私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

【企画記事「宇宙への行き方」さんより】No Music No Life Question

私的名盤紹介にお越し下さっている皆様、お世話になっております。
管理人のSystematic Chaos(@privategroove)です。

現在のんびりと年間ベストを編集中なのですが、
その間に、主にTwitter上で懇意にして頂いている宇宙ネコさん(@sibuyandam)のブログ「宇宙への行き方
の企画であるNo Music No Life Questionというものに参加させていただくことになりましたので、
ここでその回答を掲載したいと思います。

No Music No Life Questionの企画の内容としましては、
これまでの音楽との出会い方、遍歴を辿っていくような質問に答えるというものです。

いつもは話が長くなってしまいがちなので、今回こそは短めに纏めていきたいと思います。
では、どうぞ。

Q1: 人生で初めて音楽をいいと思った瞬間はいつですか? きっかけになった曲があれば曲名と理由もお願いします。

僕の両親は揃って音楽の好きな人だったので、
幼いころ、幼稚園の送り迎えなどで、カーステレオで聴いていた音楽が自分にとっての原体験です。
具体的には、3歳の頃に聴かされた、
The Doobie BrothersのWhat A Fool Believes(1978)

僕にとって初めに記憶に強烈に残った曲だと思います。
中学生になってから自分で音楽を漁るようになり、自宅のCD棚でこの曲と再会することになるのですが、
その時もこの曲の持つ、乾いているけれども、その中にある切ない雰囲気に夢中になりました。
今聴いても、この当時のDoobie Brothersの曲は素晴らしいと思いますし、
ソフトで、都会的な音楽を生まれながらにして好んでいたのだと思います。
そういった意味で、良いと感じる音楽の姿は、3歳の頃から変わっていないのです。

Q2:どういった感じの音楽が好きですか? ジャンルでも、言葉で詳しく表現して頂いても構いません。

そうですね、なかなか難しい質問ですが、
自分の家系が元々ダウンタウンの出身であることもあり、「都市生活者の音楽」というのが、
僕の中で好きな音楽の共通項になっていると思います。
というより、そうした音楽の持っている湿り気というか、ビル街に光が差し込むと陰影ができるように、
光と影の両面が提示されているような音楽を好きになりやすいんだと思います。

都市をイメージさせるような音楽には、夜の時間が似合っています。
夜のドライブの時間は、僕にとって多くの音楽と出会うことになった貴重な時間でした。

音楽の中身に迫ってみると、まず歌が上手いこと、メロディーが美しく、リズムが整然として力強いこと、
という非常にシンプルなことを求めているに過ぎない、ということに最近やっと気が付きました。
ただし、この3つの条件をさらに突き詰めていくと、非常に長くなってしまうので、端的にお話しします。

歌が上手い、とは、器楽的な上手さだけではなく、その人の生まれ持ったトーンと曲との兼ね合い、
トーン自体のコントロール、抑揚の付け方、発音の仕方、フェイクの使い方、
そしてこれが一番大事なのですが、リズムに対して非常に意識的で、
狙ったところに音を置きに行くことが出来るボーカリストが、僕は好きです。
つまり、意識的に音を伸ばしたり、適切な所で切ったり、バックに合わせて歌をコントロールして歌う人が良いです。

メロディーが美しいこと、とは曖昧な基準にならざるを得ませんが、
曲のアレンジの中で、ある程度しっかりとした一本の線が通っているものが好きなことが多いです。
ただ、電子音楽やフリージャズなどではそうしたものを求めない場合もあります。

リズムが整然として力強いこと、とはリズムの中に、
曲の下部構造を支える堅牢なモチーフが存在するということで、
演奏者、作曲者自身の「訛り」が適切に含まれていること、
平たく言えばグルーブがあるということですが、そうしたリズムが好きです。
力強い、とは音が大きければ良いということではなく、曲のアレンジの中で適切な音色で、
多すぎない少なすぎない音数で、曲全体を揺さぶり動かし、張り詰めた緊張感を与えるものでなくてはいけません。
そうした意味で、打ち込みでも構わないのですが、抑揚の無い平坦なリズムでは聴きたくなくなってしまいます。

