私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(285)

Album: Industrial Zen
Artist: John Mclaughlin
Genres: Jazz, Jazz Rock, Electronica, Progressive Rock

Industrial Zen


イングランド、ヨークシャー州ドンカスター出身の作曲家、ジャズ/ロックギタリスト。
1942年生まれ。元々はスタジオミュージシャンの出身で、Rolling StonesやCreamのJack Bruceらの
作品のレコーディングに参加し、ソロデビューは1969年のこととなります。
その後、Tonny Williams(Lifetime, VSOP)に見出され、彼のジャズ・ロック指向が前面に出た
バンドであるLifetimeのメンバー(他にはAllan Holdsworth, Jack Bruceもメンバーでした)
として作品に参加することになります。この時期にはJimi Hendrixとのセッションも行っており、
その音源も残されているようです。こういった鮮烈なデビューをきっかけとして、
Miles Davisのエレクトリック期の作品であるBitches Brew(1969, Miles Davisの項を参照),
In A Silent Way(1969), Live Evil(1970), On The Corner(1972), Big Fun(1974),
A Tribute to Jack Johnson(1971)といった知る人ぞ知る作品群に参加します。
その後自身のバンドであるThe Mahavishnu Orchestraを結成した彼は、メンバーとして
Jan Hammer(Key)やBilly Cobham(Dr)らを迎えて、ジャズロックやフュージョンの元祖とも言うべき
サウンド、とりわけ自身がどっぷりと浸かっていたインド音楽の影響が強く打ち出され、
ファンクやジャズのリズムやインプロビゼーションにクラシックの和声を取り入れ、
ムーグシンセサイザーやツインネックのギターやギターシンセサイザーなど機材面でも積極的に
新たなものを求め、ハードロックのような歪んだ音も巧みに取り入れた、
極めて先進的な音像の作品を作り出していきます。
他にもAl Di MeolaとPaco De Luciaとのギタートリオでの活動や、Jeff Beckや
Chic Coreaとのプロジェクトなど、その精力的な活動は衰えるところを知りません。
彼の影響を受けたギタリストは非常に多く、Pat Metheny, Steve Morse, Eric Johnson,
Mike Stern, Al Di Meola, Shawn Lane,Scott Henderson, Omar Rodriguez(Mars Volta)など、
現在も第一線で活躍する数限りないギタリストとりわけフュージョン系の速弾きギタリストの
殆どに影響を与えていると言って過言ではありません。本作はソロ名義で発売された2006年作の18th。
年齢を考えると普通はテクニック的に衰えの訪れる時期のはずなのですが…
むしろ本作はMahavishnu Orchestra活動時の全盛期を髣髴とさせる超絶プレイの応酬を
楽しむことができます。ただサウンドとしてはジャズロックと言うよりもう少し
くだけたハード・フュージョンの印象が強く、ちょうど同時期に活動していたWeather Reportの
音にかなり近いイメージを自分は持ちました。
現代に彼らが降り立ったらこういう曲をやりそうです。
Mark Mondesirのシンセの音もZawinulを意識した部分を感じます。
参加しているゲストも非常に豪華で、
Bill Evans(Sax, Lee Ritenour, Miles Davis),
Gary Husband(Dr, Jeff Beck, Quincy Jones, Mike Stern, Al Jarreau),
Mark Mondesir(Dr,Key Jeff Beck)になんとVinnie Colauta, Dennis Chambers, Eric Johnsonという
豪華絢爛なメンバーを迎えています。Vinnie Colaiutaを始めとしてJeff Beckゆかりの人物が
多いのも納得ではあります。他にも、John Coltrane Bandの一員である名ベーシスト、
Jimmy Garrisonの息子で同じくベーシストのMatthew Garrison
(1970-, Herbie Hancock, John Scofield)や、当時弱冠22歳と言う若さの
Hadrien Feraud(1984, Chick Corea, Billy Cobham, Jean-Luc Ponty, Bireli Lagrene)
という二人の若手ベーシストのプレイは極めて冴え渡っており、
この大御所達のキレッキレの演奏の中でかなり際立っている、というのも忘れてはいけません。
本作の楽曲は、彼自身と関わりのあったミュージシャンや尊敬する人物に向けた曲という
テーマで作られており、曲名にその人物名が登場してきます。
#1For Jacoはやはり、JacoになりきっているHadrien Feraudの、息の長く鬼の如く速い
パッセージを弾きこなしていく緊張感あるプレイと、Gary Husbandのキーボードが
非常に印象に残ります。Bill Evansのソプラノサックスを中心にして難解なキメを連発した後、
長いベースソロへと繋がっていきます。名曲。ジャコもきっと浮かばれるでしょう。
重厚さ満載のVinnie Colaiutaのドラムスで始まり、後半からいつも通りの変態っぷりを
発揮し手数が爆発する#2New Blues Old Bruiseは、Eric Johnson(G)のあの
どこまでも透き通ったトーンのバッキングにMclaughlinが
速弾きしまくるという夢の共演が楽しめます。エフェクトを掛けた不穏なコーラスが、
アルバムジャケットのブルーで不気味な雰囲気を醸し出します。完全なるアンビエントになって、
Zakir Hussainのタブラ(tabla, 北インドの民族楽器)の入り、Mclaughlinのフレーズも
エスニックなものが増え、本領発揮と言う感のある#3Wayne's Wayへとシームレスに移行します。
ここではリズム隊はDennis Chambers(Dr)とTony Grey(B, 上原ひろみ)に変わり、
よりプログレっぽい音へと変わっています。饒舌なシンバルワークがとにかく気持ち良いです。
キーボードのループするフレーズに合わせてスピードアップしていく展開では、
これぞデニチェンというドラミングが聴けてアドレナリンが出まくります。
サックスのフレーズはさながらMike Sternのようです。
#4Just So Only More Soは、2:40あたりからMarcus Wippersbergによる打ち込みが
非常に好みのスネア音で、キラキラとしたシンセと、次第に力強くなるBill Evansのサックスで
盛り上がっていき、激しいジャズロックを鳴らしています。テーマとなるフレーズのバックで、
Matthew Garrison(B)がこれまた多様なフレーズとノリで鋭く切り返しています。
#5To Bop Or Not To Beは、完全なるミニマルテクノのフレーズを繰り出すOtmaro Ruizのシンセが
粒だった音で迫ってきます。その後はMatthew Garisonのベースがこのリフレインを弾き、
ギターやキーボードがこれをどんどん崩してフレーズにしていきます。
間を縫うようにして極限まで音を詰め込んだDennis Chambersの鋭いドラムス、ツーバスが
徹底的な攻撃を仕掛け続ける中で、次々とソロが回されていきます。恐ろしい緊張感です。
インド出身の歌手、作曲家のShankar Mahadevan(1967-)のボーカルが入った一際インディアンな
#6Dear Dalai Lamaは、#2のコーラスが所々で入ってきて統一感を演出しています。
ほぼアカペラで進行したのち、4:00あたりから忙しないタブラが入って疾走します。
サックスソロからデニチェンの激しいドラミングを起点にしてギターソロへと交代します。
#7Senor C S.はCarlos Santanaに向けられた曲なのでしょうが本人は参加しておられません。
この曲でもHadrien Feraudがベースを弾いていますが、やはり存在感が半端ではないです。
Mclaughlinも、後半のギターソロでは本作中では珍しくメロウなフレーズを弾いています。
お気に入り。それにしてもベースが凄すぎる…
#8Mother natureは、Shankar Mahadevanの巧みに音を伸ばしたり倍音を含ませたりした
スキャットをフィーチャーした打ち込みリズムの一曲で、
シンセのリフレインするフレーズが耳に残ります。
全体的にGary Husbandのくっきりとした音色のキーボードが非常に重要な役割を果たしており、
本作のキーパーソンの一人だと思います。
インド音楽からの影響が色濃く出たフレーズやシンセの近未来的な音、
それにフュージョン的で難解な中でも軽快で疾走感のあるリズム、
それらが噛みあって現代のジャズ・ロックとも、プログレとも付かぬ世界観を生み出しています。
彼の長いキャリアの中でも最高傑作の一つだと思います。

