私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

社会人になって「自分」を見失ってしまう怖さ、「NPC」になってしまった人たちへ

いつも私的名盤紹介をご覧くださっている皆様、ありがとうございます。
管理人の@privategrooveです。

初期研修の2年間が終わり、4月からはいち内科医として、自分の専門とする診療科の道へ本格的に
進むことになります。

学生時代から、悩みごとがあると、銭湯に友達同士で集まって話し合う習慣がありました。
「裸のつきあい」とはよく言ったもので、働き続けることの意味や、各々の恋愛、結婚観、哲学や、
お互いの家族の悩みまで、隠すことなく開陳できた時間は、自分にとって宝物ですし、
今でも悩んだときは友人と銭湯へ繰り出しています。

20代も後半となり、30歳が近づくにつれて、友人たちも様々なライフステージを迎えています。
そんな中、僕と親友の間でよく話題に出ることととして、
「働きだしてから、「本来の自分」を見失ってしまっている人が多くなっていないか?」
という話題がよく出るようになりました。

社会人が忙しく、自分の好きだった趣味や遊びに取り組めなくなったり、
たまの「飲み会」だけを楽しみにする様子はよく見受けられます。

医師という職業は特殊です。当直や夜勤、待機で家から呼び出されることもしばしばであり、
仕事と病院の中での価値観が、如何にしても人生の中心に据えられがちです。
ICUの患者さんのために何日も泊まり込みで働いたり、睡眠不足の中、救急初療室で働いた記憶をはじめとして、
仕事を通して胸が熱くなったり、あるいは強い自責の念や無力感に苛まされることもあります。

たった3年間の経験ですが、されど3年です。仕事を通した人間的成長というものは、たしかに存在するだろうと思います。

しかしながら、学生時代に輝いていた目に生気がなくなっていたり、個性に富んだエキセントリックな性格の医学生
(医学生というのは変わった性格の人が多く、それがまたいいところでもあります)
が、僕から主観的に見て、「面白み」や「クセ」がなくなってしまう過程を目の当たりにしました。

仕事以外の趣味その他の活動に取り組んでいることが、「自分を見失わないこと」とイコールである、
という短絡的な理論に終止するつもりはありません。医学生の頃思い描いていた生活と、
実際の勤務医の生活にギャップを感じ、進路に深く悩んだり、時には選択を変えたりする人も多いです。
また大抵の場合、優秀な医学生は「与えられた役割をこなす」ことが「出来てしまう」ことが多いので、
本来この仕事がやりたかったのか、自分にとっての仕事の位置づけ、相対化が出来ずに忙殺される人が多いように感じます。

以下では、「自分を見失ってしまった人」をテレビゲームの用語を用いて、NPC(non player character)と定義しようと思います。
ここでは、仕事を始めるにあたってNPC化した人たちについて、銭湯で僕と友人諸氏で話し合った内容を、
纏めてみたいと思います。

あなたは、「NPC化」していないでしょうか?これは、自分にとっての自戒でもあります。
僕も、懐疑的に思索し続ける人間であろうと思います。

Q1 仕事を人生の中心にしている人について、本当にあなたが取り組んでいる仕事は、「進んで取り組みたい」と
思えるものでしょうか?


・人間は、仕事にせよ、家庭や趣味、芸術や友人づきあいにせよ、
何事かに取り組む際には、モチベーションや体力といった「リソース」が必要です。
仕事で失っているリソースがもし、余っていたとしたら取り組みたいことはないでしょうか。
・仕事に人生のリソースをつぎ込むことが血肉化すると、その他のことにリソースを割くことが
「おっくう」になっていきます。最終的には、それまで好きだった趣味や気晴らしが、「興味をそそられないもの」へと
変化してしまいます。やや飛躍した論理ですが、これは抑うつ状態またはその前段階と似通っています。

Q2 あなたは、今の生活を「俯瞰的」に見られていますか?

