私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(262)

Album: 音楽図鑑
Artist: 坂本龍一 
Genres: Experimental, Electronica, Techno

音楽図鑑


東京都中野区出身の音楽プロデューサー、作編曲家、キーボーディスト、ピアニスト。
1952年生まれ。東京芸術大学大学院修士課程修了。
YMOでの活動だけでなく、結成以前のスタジオミュージシャン
(大瀧詠一、山下達郎、大貫妙子、細野晴臣らの作品に参加)としての活動、
ソロ活動、映画音楽での楽曲提供など、ここで語り尽くすことは不可能に近いほど
幅広い活動をしており、政治思想的な活動も多い彼ですが、以前(といってもかなり前です)
彼のソロ2ndであるB-2 Unitのレビューを書いてから、
他にも80年代のソロ作品を何かしら書きたいと考えておりました。
1983年にYMOを解散(散開)した翌年、1984年作のソロ5th。
テクノやテクノ・ポップ、ニューウェーブ界隈での活躍が知られ、
クラシックを自身のルーツとする彼ですが、
演奏者としてはR&Bやファンクのような黒人音楽的なプレイから
7thの未来派野郎(1986)で見られるようなフュージョンっぽいプレイをしていた時期もあり、
楽曲によっては、沖縄音楽的(YMOの作品にも時折見られますが)であったり
ボサノヴァ的であったり、或いはパンク・ロック的であったりするようなこともあるなど、
作品ごとに非常に振れ幅が大きく、前衛的な、実験的な音楽への取り組み方と考えるよりは、
関心の赴くままに、既存の音楽のスタイルの探究と、作品の中でのその音楽性の統合を
自身の目標として、音楽活動を行っていたように感じます。
本盤を選んだのは、当時坂本がレコーディングを行っていた隣のスタジオで
山下達郎が妻である竹内まりやのソロ作Varietyのレコーディングを行っており、
そのことがきっかけで数曲に達郎がギターを弾いているから、というのもあります。
他にもYMOの高橋幸宏、細野晴臣に、大村憲司、近藤等則、清水靖晃、
ムーンライダーズの白井良明と武川雅寛など多彩なスタジオミュージシャンが参加しています。
立花ハジメがデザインした、ピアノを弾く坂本の影が蟻の形をしているジャケットは、
自分をハタラキアリに喩えて表現したものということです。
タイトル通りチベットの少女のダンスをイメージしたという#1TIBETAN DANCEは、
ハンドクラップとタンバリンの入った複雑なイントロから、
正確無比で抜けの良い高橋幸宏(Dr)のドラムスと、スラップを絡めた歌う細野晴臣(B)ベースという
リズム隊の作るゆったりとしたリズムに、大村憲司(G)のカッティングが随所に絡みます。
メロディ自体は極めてシンプルですっきりとした音です。
至る所にテープの逆回しによるフレーズの構築が見られるのも興味深い所です。
#2ETUDEは、淡々と刻まれるビートに、ジャズというよりはフュージョンっぽい軽快さのある
サックスがメロディを吹いています。キラキラとしたキーボードのリフが前に出てきて
スラップベースでファンキーになったかと思うと、
一気に山木秀夫の叩く4ビートへとリズムチェンジし、また元に戻っていきます。
#3PARADISE LOSTは、John Miltonの同名叙事詩から取った一曲で、
ヤン富田の叩くスティールドラムの堅く弾けるようなレゲエのリズムに、
裏拍でカッティングするギターは山下達郎が弾いています。
ブロウが特徴的なトランペットは、フリージャズ界隈で活躍する近藤等則が吹いています。
ノイズの入ったフリーキーで妖しい魅力を放っています。
#4Self Portraitは、高橋幸宏のストレートな8ビートにピコピコしたシンセのリフと、
達郎の声をサンプリングしたというシンセがメロディを奏でています。
他の曲と比べて非常にはっきりとした進行ですが、音像には浮遊感があります。
#6M.A.Y. IN THE BACKYARDは、手数の多いマリンバの奏でる、丸みのあって生々しい
メロディが左右に振られて広い空間を感じさせるのに対して、
強くリヴァーヴの掛かったシンセと細切れに入ってくるSEが強烈な存在感を
放っています。4分が過ぎたあたりで機械音のようなノイズが入ったりと不安を掻き立てる
ピアノのフレージングも相まって得も言われぬ不気味さがあります。お気に入り。
#7羽の林では、山下達郎のコードカッティングと、古典的なミニマルっぽく配置された
パーカッションが、ドラムスの作るシンプルなリズムパターンと絡みついていて、
リズムに独特な奥行きが出現しています。ポエトリーリーディングに使われている詩は
Peter Barakanが翻訳しているようで、当初から交流があったとは知りませんでした。名曲。
#9A TRIBUTE TO N.J.P.は、ジャズっぽいメロディをサックスとピアノで奏でていく無調の曲で、
N.J.P.は韓国系アメリカ人の現代芸術家であるNam June Paik(1932-2006)を指しているようです。
一部彼自身の声がサンプリングされています。
ミニマルアンビエントの#10REPLICAは、タイプライターの音をサンプリングして作られた
リズムに、種々の管楽器(ホルンでしょうか…)の作るクロマチックなベースライン淡々と
ウォーキングしています。
#11マ・メール・ロワは、子供達の合唱によって流れる主旋律に、コラージュされるようにして
入る近藤等則のサックスとシャッターが閉まる音を高くしたようなSEが時折入ってきます。
筆者には幽玄さのある東洋的なメロディに聴こえます。
#12きみについては、1分30秒近くから自身のボーカルが入り糸井重里の歌詞を歌っています。
フルートの繊細なリフと疾走感のあるベースライン(坂本自身が弾いています)が印象的です。
#13TIBETAN DANCE (VERSION)は、#1のリミックスですが、中間部では山下達郎のあの
テレキャスのジャキジャキしたカッティングが配されていて、耳が気持ちいいです。
以前書いたB-2 Unitや1stの千のナイフのような刺々しい前衛性は若干削がれている感はありますが、
それでも、各楽曲ごとに様々な国、民族の音楽をミクスチャーにしながら、
当時最新鋭のサンプラーをフルに活用された音作りがなされていて、
初めて聴くにも最適なポップさを兼ね備えた大傑作だと思います。
坂本の80年代の各ソロ作品は、毎回音楽的なコンセプト、やりたい音楽の像が
明瞭に現れていて、それを実現するだけの機材とミュージシャンが揃っていた
奇跡の連続であったと考えて、間違いないと思います。

TIBETAN DANCE

ETUDE

Paradise Lost

Self Portrait

M.A.Y In The Backyard

羽の林で 

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  1. 2014/02/26(水) 00:42:16|
  2. 坂本龍一
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

爽やかな沖縄風が染みる

Systematic Chaos様

こんばんは
ものすごく久しぶりに聴きました。
爽やかな沖縄風が疲れた体に染みます。
それに、
あたたかくなった今日あたりにはいい感じ。


仰るとおり聴きやすくて
僕もこれを最初の方に聴いた気がします。
  1. 2014/02/28(金) 21:44:19 |
  2. URL |
  3. GAOHEWGII #-
  4. [ 編集 ]

Re: 爽やかな沖縄風が染みる

聴きやすさと言うと「未来派野郎」も好きです
フュージョンっぽさがあって良いですね
  1. 2014/03/01(土) 02:56:05 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

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Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは50,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
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