For Jaco

To Bop Or Not To Be


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  1. 2014/04/20(日) 22:57:06|
  2. John Mclaughlin
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

Systematic Chaos様

こんばんは

ジョン・マクラクリンは精力的すぎて
活動の時間軸がさっぱり整理できません。

これも知らなかったのですが、
演奏は相変わらず凄いですが
昔の作風に比べると
だいぶキャッチーな作風ですね。

今年は
John McLaughlin & The 4th Dimension
名義でライヴ盤をだしているみたいです。

  1. 2014/04/25(金) 18:39:10 |
  2. URL |
  3. GAOHEWGII #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

そうですね
マハビシュヌや電化マイルスの時代のマクラフリンとはかなり
違った楽曲になっていると思います。
個人的には若手のベーシスト2人がとても気になりました。
素晴らしい才能だと思います。

今年もアルバム出されていたんですか…
本当に凄いですね
大分お年だと思いますが末永く活動して頂きたいものです。
  1. 2014/04/28(月) 16:59:55 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

こんにちは、お邪魔します。
この作品は、このブログを読んでいるだけでききたくなりました。
マハビシュヌファンでありながら、最近はソフトなものも聞くようになりました。
これは聞いてみたいですね。
  1. 2014/04/29(火) 11:30:18 |
  2. URL |
  3. jamken #zBaDG9y2
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

参加しているミュージシャンの豪華さが、
彼のこれまで積み上げてきた無数の功績を物語っていますよね…
衰え知らずの巨星だと思います。
  1. 2014/04/30(水) 23:08:28 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

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Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
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