・自分が内発的感情に基づいて取り組みたいこと(仕事でも、恋愛でも、趣味でも構いません)が、
これといって存在せず、職場や周囲の人間と同様の行為を行っていく(入局、当直、大学院進学、専門医etc)、
あるいは、「常識的なライフステージ」に合わせて日々を送っていませんか?これが、NPC化の過程です。

・今、自分が日々リソースを割いている行動を明文化しましょう。その一つ一つが、自分の自己実現や
モチベーションを伴った行為なのかどうか、社会構造に迫られて「強迫」されていないかをまず考えましょう。

・それをもとに、行動や生活を変えてみるのも、よいかもしれません。一つ言えることは、これまでの習慣や行動を
変更するのはストレスを伴うことなので、強い意志を持つことが大切となるでしょう。

・時には職種や部署を変更することが正解かもしれません。

・いちばん大切なのは、まず現状を見直すことです。その結果、もしこれまでと「リソースを割く内訳」を
変えないとしても、自分が、いわゆる「社会の歯車化」していないかについて自覚的になることが大切です。
(これは、結果として組織の歯車となっていることが悪と断じているのでは決してなく、与えられた役割を、
内発的な感情やモチベーションに基づかないで、ただ「こなしているだけ」になっていないか、問いかけ続けるということです。)

・一言でいうと、「無知の知」を得ることが大切だということです。

・自分がリソースを割く行動を決める際(例えば、絵を描く仕事につきたい、ミュージシャンになりたいなど、何でも結構です)
には、「自分が特別(才能を持った)な存在である」という自覚を捨てることが大切です。
どんな分野でも、そしてそれをどんなに極めたとしても、常に自分より実力が上回る人というのは存在します。
努力することは大切ですが、ある程度、自分の気持ちや自尊心と適切な折り合いをつけることが大切です。

Qあなたは、「余暇」の時間に、何かやりたいことがありますか?
(「余暇」とは、仕事や、ライフステージに合わせたやるべきDuty(家事や子育て、介護なども含まれるでしょう)がない、
あるいは直ちに取り組む必要がないとき)


・休みがあっても特にやることがないので、仮に仕事で忙殺されてもなんとも思わない、という人がいた場合、これは危険です。
あなたがやっているその仕事は、身を削って取り組みたいことですか?一度立ち止まって考えましょう。

・人間にとって、何か新たな行動を起こすためのモチベーションや体力、知識を得るための時間などをリソースと定義すると、
一人ひとりにとって「リソース」は有限のものです。そのリソースを何に割きたいか、を何度も自分に繰り返し問いかけましょう。

・ただ日々を周囲の人やライフステージに流されるがままに過ごし、社会人として与えられた役割を果たし続ける歯車は、
ヒットした=TVアニメAngel Beats!に現れたNPCと同一です。

以下は、さらに僕の主観的な価値観を書きます。

例その1
医師は、同調圧力が強い、いわゆる「体育会系」な価値観を中心に据えている人が一定数いるようです。
つまり、エリートとして大学を卒業し、ハードに働いてキャリアを積み重ねていく流れこそが「正解」であると規定する価値観が
共有されがちであると思います。

例えば「専攻医を途中で辞め、新たな分野へ切り替わる」などの事例では、
「研修をやり通す精神力や責任感がない人間」と評価されることが間々あります。
(実際にこのようにハッキリと述べる人は居ませんが、このように見なされることも多いようです)

しかし、実際本人は、様々な患者さんや人々と、新たな業務を介して人間的成長を得ていたりして、
「本人から見て」(ここが大切)充実した毎日を送っていることもあるでしょう。

この事例では、「彼なりの辞めた理由があるのだろう」「むしろ、その理由は何であろうか、専攻医のシステムに問題がないか、
そもそも、専攻医を続けることの意義は何だろうか」と熟慮する姿勢が、生産的なものの見方ではないでしょうか。

例えば、これが医師以外の世界であれば、転職は比較的一般的なことで、
上記のような考え方の人は相対的に少ないのではないかと思います。

例その2

上司が部下に仕事を振り分ける際に、「勉強になるから、役に立つから苦労してもやっておこう」と発言したとします。

この言葉は、部下が「この仕事は誰かがやらなければならないことであり、そして自分はこの仕事をやりたい、
またやることは自分のスキルアップにつながる、そして私は自分のスキルをアップしたいと心から思っている」
という考えであることを前提していることにはならないでしょうか。

部下は、仕事に対して「食い扶持を稼ぐために行っており、不要な仕事は避けたいなぁ」と考えているかもしれないし、
「スキルアップは望ましいが、今日は仕事をしたい気分ではない」と考えているかもしれません。

