私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

良い音楽、売れる音楽の違いは何なのでしょうか?

お世話になっております。
「私的名盤紹介」管理人のSystematic Chaos(@privategroove)です。

ここ数か月間更新速度が低下しておりましてすいません。
実習にも慣れてきて時間の使い方もわかってきましたので、ここからはある程度の速度で更新できると思います。
これからも末永くお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

ところで、今回のテーマ(と言うほど大それた記事でもないんですが)は上に書いたようなことなんですが、
なんでこんな話をしだしたか、と言いますと、
Twitterで偶然見かけたask.fmの質問文で気になったからです。

こういう質問文でした。
Q「売れる音楽」との対比で「良い音楽が売れてほしい」
みたいな言説をよく耳にしますが、「良い音楽」とはどういうものだと思いますか?


こういう類の音楽観に関する議論は、個人のブログやTwitter, はたまた2chのスレに至るまで
色々な場所で議論されてることと思います。
ということですので、メモ程度にではありますが、考えたことを書きます。

この質問を構成している疑問のうち、最も大きなものは、
(1)「『売れている音楽』ならば『良い音楽』」は成り立つか、またその逆は成り立つか?
ということだと思います。
この点に関しても、非常に多様な考え方が想定され、実りのある議論が生まれそうですが、
質問の焦点はそこだけではありません。さらに一歩前進して、
(2)「良い音楽」というものはどのようにして生まれてくるか
(3)人はなぜ特定の音楽を「良い」と思うのかということに到達します。
という訳ですので、この質問が如何に良く練られたものであるかが窺われます。

以下では(1),(2),(3)の質問に分解して考えます。

まずはこの質問の背景となる、
(2)「良い音楽」というものはどのようにして生まれてくるかです。

良いという表現は結局のところ曖昧模糊とした主観による判断に過ぎないので、
明確に定義することはできないと思います。特定のタイミングである曲が突然「良い曲」と思われてくることも
起こりえますし、年を取るにつれて「良い」と思う曲の傾向やジャンルは変化していって当然であるからです。

ですから、その瞬間瞬間に各々の「良い」と思っている音楽(又は未だ出会っていないが「良い」と思うであろう音楽)
の総体というものが存在すると仮定すると、分かりやすくなると思います。

そうした総体は年齢層、生まれ育った家庭、職種、性別、性格的傾向などで
ソートされた範疇(これをサブカルクサい言い方だと「界隈」と呼んだりします)によって大小様々に分割され、
その中では、ある程度の音韻、音響的法則性を持った音楽が受容され、情報が集められることにより、
「名曲」「名盤」といったものが定義され、ある程度の弁証法的な変化と再評価を重ねながら
螺旋を描くように経時的に変化していきます。

では、(1)「『売れている音楽』ならば『良い音楽』」は成り立つか、またその逆は成り立つか?を考えます。

こうした「歴史」の中で、「良い」と思われる音楽というものはまだら上に分布していて、
それを評価する一つのメジャーな指標として、「売れている音楽」という、
トラッキングし数字に変換できる概念で測っているということになると思います。
従って、「良い」音楽というのでは質問としてはあまり答えが出せず、
「ある範疇で良いと思われている音楽」とすれば、
「ある範疇で良いと思われている音楽」が必ずしも「売れている」ということにはなりません。

この「売れている」と言う部分も重要で、「世界中で聴かれている回数」とはイコールではありません。
(cf. CD複数枚商法、Youtube再生回数操作)
すなわち、「商業的効果」を生み出さなければ「売れた音楽」とはならないので、
マスメディアとの関連や「曲」そのものの音情報以外の部分での、
例えばアイドル性やカリスマ性の部分が強く影響してくるため、程度の差はあれ
(今も昔も変わらずそうですけど)ノイズを含みます。

このノイズ(ノイズが悪いなどとは全く言っておりません。念のため。)の量が
多いか少ないか、という点に着目した意見が、
「最近の音楽の大衆芸術としての凋落」、「『マニアの私物』化、ファッション化」という概念に繋がっていくことは、
言うまでもないと思います。そしてこうした意見は得てして「音楽的差別観」や「不寛容」を伴って表出することが
多く、自分もネットを見ていて胸が痛くなることが多いです。

したがって、先ほどの逆となる「売れている」音楽は「ある範疇で良いと思われている音楽」であるか、
という問いも、どうやら必ずしも成り立たないようです。

しかし、この「必ずしも」と言う部分もとても重要で、この二つが時代文化的背景によって一致していると、
一致していた音楽界隈の人々にとってみれば、全能感を与えてくれるような「福音」となり、
その逆の界隈に属する人の音楽とその界隈の人々自身にとっては、寒い寒い「冬の時代」ということになるでしょう。

以上から、「良いと思われる音楽」が「売れている」という状態は、
見ている視点によってどのようにでも答えが変わって来る問題ですので、決まった答えはないということになりますが、
個々人の中に自分なりの答えが見つかるということになります。

では最後に、
(3)人はなぜ特定の音楽を「良い」と思うのかということを考えてみます
(本来は感じるべきことで、考えることじゃありません)

これは、とてつもなく大きな問いで、しかも残りの問いに比べると性質が違ってくるものですので、
短い考えを述べるにとどめたいと思います。

音楽の情報を捉えるとき、脳のどの部位が活性化され、そしてそれが人間の行う作業やより高次の行動、判断に
どのような影響を与えるかという問題に関しては、大脳生理学的な立場から研究が重ねられており、
様々なことが明らかになってきているようです。こうしたアプローチが一つあります。
(これは生得的な人間の能力を考えるもので、「特定の」音楽に関する評価としては、
当分役に立ちそうにはないかもしれません)

