私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(357)

Album: Jarrod Lawson
Artist: Jarrod Lawson
Genres: Neo Soul, Blue-Eyed Soul, R&B, Jazz/Fusion

Jarrod Lawson

アメリカ、オレゴン州ポートランド近郊モララ出身のシンガーソングライター、
マルチプレーヤー。1976年生まれ。2014年作の1stフルアルバム。

自宅兼レコーディングスタジオを持ちプロのスタジオミュージシャンであった父の影響で、
2歳の頃からドラムス、12歳からピアノを弾き始めます。
幼少期に、膨大であった父のレコードコレクションの中からDonny Hathawayや
Stevie Wonderと言ったニューソウルを発見し没入していった彼は、10歳でSongs In The Key Of Lifeを
聴いてシンガーソングライターになることを志します。他にも、Maurice RavelやFrederic Chopinなどの
クラシック音楽に加えて、Oscar Peterson, Chick Corea, Erroll Garnerなどといった
ジャズピアニストのリーダー作品、或いはCommon, The Roots, Q-Tip, Mos Defといったような
Native Tongue~オルタナティブ・ヒップホップを聴き漁っていたということらしく、
複雑に構築されたハーモニーの感覚はその辺りから来ているように感じます。

高校卒業後はオレゴン州オレゴンシティにあるClackamas Community Collegeにて
音楽を学び、教会の聖歌隊で歌いつつ、地元のバンドでピアノボーカルとして活動します。
A New Groove, +SoulMates-といったグループでの活動が確認されているようです。
音楽活動は2009年頃から本格化し、Good Peopleと言うバンドで、Christopher Frisen(B),
Farnell Newton(Trumpet), Joshua Corry(Dr), Chance Hayden(G)という5人組で活動していました。
本作でも、Haydenを除くメンバーが録音に参加しており、ライブツアーもJarrod Lawson & Good People
という名義で行っているということだそうです。

本作に収録されている楽曲は、Lawson自身が10年間ほどの間に書き溜めてきたものを
纏めているということで、2012年には曲が完成、そこからさらにエンジニアに
Prince/Diamonds & Pearls, George Clinton/Smell My Finger, 日本国内ではPink Martiniとの
コラボレーションアルバムである由紀さおりの1969, The TimeのPandemoniumなどを手掛けた
David Friedlanderを招き、マスタリングにはCarole King/tapestry, Michael Jackson/Thriller,
Steely Dan/Aja, Prince/Purple Rain, Dr.Dre/Chronicといった知る人ぞ知る傑作に
数多くかかわってきたBernie Grundmanが参加することとなったということからも、
如何に彼が期待されているか、ということが窺われます。

こうして制作された本作は、2014年の5月に自主販売と言う形でひっそりと世に出される
こととなりますが、当初アメリカ国内ではあまり目を付けられず、
ブレイクのきっかけとなったのはイギリスの雑誌Echoes Magazineに取り上げられた
ことでした。その後に自主販売分は完売し、イギリスのソウル系のレーベルである
Dome Recordsと契約を結び、イギリス国内のラジオSolar Radioでもパワープレイ
されるなど人気を博しています。

Lawsonはここ数年間、毎年6月の頭頃にメリーランド州、ワシントンD.C.の郊外にある
GaithersburgColumbiaで行われているAC, ソウル、ジャズを中心とした
巨大な音楽フェスティバルであるCapital Jazz Festに参加しており、
今年のステージではErykah Badu, John Legendのステージで前座を務めています。
余談になりますがその他にも今年はChaka Khan, Incognito, The O'Jays, Michael Franks,
George Dukeなどのビッグネームが参加しており、筆者も個人的に行ってみたいと思うところです。

ということで前置きが長くなりましたが、本作はLawsonによるセルフプロデュース作品で、
先ほども話しましたGood Peopleのバンドメンバーによる生演奏での録音です。
ハーモニーにはジャズからの影響が色濃く、一聴するとAja, Gaucho期のSteely Danや
Donald Fagenのソロに近いようなサウンドと言うことになると思います。
インスト部分もそれなりに長く、ギターソロ、ピアノソロなどもかなり往年のSDを意識したものになっています。
特筆すべきは非常に緻密なコーラスワークで、ゴスペル直系の泥臭さ、力強さがありながら、
あのTake 6を思わせるような複雑なハーモニーを完璧に演出しています。
リードボーカルは、少しキーが高めで、絞り出すようなブレスリーなファルセット、
ビブラートの感じが堪りません。曲によっては自らラップを披露する楽曲、
ドロリとしたファンクやラテンのリズムを取り入れたものなど、多彩で飽きさせません。
録音もクリアで分離が良い音だと思います。