この場合、部下のキャラクターをよく知っていれば全く問題ないこともあるでしょう。
しかし、「Aの仕事をお願いしてもいいですか?」に留めるのがよいように思います。

何事においても、他者のある行為に対するモチベーションや姿勢を透視することは出来ないでしょう。

つまり、あなたはやりたい事が無かったのではない、やりたいことに気付いていないだけかもしれない、
或いは、心から100%やりたいことではないにせよ、まずまず取り組んで、折り合いをつけて生きていくというように、
自分の置かれている状況を俯瞰的にみて、謙虚に、自分を過信しないように生きていくことが大切ではないかと思います。
(相手の気持がわかるなどと勘違いをしない、人の気持ちを決めつけない)

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  1. 2020/02/24(月) 23:38:00|
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私的名盤放送第60回 「90年代R&Bの宝石たち~スロウ・ジャム特集」

私的名盤放送第60回 「90年代R&Bの宝石たち~スロウ・ジャム特集」

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「放送アーカイブはこちらから」

M1 I LOVE... /Official髭男dism 『I LOVE…』 (2020)
M2 入江にて /郷ひろみ 『SUPER DRIVE』 (1979)
M3 Lady Seduction /Chill 『Chill Out』 (1986)
M4 24 Hours /S.H.E. 『3's A Charm』 (1997)
M5 Splendid Love /Lip's 『Splendid Love』 (1990)
M6 土曜日のLina /村田和人 『Boy's Life』 (1986)
M7 I've Got To Be Loved /Rodney Mannsfield 『Love In A Serious Way』 (1993)
M8 ララルハレルヤ /駒形友梨  『Indigo』 (2019)
M9 What Took You So Long /Delegation 『Deuces High』 (1982)
M10 Boogie from the Desk /MO-J TRAX feat. YUKA 『MO-J TRAX featuring YUKA』 (1998)
M11 さよならを言わせて ~Let me say good-bye~ /今井優子 『DO AWAY』 (1990)
M12 I Do Love You (Piece Of My Love) /En Vogue 『Soul Flower』 (2004)
M13 I'm The Man (Your Mama Been Warnin' You About) /Kino Watson 『True 2 the Game』 (1996)
M14 One Way Call /大西結花 『ONE WAY CALL』 (1991)
M15 So in Love /Jason Weaver 『Love Ambition』 (1987)
M16 Westside /TQ 『They Never Saw Me Coming』 (1984)
M17 You Bring Out The Best In Me /Bloodstone 『Don't Stop』 (1978)
M18 Second To None /Sharp 『Sharp』 (1989)
M19 Something About The Way That You Do /Pure Soul 『Pure Soul』 (1995)
M20 Rock My Body /松浦亜弥 『Naked Songs』 (2006)

【放送後記】
しばらくぶりの放送となりました。いかがお過ごしでしょうか。
コロナウイルスの大流行もあり、特にここ数日は寒波がやってきております。
不要不急の外出は避け、暖かくしてお過ごしください。

今回は、黄金期といえる90年代のR&Bに焦点を当て、特にブラックコンテンポラリー/ニュージャックスウィングと
ネオソウル/ネオクラシックソウルの丁度あいだの時代に当たる作品群から、
「スロウ・ジャム」と呼ばれる、ムーディーでセンシュアルな楽曲を多く選びました。

1曲目には国民的グループとして紅白歌合戦出場を果たした、Official髭男dismの新曲を選びました。
基本的には大ヒットしたPretenderのスタイルを踏襲した、80sソウル~AORの香りが漂うシティソウルな一曲でした。
特にA~Bメロ部分は80sソウル~クワイエットストームな作りとして、細やかなトラップビート、モダンな音色のシンセを
組み合わせた構成が見事です。2番入りからピアノ弾き語りになったり、ゴスペルライクなコーラスを組み合わせたりと、
音の抜き差しも非常によく工夫されています。

シティポップという音楽の指す範囲は非常に広範であり、その背景にある音楽性は多岐にわたります。
歌謡曲の伝説的なアーティストが残した、同時代的なフュージョンやブラックミュージックを取り入れた
ポップスも、シティポップの範疇に含まれると思われます。郷ひろみの1979年作はニューヨークの
スタジオミュージシャングループである24th Street Band(Hiram Bullock, Steve Jordan, Will Lee, Clifford Carter)が
参加しています。(放送ではLAとお話しましたがNYの間違いです)
シンプルでありながらもどっしりとしたタムの効いたフィルインがファンキーなドラムスとメロディアスなメロディ、
スムースジャズ的なライトなホーンアレンジ、ラストサビに掛けての転調など、歌謡曲的要素は希薄な一曲でした。

