私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(328)

Album: Electribal Memories
Artist: Electribe 101
Genres: House, Breakbeats, Electronica

electribal memories

1980年代後半から90年代初頭に活動していたイギリス、バーミンガム出身
(女性ボーカリストのBillieはドイツのハンブルグ出身)のハウス、
エレクトロニカユニット。メンバーはBillie Ray Martin, Joe Stevens, Les Fleming
Roberto Cimarosti, Brian Nordhoffの5人組で、マネージメントを行っていたのは
Bros, Pet Shop Boys, East 17などで知られるTom Watkinsです。
ユニット名はソビエト連邦制の冷蔵庫の名称と、Roland社のSH-101シンセサイザーの
名前を結合させて名付けたようです。
ファーストシングルはヒットに恵まれませんでしたが、Eric Robinsonとの
フィーチャリングシングルであったHey, Music Lover(S'Express Recordより発売)が
トップ10入りを果たし、これをきっかけにしてMercury/PolyGram Recordsと契約、
続いて発売されたシングルはUK Singles Chartでは32位とヒットとなります。
こうしてリリースされたのが1990年作の1stである本作です。
しかしながらメンバーの方向性の違いにより、2ndアルバムがレコーディングされることは
なく、1992年にグループは解散してしまいます。
その後Martinはソロ活動へと移行し、ゴスペルなどの影響を色濃く見せる
Deadline For My Memoriesなどのソウルフルなアルバムを制作し、
バンドはthe Groove Corporation(Network Recordsより、バーミンガムを中心とする
エレクトロニカ系のレーベルで、デトロイトテクノのイギリスへの輸入や
ハードコアテクノの隆盛に関わったことで知られている)と名前を変えて活動を続け、
よりリズムコンシャスなダブへと方向性を変えていくこととなります。
本作はソウルフルなハウスミュージックとは言えど、アンビエントに近い
浮遊感のある音使いが各所に見られ、Martinのソウルフルなボーカルが
このトラックの中で生々しい魅力を放っています。
なお、筆者が所有しているのは90年発表のCDではなく、
98年にリイシューされたバージョンで、Talking With Myselfのリミックスが
収録されたものとなっています。
#1Talking With Myselfは、ノイズ交じりの短いベースリフを中心としながら、
ホルンのような音のシンセが同じリフを変奏、無機質なビートの中でコズミックな
加工ボーカル、サンプリング音源が散りばめられています。Martinのボーカルは
語り掛けるようであり、後半ではポエトリーリーディングも入っています。
得も言われぬ、不気味で頽廃的な雰囲気があって素晴らしい。お気に入り。
#2Lipstick on My Loverは、短くミュートされたホーンとグロッケンベルのような
音色のシンセ、太くサスティーンの短いシンセベースでファンキーに、
ダンサブルに展開していきます。男性コーラスの温かみのある音と、
コズミックでブルーな深海を思わせるようなシンセのバッキングの対比が鮮やかです。
後半ではエレピの饒舌なリードプレイが曲を引っ張っていきます。
ここまでくるとハウスというよりはかなり人力のグルーブ、
といった感があります。これもお気に入り。
#3You're Walking (Peeping Tom Mix)は、動きの少ない16ビートのリズムトラックに
スペイシーなシンセと電話の発信音のような音のSE、安っぽいストリングス系の音が
被さっていきます。
左右に振られたポコポコした高音の電子音と四つ打ちのキックがダンサブルな
#4Inside Outは、テーマとなるメロディのミニマルな繰り返しを盛り上げる形で
進みます。音数の少ないトラックが、このハイハットやポコポコシンセなどの
パーカッションサウンドを目立たせていて、この瑞々しい定位感には独特の
中毒性があって堪りません。お気に入り。
冒頭から朗々としたハイトーンボーカルが冴え渡っている#5Diamond Doveは、
うねるシンセベースとダンサブルなビートがあり、ビブラフォンのような音のシンセが
虚空を舞っています。他の楽曲でも使われていますが、キメのところで入る、
この派手な音のシンセは、なんて表現(弦の音を混ぜて作ってるだけか)すれば良いのか…
決まった名称があるなら知りたいです。ともかくいい曲です。お気に入り。
ヒップホップ的なソリッドなリズムトラックと、アーシーなコーラスが配置された
イントロから始まる#6Heading For The Nightは、本作の中でもとりわけポップな
一曲で、ストリングスのダークな雰囲気にはニュージャックスウィングに
近しいものを感じます。お気に入り。
テンポアップしてハンドクラップが入り、さらにダンサブルになった
#7Tell Me When The Fever Ended、そして静謐なピアノループとコンガなどの
パーカッションが鳴る中で歪みの掛かったシンセが荒々しくバッキングしている
#8Talking 2へと続いていきます。後半ではドラムマシーン主体になりますが、
ピアノの長いソロがあって飽きさせません。
表題曲の#9Electribal Memoriesは8分超えの長尺曲で、Martinのポエトリーリーディングを
中心としています。後半部では東洋風のシンセのフレージングもあり、
ニューウェーブっぽい香りも湧き立っています。
ここからはボーナストラックとなっており、
#10Talking with Myselfは#1と同じトラック名となっていますが、
実際には1977年にシカゴでオープンしたWaterhouse clubにDJとして招かれて以来、
このWaterhouseで掛けられていたディスコやシンセミュージック、ロックの
ミクスチャー音楽としてのハウス誕生の一端を担うことになり、
97年にはGrammy Award, 2005年にはDance Music Hall of Fameに選ばれたプロデューサーの
Frankie Knuckles(1955-2014,90年代にはMichael Jackson, Luther Vandross,
Diana Ross, Eternal, Toni Braxtonなどのリミックスを手掛けた)その人による
リミックスとなっています。
#11, #12はそれぞれ98年の時点で作られたリミックスであるため、
音質も改善されており、より生々しい音で楽しむことができるようになっています。
レコードショップのセールで偶然見つけた作品ですが、
ニュージャックスウィングや一般的なハウスの作品にとどまらず、
こうしたハウス/ニューウェーブサウンドを取り入れたソウルは、80年代末から
90年代初頭の流行(Lisa Stansfield, Karyn Whiteの項も参照)だったようですが、
今から見ると、ネオソウルやダブステップなどのモダンな音楽に対して見てみても
また違った魅力があり、新たな発見があるように感じます。隠れた名盤。

Talking With Myself

Lipstick On My Lover

Inside Out

Diamond Dove

Heading For The Night
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  1. 2014/08/17(日) 23:30:44|
  2. Electribe 101
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

Systematic Chaos様
こんばんは

確かにハウスを取り入れたソウルですね。
スカスカで、テクノ要素が強い感じが新鮮でした。ベタなアレンジも和みます。
  1. 2014/08/22(金) 17:14:24 |
  2. URL |
  3. GAOHEWGII #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

こういうチープな音になったのは時代的なことを考えると
必然という感じもしますよね
Protools世代にとっては、むしろこういう音の方が新鮮に感じる部分は多いかもしれません
  1. 2014/08/30(土) 01:54:06 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

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Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは50,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
自分のライブラリと向き合ってみると、
相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
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