私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(383)

Album: 17 Living Souls
Artist: monolog(金坂征広, Yuki Kanesaka)
Genres: Funk, Soul, Hip Hop, Jazz Funk, R&B

17 Living Souls

千葉県、茂原市出身の日本のマルチプレーヤー、音楽プロデューサー。ボストン在住。
1981年生まれ。2013年作の2ndフルアルバム。

中学生の頃からミュージシャンとしての活動を開始し、高校卒業後バークリー音楽大学に入学、
その後はボストンを拠点として音楽活動を行っています。
バークリー在学中にはCee Lo(1974-, Goodie Mob, Gnarls Barkleyのメンバー)
, Slum Village(90s後半に活躍したデトロイト出身のヒップホップグループ)といった
ヒップホップグループのバックでスタジオミュージシャンとして演奏していました。
米国内の雑誌The SourceではNational Rap Music Competitionの部門でプロデューサーとして
優勝するなどしています。
また日本国内では、女性R&B系シンガーである山口リサ(1983-)のプロデュースをデビュー当時から
行っています。

2012年にはRe:Live -JAZZ meets HIP HOP CLASSICS-というカバーアルバムを発売しており、
90年代のR&Bやヒップホップの名曲、De La SoulやCommon, D'Angelo, Aaliyahなどの楽曲を
ジャジーにアレンジし、20種類以上の楽器を自身の手によって全て生演奏し制作するスタイルを
確立していきます。

本作も自身による生演奏のオーバーダブによって制作されており、オリジナル楽曲に加えて
レアグルーブとして知られるArchie Bell & The Drells/Tighten Upや、
Stevie Wonder/As, Bobby Caldwell/What You Won’t Do For Loveなどの知る人ぞ知る有名曲、
Patrice Rushen本人を迎えたRemind Meも収録されています。
その他には、2004年には共演歴もあり彼自身が影響を受けているGeorge Duke(1946-2013)への
追悼としてFrom Dusk To Dawnのカバーも収められています。
アルバムのライナーノーツにはDukeに向けられたメッセージが綴られています。

Marie Davyをゲストボーカルに迎えた#1Can Youは、オールドソウルそのもののベースラインと、
Twangなトーンのリズムギターの単音リフとカッティングに、一際モダンな音の
引き締まったドラムスが組み合わさった一曲です。
そのままJ Troniusをゲストに迎えたジャズファンク#2Livin For Itへとシームレスに繋がって行きます。
中盤では同音連打を中心とした派手なピアノソロが控えています。
Archie Bell & The Drellsのカバー#3Tighten Up ~hype vibe~は、モコモコとしたトーンのベース、
アナログっぽい音の塊となって迫ってくるドラムスが作り出すグルーブが腰に来ます。最高。
短いインストのインタールード#4King's Men Is Still Aliveでは、もう少し疾走感が出た16ビートで、
Loyvieをゲストに迎えた#5Grey Cityは、ローファイなエレピが自由自在に跳ね回り、
柔らかなシンバルレガートのリズムパターンに、ひたすらにファンキーな
カッティングが繰り返されるジャズファンクです。お気に入り。
Oj Martoriをゲストに迎えた#6Week Endは、繊細でファルセットの滑らかなボーカルと、
アンビエント的な香りのするシンセにローファイなドラムスやエレピの音が混然一体となっています。
本人が参加したPatrice Rushenの1982年作のカバー#7Remind Meは、エレピのソロからパーカッションと
ドラム、ストリングス系のシンセが入って来るモダンな音作りとなっており、
2小節をひたすらに繰り返すベースリフが前に出たファンキーなアレンジとなっています。
キーボードソロは、ピッチベンドの多くエモーショナルで、後半ではエレピのリフとドラムのみのパートから
これまた味のあるハーモニカソロも入っています。原曲よりもこちらの方が好きかもしれないです。最高。
George Dukeへのトリビュートであるカバー#8From Dusk To Dawnは、バックビートの強調された
重厚感たっぷりのドラムスにゆったりとしたエレピがテーマを弾いていく前半部から、
リズムチェンジした後半では白玉が多くなり、激しくなって行きます。お気に入り。
The Metersへのトリビュートというドロドロしたファンク#9A To Zigabooから、
Oj Martoriをゲストに迎えた#11Good Timesは同じくファンクでありながらももう少しモダンな音に
なっていて面白い対比になっています。
パワフルな女性ボーカルShakyma Horaciusをゲストに迎えた#13Be Freeは、細切れにブレイクを
挟んでネオソウルっぽいグルーブを作り出しています。
爽やかで甘いコーラスと微妙にブレスリーなトーンのリードボーカル、Vをゲストに迎えた
#14So Goodは、もう少しテンポを落として、オルゴールのようなシンセのキラキラとした
フレーズやポップなメロディもあって異色な一曲です。お気に入り。
Stevie Wonderの名曲カバー#16Asは、ピアノソロによるジャジーなイントロから、
揺れのある女性コーラスにネオソウルっぽい香りがするパートがあり、リズム隊が入って来てからは
音数少なくレイドバックしたアレンジになっています。お気に入り。
Saucy Ladyをゲストに迎えたBobby Caldwellのカバー#17What You Won’t Do For Loveは、
大胆にリハーモナイズされたピアノ弾き語りによるアレンジです。

基本的にはインストもののジャズファンクやサザンソウルが好きな方はきっと嵌ると思いますが、
所々にネオソウル的な音遣いやリズム構築が見受けられたり、そういった音とアナログ的な、
音全体が塊になって迫ってくるようなバンドサウンドが綺麗に溶け合っていて、
さらりと聴けてしまいます。佳作。

Livin For It~King's Men is still Alive

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  1. 2015/03/27(金) 01:51:41|
  2. monolog
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  4. | コメント:2

今日の一枚(382)

Album: 5.3.1
Artist: 嶋野百恵
Genres: R&B, Hip Hop, Pops

531.jpg


大阪府八尾市出身の日本の歌手。1974年生まれ。1999年作の1st。オリコン12位。
オリジナルフルアルバムは現在までに3枚リリースしていますが、近年は
フィーチャリングボーカリストとしての活動とライブが中心で、新譜はしばらく出していないようです。
全開紹介しましたSILVAと彼女の作品は、Twitterにてフォロワーの方からご教授頂き、
早速購入して聴いております。

