私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(240)

Album: 演出家出演
Artist: パスピエ
Genres: Pop Rock, Pops

演出家出演


2009年に結成された日本のポップ・ロックバンド。2013年作の1stフルアルバム。
東京芸術大学でピアニストになるためクラシックを学んでいた成田ハネダ(Key, 作曲)を中心として
結成されて以来、下北沢のライブハウスを中心として精力的にライブ活動を行い、
2012年にワーナー・ミュージック・ジャパンからメジャーデビューを果たします。
ボーカル担当の大胡田なつきは作詞の他に、アルバムやホームページのアートワークを
手掛けており、音楽以外の要素でのファン層獲得に一役買っているようです。
彼らについては、Twitterでフォローさせて頂いている方やリンク先のブロガー様の
記事を読んで興味を持ったという経緯があります。
大胡田なつき(Vo)の声質や音作りからして、やくしまるえつこ率いるロックバンドの相対性理論と
比較されることが多いですが、成田自身がコンセプトとしている、
印象主義音楽とニューウェーブ、テクノ・ポップとの融合を試みた楽曲を、
バンドによるアレンジでポップ・ロックに昇華していると捉えられるでしょう。
演奏面では成田ハネダ(Key)の演奏力の高さや音色の多彩さは特筆すべきものがあり、
リズム隊も安定感がありながらフュージョンっぽい軽快さを備えており、
ライブでのアンサンブルも堅いようです。
#1S.Sは、堅めのスネアと音数の多くスラップを絡めた饒舌なベースラインの作る
ソリッドなグルーブに対して、まくしたてるようにメロディを歌う、
甘く浮遊感のある大胡田のボーカルが対照的で、一気に引き込まれます。
シンセは一曲目から極めて自由にフレージングしていて個性的です。お気に入り。
#2名前のない鳥は、左チャンネルを流れる透き通ったギターと、忙しないピアノが派手に鳴る中で、
ノートベンド入った幼げなサビや伸びやかなハイトーンで様々な表情を見せる
ボーカルも聴き飽きないようなトーンマニュピュレーションがされています。
#3フィーバーはイントロから入るシンセの奇怪なリフにプログレっぽさを匂わせながら、
ローファイなギターの刻みと、わざとらしいサビ前のキメといい、
メロディの捻くれ具合と言い、この曲を聴いて只者ではないと感じました。
ギターソロはクサクサですがそれもまた良いです。
#4シネマは四つ打ちのバスドラムと、サウンド全体を包むようなオルガンが際立って聴こえますが、
アルペジオを絡めながらのギターのフレージングは如何にも相対性理論の曲にありそうです。
#5On The Airは、ゆったりとしたイントロからクランチのカッティングと突っ込み気味のベースが
心地よい疾走感を生み出すポップな一曲です。
キラキラしたシンセは弾きすぎずゆったりしたタイム感を残していてこれも良い。
続いて#6くだらないことばかりは、囁くようなコーラスの生々しさと、
脱力した歌唱の柔らかいスローテンポなロックバラードです。
#7デ・ジャヴは、クランチのジャリジャリした音作りやカッティングと、
太いベースの音色、イントロのコード進行から東京事変を意識したようなジャジーな
サウンドに仕上がっています。ボーカルのトーンも若干意識しているのか音域的に椎名林檎っぽく
聴こえるだけなのかは分かりません。
サビでトレモロするギターや短いリフを繰り返すキーボードが個性的です。
#8はいからさんは、如何にも彼らの楽曲らしいメロディラインに意味不明な歌詞を載せ
パンキッシュなドラミングとトレブリーで金属的な音色のリズムギターは歯切れの良いカッティングで
良い仕事しています。ソロは癖が出まくりという感じです。
#9△は、イントロからファンキーなシンセのフレージングと細かいシンバルの刻みが作る
グルーブがあり、キメも複雑で演奏難度は高いと思います。歌詞も言葉数が多く入り組んでいます。
#10ワールドエンドは、ストリングスのように壮大に広がるシンセのバッキングと
透き通ったコーラスワークが印象的ですが、リズム隊は非常にタイトでドラムスは手数が多く
荒くカッティングするクランチの音も綺麗です。淋しげな歌詞も素晴らしい。
#11カーニバルは、ローファイなギターをバックにして始まり、徐々にワウの掛かった
キーボードとへヴィーに叩くドラムスの疾走するパートから、
ロングトーンを起点にしてシンフォニーのテーマのようなフレーズをシンセで弾く勇壮なパートに
なり、(交響曲のような壮大さ)またドラムの手数が増えていきながらも、先ほどのテーマを弾く
キーボードが前に出て来て終わっていくという非常に展開の多い大作です。
どの楽曲もメロディーがキャッチーで、かつ良く練られた構成になっていて、
メンバーそれぞれが影響を受けてきた音楽の空気が見事なバランスで
フュージョンしているように感じます。
歌唱もスタイルを意識した表情、抑揚に富んだもので巧みだと思いますし、
リズム隊も堅い演奏でグルーブもあります。
特徴的なジャケットイラストや、あまり顔出ししないバンドのコンセプト、
そして大胡田の声質やボーカルスタイルで色物に見られるかもしれない不安はありますが、
演奏力は高く、音楽性も非常に興味深いことをしているバンドだと思います。
彼らは現代日本のロックシーンを変えるバンドになるかもしれないと、密かに思っています。

