私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(277)

Album: Court & Spark
Artist: Joni Mitchell
Genres: Folk Rock, Rock, Pops, Fusion

Court Spark


カナダ、アルバータ州フォート・マクラウド出身のシンガーソングライター、画家。1943年生まれ。
1965年にアメリカに移住し、フォークシンガーとして68年にデビューを果たします。
ミュージシャンとしてだけでなく、自身のアルバムのアートワークを手掛け、
個展をも開くほどの絵画の才能も有しています。音楽的な内容としても、
女性の視点から見た世代や社会に対する鋭い批判や風刺に満ちた詞世界に加えて、
アコギ一本のフォークロックだけに留まらず、
本作のように豪華なスタジオミュージシャンを集めたジャズ・フュージョン色の強いものから、
クラシックやR&B、ロックなどのハーモニーやリズムを積極的に消化した複雑なものが多く、
The Hissing of Summer Lawns(1975, Robben FordやLarry Carlton等が参加)や
Hejira(1976, Larry Carlton, Jaco Pastorius, Tom Scottなど多くのジャズメンが参加した傑作)
のような、フォーキー・ジャズ路線を極めた作品も、今聴いても全く色褪せないクールさ、
先進性を湛えています。本作は1974年作の6thで、彼女の数あるオリジナルアルバムの中でも
最も「売れた」作品で、どちらかというとフュージョンと言うよりはポップスの感覚に近く
聴きやすい作品だと思います。時代を考慮すると、AORやソフトロックの全盛期を迎える、
70年代後半から80年代前半の音よりはまだゴツゴツとした複雑さがまず感じられ、
バックのTom Scott(Woodwinds)やJoe Sample(Key), Larry Carlton(G)の音を聴いていると、
さながらSteely Danのようであり、或いはあのZappaのHot Ratsで叩いていたJohn Guerinのドラムスは
ジャズロックから続く繊細なシンバル捌きと、時にパワフルなスネアのドライブ感あるフィルを
聴かせていて、彼も重要な役割を果たしています。
ピアノ弾き語りから徐々にドラムスが入ってくる#1Court & Sparkは、低音に独特の響きのある
ボーカルの倍音の豊かさや気怠い感じが素晴らしい。
アコギのジャキジャキしたストロークと、Larry Carltonの抑制されながらも歌心のあるギタープレイ
が映えるシングルの#2Help Meは、サビでTom Scottが前に出てきて完全にフュージョンしています。
さりげないキメの複雑さやコードワークの面白さは、ただのポップスとは完全に異質です。お気に入り。
#3Free Man In Parisは、David CrosbyとGraham Nashによるサビでの分厚いコーラスワークが聴き所です。
Jim Hughartのベースラインもフィルが多く心地良いです。左チャンネルを流れるJosé Felicianoの
歪んだリードギターも素晴らしい。
煌びやかなアコギの音がさざ波のように耳を撫でる#4People's Partiesから続いて、
ピアノ弾き語りを中心とした#5Same Situationへとシームレスに続いていきます。
後半に入ってくるストリングスのクラシカルな美麗さは見事です。
#6Car On A Hillは、イントロのキーボードのフレーズやサックスが完全にSteely Danな
空気を感じさせますが、歌メロとつかず離れずフレージングされるWayne Perkinsのラウドな
リードギターや、インスト部分でのドラムスのロックフィーリングなフィルは、
もはやそれまでの彼女のイメージを一新していると言って過言ではないでしょう。お気に入り。
と言いつつ曲の展開は彼女らしさ満載です。
長く力強いピアノのイントロが印象的な、弾き語りにストリングスを加えた#7Down To Youは
箸休め的な一曲です。
#8Just Like This Trainは、ヴォリューム奏法を絡めたLarry Carltonのギターと、
フォーキーなアコギのバッキングの中で、透明なコーラスワークと軽快なホーンが爽やかです。
時々出てくる半音階的な進行が独特な浮遊感を生み出しています。
完全にロックンロールな#9Raised On Robberyは、一層パワフルになったボーカリゼーションと、
ガシガシとリフを弾くRobbie Robertson(The Band, G)も楽しそうにハジけています。
一方で完全にジャズを指向した#11Twistedは、定番のウォーキングベースと4ビートに、
動きの激しく殆どブレスする余地のないメロディを軽々と歌いこなしています。
妖しげなChuck Findleyのトランペットも良いです。
どの作品にも多種多様な音楽からの影響が感じられ、フォーキーで温かいサウンドと、
複雑で個性的なハーモニーの高度な融合に加えて、優れたスタジオミュージシャンの作る
グルーブがアルバム全体を流れている70年代半ばから80年あたりの時期の彼女の作品は、
インテリジェントでグルーブもあり、かつポップさやメッセージ性を失わないという、
ポップミュージックの目指すべき一つの完成形として永遠に評価され続けるのでしょう。

Help Me

Free Man In Paris

Car on a Hill

Just Like This Train

Raised On Robbery
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  1. 2014/03/31(月) 02:37:46|
  2. Joni Mitchell
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

Systematic Chaos様

こんばんは

本作はLadies of the Canyon やBLUEのあとに聴きました。
代表作と呼ばれている割に扱いが地味な気がします。ワーナーのフォーエバーヤング・シリーズでBLUEばかりが推されているのも影響しているのでしょうか。

内容は仰るとおり、ジャズ系ミュージシャンの活躍が効いていて、ポップ。
初期の陰りというか、内省的な部分が薄くなっているのは、
洗練ゆえの犠牲ですね。
  1. 2014/04/03(木) 23:37:28 |
  2. URL |
  3. GAOHEWGII #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

勿論Blueも好きですが、フュージョン/クロスオーバー好きにはこちらの方が受けはいいと思います。
最も彼女のオリジナルアルバムはどれも個々に優れたものばかりなので
どれが一番などとは当然言えませんが。
コードワークなんかはそれまでの作品から劇的に大きく変わったという印象は案外受けませんが、
スタジオミュージシャンの解釈やアレンジによる部分が大きいのかもしれません。
ワーナーのフォーエバーヤング・シリーズについては、存在は知っておりますが
実際今のゆとり世代の「ヤング」達にどれくらい浸透しているかは微妙な気がします。
  1. 2014/04/05(土) 02:29:20 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

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Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
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