もう一つに、親や友人、メディアなどを含めた社会的影響、歴史的影響による
(「幼少期の刷り込み」(imprinting)、「ステレオタイプ」などを含む)(用語を適当に使っていますがどうかご容赦ください…) 評価の形成という問題があります。
思春期以降のアイデンティティー形成の過程としての、音楽の「ファッション化」もここに含めていいと思います。

そして、もう少し一般的な分析の仕方が、いわゆるポピュラーミュージック(に限りませんが簡単のため)の
音楽理論というものです。かなり卑近な例を挙げれば、
「小室系」の音楽によく見受けられるコード進行やメロディの傾向、
ニューミュージック以降のJPOPで頻出するCan't Take My Eyes Off You
(The Four SeasonsのFrankie Valliの1967年作)のコード進行、
音色の選び方など音響的な側面、編曲、ミックスの傾向、パルスの配置によるリズムの「グルーブ」「訛り」の問題、
歌詞の内容や韻の踏み方、歌詞の社会時代的、思想的傾向…などが
ここに集約され、「売れてきた、売れていた」音楽、あるいは「ある界隈で良いと言われる音楽」に対しては
メタ的にその共通項を探ることができます。
そうした中で、各人ごとに、音楽を構成するどの部分に心を動かされるのかという優先度の問題、
そしてどのようなハーモニーやアレンジ、グルーブ感が好きなのかという具体的な好みの傾向を考えていく…
というような流れは、音楽にかかわらず重要なものの見方だと思います。

長々と話してきましたが、少なくとも自分の周囲を見る限りでは、音楽に強い興味を持って楽しんでいる
層と言うのはそれほどマジョリティーではなく、ある程度マニアックに音楽に触れたり調べたり、
或いは演奏したりしている人はさらに少ないように感じます。(例えば自分の周囲には両手で足りてしまう程度の
人数しかいないと思います)

その中でさらに、ジャズならジャズ、メタルならメタル、ヒップホップならヒップホップなど、
「ある特定の音楽を好む界隈」と言うことになると、最早自分のコミュニティーに一人居るかいないか、
というレベルになってきて、如何にポピュラー音楽が若者の中でプライオリティーとして下に位置する
存在になってきているかということは、どうやら現実のようです。

幸い今の時代にはネットもあって、動画サイトなどで色々な音楽を試聴できます。
それに加え、過去の音楽の輝かしき時代の遺産にも、ある程度容易にアクセスできる環境が整っています。
興味を持って自発的に求めれば、探しているものを見つける方法が無数にあるということでもあります。
これは今の若者にとっての非常に有利な点だと思います。
将来を悲観視せずに、文化的寛容の精神で、自分の感性を信じて個別の音源を聴き、
本能のままに求めて行きたい、とこの質問を通して考えさせられました。



なんでこんなテンションになってしまったんでしょう…以上お目汚し失礼しました。

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  1. 2015/05/28(木) 23:11:10|
  2. 雑記(音楽関連)
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今日の一枚(392)

Album: Next To You
Artist: Beverlei Brown
Genres: Soul, R&B, AOR, 2Step, New Jack Swing

Next To You

イギリス、イングランド、バーミンガム出身のR&B系シンガー、シンガーソングライター。
2001年作の1st。

母親の影響で地元の教会で聖歌隊として歌っていた彼女は、イギリス国内で名の通った
女性ゴスペルデュオのthe Clark Sistersに見いだされ共演したりするなどしていました。
彼女のデビューのきっかけとなったのは、同じくバーミンガム出身のポップスバンド、
the Fine Young Cannibalsが結成される前に、ゴスペルの歌えるボーカリストとして
声を掛けられたことでした。

弱冠10代半ばだったという彼女は、彼らのツアーにボーカリストとして参加するなど、
早くからその才能を発揮していました。学校卒業後は、地元バーミンガムに戻り、
しばらくは法律事務所の受付嬢をしていた時期があり、Ruby Turnerのツアーに参加してから、
多くの仕事が舞い込んでくるようになり、サポートシンガーとしてSimply Red, Joe Cocker,
the Brand New Heavies, Babyface, Chaka Khanなどのビッグネームとの共演を果たしています。
1995年には当時UKソウル~ブラコンでヒットしていた男女デュオであるThe Affairの
Just Can't Get Enoughのレコーディングに参加しており、これもまた隠れた名盤だと思います。

翌年の1996年には初めてのシングルであるOn and Onを発売しており、順調に活動している
ように見えましたが、当時所属していたレコード会社が既にレコーディングが終わっていた
彼女の1stアルバムの発売を延期するという事態になってしまいました。

その後しばらく不遇の時代が続いた彼女は、2000年にDome Records(UKソウルを取り扱う
レーベルの中でも、70s的な古典的なソウルに影響を受けたものを多く取り上げている
レーベルで、 Lulu and Bobby Womack, Beverley Knight, Eric Roberson, Tortured Soul,
Incognito, Brenda Russell, Rahsaan Patterson, Donnie, Carleen Anderson, George Dukeなど、
私的名盤紹介で紹介して来たアーティストもかなりここからリリースしていたりします)との
契約を果たし、遂に2001年に本作をリリースすることとなります。