その他、幾つか副次的なことを挙げますと、
・ハーモニーに意表を突いた部分があったり、曲中で様々な色合いを見せるもの、
或いは、ディスコのように、一つの短い循環の中に曲のエネルギーを集約させたようなものも好きです。
明るいだけでなくて翳りのあるコード進行も良いですね。
定番、王道的なものも嫌いじゃないです。(ファンクのように進行しなくても良いですが、その場合は強いビートが欲しい)

・アレンジが精緻/適切であること
時代や地域や人物の雰囲気などを凝縮し、
音色と音配置の中に封じ込めている音楽が良い。

・録音が良いこと
適切な音圧、特性周波数、ダイナミックレンジで、各楽器の分離が良好であるけれども、
分離しすぎずにある程度の混ざりが存在していること。

・歌詞がメロディーに対して綺麗に嵌っていること、
SSWの場合は作家の私小説的な内容か、心象風景を描いたような作風が好き。

ジャンルで答えると、ステレオタイプに嵌ってしまって面白くない答えになってしまいますが、
ざっと列挙させて頂きますと、

1. 1970年代末~1980年代前半のアメリカ西海岸の音楽: 
AOR, アダルト・コンテンポラリー、ソフトロック、アメリカン・プログレハード
2. 1970年代末~1980年代の、モダンジャズ~モードジャズから派生してきた音楽:
フュージョン、スムースジャズ、邦楽フュージョン
3. 1970年代から現代までのアフリカンアメリカンのポピュラー音楽:
R&B, ソウル、ファンク、ディスコ、ブラック・コンテンポラリー、ニュージャックスウィング、ネオソウル
4. 黒人音楽のストリートミュージック:
ドゥーワップ、コーラスグループ、ヒップホップ、オルタナティブヒップホップ(Native Tongue)、ジャジーヒップホップ
5. 1970年代から1980年代の日本のニューミュージック、シティポップ
6. 1990年代、1990年代以降の日本のポップス:渋谷系、Jポップ
7. 1990年代以降の日本のロック:邦楽ロック(ソフトロック)
8. ハードロック・ヘヴィメタル
スラッシュメタル、プログレッシブメタル、メタルコア、パワーメタル、メロディックデスメタル
9. プログレッシブロック、ジャズロック:テクニカルなものが主体です。
10. 主に1990年代以降の黒人音楽の影響が強い電子音楽:
ハウス、ブレイクビーツ、テクノ、ニューウェイブ、チルウェイブ、アンビエント
といったところだと思います。

Q3: 上の質問で挙げたジャンルを好きになったきっかけはありますか?
それに関しては、「以前の記事」でお話しさせて頂きましたので、もし関心のある方がいらしたらご覧下さい。

Q4: 好きなアーティストはいますか?
はい。沢山います。
これも申し訳ないですが、「以前の記事」でお話しさせて頂きました。
しかし、一人挙げるとするなら、
山下達郎さんの音楽が、僕にとってポップスを聴くときの判断の基準になっている、
ということだけ申し上げておきたいと思います。

Q5: 音楽を聞いて感じたことがあればレビューなどを書いたりしますか?
はい。このブログやTwitterで音楽についての話をさせて頂いております。

昔から、感想文や作文を書くのが大好きな子供でした。
それに自分の大好きな音楽を結び付けようと考えたのは、ある意味では必然だったのかなと思います。
自分の周りに好きな音楽を共有できる友達も少なく、それがこのブログを始めるきっかけとなりました。

初めは友達に音源を貸すときに、一言でレビューと紹介文を添えて送るという形で始めたのですが、
書き終えたものをそのままにしておくのが勿体なくて、Amazonレビューに投稿しようか、とも考えましたが、
自分のサイトを一つ作ってそこに来て頂くことで、
新たに趣味を共有できる仲間が見つけられるのではないかと思いました。

Q6: 上の質問で書いてると答えた方だけに質問です。そのアルバム(曲)の何を重視して伝えてますか?