S.S

フィーバー

シネマ

はいからさん

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  1. 2013/12/24(火) 15:10:54|
  2. パスピエ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

もう一度聴いてみます

Systematic Chaosさん
こんばんは

このグループは僕もデビューから追いかけていました。
今回のアルバムは後半息切れ気味なのと、
シティポップ色がやや後退したのが響いて
聴き込んでおりませんでした。

・・・・・・・
むー、そんなにいいのか!
もう一度聴いてみようと思います。
  1. 2013/12/26(木) 18:37:02 |
  2. URL |
  3. GAOHEWGII #-
  4. [ 編集 ]

Re: もう一度聴いてみます

お世話になっております。

パスピエに関してはミニアルバムと本作の
2つを聴いておりますが、今年発売された邦楽ロック作品の中では
一番よく聴いていると思います。
彼らの作風と言うと、シティポップスというよりは
ニューウェーブの印象が強いです。
特に、キーボードの音色の多彩さや、フレーズの端々に溢れてくる
クラシカルな香りがこれまであまり見たことのないプレイスタイルで、強烈に印象に残っています。
  1. 2013/12/27(金) 18:51:36 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

はじめまして

Systematic Chaosさん
はじめまして。
私、にほんブログ村の医大生カテゴリーにて
ブログランキングに参加していますぺしかと申します。

自分は大学の軽音楽部に所属しているのですが
先ほどSystematic Chaosさんのブログを発見しまして
とても興味深く、いくつか記事を読ませて頂きました。

自分が聴く音楽は邦ロックくらいなので
聴くジャンルが偏っている以前のレベルです^^;
ですが、より多くのジャンルに触れたいと思っております。
非常に唐突で申し訳ないのですが
Systematic Chaosさんがお勧めする一枚
いや、一枚に限らず何枚でもおすすめしていただけないでしょうか|д・) ジャンルは何でも構いません
ジャズファンクあたりは少しかじってますが、他に全く触れていません。
もし気が乗りましたらよろしくお願いしますm(_ _)m

今後も更新、楽しみにしています!

この記事にコメントしたのは
自分もパスピエが好きで先日
S.Sの叩いてみた動画をYoutubeにあげたからですw

  1. 2014/02/01(土) 02:15:56 |
  2. URL |
  3. ぺしか #-
  4. [ 編集 ]

Re: はじめまして

ぺしか 様

コメント下さりありがとうございます。
にほんブログ村のリンクからお越し下さったのでしょうかね
宜しくお願いします。
実は私のブログは殆ど医大生らしい日常を描いたような記事は投稿しておらず、
ひたすらにCDレビューばかり書いておりますので、医大生日記ランキングに乗せていること自体どうかと
思っております。

しかしながらこうして同世代の医学科の方が来て下さるということなので、登録は続けようと
思っています。
私自身は軽音部部員というわけでもないですし、楽器も趣味にギターを弾く程度で詳しくはないですので、
レビューは昔の洋楽の日本盤CDに付属していたライナーノーツの形式を採用しています。
またブログも拝見させて頂きます。

というわけでおすすめの作品ということですが、
ジャンルは何でも、ということでしたら、個人的に好きなドラマーの参加した有名作品を、
いくつか挙げさせて頂こうと思います。
フュージョンとソフトロックばかりですが
お気に召していただければ幸いです。

(1) Joy/山下達郎[Live](1989) Genres: Pops, AOR, Funk, Soul, Fusion Dr: 青山純
(2) Toto Ⅳ/ Toto (1982) Genres: Soft Rock, AOR Dr: Jeff Porcaro
(3) Stuff/ Stuff(1976) Genres: Fusion Dr: Steve Gadd
(4) Nightwalker/ Gino Vanneli (1981) Genres: AOR, Progressive Rock Dr: Vinnie Colaiuta
(5) Back To Oakland/ Tower Of Power (1974) Genres: Funk Dr: David Garibaldi
(6) Voice/ 上原ひろみ (2011) Genres: Progressive Jazz Dr: Simon Phillips
(7) Images & Words (1992) Genres: Progressive Metal Dr: Mike Portnoy
(8) Mint Jams/ Casiopea (1982) Genres: Fusion Dr: 神保彰
(9) Extraction/ Greg Howe (2001) Genres: Fusion Dr: Dennis Chambers
(10) Power/ TRIX (2010) Genres: Fusion Dr: 熊谷徳明
  1. 2014/02/01(土) 12:42:33 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