渋谷のFACE RECORDSで購入した、西海岸出身の詳細不明のブラコン/エレクトロファンクユニット、Chillの
爽やかなジャケットが非常に印象的な1986年作から、リヴァーブの効いたスネアとシンプルなリフレインで作られたブギー、
Lady Seductionです。特徴的なシンセのリフは、一度聴いたら耳から離れません。

第二のEn Vougeといったイメージの3人組女性ボーカルグループ、S.H.E.の97年作もBOOK OFFでひっそりと290円で
売られていました。Soul,Heart,Energyの頭文字を取って名付けられたグループのようで、唯一作です。
プロデューサーはVanessa Williamsを手掛けたことで知られるAntonina Armatoが手掛けています。
ここから澄んだリムショットと妖しげなコード進行、ウィスパーボイスで滑らかに歌うスロウジャム、24 Hoursです。

加藤貴子、吉村夏枝、山本京子の3人で構成されるアイドルグループ、Lip'sの2ndシングル、Splendid Loveです。
@fumimegane0924さんに教えて頂きました。今はやりの「オブスキュア・シティポップ」なリゾートミュージックで、
EPO, 大江千里、牧野由依などのプロデュースで知られるプロデューサー、清水信之が手掛けた一曲です。
清水信之自身による鋭い16ビートのカッティング、三四郎によるサックスのロングソロなど、
全体の音作りはややチープでありながら、角松敏生=杏里サウンドに勝るとも劣らぬキャッチーさがあります。
Espesiaや東京女子流などのアイドルポップスの基礎となったのは、こういった曲なのであろうと思われます。

続いて、80年代の山下達郎バンドのコーラスを務めたことでも知られるSSW, ボーカリストの村田和人ソロから、
1986年作から、Jeff Porcaroが作り出したLA的なシャッフルのリズムに、濡れた切ないメロディが絡むスロウ、
土曜日のLinaです。安部恭弘/アイリーンや山下達郎/Morning Gloryと並べて聴きたい佳曲。
プロデュースは前作のSHOWDOWNと共にRonnie Fosterが担当しています。

クワイエットストームを代表するアーティストと言えばAnita Bakerの名前が上がると思いますが、
Anitaや Peabo Bryson, Regina Belleなどのプロデュースで、唯一無二なリッチでジャジーなサウンドを
作り上げたプロデューサーが、Michael J. Powellです。
Michael PowellプロデュースによるシンガーにはMini CurryやこのRodney Mannsfieldがいます。
彼自身は2枚のアルバムを残したのみで、本作は1993年作の1stです。
その他にもTerry Steele(私的名盤放送#59)、Paul Laurence、Buster & Shavoni、Gary Taylorなど
BCMを代表するプロデューサーがこぞって参加しています。
Garry GlennのペンによるM1は特にAnita Baker/Rapture直系のクワイエットストームで、
メロ部分はリムショットで柔らかく、サビに掛けてパワフルに叩く展開の付いたドラムス、
9thの響きが美しいジャジーなコード進行、転調を加えた後半の、畳みかけるようなピアノのバッキングも最高です。

以前にもアキシブ系の名盤として[Core]を紹介した声優、駒形友梨の高橋諒プロデュースによる2nd EP Indigoから
ボーカロイド系の作曲家とゆまによるソウルフルなハーモニーとフュージョン的な複雑なキメのリズムが
加わったシティポップ、ララルハレルヤを選びました。

UK出身のファンクバンド、 Delegationが1982年に欧州だけで発売した5thから、
うねうねしたシンセベースと引き締まったドラムス、ピュンピュン鳴るシンセが堪らない、多幸感溢れるブギー、
What Took You So Longです。アメリカでは1978年にOh Honeyがヒットした一発屋のイメージが強いようですが、
本国、欧州では人気を保っていたグループのようです。Ariolaから発売したEau De Vieは比較的入手しやすいアルバムですので、
是非聴いてみて下さい。グルーヴィーでキャッチーでありながらも、UKソウルならではのすっきりしたテイストがあり、
のちのアシッドジャズを既に予見させる音像だと思います。