私がある音楽について話すときは、以下のようなことを意識して書くようにしています。
1. その音楽が生まれてきた経緯、ミュージシャンの経歴を、音楽性の側面から簡潔に纏めること。
2. アルバムに収録されている曲1つ1つを、
 そのサウンドが生み出されるときに目指そうとしていた方向性を想像しながら説明する。
 つまり、作り手が表現したかった音、空間を考えること。
3. その音楽を聴いて、自分の、主観的で率直な感想を述べること。
4. その音楽が、自分のリスニング歴の中でどのような位置にあり、どのような音楽と繋がっているかを考えること。

Q7: どんな時に音楽を聞きますか? また、状況に合わせて聞くものを選んだりしますか?

小中高までは、音楽とは必ず移動に伴うものでした。
幼児~小学校までは両親の運転する車のカーステレオで、中高は初めて買って貰ったWALKMANに曲を入れ替えながら、
家にあるCDと、近くのTSUTAYAで手に入れたものを聴き漁っていました。
時折、タワーレコードやショッピングモールに入っていたHMVでCDを買うこともありましたが。
大学生以降は、車で移動する際に音楽を掛けるようになりました。
そして、このブログを始めるようになり、軽音楽部の仲間から教えて貰って、
意識的に広く聴く」という態度を身につけるようになっていったと思います。

•Q8※アニソン・声優系の曲は聞きますか? 聞く場合は何に注目して聞いていますか?

はい。聴くときもあります。
アニソン、声優だからといって注目すべき点が変わることはありません。
ただし、アニメやTV、CMのテーマソングとしての音楽は、「限られた時間」の中で聴く者の耳を奪い、
集中をそちらに向けさせなければなりません。
したがって、メロディーラインとフックの構造に細心の注意を払って作られていることが多いと思います。
ですから、始まってからワンコーラスが終わるまでの間に、
どうやって聴く人を夢中にし、世界観の中に引き込むのか、に注目して聴くこともあります。

•Q9:※印の質問で声優アーティストの曲を聞いていると答えた方に質問。
アーティスト活動している声優で好きな方はいますか? 魅力も書いてみてください。


水樹奈々さん、堀江由衣さん、花澤香菜さん、上坂すみれさん、悠木碧さん、豊崎愛生さん、牧野由依さんなど、
女性声優のソロアルバムを聴くことがよくあります。

水樹奈々さんに関しては、中高生の頃からファン歴8年目で、新譜を買ってライブに参加してきております。
ほかにもアニメを観ていて気になった声優のアルバムを聴くようになりましたが、これは大学に入ってからです。

自分の場合は、アニメよりもラジオで声優さんの存在を知ることが多く、
文化放送系で番組を持っている水樹奈々さん、堀江由衣さん、
地元の東海ラジオでコアな音楽系番組を持って居た上坂さんなどは、アニメよりもラジオで好きになった面々です。

花澤香菜さんが渋谷系再評価の中でボーカリストとして取り上げられたり、
堀江さんが清竜人のプロデュース楽曲で人気を博したように、音楽的にも面白いアルバムが多くなって来ていると思います。
一般に人気の高い日本のポップスやロックのトレンドとは一味違ったアプローチをした作品が多いのが特色で、
そういうニッチな部分を埋めている貴重な存在だと思います。

Q10 こちらも※印の質問で声優アーティストの曲を聞く方への質問。
 キャラソンを聞く時はどういった部分に注目して聞いてますか?(歌唱、表現など…)


キャラソンという括りではあまり聴いていないです。
それこそ、水樹奈々さんの出演する番組のキャラクターソングを買ったりすることはありますが、
彼女の場合はキャラクターに歌わせるというよりは自分のソロの曲の延長線上で表現している感じなので、
特にどこに注目、ということはないと思います。
そのアニメに思い入れがあれば、聴こえ方も違ってくるのですが。

Q11: 映画・アニメ・ドラマ・ゲームなどのサントラは聞いたりしますか?

はい。さほど多くはないのですが、映画やゲームのOSTは多少持って居るものもあります。
ただ、CDを購入するまで至るものは少なく、レンタルか、アニメに詳しい友人を介して手に入れることがほとんどです。

ゲームではFinal FantasyⅩ、ゼルダの伝説時のオカリナ、Persona4など、
映画ではWoman In Red, Flashdance, Juiceなど
少し古い映画のOSTを何枚か持って居ます。

Q12: ライブにはよく行きますか?

