私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(325)

Album: 暁のラブレター
Artist: aiko
Genres: Pops, Blues Rock

暁のラブレター


大阪府吹田市出身のシンガーソングライター。1975年生まれ。
大阪音楽大学短期大学部卒。小学校高学年の頃から一時期を親戚の家で過ごし、
この時期から歌手を志すようになります。高校の在学中にピアノを弾き始め、
1995年にはヤマハが主催している音楽コンテストである第九回TEENS' MUSIC FESTIVALに
出場し(同じ回には椎名林檎も出場していました, 詳細は椎名林檎の項を参照)、
グランプリを獲得しています。
(TEENS' MUSIC FESTIVALはかつてフォークソング歌手を多数輩出してきた
ヤマハポピュラーソングコンテストを引き継ぐ形で1987年に始まったもので、
NICO Touches the Walls, 絢香, 中村中, 椎名林檎, 中田ヤスタカ, 田渕ひさ子
阿部真央, cinema staff, BUMP OF CHICKEN, 奥華子, たむらぱん
DIRTY OLD MENなど数多くのミュージシャンが出場しています。)
短大卒業後の96年にはFM osaka"COUNTDOWN KANSAI TOP40のパーソナリティとなり、
自主制作盤を制作するなどしており、同年のヤマハによるコンテストである
The 5th MUSIC QUEST JAPAN FINALで椎名林檎と共に優秀賞を受賞します。
こうして97年にはポニーキャニオンのプロデューサーに見いだされ、
インディーズデビュー、98年にはメジャーデビューを果たします。
ヒットのきっかけとなった2ndの桜の木の下は週間オリコンチャート1位を獲得、
ミュージックステーションへの出演も果たして一気にスターダムを駆け上がりました。
その後はCM提供曲も増え、本作は2003年作の5thですが#3アンドロメダは
グリコ乳業のCMソングに起用されています。
彼女の作曲センスは独特なものがあり、メロディライン、とりわけメロ部分などの中に
ブルーノートスケールの音が入っていることが多いこと、
クロマチックな上昇、下降のフレーズを取り入れたり、コードトーンから外れた
音をロングトーンでのばしたりフレーズの頭に持ってきたりという部分で、
少し聞いただけで彼女の曲らしいと分からせるフレーズの特徴になっています。
ハーモニーでもモーダルインターチェンジを含めたノンダイアトニックのコードの多用が
印象的で、歌詞とメロディ、ハーモニーとの対応が極めて高いレベルで
(間違いなく意識的に)行われており、そういった意味で作詞作曲家として
自己模倣に陥りがちな感はありますがかなり個性のある人物なのだと思います。
彼女の作品の魅力としてもう一つよく言われるのが、
バッキングを務める佐野康夫(Dr, 1965-)と須長和広(1981-, B), 石崎光(G, 1974-)
といったスタジオミュージシャンの演奏のダイナミズムとグルーブで、
ロック寄りの楽曲でも、ポップス寄りのキュートな楽曲でも、
非常に端正で無駄な音のない、艶消しの魅力があると思います。
本作のタイトルは、暁=深夜から夜明け前の時間に勢い余って書いたラブレターの
ような詞世界というテーマで制作されており、直接的な表現、口にはし辛いような、
しかしながらリアルな感情に寄り添うような感触のあるものに仕上がっていて、
彼女の音楽の真骨頂とでも言うべきサウンドアレンジやメロディとのバランスが
図られた作品となっています。
滑らかなオブリガートが心地よいピアノバラードの冒頭部から、ハードなロックサウンドへと
鮮やかに変化していく#1熱、そのままシームレスに、ジャリジャリした歪んだギターの
カッティングにギターソロ、ピアノのグリッドサンドなど、派手なポップロックの
#2彼の落書きへと繋がっていきます。これも後半にかけて鋭さを増していくドラムスが
グル―ヴィーで素晴らしい。ラストサビへのジリジリと抑揚を付けた盛り上げ方、
転調で曲はクライマックスへと向かっていきます。最高。
シングル曲の#3アンドロメダは、メロ部分では、音の隙間を埋めるように繊細に
配されたストリングス、細やかなシンバルワークの印象的なドラムスをバックにして
右チャンネルのアコギとオルガン、左チャンネルのピアノの低音でゴリゴリと進んでいき、
サビのいつも通りうねったメロディラインと譜割りはお家芸という感があります。
アウトロはブルージーなギターソロです。お気に入り。
フィリーで煌びやかなストリングスとタメたリズム隊がソウルフルな
#4ふれていたいは力強いハイトーンの中に時折現れる儚げなファルセットの歌唱が堪りません。
#5夢のダンスは、クラシックロックのテイストがあるギターのバッキングと
緩やかなブラスサウンドで牧歌的な雰囲気のある一曲。
エレピとスキャット、鋭いフィルインを起点にして始まる#6蝶々結びは、
フュージョンライクな疾走感のあるイントロから、ワウの掛かったリードギターの
印象的なメロ部分、そしてブラスとストリングスで派手に味付けした
ポップなサビと、多彩なアレンジが面白い一曲です。これもお気に入り。
この曲もサビのメロディに強烈なノートベンドや、テクニカルなファルセットへの切り替えが
取り入れられています。
ストレートなグルーブのあるソリッドなロックチューン#7ラインは、サビメロに
歌謡っぽい湿り気を感じられて、パンキッシュなサウンドの中で映えています。
ソリッドなスネアやハイハットにポコポコしたタムがスウィンギーなドラムスと、
しっかりとサウンドを支えながら自在にうねりをみせるベースプレイに
思わず耳が行ってしまう#8帽子と水着と水平線は、曲後半のフリーキーなピアノソロから、
速弾きのベースソロへと向かっていく展開がクールです。
ハネたピアノのバッキングが印象的なロッカバラード#9すべての夜に続いて、
#10えりあしは、シンプルなビートとアコースティックなサウンドが、リアルで、語り掛けるような
ストレートな歌詞を引き立たせています。お気に入り。
#11白い服黒い服は、再び楽しげなブラスロックサウンドへと変化していきます。
パーカッシブなホーンと、キメの多い構成がキュートです。
中間部ではウォーキングベース、トレブリーなギターソロがあり、
ドラムとスキャット、ホーンのリフが流れてフェードアウトします。
右チャンネルを流れるノイジーなストロークから始まり、
カッティングを中心にして疾走感たっぷりに進行していく12風招き、
そして最後はピアノ、アコギにストリングスを加えたバラードの#13天の川で終わっていきます。
サウンド全体の端正さ、個性的なメロディラインとリズム、巧みに計算されたボーカルテクニック、
迸る熱情を感じずにはいられない詞世界がありながら、デビュー間もないころの、
ある種のアクの強さが適度に抜けた感もあって、完璧に近いバランスに仕上がっていると思います。
紛うことなきJポップの名盤の一つだと思います。愛聴盤。

彼の落書き

アンドロメダ

蝶々結び

えりあし
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  1. 2014/08/15(金) 22:54:45|
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Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
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5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
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ハードフュージョン, アシッドジャズ,
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ジャズロック
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オルタナティブヒップホップ
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ライブラリは50,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
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