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今日の一枚(394)

Album: Blue Avenue
Artist: 花澤香菜
Genres: AOR, Soft Rock, Fusion

Blue Avenue

東京都出身の日本の声優、歌手。1989年生まれ。
細かいバイオグラフィーに関しては以前の記事を参考にしてください。

渋谷系の時代に活躍した作家と多く組んだネオアコ色の強い1stのClarie、
オルタナやパンクロック、R&B、ファンクなど振れ幅大きく多彩な曲を収録した
2ndの25に続いて、今作のテーマとなっているのは、一言でいえば
「70s後半~80sにかけてのアメリカ西海岸のソフトロック、アダルトコンテンポラリー、AOR、
フュージョン」ということになると思います。

レコーディングはロサンジェルスと国内で行われており、LA録音のトラックには
海外のベテランスタジオミュージシャンが数多く参加しています。
名前を挙げてみると、
海外勢では
Steve Jordan(Dr, Eric Clapton, Keith Richards, Neil Young, John Mayer Trio, ),
Will Lee(B, David Sanborn, Steely Dan, The Brecker Brothers, Billy Joel, Diana Ross,
Natalie Cole, 山下達郎, SMAP etc),
David Spinozza(G, James Taylor, Donny Hathaway, Paul McCartney, Billy Joel etc),
Rob Maunsey(Key, )など
なお、Steve Jordan, Will Leeのリズム隊は、Hiram Bullock(G), Clifford Carter(Key)を加えて
The 24th Street Bandという、80sにスタジオでのレコーディングを中心に活動していた
バンドのメンバーで、日本で特に大きな人気を誇っていました。
その他でも、このメンバーは(ギターのHiram Bullockは故人となってしまいましたが)
日本のアイドルグループ、SMAPの初期作品のバッキングでも参加したりしています。
国内では
佐野康夫(Dr)、河村智康(Dr)、後藤秀人(G)、千ヶ崎学(B,キリンジ)、奥田健介(G, Nona Reeves)、
北園みなみ(Key)など、
なお先行シングルの#6こきゅうとすでは相対性理論が参加しています。

#1I Love New Dayは、録音のキメの細かさが良く分かる、繊細で柔らかいコーラスは、
前作までの密室的な音づくり、メロディーはネオアコ感のある感じに仕上げていますが、
ホーンによるテーマをはじめとして、バンドサウンドはLAらしくカラッとしたフュージョンに
なっていて、変化を感じさせてくれます。Will Leeのベースソロから始まるソロ回しは
完全に24thStreetの音になっております。最高。
打ち込みによる4つ打ちキックとエレピによるコード提示、サスティーンの短いシンセベースが
サイバーな感じを演出しつつ、ストリングスを薄く効かせたハウス#2ほほ笑みモードに続いて、

一聴すると竹内まりやの曲かと思ってしまうようなイントロに思わずにやけてしまう
#3Nobody Knowsは、Steve Jordanのクローズハットが特徴的な鋭いキメを繰り返しながら、
メロディアスなWill Leeのベースラインはお馴染みといった感じで、
ファンキーなAOR~フュージョンという感じです。Wuritzerとクラビネットはアレンジを担当している
北園みなみが弾いております。サックスソロも軽く音数の多い
フュージョンライクなものとなっています。今の邦楽ポップスでは決して味わえない
芳醇なグルーブのある一曲。最高。

#5Traceは、Saigenjiのアコギによるアルペジオと生のチェロ、バイオリンの音を
フィーチャーした悲しげなバラードで、分厚く重ねられたコーラスはゴスペルライクです。

深呼吸する音から始まってうねるシンセとニューウェーブ色満載な中華メロディ、
淡々としたベースラインで静かに始まる異色な#6こきゅうとすは、
聴いた瞬間に相対性理論の曲と分かるトラックです。一段とロック色の強いドラムスは
サビで16のハットの刻み、シンプルなフィルで、浮遊感のある上物の中でソリッドな
サウンドを作り出しています。ブレスリーな歌唱も、やくしまるえつこの投げやり歌唱と
高い親和性があって、違和感なくあの無機質な感じを演出しています。お気に入り。

