私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(310)

Album: インソムニア
Artist: 鬼束ちひろ
Genres: Pops, Rock

インソムニア


宮崎県、日南市南郷町出身の日本のシンガーソングライター。1980年生まれ。
本作は第16回ゴールドディスク大賞ロック・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞し、
100万枚以上の売り上げを記録した2000年作の1st。
タイトルのインソムニア(insomnia)は不眠症の意。アルバムの内容とは無関係で、
語感の良さで付けたということのようです。小学校2年生の時にエレクトーンを習い始め、
高校2年生の時に出会った女性シンガーソングライターのJewel(1974-)のオリジナルアルバムである
Pieces of You(1995)に衝撃を受け、自身もシンガーソングライターになることを
志すようになります。 高校卒業後すぐに上京し、2000年には東芝EMIからデビューを果たします。
2ndシングルの月光がテレビ朝日系ドラマTRICK(堤幸彦監督作品)の主題歌に選ばれ、
60万枚のヒットを記録したことで、その名が知れ渡るようになります。
2003年に声帯結節を発症したこと、所属事務所との軋轢により一時活動を休止していますが、
2007年には再び活動を開始しています。本作はプロデューサー、アレンジャーを
柴田淳、遊佐未森、飯塚雅弓、華原朋美、中島美嘉などを担当し、テレビアニメや
NHKのドキュメンタリー番組を制作している羽田毛丈史(1960-)が担当しています。
彼女はデモを制作してからは、原則アレンジやアルバム内の曲の配置には一切関わらないスタンスを
貫いており、羽田毛氏がいかに重要な役割を果たしているかが窺えます。
作曲は必ず詞先で行っているようで、陰鬱で厭世的で、どこか宗教的な香りが沸き立ってくる
歌詞の世界と、アコースティックでシンプルで、抜けの良いアレンジが完璧に噛み合っています。
透き通っていながらも、太さや力強さのあるトーンで、感情を込め過ぎ無い境界のテンションで
歌う技術の高さ、表現と合わさって、得も言われぬ静けさ、ヒンヤリとした不気味さの中に、
どこか温かさを感じさせるような、独特な世界観を見せています。
彼女の代表曲の一つである#1月光は、ピアノ弾き語りにストリングスを加えたバラードです。
悲しげでありながら、時として明るい光が差し込むような浮遊感のある進行と、
ブリッジ以降ではパーカッションを加え、転調していきながら情熱的に展開していきます。
力強く伸びやかなボーカルの歌う葛藤を描いた歌詞は極端なほどに悲観的ですが、
2番に掛けてベクトルが変化していくのも面白い。大名曲です。
微かに聴こえる打ち込みのキックが生々しいリズムと、低音の響きが豊かなピアノで
静かに始まる#2イノセンスは、途中から歪みのギターとドラム、ベースが入ってきて
ロックンロールへと変化します。ボーカルは、オケが分厚くなっても、芯のあって太い声質で、
音量如何に関わらず全く負けていません。クールです。
#3Back Doorもピアノ中心のバラードですが、コーラスは、サビでのリフレインを
始めとして完全にゴスペルを意識したアレンジになっていて、
ストリングスはチェロの低音が出た落ち着いたものになっています。
一転して右チャンネルを流れる、牧歌的なアコギのバッキングがキラキラとした
#4edgeは、青山純を思わせるような重くボスっとした打ち込みのドラムスと、
渡辺等の弾くベースのリズム隊が入って来て、サウンドに起伏が付いています。お気に入り。
ベースのイントロからいきなりメロに入っていく展開で意表を衝かれる#5We can goは、
ソウルフルで暖かいサビが聴き所です。
ゆったりとしたグルーブを作るパーカションと静かなオケの中でシリアスな歌詞を歌う
ギャップが如何にも彼女らしい#6callは、ハイの透き通ったベースのトーンが最高です。
デビューシングルである#7シャインは、サビでは初めはブレスリーな表現から、力強い
チェストへと切り替え、メロでの低音のドスの効いた表現と、どこを取っても完璧な歌唱です。
バッキングはピアノのみで、ひたすらにシンプルに纏めています。素晴らしい。
細やかなハットの刻みと、カッティングを絡めたギターのバッキング、
音数の多くうねるベースラインでフュージョンライクな疾走感を生み出す
#8Cageは筆者的には好みの音像です。饒舌なピアノソロや、
アウトロのドラムのフィルもシンプルですが良い。お気に入り。
背後を流れる空々しい打ち込みの音と、生々しいピアノやアコギ、ストリングスの音が
対比的に描かれた#9螺旋は、とりわけ明るい雰囲気を湛えた歌詞が印象的です。
アコギのタッチノイズが耳を撫でるイントロから、ピアノとパーカッション中心でありながら、
サビではシンセやエレキのバッキングがアンビエントな空気を醸し出す#10眩暈は、
アウトロにかけてフェイクしていくボーカルの細やかな表現がキラキラと輝きを放ちます。
繊細なトーンコントロールにパワフルなロングトーンを兼ね備えた完璧な歌唱と、
幽玄で無常感が漂う世界観を映し出すソングライティング、それを演出するアンプラグドな
アレンジの美しさ、哲学的で時に私小説的な詞世界の強烈な個性といい、
弱冠20歳という年齢も考慮すると奇跡的なことであるといって間違いないと思います。大傑作。

月光

イノセンス[Final Fantasy 10挿入歌]

edge

シャイン[unplugged]

Cage

眩暈

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  1. 2014/06/24(火) 22:32:34|
  2. 鬼束ちひろ
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やさしさの精神病理 読後感

