私的名盤放送第50回「邦楽クワイエットストーム特集」セットリスト
「放送アーカイブはこちらから」M1 さよならベイビー /サザンオールスターズ 『SOUTHERN ALL STARS』 (1990)
M2 Good Morning /木村恵子 『Style』 (1988)M3 T.D.M. /tofubeats feat. Okadada 『POSITIVE』 (2015)M4 Spice of Life /The Manhattan Transfer 『Bodies and Souls』 (1983)M5 Automatic Passion /Stephanie Mills 『Stephanie Mills』 (1985)M6 No Limit /竹本健一 『No Limit』 (2018)M7 君が僕に憑依した!! /平井堅 『SENTIMENTALovers』 (2004)
M8 Sugao No Mamade /大橋純子 『POINT ZERO』 (2004)M9 DOWN /BananaLemon 『DOWN』 (2018)M10 Sometimes /Crush 『Crush On You』 (2014)M11 Superhuman /NCT 『We Are Superhuman』 (2019)M12 嵐が来る /DREAMS COME TRUE 『Love Unlimited ∞』 (1995)M13 Girl U Love /Crystal Kay 『almost seventeen』 (2002)M14 真夜中の主人公 /須藤薫 『DROPS』 (1983)M15 Let Me Be Yours /Lillo Thomas 『Let Me Be Yours』 (1983)M16 Sweeter As the Days Go By /Shalamar 『Go for It』 (1981)M17 MISTY LADY /Casiopea 『PHOTOGRAPHS』 (1983)M18 スカイレストラン /清野由美 『ナチュラルウーマン』 (1981)M19 You Could've Been My Lady /10dB 『Steppin' Out』 (1989)M20 Fragile /山下達郎 『COZY』 (1999)しばらく間が空いてしまいましたがいかがお過ごしでしょうか。
仕事が始まり3年目を迎え、徐々に自分の責任や業務の量が増えるにしたがって、帰宅する時間も遅くなってしまっており、
私的名盤紹介の更新も滞りがちとなっておりますが、それなりに音楽を聴くことは出来ております。
今年1年間と、大学院での研究生活をする3年間は、最も忙しくなる期間と思われます。
これからも可能な限りのペースで続けてまいりますので宜しくお願いいたします。
今回も邦楽シティポップや、特にクワイエットストームから影響を受けたメロウな楽曲を中心に取り上げました。
オープニングにはサザンオールスターズが初めてオリコン週間チャート1位を記録したヒットシングル、
1989年作です。1990年作のセルフタイトルに収録されています。TR808のカウベルの音を取り入れたリズムパターンと、
クワイエットストーム的な進行に歌謡的なメロディ、多重録音コーラスの作るドリーミーな一曲です。
シティポップの隠れた名盤では、鈴木茂、松本隆、湯川れい子、杉真理、門あさ美などが参加した
SSW, 木村恵子の88年作の1stアルバムから、のちの古内東子や具島直子を思わせるような、
物憂げな空気が漂うジャジーなGood Morningを取り上げました。90sJPOPを予見させる音だったと思います。
さらにSSWものでは清野由美の81年作から、松任谷由実のペンによるハイファイセットの名曲、
スカイレストランのカバーを取り上げました。椎名和夫のリヴァーブが聴いたリードギターが堪りません。
その他B面では山本達彦、井上鑑などが楽曲提供しています。
現代JPOPの中で、邦楽ヒップホップから音楽へ入り、テクノ, ハウス、JPOP、ガールポップを経由しながら、
80sブギー、BCMを思わせる楽曲を残している1990年生まれのトラックメイカー、tofubeatsの2015年作から、
かつてのRod Tempertonを思わせるようなT.D.Mを。そして、Rod Tempertonプロデュースによる
Manhattan Transferの83年作は、Michael Jackson/Baby Be Mineを思わせるような最高のグルーブです。