プロデュースはバーミンガム出身のRob Derbyshire, Paul Solomonの二人による
Full Flava, 本作の一年前にCraig David(Craig Davidの項を参照)のプロデュースを行っていた
Full Crew(2Step関連では結構名の通ったチームらしいです)などのプロデュースチームが
行っており、Erykah Baduのような90s末~00s初頭のUKソウルとはまた一味違った、ある意味90sUSR&B的な
キャッチーさや強いビート感を持たせた曲であったり、アシッドジャズ的なアプローチの
ものであったり、或いは70sから80sのパターンミュージックであったり、
ブラコンやAORの香りがする楽曲が収録されており、良い意味で当時のUKソウルの流行とは
外した、ムーディーで都会的なサウンドになっています。

#1Somebody Knows How You Feelは、フュージョン的なアコギの16分カッティングのリフと
単音カッティングに歯切れの良い打込みドラムとソウルフルなコーラスを合わせた一曲。
こういう音だと普通はホーンやストリングスを足して分厚い音にするのですが、
あくまで音数少なくモダンなR&Bに仕上がっています。最高。
グイグイと引っ張っていくような入り組んだメロディラインが如何にも90sR&Bらしい
#2Love You Yesは、背後で微かに鳴っているストリングスはフィリーでありつつ、
生々しいスネアや低音の強調されたベースラインでダークな仕上がりになっています。お気に入り。
#2と同じ流れを引き継いだサウンドの#3Keep On Doing(What I'm Doing)は、シンセの哀愁漂う
オブリガートにブラコンの名残が感じられる一曲です。
ジャジーなミディアムスロウ#4Part Time Loverは、柔らかく艶のある高音の歌唱と、
レイドバックしたリズムトラック、随所に入れられたボイスサンプルも渋い魅力があります。最高。
#5Dedicateは、スクラッチの掛けられたキックとワウを掛けたカッティングギターのバッキングが
スピード感をだしながら、ハープのような音のシンセによるドリーミーなアルペジオや
滑らかなコーラスに包み込まれます。お気に入り。
エレピによるパーカッシブなコードリフを中心としたパターンミュージック
#7Gonna Get Over Youは、サビ前に往年のディスコ的な、
大仰な展開が詰められていてニヤニヤしてしまいます。
ベースもうねっていて生っぽい肉体的なアレンジになっています。最高。
(調べてみて知ったのですがどうやら元の曲はカナダ,モントリオール出身のシンガー
France Joli(1963-)の1982年作のヒット曲ということだそうです。良いカバーです。)
再びモダンなR&Bへと戻った#8Unhappy Ever Afterは、どことなく不穏な空気を
醸し出すサビでのコーラスワークにネオソウル色を感じさせる一曲となっています。お気に入り。
和琴のような音のオブリガートがアクセントとして用いられた#9I've Had Enough、
そして#10You Know You're Wrongは牧歌的なバラードとなっている前半部から、
粘りを見せるパワフルな歌唱が圧巻な後半部にかけてブラコン風味になっていく一曲です。
残りはリミックスバージョンです。
#11は#7のDisco Mixで、よりストレートでアクの無い4つ打ちディスコナンバーになっています。
#12On And On(The Finest Soul Mix)は、フランジャーの掛かったカッティングと
重いキックの4つ打ちと#7をモダンにしたような艶消しなダンスナンバーです。

メロディアスでキャッチーなR&Bでありながら、サウンドは渋くビートの強調されたもの
となっており、ブラコン、NJSから2ステップへの時代の移り変わりを感じさせる一枚で、
絶妙なバランスのクロスオーバーとなっています。佳作。

Somebody Knows How You Feel

Gonna Get Over You

Unhappy Ever After

Love You Yes

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  1. 2015/05/22(金) 01:05:31|
  2. Beverlei Brown
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今日の一枚(391)

Album: Poison
Artist: Bell Biv Devoe
Genres: R&B, New Jack Swing, Hip Hop

Poison.jpg

アメリカ、マサチューセッツ州ボストン出身の3人組R&Bユニット。1990年作の1st。
メンバーは、Ricky Bell, Michael Bivins, Ronnie DeVoeの三人です。
元々は80年代半ばから90年代に掛けてアメリカ国内のR&Bユニットとして大きな成功を収め、
Boyz 2 Men, Backstreet Boys, 'N Syncなどに影響を与えたNew Editionのメンバーでした。

彼らの他には、Bobby Brown, Johnny Gill, Ralph Tresvantの三人という知る人ぞ知る
メンバーが所属しており、三人は早い段階で、いわゆるブラックコンテンポラリーの界隈で
ソロで活躍していました。

本作はUSR&Bで1位となり、表題曲と2ndシングルのDo Me!は3位を記録しています。
プロデュースはPublic Enemyを担当したLouil Silas, Jr.やDr. Freezeが行っており、
全盛期のニュージャックスウィングのサウンドが堪能できます。
オリジナルアルバムは2001年に3rdを出して以来リリースしていませんが、
彼らは現在でも同じ三人でパフォーマンスを行ったり、New Editionの再結成に関係したりと、
活動を続けています。