新人の1stアルバムでありますが参加している作家は非常に豪華で、松尾潔、Mummy-D,
今井了介(Sugar Soul, Double)、Maestro-T(Giant Swing Production)、武藤敬一朗(K-MUTO)など、
90年代から00年代にかけて日本に本格的なNJS~R&B、ヒップホップ、アシッドジャズなどを
輸入してきた時期に活躍してきたミュージシャン、プロデューサーが名を連ねています。
変わり種としては大橋純子の名曲(阿久悠/筒美京平コンビ)のM4たそがれマイラブのカヴァーもあったり、
海外勢ではアシッドジャズ界隈で有名のIncognitoのフロントマンであるJean-Paul 'Bluey' Maunickも
アレンジに絡んでいます。

彼女のデビューよりも少し前に出てきてヒットしていた初期のMISIAとよく比較されるようですが、
MISIAの作品が、生々しく、打ち込みのクラブミュージック然としたトラックで
エレクトロ~ヒップホップよりの音遣いとテクニカルなハイトーンボーカルが多いのに対して、
本作はもう少し落ち着いた都会的で繊細な音像で、邦楽ポップスのドラマティックな展開を残しながらも、
メロウで夜の似合うR&Bとなっています。

インストによる導入#1Introはストリングス系のシンセを中心にした一曲。
落ち着いたミドルテンポの#2朝は、ソリッドで低音の強調されたキック、
乾いたスネアによるレイドバックしたヒップホップ的なビートに、
エレピソロがフィーチャーされたジャジーなトラック、中低音の多く滑らかなボーカルが
柔らかに歌っています。最高。
#3Violet Nudeは、ワウの掛かったシンセベースの軽い音に、対照的に密度の高い打ち込みドラム、
アウトロの冷ややかな感触のあるコーラスワークが素晴らしいです。お気に入り。
大橋純子のカバー#4たそがれマイ・ラブは、冒頭にラップが置かれ、歯切れの良いシンセベースによる
アルペジオ的なベースラインと手数の少ないリズムでゴリゴリと進んでいき、サビでは
遠い定位でストリングスが入ってきてフィリーなアレンジになっています。お気に入り。
彼女の1stシングル#5baby baby,Service(Tastes Like Champagne Mix)は、
重低音の強調されたベースと残響のカットされたドラムスという艶消しなリズムトラックに、
邦楽ポップスらしい繰り返しの多いキャッチーで暖かいメロディが絡みつきます。
飛び道具的にボイスサンプルが挿入されて、ヒップホップ的な、ルーズなグルーブを作り出しています。
後半で転調していきながら盛り上げていく展開も王道ですが格好いいです。最高。
少しテンポを落としてシンセの音に90s的なポップスの香りがする#6ヒカリは、ハウス的な
ローファイなリズムボックスに、メロディアスなベースラインが組み合わさって、
ベタベタとし過ぎておらず絶妙なバランスです。お気に入り。
水音のようなサンプリング音が流れる中で東洋的なメロディを奏でるシンセがハイファイな#7Interludeを
挟んで、2ndシングルの#8apple only one,only you(Original Full Mix)は、
ジャジーなピアノソロとコーラスから始まり、ストリングス系のシンセのオブリガートとリズムボックスの
チープな音、スクラッチの掛けられたキックの音が印象的なリズムトラック、
徐々に下降していくメロディを歌うボーカルがルーズな感じで良いです。お気に入り。
Skoop On Somebodyがゲストとして参加し見事なコーラスワークを見せる#9Everything(I See)は、
メロ部分の、NJSを思わせるローファイなピアノやホーンの短いループと、太いベースラインに、
ヒップホップ的な打ち込みドラムによる音数の削られた展開から、フックの部分では
コーラスとリードボーカルが交互に配置され、暗く浮遊感のある音像です。最高。
一転してポップでTeddy Rileyっぽさが漂う#1045℃ (Original Full Mix)は、
パーカッシブなシンセのリフとボイスサンプル、低音の少ない安っぽいシンセベースの音に
時代を感じます。後半はソウルフルなコーラスが入りフェードアウトしていきます。お気に入り。
ホーンによるオブリガートとアコギにエレピ、フリューゲルホルンのソロと生音の多い
#11眠れぬ月は、甲高いスネアとハンドクラップがアクセントになったジャジーなバラード。お気に入り。
ブラコンテイストの強いスローテンポのバラード、表題曲の#125.3.1は、
クリーントーンのリズムギターのパリッとした音が心地いいです。
アコギのアルペジオとブレイクビーツ的な打ち込みドラム、雨音のSEが入った#12Outroの後には、
シークレットトラックとしてbaby baby,Serviceの別テイクが収められています。
こちらはよりソリッドな音になっています。後半部はインストとなっており、
アウトロではグル―ヴィーなコーラスワークが堪能できます。最高。

アルバム全体を通じて非常に落ち着いた、統一された雰囲気があり、
ルーズなグルーブのあるリズムトラックに、透き通っていながらも甘すぎないボーカルの
味わいが組み合わさって、邦楽的でポップでありながら聴き疲れしない上質なR&Bとなっています。佳作。



baby baby,Service

apple only one,only you

45℃

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  1. 2015/03/27(金) 00:07:38|
  2. 嶋野百恵
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今日の一枚(381)

Album: Rapture
Artist: Tropics
Genres: Ambient, Dub Step, Chill Wave, Soul, R&B

Rapture.jpg

イングランド、サウサンプトン出身の音楽プロデューサー、マルチプレーヤー。
2010年にSoft VisionEPでデビューを果たし、翌年2011年には1stフルアルバムである
Parodia Flare(Mike Paradinasが主宰するレーベルで、Bear In Heaven, Little Dragonなどの
リミックスを手掛けているPlanet Muより発売)をリリース、本作は4年ぶりとなる
2015年作の2ndフルアルバム(Innovative Leisureからリリース)です。