再びホーンアレンジに北園みなみを起用したスウィングジャズ風の#7Night And Dayは、
佐野康夫のタイトで輪郭がハッキリとしたドラムスと、千ヶ崎学によるウッドベースによる
リズム隊のグルーブが前面に打ち出された一曲となっています。フリーキーなサックスソロから
ピアノソロへと一気に爆音になっていきます。最高。
#8タップダンスがの音が聞こえてきたらは、ドゥーワップ的な一人多重録音によるコーラスと、
ニューオーリンズなピアノ、タップの音を組み合わせたインタールードです。これも良い。

#9We Are So In Loveは、冒頭、間奏にちりばめられたフュージョンライクな後藤秀人の
ギターソロが印象的な、アッパーな打ち込みポップス。ドラムベースはかなり生音に近く
作りこまれていて、サビ前からサビの展開はリフレインの多いトランス的なつくりになっているので、
本作の中ではかなりキャッチーな曲だと思います。後藤秀人のストラトの音は音域的に美味しい
中高音が綺麗に出ていて、端正で素晴らしいと思います。お気に入り。

カチッとした堅いグルーブを好む傾向にある北川勝利には珍しく、レゲエのルーズなリズムを
取り入れた打ち込みレゲエ、#10プールは、あえてギターのカッティングを使わず、
低音域でリフを弾かせておいて、ピアノで淡々とコードを弾かせることで、
彼女のボーカルの冷ややかな感じとよく合わせていると思います。
ハーモニカのオブリガートはStevie Wonderのそれのような感じでこれも最高のセンスです。

Swing Out SisterのAndy Cornellがプロデュースした#11Dream A Dreamは、
冒頭にこきゅうとすのテーマをリフレインさせながらポエトリーリーディングで始まっていきます。
ミュートの効いたホーンのオブリガート、高い音圧のシンセベース、テレキャスターと思われる
カッティングの音は80sのリゾートミュージック(≒シティポップス)を思わせます。
中塚武作編曲の#12マジカル・ファンタジー・ツアーは生のストリングスをフィーチャーしており、
今までのソロアルバムの空気を一番良く伝えていると思います。
と思わせておいて、途中でローファイな電子音を混ぜてきたりと工夫が凝らされています。

北川勝利と岩澤祐穂の名コンビによる先行シングルのバラード#13君がいなくちゃだめなんだは、
美麗なストリングスの音の波の中で、へヴィーなタム回し、カラッとしたスネアなど
音色巧みにグルーブを作り出す河村"カースケ"智康のドラムスが際立っています。
アルバムのタイトル通り、青色に関わる海やプールといった表現がそこかしこに
見られている岩澤祐穂の作詞もこの曲では非常にシンプルで、
透明なボーカルと完璧に合っています。最高。

ラストを飾る#14Blue Avenue を探しては、Nona Reevesの奥田健介と西寺郷太の二人による
作詞作曲編曲の一曲で、#1に勝るとも劣らない滑らかなAORに仕上がっています。
千ヶ崎学のベースラインはシンコペートしたリフを中心に組み立てていて、
全体としては80s以降の堅めのグルーブになっています。打ち込みドラムとしては
随所でのフィルなどリアルに作ってあって、#1にはない、爽やかさの中にどこか暗くて
湿度のあるトラックとなっています。

国内外と正に贅を尽くしたミュージシャンを起用して作られた本作は、
フュージョン、AOR界隈でももっと注目されてもいいと思います。
ただし、プロデュースは基本的に北川勝利が担当しているため、
完全なる西海岸のスタジオミュージシャンの音という感じではなく、
モダンで、ニューウェーブやネオアコを経由した音になっています。
曲によっては打ち込み然としたものもありますが、アルバムの中で
さほど違和感を出さずに、むしろ良い清涼剤的な役割を果たしていて、
発売当初は賛否両論であったらしい、こきゅうとすも、
アルバムでは音が調整されて上手く溶け込んでいると思います。

オルタナティブロック前景化から90年代以降日本のポップスで勢いを
失っていたフュージョン~AOR/ACの系統のポップスが、声優のソロ作品という形で
世に出されることになるとは、世の中何が起こるか分からないと思いました。
兎にも角にも、声優ファンとかアニメファン、などという括りで見ることなく、
誰が聴いても良質と分かる一作になっていると思います。傑作。