三人のうち、Ricky Bellはリードボーカル、Michael Bivinsはラップとポエトリーリーディング、
Ronnie DeVoeはラップを担当しており、ニュージャックスウィングの作品の中でも、
本作はヒップホップ的なハードなグルーブとビート感があり、ラップをかなり
積極的に取り入れています。スピード感があってダイナミックで、しかしながら音を
詰め込みすぎず、短く切られたボイスサンプリングの使い方のセンス、パーカッシブな
エレピのコードバッキングなど、この時代ならではの音像だと思います。
本作はアメリカ国内で400万枚以上を売り上げ、Billboard 200では5位となっています。

左右に思い切り振られたキックがビシバシと決まっていくイントロが堪らない#1Dope!は、
ギラギラしたメロ部分ではエフェクトの掛けられたボイスサンプルがパーカッシブに鳴り、
サビ前にコズミックなシンセが入ってくる展開もベタベタですがクールです。
後半の訥々としたラップも最高です。
ぶっとくサスティーンの短いベースと甲高いスネアに単音カッティングのサンプリング、
微かにコード感を提示するシンセの入った#2B.B.D.(I Thought It Was Me)?は、
ますますビートが強くダークでファンキーな一曲になっています。最高。
続いてまだまだ重いビートが続く#3Let Me Know Something?!は、巧みなスクラッチが
駆使されたイントロからゴリゴリした展開にシンセのコード弾きがパーカッシブに
入っていくというお決まりの展開となっています。お気に入り。
#4Do Me!は、ウネウネしたシンセベースのリフ、カッティングを中心に、
エロい喘ぎ声が聞こえる中メロディアスに仕上がっています。
表題曲の#6Poisonは、元New Editionのメンバらしい美麗なコーラスが
フィーチャーされており、力強いビートの中で幾度となく迫ってきます。
ラップパートのバックがキラキラしたバッキングなのも良いバランスです。
適度に攻撃的でありながら中毒性もあって最高。
ひたすらにワンコードのカッティングがサンプリングされている
中でラップを中心に組み立てられた#7Ain't Nut'in' Changed!、
本作では貴重なスロウテンポのバラード#8When Will I See You Smile Again?は、
リズムマシンの残響が頽廃的な感じを与え、随所に挿入され迫ってくるSEがシリアスで
陰鬱な感じを醸し出していますが、ベースラインは低音の良く出た暖かみのある
フレージングで、甘く蕩けるようなコーラスワークと組み合わさって、
極上のクワイエットストームとなっています。最高。
続いてスロウテンポでしっとりと聴かせる#9I Do Need Youも、
音数の絞られたリズムトラックと、薄く聴こえてくるコーラスに包まれます。
Ricky Bellのボーカルも一段とパワフルでエモーショナルです。
サックスのロングソロ、キーボードソロの掛け合いで終わって行きます。

重くもたれかかったビートと、殆どコードが鳴らず暗いサウンドの中に、不気味とも
言える魅力を醸し出すシンセやボイスサンプルが的確なタイミングで、しかし突然に入ってきて、
混ざり合ってスペイシーな音に包まれる時の気持ちよさは、NJSならではの楽しさだと思いますし、
そうしたカタルシスを存分に味わえる一枚だと思います。
BOOK OFFで280円で買ったNJSのアルバムは数限りありませんが、これはジャケ買いして
本当に正解だったと思います。傑作。

Dope!

B.B.D.(I Thought It Was Me)?

Poison

When Will I See You Smile Again?

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  1. 2015/05/21(木) 01:10:03|
  2. Bell Biv Devoe
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今日の一枚(390)

Album: Just Chillin'
Artist: Norman Brown
Genres: Smooth Jazz, Fusion

Just Chillin

アメリカ、ミズーリ州、カンザスシティ出身のジャズ、フュージョン系ギタリスト。
1970年生まれ。2002年作の5th。

8歳の時に兄の持っていたギターを譲り受け、弾くようになった彼は、両親や兄姉が音楽ファン
であった影響で、普段からジャズやゴスペル、ブルース、R&Bを聴き漁っていたようです。
ギタリストとして影響を受けた人物にはGeorge Benson, Wes Montgomeryの二人を挙げています。
高校卒業後にプロのセッションギタリストとして活動を始め、Stanley Turrentine, Roy Ayers,
Lou Rawls, Patti LaBelleなどのジャズ、ソウル、ブルース、ゴスペル界隈のミュージシャンの
バッキングとして活動していました。

22歳でハリウッドにあるギタリスト, クラフトマンのための
音楽専門学校として知られているGuitar Institute of Technology(G.I.T)の講師として
抜擢され、音楽理論講座、インプロヴィゼーション、ジャズのワークショップ、
リズムギターの講座など毎日6つもの授業を担当していたということのようで、
デビュー後レコーディングへの参加は少なかったものの、この頃からその実力は
プロ達の間では徐々に知られていっていたようです。

そして1992年には、Motownがそのジャズ部門として立ち上げたMoJazzというレーベルの
第一弾アーティストとしてデビューを飾ることとなります。1stアルバムのJust Between Usは、
ゲストにStevie Wonder, Boyz 2 Menなどを迎えるなど非常に豪華な作品となり、
Top Contemporary Jazzチャートで4位にランクインするヒット、
Motownから発売した残りの2枚のオリジナルアルバムは共に2位という見事な売り上げを残しています。