筆者自身はダブステップやチルウェイブといった音楽には触れることが少なく、
有名どころではWashed Outの作品を最近ようやく聴いた…と言う程度のため、
偶然普段見ていますブログ様で紹介されているのを発見し購入に至りました。

基本的にはサンプリングによる環境音やシンセサイザーによる電子音を組み合わせて作られる
エレクトロニカの一部という事になりますが、チル(Chill)という言葉の意味する通り、
選択される電子音は冷ややかで滑らかな感触があって、この音色の選び方がかなり重要な要素と
なっているように感じます。生々しい音よりも、チープでリヴァーブの深くかかった音が
選択される傾向にあり、古典的なエレピによるバッキングも積極的に取り入れられています。

また、個人的な感想としてビートは70s~80sのブラックとりわけディスコミュージックに影響を受けた
バックビートの強調され、もたれかかったものが多く、
捉えようによってはダンサブルと言えるのかもしれません。

ここまでは一般的な傾向で、本作に関して言えばビートの構築はブレイクビーツ的な作られ方であり、
ダンスミュージックと言うには程遠いものであると思いますし、まだ確立したジャンルであるとは
考えにくいと思います。さらに、曲全体の構成はミニマルなループを適宜配置していった作りが中心で、
ベースやドラムなども生音がかなりしっかりと入っています。
そのため、一聴するとJames Blakeの作品のようにソウルフルなテイストが感じられ、
そうした部分に筆者はかなり心を揺さぶられました。

テンポもゆったりとしたものが多く、徐々に音数が増えたり減ったりしていきながら、
揺らめくように各電子音が配置されていて、聴いているだけで、
どことなくノスタルジックで、そして幻想的な世界に連れて行かれるようです。

#1Blameは、消え入りそうなファルセットと、ヘリコプターの音のような電子音、
金属のアクセサリーが擦れるような音、徐々に近づいてくるように定位されたシンセが心地いいです。
#2Hungerは、ドラムンベース的なリズムトラックに少しヨレが加わっており、ソウルに
良くみられるようなエレピの白玉と、反響するように定位されたコーラスが揺らめいています。お気に入り。
#3Indigoも#2と同じくエレクトリックなソウル路線と言った一曲で、もう少しリズムに捻りが
加えられています。
曲途中から生のドラムスが入って来て、少しへヴィ―なグルーブになった#4Kwiatは、
雨だれのような手数の多いフィルと、それとは無関係にゆったりとしたコーラス、次第に
音量の大きくなっていく電子音の組み合わせが面白いです。お気に入り。
打って変わってメロディラインのはっきりとした表題曲の#5Raptureは、都会的なソウルの趣が強く、
ブライトな音色のピアノソロがあり、パタパタとした音のパーカッションが入って焦燥感を
演出する中間部、後半では不穏なコーラスの音が大きくなって行き、
ピアノソロでクライマックスを迎えます。最高。
#6Perfume Kinshipはインストによる1分50秒の短いインタールード。
断片化されたコーラスとピコピコしたシンセ、東洋的な旋律を奏でるシンセが重ねられています。
続いてインストの#7Torrents of Springは、ホーンの取り入れられたジャズ寄りのハーモニーが
印象的です。
コズミックなシンセとボーカル、エレピのみのイントロからスネアロールが入る
#8Home & Consonanceは、後半ではヨレたリズムのシンセソロが用意されています。
ボイスサンプルがひたすらに繰り返され、多重録音されたコーラスの彩りが美しい#9Gloriaもお気に入り。
徹底的に音数を絞り込んだ#11Not Enoughは、彼の繊細なファルセットによる
コーラスを楽しめる一曲です。

抽象的でミニマルな電子音の重なりを中心に据えながらも、エレピやシンセのフレーズには
ジャズやソウルのエッセンスが振り掛けられており、彼の柔らかく消えてしまいそうなボーカルと
合わさって、幻想的で、身体にじわじわと冷たいものが凍みこんでくるようです。佳作。

Hunger

Rapture

Torrents of Spring

Gloria(Tontario Remix)

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  1. 2015/03/22(日) 21:43:00|
  2. Tropics
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今日の一枚(380)

Album: Lady Soul
Artist: ACO
Genres: R&B, Soul, Electronica, Pops

Lady Soul

愛知県出身の日本のシンガーソングライター。1977年生まれ。椙山女学園高等学校卒。
1998年作の3rd。

1995年にHit Streetからデビューを果たし、1998年にキューンレコードに移籍、
1999年にDragon Ashの降谷健志、Zebrraとの共作Grateful Daysがミリオンセラーとなります。
同年に元電気グルーヴの砂原良徳のプロデュースによるシングル「悦びに咲く花」が
30万枚以上の売り上げとなり、モデルとしての活動も行うなどしています。

その後は、ドイツに音楽制作の拠点を移すなどしながら、00年代はニューウェーブ、エレクトロニカ、
アンビエント、ダブなど電子音楽を中心とながら、R&Bやソウルなどブラックに影響を受けた歌唱、
ジャズ的なバッキングを随所に取り入れた独特な作品を残し、
現在までに9枚のオリジナルアルバムを発表しています。

高音成分の多く滑らかな質感のある彼女のボーカルは、エッジボイスや特徴的なファルセット、
柔らかなブレス音など、官能的で頽廃的なイメージが強いですが、一つ一つの歌詞の発音に対する
こだわりの強さは尋常ではなく、音の切り方伸ばし方のセンスがグルーブを生み出しています。
デビュー当初はR&B, ソウル系統の女性シンガーとして知られており、
本作にはまだエレクトロ~ニューウェーブの色は感じられず、スムースでジャジーなR&Bといった趣です。

原曲の雰囲気を大きく崩さないMinnie RipertonのカバーであるM8INSIDE MY LOVE、
Marvin GayeのバックでJames Jamersonが弾いていたようなベースラインを思わせる
M2やわらかい肌などを始めとして、モータウンを意識しつつも、随所に電子音を効果的に取り入れた
懐かしくオーガニックソウルの影響が感じられる中にも、都会的で濡れたような感触のある音像で、
唯一無二の音に仕上がっていると思います。

