私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(279)

Album: There's More To Life Than This
Artist: Ben Westbeech
Genres: House,Drum 'n' Bass, R&B, Neo Soul

Ben Westbeech


イギリス西部、ブリストル出身の音楽プロデューサー、DJ。1981年生まれ。
現在はアムステルダム在住。幼少期からチェロ奏者、ピアニストとしてクラシックの教育を
受けつつ、10歳の時にレイヴ(アシッド・ハウスに近い)のミックステープに出会い、
Dr.Dre(Andre Romel Young, 1965-)が在籍していたヒップ・ホップグループである
N.W.A(Niggaz Wit Attitudesの略)のStraight Outta Compton(1988)を聴いたことで、
ヒップホップやハウスにのめり込んで行きます。
その後彼が自主制作したアルバムを友人が、かのAcid Jazzレーベルを立ち上げた
Gilles Peterson(1964-)の元に送ったことがきっかけとなり、Gillesの新しく設立したレーベル
であるBrownswoodレーベルから第一弾アーティストとして華々しくデビューを果たすこととなります。
デビュー後には2007年に1stアルバムを発売したほか、JazzanovaのアルバムOf All The Things(2008)
(詳しくはJazzanovaの項を参照)のI Can Seeでフィーチャーされたり、DJ MarkyのShameなど
と言った曲に参加したりと、シンガーとしての活動も並行して行っていくようになります。
2007年にはSummersonicで来日を果たし、バンドを引き連れてのライブも行っています。
DJとしてはBreach名義でも活動しています。2011年作の2nd。
今作ではレーベルをBrownswoodから、90年代を象徴するハウス・ミュージックの
レーベルであるStrictly Rhythmへと移籍しての発売となりました。(日本ではP-VINEから)
当初は純粋なハウスの作品に仕上げることも考えていたようですが、
実際にはアーバンソウルとハウスのクロスオーバーと呼ぶべき、ダンサブルかつポップな作風に
仕上がっています。プロデューサーには、ジャズピアニストでもあり、中島愛や坂本真綾、
新居昭乃への楽曲提供を行うなど、日本のアニメソング界隈でも名の通ったRasmus Faber(1979-)を
始めとして、M. J. Cole, Danny J. Lewis, Chocolate Puma, Motor City Drum Ensembleなど、
数多くのプロデューサーとタッグを組んで制作されています。
ただしこうしたハウスのプロデューサーと組んでいるとは言っても、全体の音像は
彼のセクシーで気怠さを内包したボーカルの表現やキャッチ―なメロディも相まって、
極めてソウル的であると考えてよいと思います。打ち込みによるリズムパターンは
あくまでもダンサブルなビートを刻むために機能しており、複雑さは極力避けられています。
#1The Bookはローファイにしたバッキングの中で語りから始まり、キーボードの残響の中で
アコギのストロークとミュートの効いた単音カッティングのリフが流れる中で、
多重録音されたコーラスの厚みもあり、キャッチ―でリフレインするサビのメロディを
心地良く聴かせます。シンプルですが良い曲です。ベースラインも面白い。
一気にハウスっぽさが増したトラック#2Something For The Weekendは、左右に微妙に揺れるような
シンセのリフレインが非常に印象的で、サビに入ってホーンの音が入り盛り上がりつつも、
バックでこれが鳴り続けているために、抜け出せない独特な中毒性があります。これもお気に入り。
吸い込まれそうなシンセ音が迫ってきたり離れたりしながら、左右に振られたコーラスや、
断片化されサンプリングされたホーンの音のようなシンセがパーカッシブな
#3Fallingは如何にもフロア向けの一曲です。
冒頭からひたすら繰り返されるベースリフを中心としてファンキーに進行する#4Same Thingは、
加工されたボーカルの入りファルセットのコーラスがエロティックな前半から、
サビに入ってポップになっていく展開が見事だと思います。
生々しいキックと、浮遊感を感じさせる弱々しい歌唱がFrank Oceanを思わせる#6Strongerは、
リヴァーヴの掛かったボーカル処理と、パーカッションが入って徐々に激しくなっていく
強力なリズムに引っ張られるようにしてサビへと入ってきます。
アコギのカッティングによるごく短いループに、種々の電子音やアフリカンなパーカッション、
ストリングスが張り付いていく#7Infectionsは、後半になって一気にダイナミックに
変化していきます。
生の質感が強いドラムスに、サビではJill ScottのGoldenようなネオソウルっぽい
キャッチーさのあるジャジーな進行が洒脱な#8Sugarは、メロ部分でのバッキングの静謐な
Fender Rhodesの音が個人的には最高に好みです。
全曲に続いてジャジー路線でありつつ強いビートでダンサブルになった
#9Let Your Feelings Showは、2:30辺りから入っていくインスト部が気に入っています。
フィードバックのような音のキーボードや、パーカッシブに鳴る電子音、壮大さを演出する
シンセのバッキングの音のバランスは聴き入ってしまいます。
ブラジリアンなスキャットと大仰なサックスのフレーズ、ジャズ宜しくレガートする
シンバルから始まる#10Butterfliesは、途中からダンサブルに展開していき、フィルの多く
ハイの良く出た特徴的なベースが目立っています。時折入るサックスがフュージョンっぽい
フィーリングを持たせています。これもまた良いです。
#11Summer's Lossは以前当サイトで紹介したFree Soulのコンピにも収録されている
アンビエント色の強い一曲です。(詳しくはFree Soul ~2010s Urban-Mellowを参照)
私自身ハウスに関しては特に素人ではありますが、レコードショップでジャケ買いしてみて
余りにも自分好みの音で驚いております。
アーバンソウルやニューソウルと、ハウスミュージックの融合というコンセプトを、
その通り見事に体現している作品だと思います。
ポップなメロディに強いビート、歯切れのよく巧みな歌唱、輪郭のハッキリとした
打ち込みならではの生々しい音像と合わさって、極上のグルーブと中毒性を有したサウンドに
なっていると思います。素晴らしい才能です。これからも追いかけていきたい若手の一人です。

The Book

Something For The Weekend

Stronger

Sugar

Butterflies
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  1. 2014/04/05(土) 02:18:13|
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Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
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