私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(295)

Album: Sim City
Artist: 平沢進
Genres: Post Punk/New Wave, World Music, Ambient

Sim City


東京都足立区中川出身のシンガーソングライター、ギタリスト、
シンセサイザー奏者、音楽プロデューサー、アレンジャー、CGモデラー。
1954年生まれ。1973年にMandrakeというへヴィメタルバンドを結成し、
Black Sabbath直系のメタルから、古典的プログレを取り入れた楽曲を制作、
学園祭などを中心としてライブ活動を行ったあと、78年頃にMandrakeを解散し、
1979年には、日本を代表するニューウェーブ/ポストロックバンドである
P-Modelを結成します。P-Modelは数回の活動休止を経ながらも2000年まで活動を
続けており、その音楽性は極めて広範に及ぶため、とてもここでは語り尽くすことは
出来ませんが、初期はKraftwerkやXTCに代表されるテクノ・ポップ的な音像
(とりわけリズムに対する実験的なサウンド構築が特徴的です)と、
中期はポップネスから離れて音響系やアンビエントの方向へと接近して行き、
自作機材やサンプリングを多用した音像、
解凍(1991年頃-1993年まで)期からは再びテクノポップへと回帰して行きながらも、
民族音楽とのクロスオーバーなど、1989年に開始したソロ活動の音楽性が
混合された音像、
改訂(1994年頃-2000年まで)期にはライブパフォーマンスに、インターネットを介して
会場に設置されたインターフェースから得られた情報をフィードバックするという
インタラクティブ・ライブと呼んでいたパフォーマンススタイルを確立するなど
していました。この時期の作曲はその多くがメンバーである小西健司によって
行われています。
ソロ活動の中では、様々な民族音楽からの影響が見られる作品を多く
リリースしています。
その中でも本作を初めとするBANGKOK録音3部作(1995年から1998年にかけて録音された
Sim City, SIREN, 救済の技法の3枚のオリジナルアルバム)は、
彼が最も影響を受けたものの一つであるタイ音楽と、
タイの人々で性転換手術を受け女性となった、saopraphetsonの方々の存在や文化に
影響を受けており、本作ではコーラス隊としてアルバムレコーディングに
彼女達が参加しています。
他にもソロではアニメ作品の音楽(DETONATORオーガン、剣風伝奇ベルセルク、
妄想代理人)や映画音楽(千年女優、パプリカ)を制作したり、
戸川純(1953-)を中心とするテクノバンドであるヤプーズ(Yapoos)、
90年代半ばを中心に活躍した声優の宮村優子(1972-)に楽曲提供を行ったりしています。
少し横道に逸れましたが、本作の紹介に移ります。
本作は先ほども述べましたようにタイをテーマとしたコンセプチュアルな作品と
なっており、この統一感やドリーミーな浮遊感のある音像はPink Floydの
The Darkside Of The Moonを思わせる(Echoesは彼らへのオマージュ)部分もありますが、
サウンドの中心となっているのは自身が得意とするシンセサイザーであり、
古典的プログレのイメージというよりは、デジタルなサウンドに特有の生々しさや
鋭さを内包したサウンドであるということが出来ると思います。
数ある彼のソロ作品の中で、楽曲のキャッチーさという点でも飛び抜けている感があり、
初めて聴いた筆者も非常に楽しめました。
題名のSim Cityとは、同じタイトルのテレビゲームと同じように、
「機械運動によって生み出された仮想上の街」という意味合いで考えれば、
Simulative Cityの略と言えるのかもしれません。
壮大なストリングスの中で、語りが入った#1Recallから始まり、
シームレスに#2Archetype Engineへと繋がっています。シンセベースのポコポコした
リズムとノイズ交じりのリズムトラックの中で、日本語訛りの強い英語が独特な
響きを持たせています。動きの大きいメロディの中でファルセットに掛かりながらも、
オペラティックで不気味なコーラスに助けられて分厚い音を作っています。お気に入り。
映画「千年女優」の音楽の元になった#3Lotusは、左チャンネルを流れ、
リズムをキープしながらも饒舌に動くシンセや、日本の笙のような音の
ソロが聴き所です。歌メロはポップです。
#4Kingdomは、東南アジア的な音階の歌メロで、馴染みのないものでしたが非常に
面白いと感じます。ハーモニーもそれに伴って不思議な浮遊感があります。
リズムトラックは不安を掻き立てるような音でこの対比も良い。
#5Echoesは、淡々としたリズム、幾重にも重ねられた電子音の作る波の中で、
アンビエントに進んでいきます。エフェクトの強く掛けられたコーラスが時折出てきて
現実に引き戻されるような感覚に陥ります。
表題曲の#6Sim Cityは、冒頭のジャズっぽくウォーキングするベースと
コーラスから始まり、待ってましたと言わんばかりにウネウネしたシンセと
強めのスネア音が入ってきます。サンプリングによる女性ボーカルが断片化され挿入
され、このシンセ音の作るリズムと、バックを覆い尽くすハーモニーが混沌とした
世界観を演出しています。3:00前後の、ウネウネシンセが前に出て来て、
車が急停車するような、タイヤの擦れるような音の出てくるパートは鳥肌もの。最高。
#7月の影はDark Side of the Moonのことを指しているのでしょう。
シンセベースが動く中で朗々とした歌唱が堪能できます。
#8環太平洋擬装網は、敢えてローファイにしたストリングスのループを繋ぎ、
ディストーションの強く掛かったギター(TokaiのTalboを使っているらしい)
が入ってきます。時折入ってくるエレピの速弾きフレーズも面白い。
相変わらずシンセの低音パートに耳が行ってしまいます。お気に入り。
バラード風の#10Caravanは、伸びやかなロングトーンの歌唱を中心とした
ゆったりした一曲です。歌がはっきり聴こえてくるだけに歌詞の
意味不明さが際立ちます。
ピアノと琴のような音のアルペジオに合わせて語りが入っていく
#11Prologueは、平沢自身のスキャットが少し入りつつドリーミーに終わります。
これまで難解なイメージがあったニューウェーブですが、
本作はテクノポップ的なダイナミズムやシンセベースのグルーブがあり、
聴き易い印象を受けました。

Archetype Engine

Sim City

環太平洋擬装網
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  1. 2014/05/14(水) 15:34:45|
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Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
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