ジャジーでダークなピアノのバッキングに、乾いていて高音成分の多いスネアが印象的な
ドラムス、グルーブにまろやかで暖かい感じを与えるパーカッションに、
滑らかに、絶妙に抑揚を付けながら迫ってくるボーカルが耳を撫でる#1揺れる体温から、
録音の良さも相まって上質な音に包まれます。
アウトロにはピアノとスキャットのユニゾンが入っています。最高。
古いプッシュ式の電話の着信音から始まり、リバーブのカットされたサスティーンの短いスネア、
同じく歯切れの良くパーカッシブなピアノのコードバッキングでファンキーに進み、
サビでポップになって行く#2やわらかい肌は、アウトロにかけてエレピのRamsey Lewisを
思わせるようなジャズファンクなソロが入り、ベースもメロディアスになっていき、
グルーブに圧倒されます。最高。
Aretha Frankilinから付けたのであろう表題曲の#3Lady Soul(Day-Life Version)は、
ヒップホップ的なグルーブのある僅かに歪んだドラムスと、ゆったりとしたメロディー、
エレピとオクターブ奏法を中心としたカッティングのバッキングが配置された、
気怠い雰囲気の一曲です。薄く重ねられたコーラスの定位感に不思議な気持ちにさせられます。お気に入り。
さらにテンポを落としたDoopな#4こわれそうよ(Future Classics Version)は、
中低音の響きが厚いストリングスと、レイドバックしたドラムスを中心に、
歌謡を思わせる濡れたメロディーを歌っています。お気に入り。
スラップベースのリフにフェイザーの掛かったエレピ、クリーントーンのカッティングで
ファンキーに進行する#5CATWALKは、腰に来るグルーブのある一曲ですが、打ち込み然とした
ドラムスと緩やかなボーカルの表現のためか物憂げな雰囲気を漂わせています。最高。
#6熱いめまいは、ハイパスフィルターを掛けたようなベースの特徴的なトーン、
エレピとストリングス系のシンセが入って来て始まりダークな雰囲気があります。
#8Inside My Loveは、シルキーで柔らかいストリングスと、浮遊感のあるエレピ、
パリッとしたリズムギターに、ホイッスルボイスまで巧みに用いた
ボーカルの上手さが際立っています。ギターソロは長めに収録されており、
フュージョンライクでこれがまた良いです。最高。
#9は#3Lady Soulの別バージョン(Twi-Life Version)で、ブラコンではお馴染みな太く
ワウの掛けられたようなシンセベースと、派手なシンセが部分的に取り入れられたNJSっぽい
サウンドに変貌しています。ただ、アコギのアルペジオや声は瑞々しく生っぽい音ですので、
それほどチープな印象は与えていません。最高。
#10ふたつのてのひらは、#9に続いてシンセベースの歯切れのよくシンコペートしたベースラインと、
細かく刻まれたハットやマラカスがブレイクビーツのように配置された
アンビエントテイストの一曲です。アウトロのアコギソロは、高音の煌めき、弦の擦れるノイズが
瑞々しいです。最高。

どの曲を聴いても、彼女のやわらかい高音の響きが特徴的な声や、生楽器の音の良さ、
ジャジーなトラックに統一感があって、すっきりと聴けます。
前回も90年代末の邦楽R&Bでしたが、この時期にはこうした優れたR&B作品が数多く眠っていますので、
紹介していこうと思います。弱冠20歳でこんなトラックを作り上げる才能に惚れ惚れします。愛聴盤。

揺れる体温

やわらかい肌

Lady Soul

CATWALK

Inside My Love

ふたつのてのひら

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  1. 2015/03/22(日) 14:48:50|
  2. ACO
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今日の一枚(379)

Album: Honey Flash
Artist: SILVA
Genres: R&B, House, Disco

Honey Flash


東京都出身の日本の歌手、クラブDJ。1975年生まれ。1999年作の1st。
本名は高橋よしこ。1998年にSILVAと改名し、00年代初頭にはタレントとしても活動、
CX系、日本テレビ、NHKにもレギュラー番組を持っていたようです。
2002年にはWarner Music Japanに移籍し、2002年にオリジナル3rdを発表してからは、
オリジナルアルバムは発表していません。

1990年代後半から00年代初頭にかけて、日本国内では女性R&B系シンガーが数多く生まれることに
なりましたが、彼女はそうした歌手の中でも声楽出身ということもありパワフルで安定した歌唱を
見せており、活動期間は短いながらも良質なR&B作品を残しています。

本作は、UA, Sugar Soul(Sugar Soulの項を参照)を手掛けた朝本浩文(1963)や、
SMAPの初期の作品など、フュージョン~ファンク系の楽曲アレンジで優れた作品を残している
CHOKKAKU(島田直, 1961-), 加藤ミリヤ、青山テルマ、宏美、清水翔太などを手掛けた
LA在住のプロデューサー、村山晋一郎などを作家に迎え、鋭い打ち込みによるダンストラックや、
ホーンやグル―ヴィーなベースラインの映えるファンク、サンバのリズムを取り入れた楽曲など、
邦楽ポップスならではの美しいメロディーとソウルフルなボーカルにモダンなR&Bのトラックが
噛み合っていて、今聴いても色褪せず、艶やかな魅力のある作品に仕上がっています。

