私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(214)

Album: The Perfect Element, Part 1
Artist: Pain of Salvation
Genres: Progressive Metal, Progressive Rock

The Perfect Elements


スウェーデン、セーデルマンランド県エスキルストゥーナ出身のプログレッシブ・メタル/ロックバンド。
1991年結成。緻密に構成された物語性を持つアルバムコンセプトと、時に攻撃的で
時に幻想的な、メタルのみに捕らわれない多彩な音楽性で数多くのフォロワーを生み出した、
北欧プログレメタルを代表するバンドの一つ。出世作となった2000年作の3rd。
複雑怪奇なリズムアプローチの中にも各楽曲にキャッチ―さを兼ね備えており、
この手の音楽の中ではかなり聴きやすい部類に入ると思います。
音作りもパートごとにへヴィ―になり過ぎず、ストリングスやオペラティックなコーラスを配置したりと
飽きさせません。Johan Langell(Dr)の正確無比で端正なドラミングによるリズムワークや、
(変拍子は案外少なめです)インスト部分でのJohan Hallgrenのギターソロが目立つバンドではありますが、
Daniel Gildenlöw(Vo, G)の突き抜けるような透明感のあるハイトーンや、
声を枯らすようにしてトーンコントロールするエモーショナルなボーカリゼーション、
静的なパートでのFredrik Hermansson(Key)のクラシカルなフィーリングのあるキーボードも
聴き所で、本作はどちらかというと古典的なプログレッシブ・ロックの影響下にある作品と捉えられる
楽曲が多いように感じました。(前2作品はDream Theaterの影響が強くメタル色が濃い印象があります)
とにかくどの楽曲もメロディが非常に美しいです。
そして13年前のCDとしては音質もクリアで、録音状態の良さも特筆すべきものがあると思います。
重厚なパートでのリフワークやギターの音作りのハイファイさ、クリアさ、ボーカルの音処理、
鮮やかでスリリングなリズムチェンジや複雑なコード進行と、どの点をとっても死角のなく
かなり高いレベルでそれらが同居しています。
個人的にはリーダーのDanielのボーカリゼーションが素晴らしすぎて声も出ません。
このころから既に、James LaBrieと共に本当にメタルボーカルのお手本にしたいような
テクニックや正確さです。ただテクニックだけでなく表現力も十二分にある。素晴らしいシンガーだと思います。
本作のコンセプトとしては、3人の登場人物が登場しその人物達が幼少期における
発達課題や葛藤を描いていくという内容になっています。
このコンセプトの続編であるアルバムScarsick(2007)では、この登場人物のうちの"he"の
視点から物語が描かれています。
#1Usedはジャングルビートのイントロ部からドライブ感のあるドラミングで変拍子が脳を直接揺らしてきます。
ラップのように吐き捨てるようなボーカルが印象的なパートでは低音チューニングされた刻みが疾走感を
生み出し、キーボードがクラシカルに鳴る中でのギターソロは線の細く若干のフュージョンっぽさのある
音使いです。メロディックに歌うボーカルはもはやメロウで朗々としています。この対比が最高に素晴らしい。
#2In The Fleshは、クリーンでリバーブの効いたバッキングが空々しく鳴る中で
ハイハットで遊ぶドラムスと共に囁くように優しく歌う前半部(めっちゃポップです!)から、
徐々にへヴィ―になって行きます。中間部でのソウルシンガーのファルセットのような鋭いシャウトは圧巻。
大名曲。ピアノ弾き語りから、キラキラとしたアコギのリードが鳴り終わっていく
アウトロは往年のプログレのようです。
#3Ashes(登場人物のhe, she以外の人物の名前)は、#2から続く、もの悲しげなアルペジオを中心として
暗いメロディに対してキーボードがセンセーショナルに鳴って、激しいシャウトを導いていきます。
#4Morning Earthは、ブルージーなギターリフと静かな中に独特のタメや起伏があるボーカルと
透き通った音色のキーボードのリフが耳に残ります。
#5Idioglossiaは、難解な変拍子に軽々と乗っていく、タッピングの鮮やかなギターリフと、
機械的で直線的なグルーブを支えるベースラインに舌を巻きっぱなしの一曲。これもお気に入り。
ソロでのハーモニクスの透き通った綺麗さやチョーキングの音の安定感、
メカニカルな速弾きでも削ぎ落とされていて無駄な音のないフレージングに感服します。
ハイトーンの美しさは言わずもがな素晴らしい。
#6Her Voicesはミドルテンポのバラードで、声を絞り出すような歌唱と分厚いコーラスが織りなす
前半部から、変態的なタム回しを起点にして5拍子のリフを様々にアレンジしながらメカニカルに弾いていく
緊張感の張りつめた後半部、その緊張感を保ったままオペラティックなコーラスが入ってくるアウトロと
ドラマティックに展開していきます。
#8King Of Lossは、太いべースラインと歯切れの良いボーカルがリズムを切りながらピアノが徐々に
激しいフレーズを弾いていき、強く歪んだギターが轟音を鳴らし若干グロウル気味のシャウトが飛び出したかと
思えばまた淡々とした陰鬱なバッキングに戻り展開していきます。慟哭のようなシャウトは夢に出そう…
#9Reconciliationは#4で登場した印象的なリフを中心として北欧バンドらしい煌めくようなシンセが
ありながらも、へヴィ―なリズム隊はきっちり変拍子で捻くれているので、この構成は彼らならではだと思います。
最後のハイトーンのシャウトは非の打ちどころのないスーパーヘッドヴォイスです。
アルバムの最後を飾る大作の表題曲#12The Perfect Elementは、
SEやウィスパーヴォイスが入り、左チャンネルをギターが目前を通り過ぎるように流れる冒頭、
焦燥感を煽りつつ神秘的なコーラスが中心に定位されるパートを経て、
7拍子のリフに絡めて緊張したアンサンブルが楽しめる中間部、
アルペジオがあり、次第にソウルフルになって行くチェストの響きで聴かせるパートと目まぐるしく展開します。
単純なテクニックという点でも全員が非常にレベルの高い位置にいるバンドと思いますが、
整ったメロディセンスやボーカリストの表現力を生かした曲構成、
インストパートでの激しい掛け合いによるカタルシスと、
一枚のアルバムの中にこれほど緻密な配慮がなされたプログレメタルの作品は、そう多くないと思います。
プログレメタル史に遺されるべき永遠のマスターピースの一つ。

Used

In The Flesh-Ashes

Idioglossia

Reconciliation
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  1. 2013/11/06(水) 01:27:58|
  2. Pain Of Salvation
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Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
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