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やさしさの精神病理 読後感

Title: やさしさの精神病理
Author: 大平健
Publisher: 岩波新書

やさしさの精神病理


普段書評など書くことは無いので上手く書けるかどうかわかりませんが、
読後感と言うか、忘備録と言う形でこの本のテーマについて少しお話ししたいと思います。
おそらく最も重要な点は、「やさしさ」と言う言葉の意味する部分が、70年代以降の現代、
とりわけ若者達の間で変化してきているという点です。
それを筆者は、「ホットなやさしさ」(従来的な意味での)と
「ウォームなやさしさ」(新しい意味での、むしろこちらがスタンダードになりつつある)に分け、
比較し、実際の症例(精神病を患っている「患者」とは限らず、その一歩手前の人が多い)を
物語風に振り返りながら、問題点を真摯な姿勢を貫きつつ指摘しています。

ここで言う従来の「ホットなやさしさ」は「絆」(キズナ、ホダシと読ませる)に基づいて説明され、
それを行使するには自己に責任を生じさせ、互いを束縛させざるを得ないという側面が説明されます。
すなわち、「既に傷付いたもの」が互いの傷を舐めあうように相手の気持ちを察知し、同情し、
慰め励ますことと解釈されます。

それに対して「ウォームなやさしさ」とは、傷付いたものがお互いを慰めるという意味合いから離れ、
「お互いが傷つかないような」、予防的な関係を築き上げることが目標とされます。
すなわち、相手を傷つけることを恐れると同時に、自分が傷つけられることを恐れるということが
前提となるため、例えば人に涙を見せたり愚痴を言って「同情」を求めるという行為を極端に避けようとします。
相手の心の中に立ち入っていくことを避けることによって、葛藤を出来うる限り排除し、
円滑な関係を築こうとすることとも考えられます。
これは自分がそうした行為をすることによって、相手に自分の「痛み」を伝染させることが耐えられない、
という心理から来るということです。

この二つの「やさしさ」が共通する点は、いずれの場合も人間関係の潤滑油として用いられている
ということです。どちらの場合も、「やさしい人」とは他人の痛みに敏感な人間を指すという点は共通しています。
ウォームなやさしさを好む若者は、例えば、

(1) 「自分のアドバイスのせい」で相手が傷付くことを恐れるため、他人の相談に対して
具体的な決断を避けようとし、相手の判断を先延ばしさせるか、
「後悔しないように自分でよくよく考えたら」といった旨の発言をすることが多い

(2) (1)のベクトルが自分自身に向くと、決断の結果自分が傷つくことを恐れるので、「優柔不断」となる

(3) 「ホットなやさしさ」を表現する大人、自分の本当の気持ちを探ろうとする人物に敏感に
反応し、(たとえプライベートな話を敢えてすることで好意を示して距離を詰めようとする意図であっても)
「無神経な人」と判断して避けようとする

(4) 自分に悩みが生じた場合でも、周りの「やさしい人」を困らせてはいけないと考えるので相談できない

(5) 発言に「とりあえず」などの婉曲表現を付けることを好み、自分の全ての発言や意見が、
あたかも仮初のものであるかのような言い方をすることで、もし自分が間違っていた時に言い訳としようとする

(6) プライベートの趣味や嗜好に対しても、自分が本当にそれを好んでいるか、楽しんでいるかを考えることを
避けようとするため、我を忘れて夢中になることができない

(7) 自分や他者が「これから傷つきそうな」ことに関しては敏感であるが、既に傷ついている他者に対しては
極端に鈍感であることが多く、「イジられ」いる人を見ても、
その人が傷ついているのではないか、とか或いは、
「イジっている」人は以前に憤慨することをされ傷付いたので仕返しているのではないか、
などとは考えない

そして、最終章の中で筆者は大きな問題提起をします。
『それほど傷付きやすい彼らの「自分」とは、いったい、どんなものなのでしょうか?』

その後は「漠然とした自己」を探究するためにプラグマティックな行動に出る、
というパラドクスを端的に描写する例として、
いわゆる「自分探しの旅」をする若者の具体的なエピソードが記されています。

本書のテーマではないため、
自己や自己同一性について徹底的に議論されることはありませんが、
それに関して重要な点は二つあります。

(1) 現代的な、「ウォームなやさしさ」を求める若者が想定する「自分」とは「とりあえず」のものであること
(2) 具体的な形を持った「自分らしさ」を「とりあえず」手に入れることに強烈な渇望と焦りを抱いていること

筆者は「自分探しもほどほどに」と柔らかなアドバイスを残すに終始しています。

このやさしさ(錯誤行為への極端な恐怖)や、自我への病理的な探究行為、意志は、
肥大化する自我と、強烈な自己中心主義、歪んだ自己愛の産物であるという可能性を、自分は感じます。

この辺の内容は、ユングの「自我と無意識」の中で語られているような内容と、
ダブる部分が大いにあるのかもしれないと、思ったりします。

現代に溢れている「やさしさ」が生み出す自己矛盾と、「やさしい」若者達の苦悩を
中立的に、分析的に描写した素晴らしい著作だと思います。

以上駄文でした。

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医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
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