ソリッドな4つ打ちと16分の鋭いカッティングにスラップベースと王道なディスコサウンドの構造を
中心としながらも、音数の少なさやシンセの定位にはエレクトロの要素が強い
#1Morning Prayerから始まります。お気に入り。
エレピが揺らめくイントロから加速していくアシッドジャズなトラックに4つ打ちが組み合わさった
#2Almost Loveも#1と同系統の一曲です。
宇多田ヒカル/Automaticのようにスクラッチの掛かったキックから始まる#3Phoneは、
冒頭の循環コードを繰り返していきながらジャジーに展開していき、
ポップなメロディーを気怠いボーカルで歌います。ブリッジ部分の低音のドスの効いたトーンが素晴らしい。
この曲が一番MISIAの1stの音に近い一曲かもしれません。ブルージーなギターソロに、
テクニカルにスキャットがユニゾンしながら終わっていきます。最高。
Sly & The Family Stoneを思わせるようなぶっといスラップベースのリフと奇怪なテーマを吹くサックスを
中心としたダークなファンク#4Mothershipは、捻りの多いメロディのメロと歌謡曲的なサビが
対比的で面白いです。お気に入り。
タイトルの通りサンバのリズムを、打ち込みでスピード感たっぷりに取り入れた#6One Night Sambaは少し変わり種です。
ピアノソロのイントロからフィリーなストリングスが入って来て、パワフルなロングトーンで幕を開ける
スローダンサーな#7雨にうたうは、右チャンネルを流れるまろやかなカッティングと、ストリングスの前に出てくる
インストパートのアレンジの緻密さ、サビのバックで饒舌に弾かれるベースラインが堪りません。
シンプルなパターンミュージックですが、歌のクオリティも最高です。
ラテンの香りが漂うメロディとハウス的な打ち込みリズムにボーカルの乗った#8Sachi(Album Version)から、
サンプリングによるアルパのような音とネオソウル的な訛りのあるリズムトラックに生感のあるホーンが
絡みついたクワイエットストーム#10愛したいだけは、ねっとりとした歌唱が白眉です。最高。
シティポップス的なコード感とディスコビートの結びついたスピード感ある#12Couplesは、
サビの豊かで生々しいソウルフルなコーラスと、安っぽいシンセのホーンの組み合わせ、ハードロックなギターソロから
スキャットのソロへと繋がって行きます。お気に入り。

力強く中低音の響きの豊かなボーカルの魅力と、ハウス由来の打ち込みによるビート、
それに対して生音のギターやベースのうねりあるグルーブとフィリ―ソウルばりのシルキーなストリングスが
バランスよく配置され、融合していると思います。90s邦楽R&Bの傑作の一つ。

Mothership

雨にうたう

愛したいだけ

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  1. 2015/03/22(日) 13:05:11|
  2. SILVA
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今日の一枚(378)

Album: Colonel Abrams
Artist: Colonel Abrams
Genres: Disco, House, R&B

Colonel Abrams


アメリカ、ミシガン州デトロイト生まれ、ニューヨーク州ニューヨーク、マンハッタン、
イーストビレッジ出身のシンガーソングライター、音楽プロデューサー。1985年作の1st。

10歳の時に建築業に関わっていた父の仕事の都合でデトロイトからニューヨークへと引越し、
幼いころからピアノとギターを弾くようになります。デビュー前から複数のバンドを
組んで活動し、その中にはHeavy Impactと言うバンドや、1970年代半ばには、
かのPrinceがリードギターで参加していた94 Eastと言うバンドでも活動していました。

1980年代半ばになるとLeave the Message Behind the Door, Music Is the Answerなどの楽曲で
始めはヨーロッパを中心に、後にアメリカ国内でもその名が知られるようになって行きました。
1985年にはAMIと言うレーベルと契約し、ニュージーランド出身の音楽プロデューサーの
Richard Burgessと共に働いていたSteven Machatと言う人物に見出され、
ソロアルバムの制作が始まります。

Richard Burgessプロデュース、共作によるTrapped(1985)は、イギリス国内のシングルチャートで
Top5に入り、US Hot Dance Music/Club Playでは首位を獲得するに至りました。
本作は2週間連続でダンスミュージックのアルバムチャートで1位、
シングル盤のTrappedは発売から2年間の間に500万枚以上の売り上げを残し、
1995年にはBoards of Canadaによるカバーも発表されるなど、ダンスクラシックとして親しまれています。
同じく本作に収録されているI'm Not Gonna Let Youは1986年にダンスミュージックチャートで1位、
US Billboard Top 200では75位、US Top R&B/Hip-Hop Albumsでは13位となっています。

その後、大きなヒット曲、ヒットアルバムは無かったものの、BillboardのHot Dance Club Songsでは
80年代から90年代にかけてチャートインしており、ディスコ全盛期からハウス、
トランスミュージック隆盛の時代ににかけて、優れた作品を残しています。
本作も、ディスコミュージック全盛期のサウンドからハウスの間にあるサウンドと言った趣で、
バリトンボイスの渋いボーカルの味わいと煌びやかな打ち込み、ローファイなリズムマシンの音と
合わさって独特な高揚感を生み出しています。

#1The Truthは、シンプルなビートにタムを絡めた打ち込みドラム、ホーンやクリーンのコードカッティング、
単音カッティング、ハンドクラップなどが散りばめられたリズムトラックに、
NJSにも繋がるようなシンセリードが断片的に組み合わせられた一曲。最高。
冒頭では複数のドラムキット、とりわけハイハットの細やかな刻みが目立ったブレイクビーツのようにも
聴こえるリズムが面白い#2Speculationは、シンセのリフの使い方が何とも80s的です。
シンセベースの低音の強調された音も暴力的で懐かしい香りがします。
スウィートソウルなトラックにAbramsによるポエトリーリーディングで始まっていく
#3Never Changeは、ゆったりとしたリッチなグルーブを維持しながら、
途中から太いスラップベースとメロディが入って来て、コーラスの入ったキメを繰り返しながら
盛り上がっていきます。後半ではエレピのリフやストリングスもあり、他のデジタルな音像のトラックとは
一線を画していて良いです。
彼の代表曲となった#5Trappedは、冒頭の歯切れの良くクッたリズムのシンセベースのリフが
繰り返されながらファンキーに進行していきます。音数少ないトラックの中でホーンっぽい
トーンのシンセによるテーマが絶妙です。かなりリバーブの足されたタムのような
音のドラムもクールです。最高。
#6I'm Not Gonna Letは、細かく刻まれたシンセのシーケンシャルなフレーズに、
Chicを思わせるようなカッティング、パワフルなマシンの揺らぎ無いビートが
噛み合っています。お気に入り。
#7Over And Overは、キラキラとしたシンセが揺れ、柔らかいボーカルが絡みつくイントロから、
脱力したボーカルのままリズム隊が入って来て、女性コーラスが挿入され落ち着いた艶消しな一曲に
なっています。最高。
ブラコンテイストが強いバラードの#8Margauxは、サックスの艶のあるオブリガートと
ソウルフルな女性コーラス、グロッケンシュピールのような音のシンセが哀愁を感じます。お気に入り。
続いてスロウテンポのクワイエットストーム#9Table For Twoは、短い一曲ですが囁くような
コーラスの定位が気持ち良いです。お気に入り。