はい。よく行く方だと思います。
去年は年間に9本のライブに参加しました。
平均すると年間10本くらいは行っていると思います。最近は海外のアーティストを見に行く機会が増えました。
毎年欠かさず山下達郎のツアー(今回は2回見に行きました)と水樹奈々のツアーには参加し続けています。
働き出してからも、何とかこの2つだけは行こうと思っています。
あとはUNCHAINのツアーにも毎年行っていますね。

Q13: あなたが今まで聞いた音楽の中でもっとも印象に残っている作品を教えてください。
 アルバムでも楽曲単位でも構いません。ジャンルも問いません。印象に残った理由も交えて書いてみてください。


一つに絞るのは難しいのですが、アルバムで挙げるとしたら、山下達郎のMelodiesだと思います。
Melodies
レビューは過去記事にありますのでそちらをご覧いただければと思います。
歌、演奏、アレンジ、録音、ミックス、歌詞、ありとあらゆる面で完璧なポップスの姿が体現された作品の一つだと思います。

Q14: あなたにとっての音楽とは何?

自分にとって、音楽は感性を構築しているものだと思います。
そして音楽を聴くという行為は、
聴いた音楽が自分を作り、そしてまた次の音楽を吸収するようにして、自分の価値観が定まっていく過程です。
ですから、もし音楽が無かったら、「どれそれという曲」を聴いていなかったら、
という仮定は決してすることが出来ない、自分と不可分の存在だと思います。

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  1. 2016/01/28(木) 00:29:45|
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【音楽だいすきクラブ】私の好きな音楽。 企画に参加したしました

お世話になっております。管理人のSystematic Chaos(@privategroove)です。

先日、といっても昨年の話になりますが、
音楽ブロガーやTwitterアカウントの方々が集まって運営している
「音楽だいすきクラブ」というサイトさんがあります。

そちらのサイトで行われた企画として、「私の好きな音楽。」というものがありまして、
いわば、日常を過ごす一人の人間として、自分の好きな音楽について、
できるだけ主観的な視点でレビュー、感想、エッセイなどを書いてみよう、

という企画でした。

そこで、私は普段サウンドの細かいことをお話しすることが多いと思うので、
エッセイという形式に出来るだけ拘って、一つ書いてみることにしました。

その時の原稿を掲載させて頂きます。(多少の加筆修正があります)
元のホームページはこちらになります




山下達郎『GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』

Greatest Hits! Of Tatsuro Yamashita

記憶に残る音楽というものは、必ずそれに心象風景が投影されている、と僕は思います。

僕は幼いころから夜更かしが好きな子供でした。そして夜、あまり泣くことがなかった。
そういう僕を、父はよく車で外へと連れ出してくれました。

冬のある日、いつも通り、父は夜遅くに仕事から帰ってきたのですが、忘れ物をしてしまったのか、
もう一度大学の研究室に戻らなければならなくなりました。

そこで父は寝付かない僕を車に乗せ、大学病院へと連れていくことにしました。

眠りについた郊外の街はとても静かです。
背の高く、楕円形をした街灯の、橙色掛かった光に照らされた家々の姿や、
幹線道路で、すぐ横を急いで駆け抜けていく車のタイヤ・ノイズ、
革のシートに備え付けられたシートヒーターの、体に染み込むような温かさ、

そうした感覚に訴えてくるすべてのものが、僕に強烈な記憶を残しました。
幼い僕が一番目を輝かせていたのは、父と二人の、夜のドライブの時間だったと思います。

そしてドライブには音楽が共にあった。
大学病院に到着する直前、偶然カーステレオから流れたのが、
この山下達郎のRCA/AIR時代を纏めたベストアルバムに入っている、「夏への扉」でした。

身体を撫でるような車内の空調の風とシートヒーターの熱で、僕はまどろんでいました。

カーステレオの解像度ではカッティングやギターの音はあまり聞こえず、
ワウの掛かったシンセ・ベースの音や、山下達郎の気怠い歌い方、
サビの《リッキー ティッキー タビー おやすみ》の後に入る吉田美奈子のコーラスの、
不思議な浮遊感が強く印象に残っています。