1998年にMoJazzが閉鎖ということとなり、彼はWarner Brothersへと移籍、プロデューサーには
元Bobby Caldwellのエンジニアであり、プロデューサーとしてはPeter White, Kirk Whalum,
Larry Carlton, Patti Austin, George Bensonなど錚々たるミュージシャンに関わり、
スムースジャズのブームの火付け役となった存在でもあるPaul Brownが就くようになります。
そして、一部の楽曲では当時Erykah Badu, Ronny Jordan, Eric Benetなど、ネオソウル~
アシッドジャズ界隈で注目を集め始めていた時期のJames Poyser, Vikter Duplaixが担当しており、
クールで陰のあるサウンドに一役買っています。

本作は、Top Contemporary Jazzチャートでは2位、R&Bチャートでは50位、総合では198位の
ヒットとなり、当時のラジオではパワープレイされていたようです。
ゲストボーカリストにはMichael McDonald, Chante Moore, Debbie Nova, Miki Howardの
三人を迎え、バッキングにはLil' John Roberts(Dr), Alex Al(B), Pino Palladino(B),
James Poyser(Key), Ricky Peterson(Key), Paulinho Da Costa(Perc), Lenny Castro(Perc)など、
ファンク、フュージョンからAOR系に至るまで、腕利きのスタジオミュージシャンが参加しています。

本作発表以降も、Brown-Whalum-Braun(BWB, Kirk WhalumとRick Braunの三人組によるプロジェクト)
でも大ヒットを出したり、Verve傘下のPeakに移籍してからもTop Contemporary Jazzチャートで
1位を獲得したり、最近ではGerald Albrightとのコラボレーションアルバムを発表したりと、
好調に活動を続けています。

#1The Feeling I Getは、ストリングス系のシンセの柔らかいバッキングが幻想的な
イントロから、ワウの掛かったカッティングと揺れるエレピで静かながらもファンキーな
グルーブのあるトラックになっています。箱ものらしい丸みのある、角の取れたトーンで
オクターブ奏法とスライドの多用されたテーマがリラックスさせてくれます。最高。
表題曲のJust Chillin'は、バックビートの強調された重いドラムス、生々しいホーンに対して
ボイスサンプルやコズミックなシンセが細かに配置されており、90sのアシッドジャズ的で、ルーズな
グルーブのある展開の前半部から、ブルースフィーリングたっぷりで
速弾きしまくりなソロパートへと突入していきます。最高。
Chante Mooreがボーカルを務めている#3Feeling The Wayは、懐かしいリズムボックスの音が
Boyz Ⅱ Menをはじめとする90sUSR&B的な空気を醸し出す一曲で、バックで滑らかなオブリガートが
鳴り続けています。お気に入り。
リバーブのカットされたスネアや低音の強調されたキックからして、一気にダークでヒップホップ的な
雰囲気を強く感じさせる#4Night Driveは、正しくRonny Jordanを思わせるような都会的な
アシッドジャズとなっています。音の詰め込まれた端正で冷ややかなソロに対して、
Rick Braunのフリューゲルホルンの柔らかい音に癒されます。お気に入り。
Michael McDonaldがゲストボーカルを務めているR&Bテイストの強いバラード#5I Still Believeは、
McDonaldの過去のAOR~ブルーアイドソウル作品とは毛色の違った一曲になっています。
打込みによるラテンフィーリング溢れるリズムとNorman Brown自身によるスキャットが
印象的な#6Dancing In The Houseは、Pino Palladinoのメロディアスで端正なベースラインの
美しさに聴きほれてしまいます。James Poyserのピアノソロはベタベタですがこれもまた良いです。最高。
Janet Jacksonのカヴァー#7Let's Wait Awhileは、キラキラした原曲よりも、もう少しレイドバックした
甘くてアダルトな音になっています。
Debbie Novaがゲストボーカルを務める#8Won't You Stayは、16分のハットの刻みやスネアのタイミングの
ニュアンスに、ネオソウル~最近のChris Dave辺りに通じるような感じがある打込みのドラムや、
これまたネオソウルによくある繊細なボーカル、Pino Palladinoの太いベースラインと、
音数の絞られたリードギターが渋いです。お気に入り。
Jeni Fujita, Maya Azucene, Edwin Lugoの三人によるコーラスのリフレインと
対話するようにギターソロが紡がれていく#9In My Lifeは、SEの選び方、ストリングス系のシンセの
デジタルな感じが懐かしいクワイエットストームです。
Mikki Howardの低音の響きの豊かでエモーショナルなボーカルで、生々しいコーラスの入った
サビ前の展開からボーカルとユニゾンしながら、モダンなR&Bの音型であるサビへと
繋がって行く#10Not Like You Doは、アウトロのサビで一気に弾き倒していきます。最高。

ギターインストによるアシッドジャズ~スムースジャズということで、
90s以降同系統のギタリストが数多くいることと思います。
しかしながら、彼の作品は、カヴァーにも聴きやすいR&Bからのカヴァーなどが多く、
陰のあるサウンド、レイドバックしたグルーブがありながらポップでメロディアスな
仕上がりとなっています。James Poyserの音が好きな方にとっては勿論、
BGM的に聴くのに極上の一枚だと思います。

The Feeling I Get

Just Chillin'

Night Drive

Won't You Stay

Not Like You Do

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  1. 2015/05/11(月) 00:03:46|
  2. Norman Brown
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BOOK OFFのCD棚の漁り方について

私的名盤紹介にお越し下さっている皆様、お世話になっております。
最近は更新滞っておりましてすいません。

しばらくぶりの更新ですが、今回は私が毎週のように訪れているBOOK OFFの280円棚で、
CDを如何にして効率よく見るかということについて、簡単にお話したいと思います。