筆者の所有している輸入盤では残りはボーナストラックです。5曲あります。
#10は#5の別ミックスとなっており、インスト部分の長いロングバージョンとなっています。
#11は#6の別ミックスとなっており、こちらもインスト部分の長いロングバージョンになっています。
個人的にはイントロのインスト部分が長くなっていて、こちらの方が
ダンスミュージック然としています。最高。
#12は#1の別ミックスとなっており、エモーショナルでハードロック的な
ギターソロがフィーチャーされています。これもお気に入り。
#13は#7の別ミックスとなっており、アフリカンなパーカッションが追加され、
ベースラインも強調された肉体的なグルーブの強いアレンジとなっています。お気に入り。
#14Music Is The Answerは、元のアルバムには収録されていなかった彼の1stシングル(1984)で、
ソリッドで強いビートとベースにボーカル以外は、僅かにシンセがコードを鳴らすのみで、
本作の中でも飛びぬけてハウス色の濃い一曲となっています。お気に入り。

本作は、2010年にリマスターされCDでリリースされているため、筆者は手に入れることが出来ましたが、
彼のことを知るきっかけとなった山下達郎のラジオ、サウンドストリートで紹介されていた
(と記憶しています)2ndアルバムのYou And Me Equals Usは1987年以来CD化されておらず、
入手が難しい状態となっています。リマスター再発が期待される一枚だと思います。

ブラコンやNJSといった80年代末以降のブラックミュージックを先取りしたサウンドで、
シンセやリズムマシンの古い音やアレンジを含めて、
今聴いてみると個性的な魅力を放っている一枚です。
もっと聴かれるべきダンスクラシックスだと思います。佳作。

The Truth

Trapped

Over And Over

Table For Two

Music Is The Answer

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  1. 2015/03/15(日) 20:51:49|
  2. Colonel Abrams
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今日の一枚(377)

Album: Mishaps Happening
Artist: Quantic
Genres: Electronica, Funk, Soul, Bossa Nova, Crossover

Mishaps Happening

イングランド北部、ウスターシャー州ワイアフォレスト地区ビュードリー出身の音楽プロデューサー、
エンジニア、DJ, トラックメイカー、マルチプレーヤー。本名はWill Holland。2004年作の5th。
現在はコロンビア在住という解説もありますが、公式サイトによるとニューヨークのブルックリンに
Sonido del Valle Studioというスタジオを構えて音楽制作を行っているようです。
スタジオにはヴィンテージの機材を数多く備え、サウンドエンジニアとしての業務も行っています。

16歳の時にウェールズ出身のミュージシャンである父と、フォークミュージックマニアの母の影響で、
自宅にてシーケンスソフトの扱いやプログラミング、レコーディング技術について学ぶ傍ら、
ギター、ベース、ピアノ、サックス、アコーディオン、パーカッションなど楽器を修め、
レコードコレクターとして収集も行い、セバン川の畔にある自宅の敷地内に
小屋を建てて音楽制作にのめり込んで行くようになります。

その後、ロンドンにあるBreakin Bread Recordsに見出され、作品をリリース、DJとしても
活動を始めるようになり、イングランド南部のブライトンを訪れた際にTru Thoughtsと言うレーベルと
契約、環境音のサンプリングと生楽器の音を効果的に調和させたデビューアルバムThe 5th Exoticを
リリースします。

その後は、ファンク、ソウルを中心としながらも、ジャズ、ボサノヴァ、キューバ音楽、
ハイチ音楽、サルサなど様々な音楽のエッセンスを吸収しながら、
60s~70sのソウル、ファンクに焦点を当てたThe Quantic Soul Orchestra,
レゲエ、ダブとラテン音楽との融合を図ったプロジェクトFlowering Inferno,
The Limp Twinsなどの名義を使い分けて活発に作品をリリースしています。
現在までに、他のアーティストの作品のリミックスでは30作品以上に関わり、
自身のレーベル、Magnetic Fieldsを立ち上げています。

彼自身が得意とするブレイクビーツの手法が本作では積極的に用いられており、
暖かな歌ものもあったり、サンバのリズムが取り入れられたもの、
ホーンの入ったジャジーなトラック、ファンキーでゴリゴリと進行するトラックなど、
ソリッドなビートが全体を支配しつつも、生音が効果的に取り入れられた洒脱な作品となっています。

#1Mishaps Happeningは、ブラジリアンなパーカッションと女性ボーカルのスキャット、
ウォーキングベースで静かに進行し、ファンキーなコードカッティングが絡みついて行きます。
後半ではスネアの音色も派手になりアシッドジャズ的な雰囲気を醸し出します。最高。
JB流の真っ黒なファンクにクラブサウンドが融合した#2Use What You Gotは、
70sそのままなエレピのローファイな音色とヴォイス、それに対して生々しく歯切れのいい
打ち込みのドラムがマッチしています。お気に入り。
一転してマシン然とした安っぽいリズムと粘りがあり訥々としたラップが入った#4En Focusは、
ギターのコードカッティングでひたすら同じパターンが繰り返されながらウネウネと展開します。
#5Trees And Seesは、電子音とクッたリズムのベースライン、エレピのリフがミニマルに組み合わせられた
一曲で、ブレイクを起点にコズミックな電子音が前に出てくるアレンジとなっています。
後半ではさらに静かでレイドバックした展開となり、遠くで鳴っているハイパスフィルターの掛かったような
シンセの音が押し寄せてくる波のようで心地良いです。お気に入り。
#7Furthest Momentは、冒頭から繰り返されるクリックのリズムパターンに合わせながら、
シンセのコード弾きと高音のコーラスが重ねられています。後半部では断片化され、
ミュートの効いたサックスのフレーズやカッティングが散りばめられます。
#8Don't Joke With A Hungry Manは、ソウルフルな女性ボーカルとモータウン的なベースライン、
音数少ないリズムギターに、後半にはグロッケンシュピールのジャジーなソロが用意されています。
再びオールドファンク~ジャズファンク路線に戻った#10When You're Throughは、
ピアノのオブリガートが人間味あるバッキングなのに対して、揺るぎのないリズムと
サンプリングによるホーンの音ネタが配置されます。お気に入り。
高速のドラムンベースにソウルフルなボーカルを組み合わせた#11Perceptionは、
後半でスネアロールのみとなり、さらに加速していきます。
#12So Longは、再び単音リフと16分のハット、エレピの浮遊感のあるコード弾きから始まる
フュージョン色の強い一曲で、ボーカルが入るとリズムはレゲエに変化します。
この二つのパターンを繰り返しながらねっとりと進行していきます。最高。