Title: やさしさの精神病理
Author: 大平健
Publisher: 岩波新書

やさしさの精神病理


普段書評など書くことは無いので上手く書けるかどうかわかりませんが、
読後感と言うか、忘備録と言う形でこの本のテーマについて少しお話ししたいと思います。
おそらく最も重要な点は、「やさしさ」と言う言葉の意味する部分が、70年代以降の現代、
とりわけ若者達の間で変化してきているという点です。
それを筆者は、「ホットなやさしさ」(従来的な意味での)と
「ウォームなやさしさ」(新しい意味での、むしろこちらがスタンダードになりつつある)に分け、
比較し、実際の症例(精神病を患っている「患者」とは限らず、その一歩手前の人が多い)を
物語風に振り返りながら、問題点を真摯な姿勢を貫きつつ指摘しています。

ここで言う従来の「ホットなやさしさ」は「絆」(キズナ、ホダシと読ませる)に基づいて説明され、
それを行使するには自己に責任を生じさせ、互いを束縛させざるを得ないという側面が説明されます。
すなわち、「既に傷付いたもの」が互いの傷を舐めあうように相手の気持ちを察知し、同情し、
慰め励ますことと解釈されます。

それに対して「ウォームなやさしさ」とは、傷付いたものがお互いを慰めるという意味合いから離れ、
「お互いが傷つかないような」、予防的な関係を築き上げることが目標とされます。
すなわち、相手を傷つけることを恐れると同時に、自分が傷つけられることを恐れるということが
前提となるため、例えば人に涙を見せたり愚痴を言って「同情」を求めるという行為を極端に避けようとします。
相手の心の中に立ち入っていくことを避けることによって、葛藤を出来うる限り排除し、
円滑な関係を築こうとすることとも考えられます。
これは自分がそうした行為をすることによって、相手に自分の「痛み」を伝染させることが耐えられない、
という心理から来るということです。

この二つの「やさしさ」が共通する点は、いずれの場合も人間関係の潤滑油として用いられている
ということです。どちらの場合も、「やさしい人」とは他人の痛みに敏感な人間を指すという点は共通しています。
ウォームなやさしさを好む若者は、例えば、

(1) 「自分のアドバイスのせい」で相手が傷付くことを恐れるため、他人の相談に対して
具体的な決断を避けようとし、相手の判断を先延ばしさせるか、
「後悔しないように自分でよくよく考えたら」といった旨の発言をすることが多い

(2) (1)のベクトルが自分自身に向くと、決断の結果自分が傷つくことを恐れるので、「優柔不断」となる

(3) 「ホットなやさしさ」を表現する大人、自分の本当の気持ちを探ろうとする人物に敏感に
反応し、(たとえプライベートな話を敢えてすることで好意を示して距離を詰めようとする意図であっても)
「無神経な人」と判断して避けようとする

(4) 自分に悩みが生じた場合でも、周りの「やさしい人」を困らせてはいけないと考えるので相談できない

(5) 発言に「とりあえず」などの婉曲表現を付けることを好み、自分の全ての発言や意見が、
あたかも仮初のものであるかのような言い方をすることで、もし自分が間違っていた時に言い訳としようとする

(6) プライベートの趣味や嗜好に対しても、自分が本当にそれを好んでいるか、楽しんでいるかを考えることを
避けようとするため、我を忘れて夢中になることができない

(7) 自分や他者が「これから傷つきそうな」ことに関しては敏感であるが、既に傷ついている他者に対しては
極端に鈍感であることが多く、「イジられ」いる人を見ても、
その人が傷ついているのではないか、とか或いは、
「イジっている」人は以前に憤慨することをされ傷付いたので仕返しているのではないか、
などとは考えない

そして、最終章の中で筆者は大きな問題提起をします。
『それほど傷付きやすい彼らの「自分」とは、いったい、どんなものなのでしょうか?』

その後は「漠然とした自己」を探究するためにプラグマティックな行動に出る、
というパラドクスを端的に描写する例として、
いわゆる「自分探しの旅」をする若者の具体的なエピソードが記されています。

本書のテーマではないため、
自己や自己同一性について徹底的に議論されることはありませんが、
それに関して重要な点は二つあります。

(1) 現代的な、「ウォームなやさしさ」を求める若者が想定する「自分」とは「とりあえず」のものであること
(2) 具体的な形を持った「自分らしさ」を「とりあえず」手に入れることに強烈な渇望と焦りを抱いていること

筆者は「自分探しもほどほどに」と柔らかなアドバイスを残すに終始しています。

このやさしさ(錯誤行為への極端な恐怖)や、自我への病理的な探究行為、意志は、
肥大化する自我と、強烈な自己中心主義、歪んだ自己愛の産物であるという可能性を、自分は感じます。

この辺の内容は、ユングの「自我と無意識」の中で語られているような内容と、
ダブる部分が大いにあるのかもしれないと、思ったりします。

現代に溢れている「やさしさ」が生み出す自己矛盾と、「やさしい」若者達の苦悩を
中立的に、分析的に描写した素晴らしい著作だと思います。

以上駄文でした。

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  1. 2014/06/21(土) 01:52:04|
  2. 心理学
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今日の一枚(309)