お返事ありがとうございます

お勧めして頂きありがとうございますm(_ _)m
詳しく書いてあるので助かります
しかも自分も好きなドラマーばかりで驚きです。
一通り聞いてみたらまた
感想なりコメントなりをお返しにきますね^^
  1. 2014/02/01(土) 18:07:19 |
  2. URL |
  3. ぺしか #-
  4. [ 編集 ]

Re: お返事ありがとうございます

かなり有名どころそれもフュージョン系の人ばかりですが
そう言えばDave Weckl(Mike Stern Band)もかなり好きですよ
メタル系のドラマーなら
SlayerのDave Lombardoは特に好きです。
Testamentにも一時期いましたけど
あとはScott Travis(Judas Priest, Racer X)も良いですね



  1. 2014/02/01(土) 23:49:54 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

こんにちは

お勧めしてくださったCD、全部は見つけられなかったのですが(3と4)、一通り聴いてみました。
自分ドラマーなので、ドラムばかり耳に入ってしまって曲全体をsystematic chaosさんのようにうまく言葉では表現できないのですが、今後、気になったジャンルの「今日の一枚」を遡って聴いてみようと思います。
その際自分の感じたこととchaosさんのレビューを見比べて、音楽の知識として吸収できたら良いです。

自分も親がよく井上陽水を聴いていたので、山下達郎も耳がすんなり受け入れてくれたような感じです。歌も演奏も、最近の歌ものではあまり聴けないグルーヴがいい感じでした。
ただ、カシオペアもそうなんですが、日本人ドラマーは表拍ばかりに音がおいてあって、裏拍をあまりとらない印象で、外人ドラマーと比べると違ったグルーヴでした。
その外人ドラマーの中でも、dreamtheaterのmike potnoyなんかは音もリズムもしっかりはめてきて、日本人に近い印象(曲の構成とかは全然違いますがw)。それに対して、上原ひろみのsimonとtotoのjeffはとてもグルーヴィーで心地よい演奏をしているように聴こえました。好きなドラマー二人です。上原ひろみもtotoももう少し聴いてみて、コピーもしたいなと。
ドラマーの知識だけでもchaosさんのほうが豊富に思われるのであんまり下手なこといえないのですがw(dave lombardo scott travisは知りませんでした)
思ったことを書かせて頂きましたm(_ _)m
  1. 2014/02/10(月) 16:52:24 |
  2. URL |
  3. ぺしか #-
  4. [ 編集 ]

Re: こんにちは

ぺしか 様

お世話になっております。
お勧め申し上げた作品、聴いて下さったようで嬉しく思います。
リズムの裏を意識したドラミングは、特にシャッフルのリズムの場合非常に大切になります。
Jeff Porcaroの得意とするハーフタイム・シャッフル(16ビートでのシャッフル)のような
ドラミングを得意とする日本人は少ないように、個人的には感じています。
熊谷さんのようなバキバキしたスネアの音色が印象的なドラマー、というのが
日本人のフュージョン系ドラマーの音、と言うイメージです。
バカテク系のドラマーでは他に菅沼孝三(通称手数王)さんやその弟子の川口千里さんなんかもそういった
音です。
もともと16ビートが好きなので、ロック系のドラマーよりもフュージョン系のドラマーの方が
好む傾向にあります。そういうわけで、こういうイメージになってしまっているのかもしれませんけど。
あとはフュージョン系なら則竹さんみたいに細かいハイハットのオカズが多いドラミングも良いですが、
もう少し落ち着いたグルーブのある坂東慧さんも素晴らしいドラマーだと思います。
あとこの間話したDave Wecklは、スネアの音色のコントロールが絶妙なので、Mike Stern Bandの
ライブの動画などでその点に注目してコピーなさったら面白いと思いますよ。
あと忘れてましたが、同じ山下達郎ならライブアルバムの
It's A Poppin' Timeというライブアルバムがありまして、
村上秀一が極めて切れ味の鋭い16ビートやポリリズムを聴かせてくれます。
シルエットやSolid Sliderでのドラミングは見事なので動画サイトなどで
聴かれて見ても良いかもしれないです。
Jeff Porcaroについてもニコニコ動画に教則動画が乗っていますので、
3連系のリズムパターンをどうやって構築するか、特にハイハットのアクセントの付け方や
タムの使い方など詳細に解説していますので、これをコピーするだけでもとっても勉強になると思います。
是非どうぞ。

  1. 2014/02/11(火) 01:08:15 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

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Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは50,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
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