CDというものはとにかく単価が高く、新品で欲しいものすべてを揃えるのは現実的ではありません。
かといって、レンタルでは扱っていないような作品に関しては、
地元の中古レコード屋の実店舗の棚を巡回しながら探す
(完全に運任せなので気の遠くなるような時間が掛かります)か、
AmazonマーケットプレイスやDisk Unionなどの通販で中古品を買い求めるか、
筆者お勧めのBOOK OFF ONLINEを活用するという方法などが考えられると思います。

しかしながら、通販では送料もかかりますし、実物を見ながら気になったものをその場の判断で買うという
行為はできません。しかも単価もまだ高い(850円~1500円程度)です。

そうした時に、もっとも安く中古CDが手に入る手段の一つ(地元の中古屋のセールなどは除く)として、
BOOK OFFの280円棚を隅から隅まで見る
という方法に落ち着くわけです。

実は、この方法は非常に無駄が多いように感じられるかもしれませんが、
他の中古屋で850円から1500円程度で売られているような作品が、
状態も変わらず280円で捌かれている
という状態がしょっちゅう起こっており、
過去に高い金を出して買った作品が280円棚に並んでいるのを見つけては、
筆者は絶望に打ちひしがれております。

というわけですので、280円棚にはCDコレクターの夢と希望(???)が詰まっています。

そこで、私は暇な時間を活用して280円棚を隅から隅まで、AtoZで見ていっている訳なのですが、

これが大変骨の折れる仕事なのです。

腕はずっと高いところにあげっぱなしですし、人差し指でCDを引きずり出して、下に落下しないように
慎重に指で挟んで取り出し、ジャケットを一瞬で見ては元に戻す…
という作業を何百回~千回と繰り返すことになります。

そこで、長年(?)積み重ねてきた楽な方法を紹介したいと思います。(大したことではないのですが)

BOOK OFFでCDを漁る時の漁り方について(スライド式)

重要なのは棚の隙間をうまく活用することです。
一枚一枚を棚から引きずり出してジャケットを確認していては時間が幾らあっても足りませんし、
腕や指の筋肉が疲弊してしまいます。

どうするかというと、左から順番に見るとして、
初期状態として、CDがこのように適当に詰め込まれていると思いますので、
CD棚見方1

進行方向の前の棚にCDを動かしてスペースを空けておいて…
CDの塊を向って右側に全力でスライドさせます。
CD棚見方2
そして後は左に向かってCDをスライドしながら見ていきます!
CD棚見方3
CD棚見方4

そして、気になるCD、保留のCDは手前に少し引きずり出しておいて、
まずは一つの棚を検索し終わるまではそのままにしておきます。

という感じで非常にアタリマエ、シンプルな方法なのですが、
これで自分は大分身体にかける負担を軽くすることに成功しました。

最後に、
周りのお客さんや店員さんの迷惑にならないように検索するようにして下さい、
ということと、
せどり屋に負けぬように、各店舗の回転率を考えながら同じ店舗を効率よく回ること、
閉店間際の半額セールをうまく活用すること、

などポイントをいくつか述べておいて終わりたいと思います。

では、私もまた少し探して来ようと思います。

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関連記事
  1. 2015/05/10(日) 14:51:28|
  2. 雑記(音楽関連)
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今日の一枚(389)

Album: Born Free
Artist: Mondo Grosso(大沢伸一)
Genres: Acid Jazz, House, R&B, Fuison

Born Free Mondo Grosso

滋賀県大津市出身の日本の作曲家、編曲家、DJ、ベーシストの大沢伸一によるアシッドハウス、
アシッドジャズ、ヒップホップ、ブレイクビーツ、エレクトロニカユニット。1967年生まれ。
1995年作の3rd。所属事務所はAvex関連のrhythm zoneです。

現在は大沢のソロユニットとなっていますが、元々は1991年に京都でバンドとしてスタートし、
1993年にフォーライフ・レコード(小室等・吉田拓郎・井上陽水・泉谷しげるの
フォークシンガー4人が1975年に設立したレコード会社)からメジャーデビューを果たします。

当時流行していたアシッドジャズを取り入れた生バンドでの演奏で海外でも高い評価を
得ていたようで、ヨーロッパでのツアーも経験しています。1996年に大沢以外のメンバーが
脱退し、ソロプロジェクトとなってからは、電子音楽、ダンスミュージックへとそのベクトル
を変えていき、他のアーティストへのプロデュース、フィーチャリング、リミックスも
積極的に行うようになって行きます。

リミックスや編曲を手掛けたアーティストにはJamiroquai, Etienne De Crecy, 浜崎あゆみ、
Alex Gopher, Chara, 椎名林檎など、プロデューサーとしてはUA, bird, Crystal Kay、wyolica,
中島美嘉、m-flo, 安室奈美恵、布袋寅泰、Chemistry, Mr.Children, 玉置成実、藤原ヒロシ、JUJU,
AFTERSCHOOL, MINMI、若旦那などを手掛けるなど、活発に活動しています。

本作は、Mondo Grossoが大沢のソロプロジェクトとなる直前の時期の作品で、
IncognitoやBrand New Heaviesに代表されるようなアシッドジャズの影響が色濃く見受けられます。
しかしながら、既にこれ以前の作品でダンスミュージック的なアプローチを試してきたこともあって、
サウンドは肉体的なものと言うよりは、もう少し冷ややかで、4つ打ちのトラックが多い、
というわけではないのですが、ハウス的なグルーブ、ハーモニーが感じられます。