Album: part of grace
Artist: Lillies and Remains
Genres: Post Punk/New Wave, Gothic Rock

part of grace


2007年にリーダーのKent(Vo, G)を中心として京都市で結成された、
日本のポストパンク/ニューウェイブ/グラムロックバンド。
現在はベーシストのNara Minoruが脱退し、KentとKazuya(G)の二人組になっているようです。
日本では余り名前を知られていませんが、メンバーはUKのインディーロックバンドである
Neils Children(1999-)の影響を公言しており、ニューウェーブのバンドといっても
電子音楽への接近は余り見られず、サイケデリック・ロックや或いはゴシック・ロック
に近いサウンドが見られます。重く、金属的な音のギターサウンドは、
粒の粗く、強く歪ませた中で、空間系のエフェクトを派手に掛けた荒々しいもので、
同じくゴシックロックを代表するバンドの一つであるBauhausのそれに近いものがあります。
UKインディーには全く疎い筆者ですが、サポートとしても
Selfish Cunt, Neils Children, Project:Komakinoなどのライブに参加しているようで、
日本国内よりも英国内での方がその名を知られているのかもしれません。
歌詞は前編英語詞で、ボーカルの囁くように歌う表現はJoy DivisionのIan Curtis(1956-1980)
を思わせるような低音の独特な響きを持っており、日本人バンドらしいメロディの
キャッチーさも相まって、中毒性を感じるサウンドです。
多重録音されたコーラスとローファイなギターが印象的な冒頭から、
重いタムの音とサンプリングされたボイスが散りばめられていく#1ARGOから、
突き刺さるようなカッティングが終始鳴り響き、ダンサブルで疾走感のあるドラミングで
一気に聴かせる#2The Fakeのダークで気怠い雰囲気には得も言われぬ中毒性があります。
強く歪ませたベースのザクザクしたシンプルなリフ、忙しないラップパートと、
硬質なリズムギターが絡みつく#3Poles Apartはお気に入り。
#4Moralist S.S.は、キャッチ―なクランチのカッティングを中心としたパンキッシュなギターと、
一層うねりを強めたベースが肉体的なグルーブを作ります。
一転して牧歌的な雰囲気を湛えており、クリーンのアルペジオがアンビエント的な
短いインストの#5Aliceを挟んで、細かく入ってくるブレイクや短音カッティングが緊張感を
生み出しながら、物哀しいギターリフが耳に残る#6Wreckageへと繋がって行きます。お気に入り。
#8Unmade Schemerは、クラシックロックっぽい特徴的なベースリフを中心としながら、
荒々しいリズムギターとドタドタしたドラムスに得も言われぬグルーブがあります。最高。
不気味でアンビエントなストリングスをバックに、タムを絡めたラウドなフィルが鳴らされる
パートから、一気にパンキッシュに疾走していく展開が面白い#9Solitude of Vigourもお気に入り。
スラッシュメタルを思わせるような極低音のギターリフと、囁くようなボーカルが
左右に定位された#11Grind, 不穏さを煽るクリーントーンのギターと、
アウトロのエモーショナルなギターソロが印象的な#12Upsetterで淡々と終わっていきます…
ボソボソと囁くようなボーカルにローファイなギターサウンドと、
普段自分の聴く音楽の趣味からは少し離れていますが、3ピースならではの一体感あるサウンドと、
シンプルなフレーズの中にあるノリの心地よさでいつの間にか聴けてしまいます。
ニューウェーブと言うより、グラムロックやパンクの好きな方に、
むしろ受けの良いサウンドかもしれません。良作。

The Fake

Poles Apart

Moralist S.S.

Unmade Schemer

Solitude of Vigour

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  1. 2014/06/16(月) 00:05:26|
  2. Lillies and Remains
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今日の一枚(308)

Album: Sunriser
Artist: Ken Ishii
Genres: Techno, Detroit Techno

sunriser.jpg


北海道、札幌市生まれの日本の作曲家、DJ。1970年生まれ。一橋大学社会学部卒。
株式会社電通に勤務する傍ら音楽活動を行っています。1993年にベルギーのレーベルである
R&S Records(Aphex Twin, Biosphere, Sun Electric, James Blake, Bullion, Vondelpark
Model500/Juan Atkinsなどで知られる)にデモテープが注目され、ここから作品をリリースする
ようになります。1stミニアルバムであるGarden On The Palm(1993)は、
イギリス国内の週刊音楽雑誌として知られるNew Musical Express(NME)のテクノ部門で
1位を獲得するなど、日本国外での評価から逆輸入され、知名度を上げることとなりました。
ゲーム音楽からの影響、YMOからの影響を公言しており、自身もRez, LSDというゲームソフトの
楽曲制作を行ったり、YMOのトリビュートアルバムにリミックスを提供したりもしています。
2002年にはインディーズレーベル70Drumsを立ち上げています。
デトロイトテクノを基礎とした、ビートの強くダンサブルでコズミックな楽曲が多く、
本作(2006年作の12th)はとりわけ近未来的で明るいサウンドに満ち満ちています。
表題曲の#1Sunriserからダンサブルで強いビートをバックにして、
古いアナログシンセのような少しチープな電子音があり、その後はスラップを絡めたベースライン
にも近いディスコライクなベースがうねりを見せて来ます。お気に入り。
#2Let It All Rideは、サスティーンの短くウネウネしたシンセベースと、パーカッションの
作るグルーブの中で、ピコピコしたシンセがリフをひたすらに繰り返します。中毒性高し。
#3Organized Greenは、アフリカンなパーカッションがオーガニックな冒頭部から、
左右に振られた速弾きシンセがスペイシーで、重いキックの音が
特徴的なパートへと変化していきます。
細かく入ったハットとクラップでひたすらにリズムコンシャスに始まり、
徐々にギターシンセのような音が入ってくる#4Mars Buggiesも、バックでアフリカンな
パーカッションが散りばめられていて面白いです。中盤ではファミコンの音のような
電子音でテーマを演奏しています。お気に入り。
冒頭の高音シンセから、疾走感のあるリズムトラックに、時折金属的なシンセで
エキゾチックなフレーズ入ってくる#5Time Filesも良い。
本作の中でもとりわけアンビエントな空気が漂う#6Beat Skywardsは、空から光が降り注ぐ
水中の中を彷徨っているかのような雰囲気があって、高音で動物の鳴き声のようにコロコロと
鳴るシンセも心地いいです。お気に入り。
ビシビシ決まるスネアがハウス的でソリッドなグルーブを湛える#7Perfect Memory,
生ドラムをサンプリングしたような音色の疾走するリズムと、モコモコしたベースが
肉体的なグルーブを作る#8Reflexionは、テーマとなるフレーズに若干YMOを感じます。
最後は鋭いドラムソロが入っています。
#10The Rescueは、様々なエフェクトが掛けられたパーカッションが縦横無尽に空間を駆け巡り、
ブレイクビーツとなって複雑に展開しています。
#11Cubitos De Hieloは、フュージョンに近い、軽く疾走感のある16ビートに、
中低音を鳴らすシンセを中心として、スペイシーな音の波が押し寄せて来ます。これもお気に入り。
全体として、ダンサブルな楽曲とスペイシーで近未来的な楽曲が多くを占めていながらも、
非常にキャッチ―なデトロイト・テクノに仕上がっています。
しかも、ビートの強さには独特なファンクネスがしっかりとあり、
楽曲の中でメロディや音色の面白さと完璧なバランスが取られています。傑作。

