私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

今日の一枚(376)

Album: Ruth
Artist: Ruth Koleva
Genres: Jazz, Fusion, R&B

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ブルガリア、ソフィア出身の女性R&B, ソウルシンガー。1990年生まれ。2014年作の2ndフルアルバム。
重量挙げの銅メダリストとなり、オリンピックチームのトレーナーとして、色々な国を
移り住んでいた父に連れられ、海外で幼少期を過ごした彼女は、当時から
Marvin Gaye, Ella Fitzgerald, Nat King Coleといったような古典的なソウルミュージックに
救いを求めるようにしてのめり込んでいき、ミュージシャンとして活動することを志すようになります。

アメリカに渡り、Hollywood Pop Academyで音楽を学んだ後、帰国してローカルでヒップホップ、
ソウルグループなどでボーカルを務めるようになって行きます。
そして弱冠19歳で自主制作盤によるデビューアルバム、Within Whispersを発表します。
翌年の2012年にはFuture Street EP, そして昨年に本作を発表するに至ります。

2011年にはBobby McFerrinとのコラボレーション、ロサンゼルスではStevie Wonderの前でパフォーマンス
するなど注目を集め、2012年にはブルガリアラジオアワードでGRAZIA Woman of the Year awardと
Best Female Singer awardを最年少で受賞することとなります。

本作は、発表後Mark Ronson, Richard Bona, Frank McCombなどから注目され、
プロデュースはオランダ出身のVincent Helbers(Key, Seravince, Flowriders)が担当、
バッキングには4Hero, Jose James, Flying Lotusなど、ブラックミュージックの影響が
色濃くモダンな、エレクトロソウル、ネオソウル、ソウルジャズ、エレクトロニカ界隈で
活躍するドラマー、Richard Spavenなどが参加しています。

シンガーとして彼女が直接的に影響を受けていると目されるのは、Erykah BaduやJill Scottのような
ネオソウル~オーガニックソウル関連の人物でありましょうが、
彼女の囁くような歌声の甘さや柔らかさ、すっきりとしたアクのない感じは、
楽曲にカラフルさとポップネスを付加しており、他のエレクトロソウルの作品よりも聴きやすいと思います。

Richard Spavenの叩きだすリズムパターンは、例えば有名どころではChris DaveがRobert Glasperの
プロジェクト、Robert Glasper Experimentの中で行っているような手法に近い方法で構築されており、
わざと過剰にモタらせたり、ブレイクビーツ的なフレーズの作り方を人力で真似るような手法を用いて、
リズムにヨレや偏りを与えることによって、リズムの中心が見えにくくなり、
独特な浮遊感を醸し出すことが出来ています。
ハーモニーは複雑に入り組んでいて、以前私的名盤紹介で紹介した中では、
Espelanza Spaldingの作品に近いような、音数を削れる限り削って作りこんでいます。

#1What Am I Supposed Toは、Weather Reportのようなジャズロック~フュージョンライクな
冒頭のテーマから、ドラムベースと電子音となり、音数少なく展開していきながら、
徐々に音が増えていく展開がクラブミュージック的な一曲です。ドラムの絶妙なヨレ感、
高音の囁くようなコーラスワークも素晴らしいです。最高。
#2Freak And Flyは、浮遊感たっぷりなエレピ、コーラスの徐々に下降していくコードワークと、
あえてリズムマシンのようなフィルを特徴としたドラムスに、
サスティーンの短くスラップを中心としたベースラインが結びついたやはりフュージョン色、
リズムには70s~80sのパターンミュージック的な粘りのある一曲。最高。
#3Turn This Aroundは、ピコピコの電子音中心なアンビエントなイントロから、冷ややかなボーカル、
ぶっといベースリフと乾いて無機質なドラムに暖かいアコギのアルペジオが対照的で面白いです。
D'Angeloの楽曲を思わせるような極端にレイドバックしたリズムと定位を変えながら
蠢くシンセが妖しげな#5Dissonantもお気に入り。
続いてフュージョン路線に戻った#6Clarityではより端正なリズムワークと複雑にテンションの
絡んだギターのバッキングがありつつ、サビでは耳元で囁いているような瑞々しいコーラスの
重なり具合に得も言われぬ気持ち良さがあります。
#7Betterは、遠くで鳴るクラッシュシンバルとひたすらに繰り返されるコーラス、
電子音によるかなりミニマルな作りの一曲。ボーカルのメロディはこれが一番R&B的と言えると思います。
#8Goneは、人力ブレイクビーツとでもいうべきリズムチェンジの激しく入り組んだドラムパターンに、
ファミコンシンセによるシーケンシャルなリフ、少し歪ませたベースはブリブリとしており、
後半ではストリングスとフルートが出入りしながらStaminaによるラップパートへと突入します。お気に入り。
ニューウェーブ的な、東洋的な響きのあるシンセのバッキングに男女ツインボーカルが
シンプルに重ねられた#9Dizzy Love Affairは少し変わり種な一曲。
#11 4 Amは、ベースリフとユニゾンするスキャットのイントロから始まり、そのパターンを
モチーフにしながらベースリフと艶やかなボーカルと最低限の電子音のみでモーダルに展開し、
サビではスウィートソウルのような感覚があるサウンドになっています。これもお気に入り。

リズム構築の面白さと言う点だけでも十分聴いていて楽しい一枚ですが、
音数を極限まで削りながらコーラスや電子音の定位の心地よさ、意表を突いたコードワーク、
そして彼女のある意味無機質な歌声が合わさって、現代のフュージョン~ネオソウルの
見事な融合を見せています。傑作。

What Am I Supposed To

Freak And Fly

Dissonant

Better

4 Am

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  1. 2015/03/12(木) 01:28:28|
  2. Ruth Koleva
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Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強していました。(2011/04-2017/03)
無事医師免許取得し、2017年より研修医一年目として社会人生活が始まりました。
新しいことばかりでストレスも多いですが、相変わらず様々な音楽に触れております。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
自分にとって魅力的な音楽を、様々な視点で、
新旧洋邦を問わず掘り下げて参ります。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは65,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
①DENON PMA-50 + Zensor1 (USB-DACプリメインアンプ+スピーカー)
②iPod Classic+TEAC-HAp50(ヘッドフォンアンプ)
③ONKYO DP-X1A のいずれかで聴いています。
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