演奏は基本的に生音で、大沢自身によるベースラインにはジャズっぽい香りがあって、
リズムのハネ具合も粘り過ぎずという感じで非常に良く楽曲に合っています。
その他のメンバーにはB-BANDJ(フランス出身の黒人ラッパーで、後に瘋癲(Fu-Ten)で
活動しています), 吉澤はじめ(Key, 現在はクラブジャズバンド、SLEEP WALKERのメンバー)
中村雅人(Sax, SLEEP WALKERのリーダー)といった面々で、ボーカリストにはZhana Saunders,
そして秋吉敏子の娘であるMonday満ちるが参加しています。

アシッドジャズ~ハウスと書きましたが、上物の感じは、吉澤はじめのキーボードを
主体に組み立てており、エレピの鋭いコードバッキングや、ドラムマシンのレイドバックした、
ヒップホップ的なビートが組み合わさって、UKソウルのような陰鬱な表情をも見せていて、
R&Bファンにも(というよりもむしろ、良い意味でライトなブラック好きに嵌りそうな
グルーブですね)楽しめる内容となっていると思います。

高音のピアノループとアフリカンなパーカッションにフランス語のラップ入った
#1Jour et nuitで静かに始まります。
フィリーソウルのような大仰でシルキーなストリングスからハウス的なビートが入ってくる
Doopな#2Do you see what I seeは、ぶっとく低音の強調されたベースリフとドラムス、
ボーカルによるモーダルなパートから、コーラスとピアノのコードバッキングの加わる
ジャジーなパートへの変化が鮮やかです。中盤ではかなり生々しい音となったストリングスの
フィーチャーされたパートがあり、ますますドラマティックになって行きます。お気に入り。
レイドバックした乾いたドラムスに、オクターブ奏法を絡めディスコライクでありながら、
曲が盛り上がるにつれてメロディアスになっていくベースが絡みついて
Brand New Heaviesを思わせるようなアシッドジャズ#3Familyは、
エレピによるソロ、ホーンによるインストパートなどが入ったライブ感溢れる一曲。最高。
重く揺るぎないマシンビートにベースリフ、不穏に揺れるエレピに低音の鈍い響きがあるラップが
フィーチャーされた#4What goes up must come downはアウトロにかけてのピアノがジャジーで良いです。
アップテンポでラテンっぽい疾走感あるグルーブに掴まれる#5Running manは、
饒舌なサックスソロと、絶妙にアウト感のあるピアノソロが聴き所です。最高。
再びピアノループとラップを中心に組み立てたジャジーヒップホップの#6Life without springは、
ベースのリフとピアノのループに対してキックの位置を微妙にずらしたり抜き差ししながら
うねっていて独特なグルーブを作り出しています。
ピコピコシンセとエレピのパーカッシブなバッキングとマシンによる安いリズムボックスの
音で出来たインタールード#7Hemisphereに続いて、お経によるイントロから始まるジャジーヒップホップ
#8To The Curbは、中間部のエレピロングソロ、キメを挟んでフリーキーなホーンのソロは
ジャズロック的でもあります。お気に入り。
左右に振られたピコピコしたシンセと、モータウン的なベースライン、ソウルフルな女性コーラスが
印象的なジャズファンク#9Move into the nightでも、吉澤はじめの滑らかなキーボードソロが
素晴らしいです。キーボードソロの後は大沢自身によるベースラインが際立っています。
ゴーストノートのニュアンス、音の切り方も完璧なプレイだと思います。最高。
#11Sphereはサンプリングによると思われるホーンの2小節ループが怪しげな雰囲気を決定づけている
ヒップホップ~アシッドジャズなインストで、テーマを様々に変奏したサックスソロ、
エレピソロが存分に取り上げられています。
#12Give me a reasonは、生々しいリズムトラックにローファイに加工されたボーカルとエレピが
配置された頽廃的で物憂げな一曲です。

ジャジーヒップホップ路線の楽曲には若干展開が少なく単調なイメージを与えかねませんが、
全体として非常にすっきりと聴けてしまい、ドライブなどBGM的な聴き方をするには
好適なアルバムだと思います。インスト部では特にキーボード、歌物のバックではベースラインの
良さが際立っていて、演奏面でもタイトで楽しめる和製アシッドジャズです。佳作。

Do you see what I see

Family

Move into the night

To The Curb

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  1. 2015/05/05(火) 02:18:33|
  2. Mondo Grosso
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今日の一枚(388)

Album: Tuxedo
Artist: Tuxedo
Genres: R&B, Disco, Blue Eyed Soul, AOR, Funk

Tuxedo.jpg

アメリカ、ミシガン州アナーバー出身のシンガーソングライター、音楽プロデューサー、
アレンジャー、エンジニア、マルチプレーヤー、DJで、ロサンゼルス在住の
Mayer Howthrone(1979-)と、アメリカ、ワシントン州シアトル出身の音楽プロデューサー、
Jake Oneの二人によるR&B, ダンスミュージックユニット。2015年作の1st。