Sunriser (Spirit Catchers Other View Mix)

Mars Buggies

Reflexion

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  1. 2014/06/15(日) 22:43:30|
  2. Ken Ishii
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今日の一枚(307)

Album: Moonstone
Artist: Toninho Horta
Genres: Bossa Nova, Jazz, Fusion

Moonstone.jpg


ブラジル、ミナスジェライス州ベロ・オリゾンテ出身のギタリスト、作曲家、編曲家。
1948年生まれ。幼少期より母親からギターを習い、1969年にデビューを果たしてからは
アレンジャー、サポートギタリストとしてブラジル国内の有名ミュージシャン
(Elis Regina, Milton Nascimento, Maria Bethania, Joao Bosco, Airto Moreira, Edu Lobo,
Nana Caymmi, Flora Purim, Gal Costa, Sergio Mendes, Chico Buarque, Flavio Venturini,
Joyce, Johnny Alf, Wagner Tiso, Francis Hime, Beto Guedesなど)のライブやレコーディングに
参加していました。彼はClube da Esquina(Corner Club)という、地元ミナスジェライス州に
基盤を置く先鋭的なミュージシャン集団に所属しており、HortaやMilton Nascimento,
Lo Borges, Wagner Tisoなどを初めとするメンバーは、
クラシック、プログレッシブロック、ボサノヴァ、ジャズといった
音楽の高度なクロスオーバーを指向し、ボサノヴァ登場以降(1960年代後半)のブラジルの
ポピュラー音楽であるMPB(Musica Popular Brasileira, Brazilian Popular Musicの意)の
ムーブメントを巻き起こすきっかけとなりました。
HortaはPat Methenyが最も影響を受けたギタリストであり、ブラジル音楽とジャズ/フュージョンの
双方の影響を受けた複雑なヴォイジングと、柔らかくメロディアスなスキャットを得意と
しています。本作のレコーディングにはMethenyのバンドであるPat Metheny Groupの
メンバーであるDanny Gottlieb(Dr), Mark Egan(B, Jaco Pastoriusの直接の弟子), 
Steve Rodby(B),Nana Vasconcelos(Percussion)が一同に会して録音されています。
勿論Pat Metheny自身もサポートでギターを弾いています。
他にもHerbie HancockやWayne Shorterとの共演もあり、アメリカ国内のフュージョン系の
ミュージシャンの間でも、その名は広く知れ渡っています。1989年作の7th。
#1Bicycle Rideは、アコギの高音が煌びやかなアルペジオから始まり、
ピアノソロと、それに続いて曲のハイライトとなるオクターブ奏法を効果的に用いた、
丸い音のフルアコのソロへと繋がって行きます。お気に入り。
Mark Eganのフレットレスベースのトレブリーな音とメロディが強烈な存在感を放つ
#2Eternal Youthは、次第にパワフルなスネアでドライブ感あるグルーブを創出する
Danny Gottliebのドラムスが、PMGならではのロック的なダイナミズムを感じさせます。これも最高。
Toninho自身のエレガット弾き語りによる#3Gershwinは、低音弦のアタックの音や、
音の粒が揃った巧みなアルペジオで魅せてくれます。エレキのソロは音程差の大きいフレーズを
独特なタイム感で歌わせていて、Pat Methenyが彼に強い影響を受けていることが窺われます。
表題曲の#4Moonstoneは、左チャンネルにPat Metheny, 右チャンネルにToninhoが
割り振られており、二本のギターだけによる対話に浸ることができます。お気に入り。
Danny Gottliebのシャラシャラしたシンバルワークが優しく耳を撫でる#5Lianaは、
鋭いフィルインを起点としてサックスやバイオリンとギターの美しいユニゾンが聴けます。
一転して複雑なリズム構成と、Michael Breckerの流麗なホルンが特徴的な#6Yarabelaは、
如何にもPMGの曲にありそうなノリの一曲です。
続いてエグいキックとアコギの縦横無尽なバッキングがスウィンギーな#7Francisca、
再び弾き語りに戻った#8Sun Songでは、弦の一つ一つの音がくっきりとした完璧で個性的な
コードヴォイジングと、優しいスキャットでしっとりと聴かせます。
Nana Vasconcelosのパーカッションが作り出す疾走感あるリズムと、
キラキラとしたシンセの音が時代を感じさせながらも、背後を流れるバイオリンが
コースティックな肌触りを感じさせる#9I'll Never Forgetは、激しいドラムスを起点にして、
情熱的なサックスソロがクライマックスとなります。お気に入り。
#10Spirit Landは、水の音がSEとして入り、分厚いコーラスワークがあり、
Mike Eganのフレットレスベースと強くリバーブを掛けたドラムスの音が幻想的な世界観を
思わせます。ギターの音はその中でも生々しくて際立って聴こえてきます。
どの曲も最高ですが、弾き語りの曲の優しさ、柔らかさとアコギのアタックや鳴りの気持ちよさも
ありながら、PMGの諸作品のような巧みなバンドアンサンブルも楽しめてしまうという、
最高のブラジリアン・フュージョンだと思います。愛聴盤です。