はじめて見る大学病院は暗闇の中に聳え立っていて、僕は圧倒されました。
車を出てもなぜか曲が頭から離れなくて、明かりが消えて寝静まったラボに入っても、
頭の中でこのサビがリフレインして、親子2人だけで違う世界に紛れ込んでしまったような感覚がしました。

今でもこの曲を聴くと、この瑞々しい感覚と浮遊感が鮮やかに思い出されます。
「夏への扉」は僕にとって大切な一曲、好きな音楽に他なりません。

しかし、あの不安でありながら高揚しているような、
「『今、自分は日常から乖離した状態にいるとわかる』という感覚」を、
僕は無意識のうちに音楽に求めているのだ、と思うのです。

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  1. 2016/01/20(水) 23:07:22|
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ここ2, 3年の邦楽におけるブラックミュージックとのクロスオーバーについて

私的名盤紹介にお越し下さっている皆様、お世話になっております。

新年になりまして、一月も半ばになろうとしておりますが、今のところベストアルバムの記事が完成するのに
しばらく時間がかかりそうですので、昨年末Twitterで少しお話しした、
「最近の邦楽で、ブラックミュージックが取り上げられ、
サウンドに取り入れられることが増えてきた(と筆者が感じている)こと」
について、
もう少し掘り下げてお話ししたいと思い、急ぎ書き上げたものを上げておきたいと思います。




まずはその一連のツイートを少し修正して再掲したいと思います。

【以下一部修正の上自分のツイートを引用】

最近、邦楽ロックやポップスの界隈でR&Bとかディスコ、ファンク、ブラコンの再評価のような流れがあるけれども、
その再評価の仕方が一面的で、端的に言えばクラブミュージック的な視点から振り返られ、解釈されているものが多いと感じる。
これは、80年代末から90年代にかけて、Teddy Rileyなどに代表とされるNew Jack Swingがポピュラーな
R&Bの中心となっていった頃が起点になっているように感じます。

つまり、音が全面に張り付いたようなアレンジで、オーディオトラックとしての音の抜き差しで空間を作ろう、
という「音響的」な側面が強調されていて、個々の楽器やシンセのフレーズに面白いものが少ないように、
個人的には感じてしまいます。

ダンスミュージックとしてのブラックミュージックは、一つの律動と、フレーズが結びついたモチーフが楽曲を通して存在し、
そのタイム、グルーブを演者全員が共有しながら曲が展開していくと思うのですが、
そのモチーフが形骸化したらつまらないと思うのです。

アレンジ的な側面でも、音響録音的な側面でも、リズムや楽曲の構成の問題としても、
こういうブラックミュージック再評価の流れの中で、素直に喜べない部分も、少しだけあったりします。

ディアンジェロが正統的なブラックミュージックの進化というように高評価される時代を考えると、
背後にオルタナティブな音楽を嗜好する若者のファッションめいたものを感じてしまうから、
冷ややかな目で見てしまうのだと思います。
(言っときますが、ケンドリックラマーもディアンジェロも好きですよ、念のため)

【引用終わり】

自分は間違いなくブラックミュージックが好きです。
そして、様々な邦楽、特にロックバンドで、R&Bやディスコ、ソウルのリズムパターンであったり、
アレンジであったり、コード進行であったり、リフのパターンであったり、が取り入れられて来ているという現状は、
非常に喜ばしいものだと考えています。

しかしながら、かつてUKを中心に一大ムーブメントを引き起こしたアシッドジャズや、
90年代に日本で取り上げられた渋谷系のように、一過性の熱病に終わってしまうのではないか、
消費されるだけして終わってしまうのではないかという心配があるのも確かです。

この2つの例をもとに、現状のブラックミュージック偏重傾向にある邦楽ポップス~ロックについて、
思うことを少し述べたいと思います。かなり偏見に満ちたこじつけや論理の飛躍もあると思いますが、
お付き合い頂ければと思います。

例えば、アシッド「ジャズ」の場合、それは「ジャズファンク」ではあっても、「ストレートアヘッドなジャズ」ではありません。
これは、さらに昔の歴史を紐解いていけば、ブルース形式でも何でもないものが「~ブルース」と呼ばれ、
歌謡曲として楽しまれていた、かつての日本にも近い部分があります。