こうしたソウルフル、ファンキーなハウスは短いパターンを繰り返しながら進行していくため、
途中で聴き疲れしてしまう傾向にあるのですが、古典的なファンクやモータウンの要素が
ゴツゴツとした形を残して入っていて、暖かみのある音に仕上がっています。佳作。

Mishaps Happening

Use What You Got

Trees And Sees

When You're Through

So Long

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  1. 2015/03/12(木) 21:53:30|
  2. Quantic
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今日の一枚(376)

Album: Ruth
Artist: Ruth Koleva
Genres: Jazz, Fusion, R&B

Ruth.jpg

ブルガリア、ソフィア出身の女性R&B, ソウルシンガー。1990年生まれ。2014年作の2ndフルアルバム。
重量挙げの銅メダリストとなり、オリンピックチームのトレーナーとして、色々な国を
移り住んでいた父に連れられ、海外で幼少期を過ごした彼女は、当時から
Marvin Gaye, Ella Fitzgerald, Nat King Coleといったような古典的なソウルミュージックに
救いを求めるようにしてのめり込んでいき、ミュージシャンとして活動することを志すようになります。

アメリカに渡り、Hollywood Pop Academyで音楽を学んだ後、帰国してローカルでヒップホップ、
ソウルグループなどでボーカルを務めるようになって行きます。
そして弱冠19歳で自主制作盤によるデビューアルバム、Within Whispersを発表します。
翌年の2012年にはFuture Street EP, そして昨年に本作を発表するに至ります。

2011年にはBobby McFerrinとのコラボレーション、ロサンゼルスではStevie Wonderの前でパフォーマンス
するなど注目を集め、2012年にはブルガリアラジオアワードでGRAZIA Woman of the Year awardと
Best Female Singer awardを最年少で受賞することとなります。

本作は、発表後Mark Ronson, Richard Bona, Frank McCombなどから注目され、
プロデュースはオランダ出身のVincent Helbers(Key, Seravince, Flowriders)が担当、
バッキングには4Hero, Jose James, Flying Lotusなど、ブラックミュージックの影響が
色濃くモダンな、エレクトロソウル、ネオソウル、ソウルジャズ、エレクトロニカ界隈で
活躍するドラマー、Richard Spavenなどが参加しています。

シンガーとして彼女が直接的に影響を受けていると目されるのは、Erykah BaduやJill Scottのような
ネオソウル~オーガニックソウル関連の人物でありましょうが、
彼女の囁くような歌声の甘さや柔らかさ、すっきりとしたアクのない感じは、
楽曲にカラフルさとポップネスを付加しており、他のエレクトロソウルの作品よりも聴きやすいと思います。

Richard Spavenの叩きだすリズムパターンは、例えば有名どころではChris DaveがRobert Glasperの
プロジェクト、Robert Glasper Experimentの中で行っているような手法に近い方法で構築されており、
わざと過剰にモタらせたり、ブレイクビーツ的なフレーズの作り方を人力で真似るような手法を用いて、
リズムにヨレや偏りを与えることによって、リズムの中心が見えにくくなり、
独特な浮遊感を醸し出すことが出来ています。
ハーモニーは複雑に入り組んでいて、以前私的名盤紹介で紹介した中では、
Espelanza Spaldingの作品に近いような、音数を削れる限り削って作りこんでいます。

#1What Am I Supposed Toは、Weather Reportのようなジャズロック~フュージョンライクな
冒頭のテーマから、ドラムベースと電子音となり、音数少なく展開していきながら、
徐々に音が増えていく展開がクラブミュージック的な一曲です。ドラムの絶妙なヨレ感、
高音の囁くようなコーラスワークも素晴らしいです。最高。
#2Freak And Flyは、浮遊感たっぷりなエレピ、コーラスの徐々に下降していくコードワークと、
あえてリズムマシンのようなフィルを特徴としたドラムスに、
サスティーンの短くスラップを中心としたベースラインが結びついたやはりフュージョン色、
リズムには70s~80sのパターンミュージック的な粘りのある一曲。最高。
#3Turn This Aroundは、ピコピコの電子音中心なアンビエントなイントロから、冷ややかなボーカル、
ぶっといベースリフと乾いて無機質なドラムに暖かいアコギのアルペジオが対照的で面白いです。
D'Angeloの楽曲を思わせるような極端にレイドバックしたリズムと定位を変えながら
蠢くシンセが妖しげな#5Dissonantもお気に入り。
続いてフュージョン路線に戻った#6Clarityではより端正なリズムワークと複雑にテンションの
絡んだギターのバッキングがありつつ、サビでは耳元で囁いているような瑞々しいコーラスの
重なり具合に得も言われぬ気持ち良さがあります。
#7Betterは、遠くで鳴るクラッシュシンバルとひたすらに繰り返されるコーラス、
電子音によるかなりミニマルな作りの一曲。ボーカルのメロディはこれが一番R&B的と言えると思います。
#8Goneは、人力ブレイクビーツとでもいうべきリズムチェンジの激しく入り組んだドラムパターンに、
ファミコンシンセによるシーケンシャルなリフ、少し歪ませたベースはブリブリとしており、
後半ではストリングスとフルートが出入りしながらStaminaによるラップパートへと突入します。お気に入り。
ニューウェーブ的な、東洋的な響きのあるシンセのバッキングに男女ツインボーカルが
シンプルに重ねられた#9Dizzy Love Affairは少し変わり種な一曲。
#11 4 Amは、ベースリフとユニゾンするスキャットのイントロから始まり、そのパターンを
モチーフにしながらベースリフと艶やかなボーカルと最低限の電子音のみでモーダルに展開し、
サビではスウィートソウルのような感覚があるサウンドになっています。これもお気に入り。