Bicycle Ride

Eternal Youth

Moonstone

I'll Never Forget

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  1. 2014/06/10(火) 23:08:41|
  2. Toninho Horta
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今日の一枚(306)

Album: Effective
Artist: Side Effect
Genres: Funk, Jazz Funk, Soul, R&B

Effective.jpg


アメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス出身のファンク/ソウルバンド。1972年結成。
リーダーはAugie Johnsonというシンガーで、他にも当時LAのスタジオミュージシャン
(バックコーラス)として活動していた Lomita Johnson, Jim Gilstrap, Gregory Matta,
Louis Pattonというメンバーが所属しており、メンバー交代を頻繁に繰り返しながらも、
基本的にはヴォーカルグループの形式を取っています。
特にJim GilstrapはStevie Wonderのバックコーラス隊(Wonder Loveという名前が付いています)
の一員に加わっていた時期があり、有名どころだとYou Are The Sunshine Of My Lifeで
そのボーカルを聴くことができます。本作でリードシンガーを務めるのはLomita Johnsonです。
74年ころにはSylvia Nabors、76年には後にゴスペルシンガーとして90年代にソロキャリアを
スタートさせるHelen Lowe、80年代にはMiki Howardがリードボーカルを務め、
Miki Howardは80年代後半から90年代前半にかけてトップ10を記録したシングルを多数出し、
Billborad Top R&B Singles Chartで1位を獲得するなどして活躍しています。
本作はGAS Recordから発売された1973年作の1stアルバムですが、チャートには登っていません。
筆者が所有しているのは2001年にリイシューされたもののようで、
(偶然中古で手に入れただけですが)鈴木啓志氏の「U.S.ブラック・ディスク・ガイド」
という書籍でも取り上げられています。
彼らにとって最初期の作品である本作はファンクの影響が強いですが、
最もヒットした作品であるWhat You Need(1976)ではTOPのようなテクニカルで
フュージョンライクなファンクの音像へ、そしてディスコミュージックにリアルタイムに影響を
受けたパターンミュージックへと変化していきます。
Fantasy RecordとElektra Recordでいくつかヒットを出しており、
1995年にもアルバムを出すなどしぶとく活動を続けているようです。
ファンクとは言っても女性のリードボーカルで、ポップネスも兼ね備えており、
とても聴きやすいサウンドだと思います。演奏も洗練されており、マニアのための
コレクターズアイテムにしておくには勿体ないクオリティの作品だと思います。
#1Listen To The Beat Of The Drumは、ワウの掛かったカッティングと音数を絞ったギターソロ、
ゴスペルライクなコーラスが特徴的なドロドロのファンクに仕上がっています。
Lomitaの太くパワフルなヘッドヴォイスのボーカルは圧巻です。お気に入り。
ミディアムテンポの#2Run Run Runは、フィリーでスムースなストリングスの作る流麗なオケに、
ハスキーなAugieのリードヴォーカルが冴え渡っています。
アウトロの繰り返しも強烈な訴求力で最高。
ゆったりとしたグルーブを湛えた#3Spend It On Loveはアクの抜けたサウンドで、
ストリングスの煌びやかな高音が強調されたアレンジになっています。
Jim Gilstrapの透き通った低音と、ブルージーなリードギターが絡みついた#4Do Your Thingに
続いて、Gregory Mattaがリードヴォーカルを務める#5Unless You're Wearing Your Emotionsは、
彼のファルセット気味なボーカルがドリーミーなサウンドに見事に嵌っています。お気に入り。
さらにテンポを落としたクワイエットストームなバラードの冒頭部から、
一気にテンポアップしていきながら歯切れの良いホーンが入りファンキーに展開していく
#6Do You Believeは、メロディアスでモータウン的なベースラインも遊びまくっていて
洒脱です。素晴らしいです。
Jimのセクシーなポエトリーリーディングを中心として構成された#8Jim's Wrappは、
左チャンネルを流れるトランペットと、右チャンネルを流れるギターの対話が心地良いです。
本作の中でもとりわけ緩さがありグル―ヴィーなリズムとコーラスで掴まれる
#9Sylviaは、シンコペーションを多用したベースラインがシンプルですが面白く、
丸くトレブリーな音作りも最高で、これはコピーしたくなりそうなフレーズばかりです…名曲。
#10Wash Your Troubles Awayは、サザンソウルに近い音づかいでありながら、
サビでにかけて一気に激しくなるドラムスの鋭いフィルはロック的なダイナミズムがあり、
これもとても面白い一曲だと思います。
全般的にポップな歌メロと、流麗なストリングスで聴きやすいサウンドでありながらも、
曲ごとに肉体的なファンクネスを前面に出したものから、モータウン、或いはスタックス的なものまで
巧みに音楽性の中に取り入れられており、特にドラムとベースのグルーブやフレージングの
面白さは特筆すべきものがあると思います。これぞレア・グルーブと言うべき傑作1stです。