シンガーだけだなく女優としても知られ、ミュージカルThe Wizでのヒットで知られているStephanie Millsは
70年代末から80年代末にかけて、当時の最新のR&Bのスタイルを取り入れたBCMの優れた作品を数多く残しています。
特に70年代末から80年代初頭のMtume & Reggie Lucasプロデュースによる諸作がよく知られているかと思います。
最もヒットした時期からは離れますが、NJS的な要素の強いHome(1989)はAngela Winbush, Gerald Levertプロデュースで、
硬質な艶消しのサウンドを楽しむことができ、これもお勧めです。
今回はCasablancaからMCAに移籍して最初のアルバムとなったセルフタイトル(George Dukeプロデュース)から、
当時新進気鋭 のKaryn WhiteのペンによるアーバンメロウなAutomatic Passionを選びました。
Paul Jackson Jr.によるペキペキしたカッティングが堪りません。BCMには必須のサウンドだったと思います。
他にもAbragham Laboriel, Freddie Washington(B), Larry Williams(Key), John Robinson(Ds), Michael Landau(G)など
AORの観点から見てもお馴染のスタジオミュージシャンが多数参加しています。必聴盤。
ロックバンドからソロアーティストへと転身するパターンは比較的よくあることかと思いますが、
00年代前半にPhonesという3ピースロックバンドでフロントマンを務めていた竹本健一のソロ作は、
オメガトライブ~角松敏生を思わせるような爽やかなリゾートミュージックで、最近のシティポップリヴァイバルの中でも
素晴らしい出来だったと思います。Phones時代の楽曲も渋谷系~アシッドジャズ的でお洒落な楽曲が沢山あります。
最近のアーティストならikkubaruがお好きな方にぜひどうぞ。
同じようにロックバンドのボーカリストからソロアーティストへ転向し、シティポップ的なサウンドを指向している
人として、椿屋四重奏の中田裕二が居るかと思います。
90年代のR&Bの名曲をメドレー形式にして、歌とダンスで魅せる動画をたまたま発見して引き込まれてしまった
4人組のダンスボーカルグループ、BananaLemonの昨年のシングル、DOWNです。
最近流行りのクワイエットウェイブのヒット、Ella Mai/Bod' Upを思わせるようなチルな一曲でした。
キュートなボーカルとの組み合わさると、JPOPとしての魅力もあります。
これもTR808のカウベルの音色と、地を這うようなベースの組み合わせが最高です。
彼女たちのプロデュースを務めるのは、少女時代やEXILEへの楽曲提供で知られるSTYだそうです。
その他、ベテランでは70年代後半から邦楽ソウルミュージックの黎明期を支え、フュージョン~AOR的な楽曲も数多く残した
大橋純子のNY録音1983年作から、蕩けるようなメロウなイントロと、ジャジーなAメロへの接続が鳥肌ものの素顔のままでです。
Mark Gray, David Sanborn, Buddy Williamsなどが参加しています。随所のキメも完璧です。
荒井由実、筒美京平のタッグによるやさしい都会でデビューしたシンガー、須藤薫の1983年作は、
メインの作家に杉真理と林哲司、つのだ☆ひろを迎え、大瀧詠一にも近しいゆったりとした
暖かいシティポップが収められています。滝沢洋一のペンによるA1を取り上げました。
青山純と思われるへヴィ―なドラムスと多重コーラスが加わることで、FOR YOU前後の山下達郎を思わせる佳曲です。
最近徐々にお掛けしている韓国のR&Bからは、管理人お気に入りのプロデューサー、Zion Tが所属するクルー、VV:Dと
DEAN, ZICOが所属するFANXY CHILDの一員で1992年生まれのCrushというシンガーの2014年作から、
シカゴソウルのリズムパターンに少しナイーブなボーカルと薄く背景を彩るストリングス系のシンセの配置が素晴らしいです。
そして2016年に結成したSM Entertainmentからデビューした男性アイドルグループ、NCTのシングル、Superhumanを選びました。
EDM的な展開の作り方、重低音のベースソロがあったりしながら、曲の中心はMJ的な80sブギーの質感を残していて、
面白い一曲でした。
1988年にデビューし、ディスコ、AOR~シティポップ、同時代的なブラックミュージック