自身の音楽を宇宙への旅とまで表現してしまうポエトリーリーディングから始まる
#1Music and Its Magical Wayは、後の曲にも出てくるベースリフを中心としながら、
無機質なハンドクラップの作るリズムの中で幾重にも重ねられたコーラスの
スペイシーな感覚が堪りません。アウトロのピアノソロも素晴らしい。
ラテンフュージョンと言った趣の強い#2Sleepwalkersは、トレブリーなベースのフレットレスのような
角の取れたトーン、フルートのリードプレイがスピード感を生み出しています。
ファルセットによるコーラスで複雑なハーモニーを構築していくスタイルは一貫しています。
トレモロを効果的に用いたブルージーなピアノソロはスキャットで締めくくられます。
スキャットとベースのユニゾンがあった後は、パーカッションの音が
一気に分厚くなっていきます。お気に入り。
ピアノの妖しげなコードヴォイジング、端正で乾いたドラムスが冒頭からSteely Danを強く思わせる
#3He's Thereは、彼の得意とする美麗で複雑な一人多重コーラスがそこかしこに敷き詰められています。
曲後半では歌唱と言うよりは殆どラップのスタイルへと変化していき、
リズムはラテンっぽさを増して行きます。ドリーミーなコーラスがあり、
テクニカルなギターソロで曲はクライマックスを迎えます。最高。
更にリズムコンシャスになったジャジーな#4Walk In The Parkは、#3からの空気をそのままシームレスに
引き継ぎながら、コーラスの質感はよりソウル寄りとなっていて、
リズムにはラテンのフィーリングがあります。コーラスで素早いコードチェンジを
繰り返すキメは鳥肌ものです。お気に入り。
鳥のさえずりがSEとして取り入れられ、神秘的なストリングス系のシンセ、
エレピが絶妙に左右に揺れながらコードを鳴らす異色な#5All That Surroundsは、
ベースラインがメロディアスで、派手なフィルを弾き倒しています。ベースソロもクールです。
#6Think About Whyは、アフリカンなパーカッションを積極的に取り入れており、
キメを連発するパートではやはりSDのようなコーラスが流れます。
ピアノソロは正確無比でストレートなグルーブがあります。
その後はスキャットとギターのユニゾンと、George Bensonのようなパフォーマンスまで見せています。
一瞬インダストリアル系の音かと思わせるようなシンセの音の波が押し寄せてくる
#8Spiritual Eyesは、歌が入るとエレピでの弾き語りとなり、なんとそこから派手な四つ打ちの
リズムパターンと、サスティーンの短いベースへと変化し、ファンキーなエレピソロが入ってきます。
ダンサブルなリズムをバックにしながら、得意のコーラスが炸裂するという面白い一曲。お気に入り。
ワウの掛かったエレピとスキャット、ハーモニカの絡みつくイントロで一気に掴まれるファンキーな
#9Together We'll Findは、タメたドラムスとミニマルなリフをひたすら繰り返すベースで
ゴリゴリと押していきます。ハーモニカのフレージングやハーモニーの感じはこれが一番
Stevie Wonderに近い一曲だと思います。最高。
他の曲の構築美に比べて、ピアノ弾き語りによるシンプルな一曲#11Everything I Needは、
先ほど紹介したDome Recordsから発売されているSoul Loungeシリーズのコンピレーション、
Soul Lounge11に収録されています。彼の温かくハリのあるバリトンボイスを堪能できます。
こうして聴いてみると、ヴィヴラートの掛かり方など、Stevieにかなり似ている部分があります。お気に入り。
#12Gotta Keepは、フランジャーの掛かった懐かしい感じのエレピがシンプルなリフを弾き、
バリバリしたエフェクトの掛かったベース、アナログレコードのような質感が特徴的なホーンの
フレーズがどことなく和を感じさせるフレーズを聴かせているネオソウル寄りな一曲です。
しかし彼の見事なコーラスワークが入るとどことなくチープな感じのあるトラックにシルキーな
感じが加わって素晴らしいです。最高。

昨年出会った新譜の中でもかなり強くお勧めしたい、アーバンで徹底的に構築されたハーモニー、
ネオソウルっぽい質感がありながらも「生演奏」のグルーブ、
Take6ばりの巧みなコーラスワークが堪能できます。愛聴盤。

Sleepwalkers

He's There

Think About Why

Gotta Keep
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  1. 2015/01/04(日) 02:42:37|
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Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
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