Listen To The Beat Of The Drum

Unless You're Wearing Your Emotions

Do You Believe

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  1. 2014/06/08(日) 00:25:46|
  2. Side Effect
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

今日の一枚(305)

※今回紹介する作品には一部残虐と思われかねない表現が含まれている
 恐れがあります。ブラックメタルと言われてどのような音楽か了解できる方のみご覧下さい。
※突如として展開する部分が多くあるため、心臓の弱い方はご遠慮下さい。

 
Album: Death Pierce Me
Artist: Silencer
Genres: Black Metal, Heavy Metal

Silencer.jpg


スウェーデン、ストックホルム県ストックホルム出身のブラックメタルバンド。1995年結成。
メンバーはLeere(G, B), Nattramn(Vo)の二人のみで、リリースした作品は
1998年のシングルDeath Pierce Me(僅か40枚のみプレスされた)と、それを含んだ
2001年作の同名アルバムの本作のみ、という何とも謎に満ちたバンドですが、
アンダーグラウンドなブラックメタルの界隈では、ボーカルのNattramanが
重度の統合失調症を患っており、彼の極めて特徴的で非人間的なパフォーマンスで
その名が知れ渡っているようです。
録音はドイツ国内のKlangschmiede Studioで行われており、ダークメタルやブラックメタル、
フォークメタル、シューゲイズメタルなどの界隈で名の通ったドイツのレーベルである
Prophecy Productionsからリリースされています。
本作をリリースした直後にNattramanは精神病棟に強制的に収容されてしまったため、
バンドは解散を余儀なくされています。
確定した情報なのかは分かりかねますが、筆者の調べたところによると、
リーダーのLeereは、同じくスウェーデンのブラックメタルとして有名なShining(1996-)という
バンドのギタリストであるNiklas "Ghoul" Kvarforthと同一人物ではないかと思われます。
ShiningにせよこのSilencerにせよ、内容としては自殺や自傷行為を賛美するような
内容が含まれるため、 筆者も心から本作をお薦め申し上げるわけにはいきません。
しかしながら音楽としては、ローファイでノイズの入ったディストーションギターや、
ブラストばかりではなくグルーブのあるドラムプレイなど、なかなか面白い部分が多く、
狂気じみた(というより狂気そのものか)ボーカルを差し引いて考えれば悪くないと思います。
この手のアルバムというのは大抵音質がすこぶる悪く、筆者自身は9割9分ハイファイな音楽を
好む者ですので、ブラックメタルの作品は敬遠しがちでしたが、
本作は意外なことに音質良好で聴き取りやすかったことも、評価する理由の一端となりました。
#1Death Pierce Meは、冒頭の如何にも北欧らしい哀愁漂うアコギと、ドライブ感のある
フィルやソリッドなキックが特徴的なイントロが長く続き、1:50あたりで突如として
悲痛な絶叫が入ったか、と思うと一気にテレビのホワイトノイズのようなディストーションギターと、
ブラストビートが入ってきます。歌詞が有るのか無いのかも分かりませんが、
ただひたすらに超音波のような高音で呻き続けるボーカルのバックで、淡々と曲が進んでいきます。
ストリングスの醸し出す雰囲気は映画音楽のように壮大で、不安を煽ってきます。
7:00あたりからはピアノソロがありますが、7:40から再び絶叫が入ってメタルパートへと展開します。
(ここは本当に心臓に悪いので心して聴いて下さい。)
ノイズにまみれたバッキングの中でも、リズムは正確で、歌詞の内容も少し聴きとることができ、
痛々しさが増しています。痰の絡まったようなしゃがれた声で、恐怖に駆られるような様を
見せていますが、意味は全く解りません。
#2Sterile Nails and Thunderbowelsも、曲の冒頭ではクサいメロディのリードギターから
始まりますが、こちらは2:30辺りからの叫び(ポエトリーリーディング?)を中心として
進んでいきます。激しく咳き込むボーカルを起点として、演奏は一気に激しさを増し、
後半では呻き声が上手くブレイクのタイミングと合致(というか呻き声に後から演奏を付けたのか)
していたりして、思いの外一体感のある演奏を楽しめます。
メタルコアに近いイントロからひたすらにブラストするパートへと展開する#3Taklamakanは、
ひたすらに同じフレーズを繰り返すギターのバッキングの中で、ボーカルが次第に声を
出せなくなっていき、最後には咽てしまい歌えなくなります。
幾重にも重ねられた声が四方八方から恐怖を煽り立ててきます。聴くに堪えません。
#5I Shall Lead, You Shall Followは、ひたすらに続く轟音の中で、
いつも通りの金切り声を上げていたかと思えば、突如として笑い出したり、
直後に勇壮な声で叫んだりとますます暴走っぷりが加速していきます。
嗚咽しながら嘆き苦しむ中で静かなアコギのパートへと移り変わり、また疾走していきます。
この位なら普通のメタラーでも聴ける、かもしれません…
アルバムの最後を飾るピアノ曲#6Feeble Are You -Sons Of Sionで淡々と終わっていくあたりが、
リアルさを滲ませています。
ブラックメタルに関しては殆ど素人でしたが、これほどに人間の狂気に肉薄した
作品は、今まで一度も聴いたことはありませんでした。
PVの凄惨さは筆舌に尽くしがたく、見ることは薦めません。
薦めませんが、このサウンドが持っている言葉に出来ない悪魔的な魅力に、
一瞬憑りつかれそうになってしまいます。

Death Pierce Me

I Shall Lead, You Shall Follow

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  1. 2014/06/07(土) 22:17:55|
  2. Silencer
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今日の一枚(304)