Mayer HowthroneのBiographyに関しては以前の記事を参考にしていただくとして、
Jake Oneに関して少しだけお話しておこうと思います。

シアトルのキャピトルヒルで育った彼は、15歳の時にシアトル北部へと引っ越し、1992年から
キーボードを用いて作曲を始めました。ワシントン大学在学時に、レコードショップで働いていた
友人に自分のデモを聴かせたことがきっかけで、同じレコードショップに勤めていた
DJ Mr. Supremeの目に留まり、音楽プロデューサーとしてのキャリアをスタートすることとなります。
彼の最初の仕事は、EclipseのWorld Premierです。
彼が有名となるきっかけは、50Cent率いるG-UnitのアルバムBeg For Mercyへと参加し、
G-UnitのプロダクションチームであるMoney Management Groupの一員となったことでした。
プロデューサーとしては00年代半ばから活動を本格化しており、De La Soul, G-Unit, 50 Cent,
2Pac, Planet Asiaなど一線で活躍するヒップホップ系のミュージシャンに数多く関わっています。

Jake One名義としてのソロアルバムWhite Van Musicを2008年に発表して以来、
(Brother Ali, Young Buck, De La Soul,M.O.P., Freeway, DOOM, Slug, Keak da Sneakなど
豪華なゲストを招いて制作されています)Freeway, Truthliveとのコラボレーションアルバムを
発表する一方で、映画Get Rich or Die Tryin', The Fast and the Furious:Tokyo Driftなどの
サウンドトラック、Brother AliのMourning in America and Dreaming in Colorのプロデュースを
行っています。

Mayer Hawthroneとのコラボレーションは2006年に二人がミックステープを交換したことでした。
偶然にも二人の選曲は80sのディスコミュージックを中心としたもので、
意気投合した彼らは、Jake Oneがトラックを作り、Hawthroneがそれにボーカルを載せるという形で
曲を書き溜めていきました。2013年にはフリーダウンロードの音源としてEPを発表し、
ついにフルアルバムが発表されることとなります。

サウンドとしては、古典的なディスコミュージックの構造を積極的に取り入れながらも、
ベースラインやシンセの音使いにはブラコンの要素も多分に感じられたり、
音色のみ懐かしいものを使いながら、曲展開はネオソウル以降の音を絞ったものも
あったり、ヒップホップではSnoop DoggやG-Unitを取り入れた(オマージュと言うべきか)ものも
あり、非常にバラエティに富んだ、玄人好みな作品となっています。

歯切れの良いシンセベースのリフとファミコンシンセのリードフレーズに
クリーントーンのコードカッティング、少し安っぽいストリングス系のシンセが
音数少なく絡みつくダークで妖しげなディスコチューン#1Lost Loverは、
コーラスやリードボーカルの録音の良さのお蔭でモダンさを感じさせます。最高。
もたれかかったシンセベースがネオソウル的なリズムを取り入れたイントロから
ハンドクラップの入ったディスコへと戻っていく#2R U Readyは、
カラりとしたカッティングが気持ち良いです。
重いキックとダビーな歪ませたシンセ、白玉を弾くNJSっぽいシンセに
ファルセットのコーラスが絡みつく思い切り80s初頭なサウンドの#3Watch The Danceは、
ボーカルとユニゾンするギターの印象的なコーラス部でクライマックスを迎えます。お気に入り。
音数が減って繰り返されるテーマのメロディも一気にモダンな音作りとなった#4So Goodは、
メロ部分の複雑でジャジーなコーラスワークは、Mayer Hawthroneのソロに近い雰囲気を湛えています。最高。
哀愁漂うシンセのリフにChris Jasper参加時のIsley Brothersを思わせるようなクワイエットストーム
#5Two Wrongsは、蕩けるようなファルセットのコーラスがフィーチャーされています。
後半にはErnie Isleyのようなバリバリとした歪みのブルージーなギターソロが入っていて最高。
インストによるインタールードの#6Tuxedo Grooveを挟んで、#7I Got Uは細やかな16分のハットの刻みと、
ドライブ感溢れるフィルの入ったドラムスに、ギターによるコードとコーラスと生音の比率が高い
一曲となっています。お気に入り。
#8The Right Timeは、音作り自体は懐かしのディスコでありながら、曲の展開はDaft Punkの最近の
作品に近いグルーブがあります。
ホーンのロングソロが取り入れられ、鋭い単音カッティングが入った#9Roll Alongは、
サビに近づくにつれて80sっぽくギラついたサウンドになっていく展開が面白いです。最高。
Hawthroneの中低音の艶のあるボーカルを聴かせるスロウで都会的なバラード#10Get U Homeは、
後半ではホーンを中心としたインストパートとなって終わって行きます。
ぶっとくワウの掛かったシンセベースの作り出すグルーブに思わず身体が動く#11Do Itは、
中盤にかけて一気にAOR的なジャジーなコーラスが入ってきて流麗なギターソロへと繋がって行きます。
この二人のタッグらしく往年のディスコとハーモニーの面白さが見事に融合されています。最高。
#12Number Oneは、Snoop Doggの名曲Ain't No Funへのオマージュと思われる一曲となっており、
リッチなコーラスの彩りが素晴らしいです。

メディアではディスコと銘打たれながらも、実際には二人のソロ活動の音楽性がその中に
豊富に取り入れられており、モダンにアップデートされた個性的なサウンドに仕上がっています。
一言でいえばAOR~フュージョン的な部分もかなりあるので、ディスコファンならずとも、
良質なポップスを求めるファンにもかなり楽しめると思います。今年一押しの一枚です。佳作。

Do It

Number One

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  1. 2015/05/04(月) 16:48:11|
  2. Tuxedo
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
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