これは何も悪いことではないのですが、他方では危惧すべき側面も備えていて、
「何かよく分からない未知の格好いいもの」に適当に「ジャズ」と名前を付けているに過ぎないという部分があります。

つまり言い換えれば、この状態はリスナー、アーティスト共にジャズやブラックミュージックが、
いわば「ブラックボックス」に近い状態になっているとも言えます。
これは、任意の音楽に対して各々が一つの歴史観を持っていて、
ストーリーとルーツを考えていくような鑑賞態度と、ちょうど対岸の位置にあります。

前提すべきこととして、音楽の姿やそれにまつわる周辺の情報に対してのリテラシーが完璧ならば、
それで「いい音楽」が作れる、というのは、断じて全くの間違いです。


エポックメイキングな素晴らしい音楽が作り出されるとき、
作家個人の自我や感性が、想像や時には妄想といった形でルーツとなる音楽像を「補完」し、
その補完が原動力となって、
新たな潮流が生まれてくると考えるのは自然なことだと、私は思うからです。

しかし、あまりにもそのベースとなる音楽に対するリテラシーが低下
(少し誤解を招く表現かもしれません。これは、細かい蘊蓄を持っているということではなく、
その音楽の背景にあるものを感じ取り感動する、という感性や審美眼を磨き上げる過程についてのことです)
している状態だと、どうしてもコピーし解釈するベースとなる音楽は「表層化」していきます。
これが俗に言う「薄っぺらい」音楽というものです。

それは、自分たちの生まれてきた世代の感性に基づいて、
コピーしやすい、取り入れやすい部分のモチーフだけを形式的に取り込んで、
いわば「コラージュするように」(cf. ヒップヒップにおけるサンプリングとブレイクビーツ)音楽を作り出すことになりかねません。

これが、上で挙げました渋谷系の話に繋がっていきます。
渋谷系の音楽は、音楽的なコラージュを中心として構成されているとも言えます。
スノビッシュなイメージを伴いながら、妖しく危うげな魅力があった渋谷系の音楽が僕は大好きです。

しかし例えば、この時代に生み出された、「シティポップ」というものに対するあやふやなイメージが、
現代に至っても引きずられ、混乱を招いてていることを、筆者は残念に思っています。

いわゆる故大瀧詠一の系譜にあたるナイアガラ系や、ティンパンアレーの系譜、
山下達郎や松任谷由実などが作り上げてきたニューミュージックの系譜など、
それぞれに相違点も多く、個々に消化するべき部分の多い音楽に対して、
イメージで、お洒落な7th系のポップスやロックに「シティポップ」の判が押され、もてはやされていること、
さらに言えば、現代のポップスやロックがその狭い「型」の中に自らを押し込み規定しているような姿を見ていると、

これは間違いなく、自分たち若者世代のリテラシーの低下をハッキリと自覚させる事態であるといわざるを得ないと思います。

この厳しい現代で一刻も早く売り上げを出し、生き残っていくためには、
斬新な音楽のデザインが必要になります。
新たな音楽を作り出すことは自己目的化、ファッション化し、聴いたことない音楽は格好いい、おしゃれということになります。

その「格好いい音楽」を作り出す手段として選ばれるのは、コピーのしやすい、消化しやすい部分ばかりということになります。
これが、先ほどのツイートで「クラブミュージック的視点」でブラックミュージックが取り入れられる
傾向にあるという話に繋がっていきます。

こういう言い方をすると、クラブミュージックや電子音楽、コラージュの技法で作られてきた音楽たちが
まるで簡単で粗雑な代物のように聞こえるかもしれませんが、そういったことを述べているのではありません。
私自身ヒップホップもアンビエントやインダストリアルなども多少は聴きますが、
要するにその「音」それ自体に情熱を感じるかということなのです。形骸化したサウンドにはそれが欠落します。

こうなると最早オカルトチックな言い方になってしまいますが、そうした音の「熱量」を自分なりの感性で
見抜いていく力というものが、審美眼ということになると思います。
丸パクリでも大ネタ使いでも良いのです。そういうことではなく、
その音を聞いた時に、「この音は煌めいている」と感じるか、それだけだと思います。