Album: 3 Feet High and Rising
Artist: De La Soul
Genres: Hip Hop, Alternative Hip Hop

De La Soul


アメリカ、ニューヨーク、ロングアイランド出身の3人組ヒップホップユニット。
1987年結成。メンバーはPosdnuos, Dave, Maseoの三人です。
多様な音楽からの影響を取り入れて肥大化していったヒップホップの中で、
R&B, ソウルやレゲエに加えてカントリー、ジャズ、フュージョン、ソフトロックなどまで
取り入れて1980年代後半に大きなムーブメントを起こしたイーストコーストの
オルタナティブ・ヒップホップを代表するグループとして、
A Tribe Called Questなどと並んで挙げられることの多いグループと言われています。
彼らの影響を受けたグループとしてはCamp Lo, The Black Eyed Peas, Digable Planets,
Mos Defなどが挙げられ、現代のヒップホップを牽引しているグループ/ラッパーに
与えた影響は計り知れません。ジャジーヒップホップなど、クロスオーバー的な音楽性を指向
するようになっていったOutKast, Kanye Westといったビッグネームからも影響が窺えます。
2006年にはGorillazとのコラボレーションシングルFeel Good IncでGrammy Awardを受賞しています。
80年代中ごろからヒップホップのメインストリームを成していたギャングスタ・ラップは、
反社会的行為の推奨とマッチョイズム、ドラッグに象徴されるような、ストリート独特の精神性を
有した音楽として、ともすれば攻撃的で排他的な印象を与えかねなかったわけですが、
彼らに代表されるようなオルタナティブ・ヒップホップはこうしたイメージを払拭し、
軽やかで底抜けに明るくスムースで、浮遊したグルーブが充満しており、とても魅力を感じます。
これは、彼ら自身が比較的裕福な家庭環境で育った人物であることと、
無縁ではないのかもしれません。乗せられたライムも決して下品な言葉は無く、
サンプリングにもSteely DanやらHall & Oates, Rascalsと、とても耳に
優しい音楽がセレクトされており、ヒップホップ素人の筆者にとっても驚きの連続といった
感のあるアルバムです。EmotionsにP-FunkにOtis Reddingなど、ソウルやR&Bの
有名どころが多数取り上げられていて、元ネタが分かりやすくニヤニヤ出来ますし、
メロディもキャッチ―で聴きやすいと思います。1989年作の1st。
打ち込まれたビートにはディスコミュージックの影響が見られるものから、
ブレイクビーツの配された複雑なものまであり興味深いです。
ハモンドのローファイな音に始まり、観客の熱狂をよそに自己紹介を続ける#1Introから始まります。
本作のタイトルの元ネタとなったJohnny CashのFive Feet High And Risingからサンプリングした
#2The Magic Numberは、後半になるにつれてスクラッチが激しくなり、ヴォイスの加工が幾重にも
施された作りになっています。 お気に入り。
#4Cool Breeze on the Rocksは、極めて短い時間に、テレビのチャンネルをザッピングするかのように
曲が詰め込まれています。MJのRock With Youの使い方には思わず笑みがこぼれます。
Got to Get a Knutt/New Birthが流れる中で囁くように歌う#5Can U Keep a Secretを挟んで、
Isley Brothersの初期の名曲Shoutをサンプリングした#6Jenifa Taught Me (Derwin's Revenge)では、
レイドバックしたリズム感のラップと、ブレイクを上手く挟んでいて、グルーブが腰に来ます。素晴らしい。
JBのビートにKraftwerkの電子音を取り入れてしまうという強烈なセンスで惹き込まれる#7Ghetto Thangも
これまたお気に入り。ベースリフのダークな感じがピッタリです。
彼らの楽曲の中でもとりわけ有名な#9Eye Knowは、Steely Dan/Peg, Otis Redding/The Dock Of The Bay,
Sing A Simple Song/Sly & The Family Stoneという誰もが知る楽曲をふんだんに織り交ぜながらも、
見事な調和を見せています。
続いてHerbie Hancockの同名アルバムにレコーディング参加したメンバーによる
ジャズファンクバンドThe HeadhuntersのGod Make Me Funkyのビートを入れた#10Take It Off,
R&Bのスタンダード Ben E. King./Stand By Meのベースラインの入った#11A Little Bit of Soap,
#13Potholes in My Lawnでは、Parliament/Little Ole Country Boyのヨーデルをそのまま入れた
牧歌的な雰囲気が楽しい。
まさかのI Can't Go for That (No Can Do)/Hall & Oatesをサンプリングした#14Say No Goは、
断片的にEmotionsのコーラスが入り、細かくスクラッチが入ってきます。お気に入り。
Billy Joelのピアノが形を変えられて不穏な音になって挿入された#16Plug Tunin,
Parliamentに続いてFunkadelic/(Not Just) Knee Deepをほとんどそのまま使った#20Me Myself And Iは、
シンセのフレーズのキャッチ―さで殆どポップスのようです。これも最高。
The Rascals/My World(Once Upon A Dream収録)を使った#23D.A.I.S.Y. Ageは、
スクラッチとソリッドなリズムにラップを乗せていきながら、途中で原曲のゆったりとしたグルーブが
見え隠れしてくるバランスが堪りません。
基本的にはJBやP-Funkのようなレイドバックしたファンクのリズムトラックを絶妙に用いながらも、
所々にポップスやソフトロックの印象的なテーマやリフレインが散りばめられていて、
元ネタの分かる人は勿論楽しめますが、これだけ多彩な曲を混ぜておきながら一切の違和感なく
ポップでありながら洒脱で気怠いラップで聴かせてしまうセンスの良さに、
オルタナティブ・ヒップホップの面白さに誰もが目覚められるのではないかと思ってしまいます。大傑作。

