルになったフェイクの印象的なボーカルと、後半部のサックスソロは白眉です。
サビのリフレインが耳に残る#10Fight For LoveにはChicagoっぽい感覚がありながら
アレンジには80年代の底抜けなく明るい香りが充満しています。
AORの隠れた良盤の一つだと思います。 間違いなく日本人に受けるサウンドです。

Who Will It Be

I'll Take You Back

I Won't Change

Stephanie

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  1. 2014/03/07(金) 01:00:05|
  2. John Valenti
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今日の一枚(264)

Album: SYG88
Artist: 八十八ヶ所巡礼
Genres: Progressive Rock,Psychedelic Rock, Heavy Metal, Funk, Hardcore

SYG88.jpg


マーガレット廣井(Vo, B)、Katzuya Shimizu(G)、賢三(Dr)による東京都出身の日本の
プログレッシブロックバンド。2006年結成。最近まで全くその存在を知りませんでしたが、
たまたま友人の勧めでこのバンドの存在を知り、中古屋で本作を見かけて聴いたところ
嵌りまして記事を書いています。彼らについては情報が少ないですが、
その演奏力は尋常ではなく、3ピースとは到底思えない分厚い音でテクニカルなリズム、
リフワークを見せつつも、言葉遊びの軽妙な独特な詞世界と、メタリックな演奏の中に
サイケデリック・ロックっぽいアレンジが散りばめられており、特有の頽廃的な世界観を
見せています。曲によってはメタルというよりもハードコアっぽい音作りのもの、
ファンクっぽいグルーブのある曲など多彩な表情を見せます。
マーガレット廣井の、高音シャウトと狂気を感じる節回しのボーカリゼーションも
聴き所です。ジャケットに描かれている奇妙なキャラクターは、自主制作アニメで知られる
谷口崇氏によるもので、彼らのイメージを表現したものということだそうですが、
これまた謎に満ちたデザインですね…
#1ano世loveは、いきなり頭からラウドでぼすっとした重みのあるドラムスと、
ガラスの弦を弾くような、周りの物すべてを傷つけていくような刺々しい音色のギターが
最高に好きな音です。ワウを掛けたカッティングやライトハンドを絡めたリフも良いです。
浄土思想に影響されたシンプルでありながら、背筋が凍るような歌詞を連呼する
歯切れの良いボーカルが曲のグルーブを支配しています。
#2悟ri+timeは、スラップしまくるベースが終始目立ちまくりますが、
手数の多いドラムスが疾走する中でトレモロする二つのギターソロが熱苦しく、
速弾きの中にもブルージーな香りがあって、男臭くてこれまたお気に入りです。
代表曲の一つ#3PALAMA・JIPANGは、ノイズの入った冒頭部から、ローファイな轟音の中で
ボーカルが絶叫し狂気を表現した後、へヴィ―に進行したかと思いきや、
すかさず気味の悪い音遣いのギターリフが入ったパンキッシュなパート、
またゆっくりになってと、極めて展開の多い一曲です。ブリブリした極太ベースも心地良い。
この刺さるようなトレブリーな音は筆者の大好物であります。
表題曲の#4SYG88は、ここまでと一線を画したファンキーなグルーブがあり、
ジャキジャキしたカッティングのあるパートで一気に心を掴まれます。
時刻の語感で韻を踏んだ歌詞の内容もお洒落です。
#5粋NALIは、メロ部分のどっしりとした進行からサビ前の緊張感のあるキメと、
古典的なハードロックの色を残したギターソロで聴かせる一曲です。
歪ませ過ぎず軽さのある、スクリーム気味のボーカルも表現力に富んでいます。
#6Carrousel末路は、意表を突いたギターリフから入り、遊び過ぎて「脳が痛い」という
意味不明な歌詞が耳に残ります。しかしながらギターのフレーズは爽やかで、
カッティングソロからディレイを効果的に用いたギターソロも意外性があります。
中音域をスポイルしたかのような荒々しいトーンのギターがまたカッティングには
最適の音作りで、嵌っています。
#8幽兵衛no幽鬱は、テンポを上げ、ピコピコしたリフがひたすら繰り返される中で、
捲し立てるように歌うボーカルが際立ちます。疾走したまま強く歪んだ中で
歌心のある長いギターソロへと突入していきます。派手なアーミングやジミヘンさながらの
荒い歪みの音で空間を占有するコードヴォイジングは印象的です。
どの曲にも意表を突くフレーズやフィルが挿入されていて、
特にカッティングの音作りとフレーズは最高にクールだと思います。
ライブハウスで爆音で観たら魅力が何倍にも増しそうなバンドです。
8曲と収録曲は少な目ですが内容はとてつもなく濃く、
不気味で奇怪で、暑苦しくて、しかし最高にカッコいい最新型の「日本のロック」です。

PALAMA・JIPANG

SYG88

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  1. 2014/03/01(土) 02:35:24|
  2. 八十八ヶ所巡礼
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

プロフィール

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは50,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
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