オブスキュア・シティポップディスクガイド」に掲載されたアルバムの中から、
最近手に入れたトラックメイカーチームのMO-J TRAXとシンガーのYUKA(長織有加)からなるユニットの
1stフル、1998年作です。全体的にニュージャックスウィング~ヒップホップソウルの間をいくスウィンギーなビートを
基本にしながらも、取り上げたBoogie from the Deskのような、ある種東洋的なメロディが重ねられているのが特徴的です。
極めてスカスカで音数の少ないトラックと、重低音を強調した音のバランスだからこそ成立する、MISA~
宇多田ヒカル1st, 嶋野百恵な90年代邦楽R&Bの味わいです。

角松敏生プロデュースによるシンガー、今井優子の1990年作がリマスター再発されました。
青木智仁(B), 今剛(G), 鈴木茂(G), 村上"ポンタ"秀一(Ds), 斉藤ノヴ(Perc), 数原晋(Flh)など錚々たるメンバーが参加
しています。発売されてすぐ購入したのですが、中々掛ける機会を得られずにおりました。
のちに角松自身もソロアルバムで取り上げるさよならを言わせて ~Let me say good-bye~ です。
全体を覆い尽くすまばゆいばかりの音作りと、どこまでも派手な演出のフィルイン、サビでダンサブルな
ビートへと変化する緩急の付け方など、角松敏生サウンドの真骨頂が楽しめます。Jay Graydonを思い起こさせる
ワイアークワイアーなギターソロも見事です。

タッグを組んできたFoster & McElroy(Club Nouveau, Tony! Toni! Toné!, Alexander O'Neal, Regina Belle, Swing Out Sisterなど)
による、艶消しなサウンドの上物と、細やかで、音色への圧倒的なこだわりを感じるビートがたまらない
ミッドチューンを多数生み出してきたボーカルグループ、En Vogueの2004年作から、
Guyのカヴァー、I Do Love You (Piece of My Love)です。元曲はTR808によるぶっといビートとレイドバックしたリズム、
熱く滾るボーカルの掛け合いのバランスで聴かせていましたが、En VogueのバージョンはTLC/Waterfalls以降な
ヒップホップソウルのマナーを感じる音作りで、エレピやギターのバッキングが加わると70sソウルのような
オールドスクールな質感を漂わせます。

ノースカロライナ州出身のシンガー、Kino Watsonが1996年に発表した1stアルバムから、
レイドバックしたビートと丁寧に重ねられた繊細なコーラスワークが心地良い
絶品のスロウ・ジャム、I'm The Man (Your Mama Been Warnin' You About)です。
プロデュースもセルフプロデュースで行った一枚で、その他にもThe Floaters/Float Onをサンプリングした
オーセンティックなメロウBring It On、Darryl Shepherdとのco-produceによる妖しげなヒップホップソウル、
Body Languageでは乾いたスネアの音色が時代を感じさせます。地味ですが巧みなリードヴォーカルの表現を
堪能できる一枚でした。

今やシティポップのアンセムとなった竹内まりや/Plastic Loveのカヴァーが収録された
女優、歌手の大西結花の1991年作から、イントロのガラスが弾けるような音色のシンセや、
シンプルなベースラインと、突き抜けるリヴァーブ感を備えた暖かなガールポップです。
少し安っぽいホーンのソロはまだフュージョン~スムースジャズの香りを残しています。

ネオソウルが時代の中心と評価されがちな90年代半ば~00年代初頭のR&Bですが、
良く振り返ると、以前取り上げたYours TrulyやA Few Good Men, Brian McKnightなど、
いわゆる「歌唱音楽」としてのソウル/R&Bを表現するアーティストも確かに居ました。
Jason Weaverは1979年生まれ、シカゴ出身の子役上がりのシンガーで(Rahsaan Pattersonも同じく子役上がりですが)、
弱冠16歳にしてリリースされたフルアルバム、Love Ambitionを取り上げました。
Kipper Jones, Booker T.,Rasaan Pattersonなどを手掛けたKeith CrouchやRobin Thicke、J.R. Hutson(Leroy Hutsonの息子)
などがプロデュースを手掛けています。
そのボーカルスタイルは一聴してMichael Jacksonに強い影響を受けたものと分かりますが、
軽やかにビートを乗りこなしながら、巧みな音の止め方を見せる技術に驚かされます。
特にアーバンでジャジーなミッドSo in Loveは印象的なシンセのリフと、遠くに聴こえるストリングス系の白玉、
Sherree Ford-Payneの艶やかなコーラスの対比が最高に美しい。