現代音楽などは例外として、理論で音楽が生み出されることはありません。
歴史やジャンルが音楽を生み出すものでもありません。
(マイルスが、自分の音楽をカテゴライズされることに憤りを感じていたこと、
ジャンル分けがいかに無意味であるかを批判していることからも明らかです。)

しかし、よきリスナーとして研鑽を積んでいき、感性を磨いて行くためには、
もう少し、音楽の色々な部分を「丁寧に」味わって、気になるがままにルーツを辿ったり、比較したりしながら、
「自分なりの音楽観・感性」を持っていくことが、
今後の邦楽が先細りしていかないためにも、ブラックミュージック偏重が一時の熱病で終わらないためにも、
大切な部分だと考えています。

つまり時代を時には時代を遡りながら、その縦や横のつながりを感じながら音楽を聴いていくことで、
より楽しめるようになっていくことができると思うのです。
音楽を楽しむ、音楽で震えるという経験から、
もう一歩進んで、音楽を深く味わう、深く楽しむという精神で、今年一年も頑張って参りたい訳でございます。 

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  1. 2016/01/11(月) 15:03:38|
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新年のご挨拶・【祝】閲覧者数4万人突破!

お世話になっております。
私的名盤紹介にお越し下さっている皆様、フォロワー、相互リンク先の皆様、ありがとうございます。

そしてだいぶ遅くなって申し訳ありませんが、
明けましておめでとうございます。
私的名盤紹介管理人のSystematic Chaos(@privategroove)です。

まずは一つ報告をさせてください。もう随分と前の話になりますが、
私的名盤紹介は、ユニークアクセスで「閲覧者数4万人」を突破致しました!
このようなマニアックで個人的なブログで、これほどの数の方に来て頂いていることに、
この場を借りまして、深く感謝申し上げたいと思います。

さて、昨年度はこれまでと比べまして更新速度も遅い状態で、なかなか思うように書けなかった状態でした。
しかしながら、Twitterの方では音楽関連の話を多く呟くようにしておりますので、
そちらの方にコメント等頂けますと、素早くレスポンス出来ると思います。

毎週毎週大量のCDを買いつつ、それぞれについて出来るだけコメントを残すようにしておりますので、
そちらも見て頂けると、レビューとまでは行きませんが、管理人のおすすめする音楽の形が分かってくるかと思います。

そして、私自身の話になりますが、去年からは臨床医学実習が始まり、病棟で毎日を過ごしておる状態です。
今年はその続きと国家試験/卒業試験、就活に追われる1年になると思います。
従いまして、昨年以上には更新頻度を上げてまいりたいと考えていますが、難しいかもしれません。

というわけで、今後情報の提供を、何かしら新しい方法で、このブログ上で行っていきたいと考えていますが、
その具体的な方法に関しましては、いずれまた告知申し上げたいと考えています。

その他、忙しくなる一年ではありますが、音楽について何かしらの形で「語っていく」、
そして「集めていく」ことはライフワークとして続けていきたいと考えているので、
様々な方法に関して検討している状態です。

自分自身の周囲の人の話になりますが、私の友人にはいわゆる「同人活動」を行っている人も居て、
分野は違いますが、私は文章を書いていくという形において、何かしらの評論、或いは言説を纏めたものを、
長い時間を掛けながら生み出していきたいと考えています。

これに関しては、研修医となって以降も続けていく企画として計画しています。ご期待頂ければ幸いです。
来年以降下宿生活となりますと、ブロードキャスティングの方法論でも、
音楽についてのお話を出来る機会にも恵まれると思います。

年間ベストの記事に関しましては、目下執筆中でございますので、今しばらくお待ち下さい。
取り敢えずご挨拶まで。

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  1. 2016/01/11(月) 01:55:04|
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プロフィール

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは50,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
下さったら嬉しいです。
※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
https://twitter.com/privategroove
こちらでもおすすめの音楽など情報を流しております!
フォロー下さると嬉しいです。
可能な限りフォローバック、コメントしに参ります。

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