The Magic Number

Jenifa Taught Me (Derwin's Revenge)

Ghetto Thang

Eye Know

Say No Go

Me Myself And I

D.A.I.S.Y. Age

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  1. 2014/06/05(木) 22:11:03|
  2. De La Soul
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今日の一枚(303)

Album: Waves
Artist: Antonio Carlos Jobim
Genres: Bossa Nova

Wave.jpg

ブラジル、リオデジャネイロ州リオデジャネイロ出身の作曲家、編曲家。1927年生まれ。
リオデジャネイロのチジュッカ地区に生まれ、14歳の頃に父が妹のために買った
ピアノにのめりこむようになります。彼の師となったのは、ベルリン国立音楽アカデミーを
卒業し、ドイツから移住してきたHans-Joachim Koellreutter(1915-2005)という作曲家でした。
クラシックに加えて、当時のヨーロッパの現代音楽や高度な作曲技法を学んだことが、
彼が後にボサノヴァという音楽を生み出すきっかけとなりました。
若い日に結婚した彼は、妻を養うために建築を学び建築事務所で働いていましたが、
音楽への夢を諦めきれず、ラジオやナイトクラブでピアノを演奏するようになります。
ナイトクラブでの演奏を見たRadames Gnattaliに才能を見出された彼は、1952年に
Continental Recordに入社、一社員として譜面起こしや編曲の仕事に携わるようになります。
翌年の1953年にはOdeon Record(EMI Brazil)にアーティスト兼レコーディング・ディレクターとして
契約を結び、本格的に作曲活動を行うようになります。
1956年には映画「黒いオルフェ」の原作となった舞台Orfeu da Conceicaoの音楽制作を
担当したことで、この舞台の制作者である詩人、作家、作詞家、翻訳家、外交官の
Marcus de Moraes(1913-1980)と楽曲を共作するようになります。
翌年には、クラシックギターを用いてサンバのリズムをギターのみで演奏する
バチーダという奏法を生み出したギタリストのJoao Gilberto(1931-)と出会い、
Moraesと共作し温めていた、ボサノヴァの最初の曲と言われるChega de Saudadeを彼に提供します。
JoaoのソロアルバムO Amor, o Sorriso e a Flor(1960)の制作後に彼はアメリカへと渡り、
Stan GetzやNewton Mendonca, Frank Sinatraなど名だたるミュージシャンと作品を共作したり、
自身の楽曲がカヴァーされるようになります。60年代は作曲の傍ら映画音楽の制作やテレビ番組出演、
オーケストラの指揮など極めて多忙な日々を過ごしていた彼は、後のフュージョンブームの
きっかけを生み出したCreed Taylor(1929-)のレーベルであるCTI Recordsからインストゥルメンタル
の作品をリリースしています。純粋なボサノヴァからは少し離れ、ジャズ(クロスオーバー)へと
接近した内容となっています。1967年作の5th。
本作は究極のイージーリスニング作品と称されるそうですが、
構造を見ると非常に精緻に作りこまれています。
表題曲の#1Waveは、右チャンネルを流れるアコギのストロークがリズムを刻む中で、
時折入ってくる流麗なストリングス、ホーンとピアノが密室的な音像で共存しています。
アウトロの印象的なユニゾンで盛り上がりながら終わっていきます。
丸くモコモコしたベースが前に出て、随所随所で鋭いフィルを入れる軽いドラムスが疾走感を作る
#2The Red Blouseは、壮大なストリングスがテーマを様々に変奏して行きます。
3:00あたりからはパワフルなピアノソロがあり、その後は短いリフを繰り返しながら終わっていきます。
ホルンのゆったりとしたトーンが耳を撫で、冒頭から同じコードワークで淡々と弾いていくアコギを
バックにした#3Look To The Skyからそのままシームレスに繋がっていきながらも、
ギターがパターンを変えて、リムショットの乾いた音、流麗なシンバルレガートが細やかに
入ってくる#4Batidinaではさらにストリングス特にチェロの中低音が音量を上げて
存在感を示しています。
ホーンの呻く様な低音がダークな雰囲気を作り、ドラムスも一層性急にビートを刻む
#6Mojaveは、ピアノがリズムの間を埋めるようにしてパーカッシブに入ってきて面白い。
#7Dialogoは、左右に振られた管が交互に対話していくようにテーマを繰り返していきながら、
それを弦が纏め包み込んでいくように流れてきます。
本作の中でも特にアップテンポでボーカル入りの#8Lamentoは、艶のある低音のボーカルと、
妖しい雰囲気を醸し出すホーン、様々にアクセントを付けたシンバルの作るリズムが印象的です。
#9Antiguaは、ハープシコードの奏でるウネウネとしたリフレインを中心にして、
ホルンやフルートがそれに続いていきます。
最後を飾る#10Captain Bacardiは、少し録音がうねりのある部分がありますが、
左チャンネルを流れる流麗なトロンボーンと、特徴的なノリを生み出すリズムパターンを起点にして、
ギターもユニゾンをかましながら盛り上がっていきます。
アルバムを何周しても飽きのこない最高のBGMとしても良いですし、
車内で困ったときはとりあえずこれを掛けてしまいます。

Wave

Mojave

Lamento

Antigua

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  1. 2014/06/05(木) 17:50:19|
  2. Antonio Carlos Jobim
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  4. | コメント:4

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
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こちらでもおすすめの音楽など情報を流しております!
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可能な限りフォローバック、コメントしに参ります。
※放送企画として「私的名盤放送」というラジオを配信しております。
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