(Cheryl Lynn的なディスコやBCM, NJS, アシッドジャズ、ハウスなど)の影響を受けながらも、
90sのJPOP黄金期を支える名曲を数多く残した男性2人、女性1人のグループ、
DREAMS COME TRUE(のちに2人となりますが)の96年作から、MISIAの初期作にも通じるような嵐が来るを。
(大ヒットとなったLOVE LOVE LOVEのB面でもあります)
椎名林檎/東京事変やスガシカオ、スピッツ、アンジェラアキ、いきものがかり、チャットモンチー、
back number, 星野源など特に90年代末から00年代に掛けてJPOPヒットに最も多くかかわったプロデューサーであり
ベーシストの亀田誠治がプロデュースに参加した平井堅の2004年作を取り上げました。
(その他アレンジで中西康晴(ピチカート・ファイヴ)、大沢伸一、AKIRAなど参加)
亀田誠治が関わった楽曲も勿論素晴らしいですが、ここではEXILEのサウンドプロデュースを務めたAKIRAによる
Chris Jasperを思わせるようなブギー、君が僕に憑依した!!です。右チャンネルに振られたパーカッションのリズムは
ポリリズミックで、かつて山下達郎が影響を受けたファンクのテイストを残しています。全曲必聴のアルバムです。
続いて、JR&Bの全盛期に活躍した歌姫、Crystal Kayも、前回取り上げたSoweluと同じく、
今振り返られるべき優れた作品を数多く残しています。m-floのタカハシタクをプロデュースに迎えた3rdアルバムから、
シカゴソウルなリズムにファルセットに抜いた無垢なボーカルが堪らないGirl U Loveです。
さらにBCMからはもともとアスリートとしてオリンピックに選出されながらも、交通事故のため出場叶わず、
その後にシンガーとしてデビューするという異色な経歴を持つLillo Thomasの1983年の1stを選びました。
プロデュースはFreddie Jackson/Rock Me Tonightや、 Melisa Morgan/Do Me Baby(Princeのカヴァー)、
Keith Washingtonなど、Kashifと並んでクワイエットストーム、BCMの名曲を残したPaul Lawrence Jones IIIが担当しています。
ひんやりとしたシンセのコードとスラップベースのファンキーなイントロから、サビにかけて絶妙な音の抜き差しで、
必要最低限な、引き算の美学とも言うべきアレンジで作られた一曲です。
そして80sブギーではSOLARレコードを代表するグループであり、Jody WatleyやHoward Hewettを擁するShalamarの
81年作から、管理人の最も好きな「粘り付くような」グルーブを感じさせるSweeter As the Days Go Byです。
少しマニアックなところでは、Stanley "Gerard" ThermondとAudrey "Paris" Hollisの2人組によるR&Bユニット、
10dBの1989年作です。詳細は不明ですが、こちらもChris Jasper在籍時のIsley Brothers/Choosey Loverを
思わせるようなクワイエットストーム、You Could've Been My Ladyです。
最後には、発売されたばかりのTyler, The Creatorのニューアルバム、IGORの
GONE, GONE/THANK YOUにサンプリング(オマージュ)された山下達郎/Fragileです。
原曲は圧倒的な分厚さの多重コーラスにマシンビートのリズムトラックが重なった悲しい一曲です。最高。
今回も少しJPOP/JR&B多めで、特にクワイエットストームの観点から振り返られそうな楽曲を中心に
お送りしました。これからも皆様に素晴らしい音楽との出会いがありますように。おやすみなさい。
※いつもご覧いただいてありがとうございます。聴いて頂けるお蔭様で続けております。視聴者数も2000人に
到達しようとしております。もしお気に召しましたら、ブログ記事下にありますTwitterバナーで呟いて頂けますと
大変励みになります。次回もお楽しみに。
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- 2019/06/20(木) 22:26:00|
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