リズム構築の面白さと言う点だけでも十分聴いていて楽しい一枚ですが、
音数を極限まで削りながらコーラスや電子音の定位の心地よさ、意表を突いたコードワーク、
そして彼女のある意味無機質な歌声が合わさって、現代のフュージョン~ネオソウルの
見事な融合を見せています。傑作。

What Am I Supposed To

Freak And Fly

Dissonant

Better

4 Am

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  1. 2015/03/12(木) 01:28:28|
  2. Ruth Koleva
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

今日の一枚(375)

Album: Fret not... Fear all... Faint Not
Artist: Freak Zoid
Genres: Progressive Rock, Fusion

Fret Not Fear All Faint Not

アメリカ、ニュージャージー州出身のフュージョン~プログレ系ギタリスト、作曲家である
Scott McGillによるテクニカルフュージョン、プログレッシブロックユニット。2012年作。

14歳の頃にギターを弾き始めた彼は、テンプル大学でジャズ演奏/作曲を専攻し、
始めはRobert Hazardのバッキング(1985-1986)としてスタジオミュージシャン活動を開始します。
1991年にはHand Farmという自身がリーダーのバンドを結成し、Finneus Gaugeというプログレバンドの
メンバーとしても活動していました。1997, 1999年に二枚のオリジナルアルバムを残しています。

その後、2001年にはFinneus Gaugeのメンバーなどを集めてMichael Manring, Vic Stevensらと
Addition By Subtractionと言うバンドを結成(2006年作のセルフタイトルには現Dream Theaterの
Jordan Rudessがゲストとして参加するなどしています)し、ライブ、オリジナルアルバムを発表しています。

彼のギタリストとしてのスタイルは、弦飛び、フリージャズ的な手法による
スケールアウトの極めて多いフレーズ、強固な左手による音の繋がったレガート奏法、
ヴォリューム奏法などを始めとして、Allan HoldsworthやScott Hendersonの
それとかなり近いもので、テクニカルで変態的なジャズロックといった趣の強い作品を多く残しています。
ただし、メロディアスな速弾きにはプログレメタル的な様式美なフレーズも散見され、
こちらも是非CDを手に入れて聴き込んでみたいと思っております。

今回紹介するFreak Zoidは、2006年作のソロアルバム、Awarenessに参加したメンバーである
Ritchie DeCarlo(Dr, Per, Theremin), Kjell Benner(B), Dave Klozss(Stick)のトリオで
録音されており、初期の作品と比べてよりプログレ色の増した音像となっています。
テクニカルなキメやリズムチェンジが繰り返される中で、メタリックでダークな歪みのギターが
唸りを上げまくっています。特に、個人的にはドラムスのRitchie DeCarloがなかなか素晴らしく、
複雑なリズム、ハードでパワフルなフレーズの中にも、ハイハットやスネア、
リムショットなどの音の配置にフュージョン由来の軽快な16ビート的なグルーブがあり、
混沌としたギターのフレーズの中にも、タイトで端正なイメージを湧き立たせています。
基本的には他のパートを支えることに集中しているベースも、曲によってはメロディアスに
弾き倒しており、全体としてはセッション、ジャム的な要素がかなり強い内容となっています。

#2All up in thisでは音程差の大きいギターの速弾きフレーズにユニゾンするベース、
浮遊感あるエレピのバッキングにタムやリムショットを巧みに絡めたドラミングがフュージョン色を
強く打ち出しています。お気に入り。
#3TRNBではMike Sternのリーダー作品を思わせるようなアウト感満載の荒く歪ませたギターは、
速弾きにはHoldsworthを思わせる部分が強く、暴れまくり、重低音でどっしりとしたベースが心地良いです。お気に入り。
ベースが前面に出て、メロディアスに弾き倒している#4The Gizmo Tronixでは、
ギターは高音域のかなり出たキンキンしたトーンで、ドラムスはより手数多くメタリックになっています。最高。
#5Звук волны (zvuk volny)は、ギターとフレットレスベース、コンガによる
アコースティックでアフリカンな一曲です。
ブルージーで狂気を孕んだ速弾きギターとツーバスドコドコ踏みながらも繊細なシンバルワークを見せる
ドラムスで疾走する#6Six Foot Eight、ハードロック的な重厚なグルーブのある#8Ben Ali Game overは、
ジャキジャキとしたリズムギターにアウト感のあるリードフレーズ、
高音の強調されたトーンのギターシンセのような、ハーモニカのような音がオブリガート的に入って
来るのも良いです。歪ませたベースによるソロも入っています。
冒頭からひたすらに激しいツーバスとジャズの4ビート風のライドシンバルを組み合わせた
リズムパターンに、ワウを掛けた歪みのリズムギター、クリーントーンの速弾きで自由自在に切り込む
#9Five Zoidは、轟音にひたすらに圧倒される一曲です。
インダストリアルのような機械音と金属音がポリリズミックに構築されながら、
次第にベースリフが入って来てミニマルに展開する#10Vague Hausもお気に入り。
スウィンギーで抜けの良いドラムスの叩き出す変拍子と、奇怪なフレーズを次々と
生み出していくギター、ハイの出た、Jacoを思わせるようなトーン、同音連打からの若干レイドバックした
フレージングにはWill Leeを思わせるようなファンキーさもある変態速弾きベースラインで
疾走感たっぷりに進んでいく#11Pasted Tripは、リズムチェンジを巧みに挟みながら、
鋭いグルーブに満ち満ちています。最高。

テクニカルな変態系ギタリストによるプログレチックなフュージョン作品ということになりますが、
リズム隊の生み出すファンクやジャズからの影響が垣間見える粘りのあるグルーブと合わさって、
非常に個性的なアンサンブルを生み出していると思います。佳作。

All Up In This[Live]

Звук волны (zvuk volny)

リーダーのギタリストScott McGillによるセッションです。

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  1. 2015/03/10(火) 23:28:55|
  2. Freak Zoid
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
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可能な限りフォローバック、コメントしに参ります。
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