こきゅうとす

君がいなくちゃだめなんだ
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  1. 2015/06/28(日) 03:03:58|
  2. 花澤香菜
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
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コメント

Systematic Chaos様 こんにちは

ファーストをメンツに釣られて購入して
楽しんだ記憶があります。
セカンドはそれを期待してしまった分、肩すかし。
サードも出たのですね。早いペースにびっくり。
メンツもキリンジにノーナ・リーヴスと豪華ですね。

ただセカンドでも感じたのですが
彼女の歌声は幅広いバリエーションの楽曲群に対応できていない気がします。
すごくきれいでキュートな歌声なのですが
どれも同じように歌っているように思えてしまう。

声優やアニメに理解があれば
この辺りもすんなり受け入れられる気がするのですが。

でも、毎回異なる、お膳立てされた舞台を見事に乗りこなしている様はさすがですね。



  1. 2015/07/02(木) 13:05:54 |
  2. URL |
  3. GAOHEWGII #-
  4. [ 編集 ]

読ませていただきました。
すごく魅力が伝わってきました。

ブルーベリーナイトが抜けています、という報告を一つ。
  1. 2015/07/09(木) 13:37:35 |
  2. URL |
  3. 通りすがり #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

いつもお世話になっております。
最近更新、コメント返信が滞っておりまして申し訳ありません。

確かに彼女の本業は声優ですから、かつてのアイドルの作品に優れたスタジオミュージシャンが
参加していた時代の邦楽ポップス、アイドルポップスとおなじように、「歌が入ると一気にしょっぱくなってしまう」
というのは間違いなくあると思います…

マニアの方にも受け入れられるような歌唱力、鋭いバッキングに負けないリズムコンシャスでパワーのある歌唱に関しては、
彼女の成長を待って、ということになるかもしれません。

しかしながら、その訥々とした素朴な感じが、こきゅうとすのように楽曲に上手く嵌ると、
渋谷系のあの時代の音に近づいたイメージを与えてくれるのではないでしょうか。

私は声優、アニメの文脈もそこそこ解している方だと思いますので、
彼女には二足の草鞋でも、着実に良い作品を作っていって頂ければと期待して応援しております。

  1. 2015/07/10(金) 20:10:18 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

通りすがり 様

コメント下さりありがとうございます。
ご指摘ありがとうございます。

実はこの私的名盤紹介のブログは全曲レビューを行っているようで、行ってはおりません。
宮川弾氏作曲の曲が抜け落ちておりましたね。
今回のAOR寄りなアプローチから少し離れているので、省略しておりましたが、
彼女のボーカルの魅力、という点においては一番際立っていますね、いいと思います。
  1. 2015/07/10(金) 20:16:43 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

こんばんは~。
遅くなりましたが、ツイッターでの再フォローありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。

あと、ブログを新しく作り直して再開しました。
よろしければ再びリンクを貼らせていただきたいのですが、構わないでしょうか?
検討のほど、お願いします。

それにしても、花澤さんも3枚目のアルバムを出したんですね。
参加メンツを見るに今回も豪華なんですけど・・・
上の方も仰っている通り、歌唱に難有りだと感じてしまうことがあります。
最近、熱心に聞かなくなったのでそう感じているだけかもしれませんが(^^;
  1. 2015/07/23(木) 21:49:55 |
  2. URL |
  3. 宇宙ネコ(元musiclife) #-
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

宇宙ネコさん

お世話になっております。
相互リンクの件、勿論宜しくお願い致します。
花澤さんの新譜に関しては、近い意見は良く聴きますね、
1stの頃は渋谷系でサブカル感のある感じだったために、
さほど目立たなかったので、指摘されることは少なかったのかと思うのですが、
今回はトラックがより緻密でリズム感とかパワーが露骨に出るので、
歌の貧弱さというか、が目立ってしまうのかもしれませんね。

  1. 2015/07/25(土) 22:31:37 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

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Systematic Chaos

Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
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オルタナティブヒップホップ
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9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは50,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
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ブログとして記事を書くことを通じて
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相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
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