1976年生まれ、コンプトン出身のシンガー、TQの1998年リリースの1stアルバム(USR&B#122, UK#27)から、
ヒットシングルとなったWestside(USR&B#12, UK#4)を取り上げました。
これも絶品のスロウジャムですが、生演奏によるトラックはMint Conditionの作り出すグルーブを思い起こさせます。

ミズーリ出身のファンクバンド、Bloodstoneの1978年作は心斎橋のGroovenut Recordsで手に入れました。
Winston Monsequeがプロデュース、Al Johnsonがアレンジャーに参加したことで、
アーバンなテイストが強まった一枚になっています。オープンカーに滑り込む女性のジャケットもお洒落です。
You Bring Out The Best In Meは冒頭の鋭いフィルインから一気に引き込まれ、
芯のあるファルセットのリードボーカル、メロディアスなベースラインといい、
レアグルーブに必要な要素すべてが詰まった良曲です。

詳細不明な6人組ボーカルグループ、Sharpの1989年作は、熱田神宮近くのBOOKOFF PLUS 熱田国道1号店で
見つけました。ELEKTRAから発売された一枚で、ニュージャックスウィング的なアプローチの曲が目立ちますが、
その中でもゴスペルライクな豪華なコーラスが映える極上のスロウジャム、Second to Noneを選びました。
一周して、この如何にもわざとらしい音色のシンセベースや、シャキシャキしたカッティングが
お洒落に聴こえるから不思議なものです。

ワシントンD.C.出身の4人組ボーカルグループ、Pure Soulの1995年作も選びました。
En Vogueの件で少し述べましたが、同じくFoster & McElroyがプロデュースに参加しているほか、
Teddy RileyやRaphael Saadiqも参加している辺り、気合の入り具合を感じます。
Teddy RileyとRodney JerkinsによるSomething About The Way That You Doは時代の流行を感じさせる
ヒップホップソウルで、巧みなコーラスとダークで艶消しなハーモニーの組み合わせは安心して聴いていられます。

以前、大塚愛/Strawberry Jamを取り上げた時も、これほどまでにグルーヴィーでキャッチーなJPOPがあったのか、
と再発見した喜びを感じましたが、オブスキュア・シティポップディスクガイドで取り上げられた
この松浦亜弥の2006年作も、まさにそんな一枚でした。
自身の有名曲を生演奏とアーバンな編曲で再録した作品ですが、何曲か新曲も含まれています。
ジャズ/フュージョン系の鍵盤奏者、Ben Sidranらのペンによるアシッドジャズな新録音曲、
Rock My Bodyを選びました。Incognito~BNH直系のタイトなリズムパターンとファルセット混じりの
センシュアルなボーカル表現の細やかさに驚かされます。
その他、ヒット曲LOVE涙色(#3)もグルーヴィーでしっとりとした質感の一曲に生まれ変わっています。
他にもNorah Jones/Don't know whyのカヴァーなど面白い取り組みも多数、隠れた名盤でした。

まだまだ取り上げられていないLP, CDが多数あります、次回もお楽しみに。

前編

中編

後編

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  1. 2020/02/13(木) 16:47:01|
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「私的名盤紹介-真の雑食を目指して」掲載アーティスト一覧

「私的名盤紹介-真の雑食を目指して」掲載アーティスト一覧

これまでディスクレビュー、および「私的名盤放送」で掲載してきたアーティストは650組以上にも渡っております。
PC版サイトですと左側のジャンル一覧から古い記事のカテゴリ一覧を見ることができますが、
スマホ版の方や、「私的名盤放送」掲載のアーティストは見ることができない状態が続いていました。
そこでアーティスト一覧を作成しました。今後、ジャンル別でさらに見やすくしていく予定ですが、
ひとまずはA to Z, あいうえお順で並べたものをここに置いておきます。ご活用下さい。

※リンクをクリックすると、ブログ内の検索結果が表示されます。一部同姓同名のアーティストなどが
  表示されることもありますが、ご容赦下さい。

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  1. 2020/02/13(木) 11:44:06|
  2. 初めにお読みください
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プロフィール

Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
※当ブログはリンクフリーです。
コメント下さると励みになります。
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※Twitterもやっております。
アカウント名はprivategrooveです。
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可能な限りフォローバック、コメントしに参ります。
※放送企画として「私的名盤放送」というラジオを配信しております。
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