私的名盤紹介―真の雑食を目指して

自分の心に残った作品を紹介することで、新たな音楽を見つけるきっかけとして頂ければ嬉しいです。

ここ2, 3年の邦楽におけるブラックミュージックとのクロスオーバーについて

私的名盤紹介にお越し下さっている皆様、お世話になっております。

新年になりまして、一月も半ばになろうとしておりますが、今のところベストアルバムの記事が完成するのに
しばらく時間がかかりそうですので、昨年末Twitterで少しお話しした、
「最近の邦楽で、ブラックミュージックが取り上げられ、
サウンドに取り入れられることが増えてきた(と筆者が感じている)こと」
について、
もう少し掘り下げてお話ししたいと思い、急ぎ書き上げたものを上げておきたいと思います。




まずはその一連のツイートを少し修正して再掲したいと思います。

【以下一部修正の上自分のツイートを引用】

最近、邦楽ロックやポップスの界隈でR&Bとかディスコ、ファンク、ブラコンの再評価のような流れがあるけれども、
その再評価の仕方が一面的で、端的に言えばクラブミュージック的な視点から振り返られ、解釈されているものが多いと感じる。
これは、80年代末から90年代にかけて、Teddy Rileyなどに代表とされるNew Jack Swingがポピュラーな
R&Bの中心となっていった頃が起点になっているように感じます。

つまり、音が全面に張り付いたようなアレンジで、オーディオトラックとしての音の抜き差しで空間を作ろう、
という「音響的」な側面が強調されていて、個々の楽器やシンセのフレーズに面白いものが少ないように、
個人的には感じてしまいます。

ダンスミュージックとしてのブラックミュージックは、一つの律動と、フレーズが結びついたモチーフが楽曲を通して存在し、
そのタイム、グルーブを演者全員が共有しながら曲が展開していくと思うのですが、
そのモチーフが形骸化したらつまらないと思うのです。

アレンジ的な側面でも、音響録音的な側面でも、リズムや楽曲の構成の問題としても、
こういうブラックミュージック再評価の流れの中で、素直に喜べない部分も、少しだけあったりします。

ディアンジェロが正統的なブラックミュージックの進化というように高評価される時代を考えると、
背後にオルタナティブな音楽を嗜好する若者のファッションめいたものを感じてしまうから、
冷ややかな目で見てしまうのだと思います。
(言っときますが、ケンドリックラマーもディアンジェロも好きですよ、念のため)

【引用終わり】

自分は間違いなくブラックミュージックが好きです。
そして、様々な邦楽、特にロックバンドで、R&Bやディスコ、ソウルのリズムパターンであったり、
アレンジであったり、コード進行であったり、リフのパターンであったり、が取り入れられて来ているという現状は、
非常に喜ばしいものだと考えています。

しかしながら、かつてUKを中心に一大ムーブメントを引き起こしたアシッドジャズや、
90年代に日本で取り上げられた渋谷系のように、一過性の熱病に終わってしまうのではないか、
消費されるだけして終わってしまうのではないかという心配があるのも確かです。

この2つの例をもとに、現状のブラックミュージック偏重傾向にある邦楽ポップス~ロックについて、
思うことを少し述べたいと思います。かなり偏見に満ちたこじつけや論理の飛躍もあると思いますが、
お付き合い頂ければと思います。

例えば、アシッド「ジャズ」の場合、それは「ジャズファンク」ではあっても、「ストレートアヘッドなジャズ」ではありません。
これは、さらに昔の歴史を紐解いていけば、ブルース形式でも何でもないものが「~ブルース」と呼ばれ、
歌謡曲として楽しまれていた、かつての日本にも近い部分があります。

これは何も悪いことではないのですが、他方では危惧すべき側面も備えていて、
「何かよく分からない未知の格好いいもの」に適当に「ジャズ」と名前を付けているに過ぎないという部分があります。

つまり言い換えれば、この状態はリスナー、アーティスト共にジャズやブラックミュージックが、
いわば「ブラックボックス」に近い状態になっているとも言えます。
これは、任意の音楽に対して各々が一つの歴史観を持っていて、
ストーリーとルーツを考えていくような鑑賞態度と、ちょうど対岸の位置にあります。

前提すべきこととして、音楽の姿やそれにまつわる周辺の情報に対してのリテラシーが完璧ならば、
それで「いい音楽」が作れる、というのは、断じて全くの間違いです。


エポックメイキングな素晴らしい音楽が作り出されるとき、
作家個人の自我や感性が、想像や時には妄想といった形でルーツとなる音楽像を「補完」し、
その補完が原動力となって、
新たな潮流が生まれてくると考えるのは自然なことだと、私は思うからです。

しかし、あまりにもそのベースとなる音楽に対するリテラシーが低下
(少し誤解を招く表現かもしれません。これは、細かい蘊蓄を持っているということではなく、
その音楽の背景にあるものを感じ取り感動する、という感性や審美眼を磨き上げる過程についてのことです)
している状態だと、どうしてもコピーし解釈するベースとなる音楽は「表層化」していきます。
これが俗に言う「薄っぺらい」音楽というものです。

それは、自分たちの生まれてきた世代の感性に基づいて、
コピーしやすい、取り入れやすい部分のモチーフだけを形式的に取り込んで、
いわば「コラージュするように」(cf. ヒップヒップにおけるサンプリングとブレイクビーツ)音楽を作り出すことになりかねません。

これが、上で挙げました渋谷系の話に繋がっていきます。
渋谷系の音楽は、音楽的なコラージュを中心として構成されているとも言えます。
スノビッシュなイメージを伴いながら、妖しく危うげな魅力があった渋谷系の音楽が僕は大好きです。

しかし例えば、この時代に生み出された、「シティポップ」というものに対するあやふやなイメージが、
現代に至っても引きずられ、混乱を招いてていることを、筆者は残念に思っています。

いわゆる故大瀧詠一の系譜にあたるナイアガラ系や、ティンパンアレーの系譜、
山下達郎や松任谷由実などが作り上げてきたニューミュージックの系譜など、
それぞれに相違点も多く、個々に消化するべき部分の多い音楽に対して、
イメージで、お洒落な7th系のポップスやロックに「シティポップ」の判が押され、もてはやされていること、
さらに言えば、現代のポップスやロックがその狭い「型」の中に自らを押し込み規定しているような姿を見ていると、

これは間違いなく、自分たち若者世代のリテラシーの低下をハッキリと自覚させる事態であるといわざるを得ないと思います。

この厳しい現代で一刻も早く売り上げを出し、生き残っていくためには、
斬新な音楽のデザインが必要になります。
新たな音楽を作り出すことは自己目的化、ファッション化し、聴いたことない音楽は格好いい、おしゃれということになります。

その「格好いい音楽」を作り出す手段として選ばれるのは、コピーのしやすい、消化しやすい部分ばかりということになります。
これが、先ほどのツイートで「クラブミュージック的視点」でブラックミュージックが取り入れられる
傾向にあるという話に繋がっていきます。

こういう言い方をすると、クラブミュージックや電子音楽、コラージュの技法で作られてきた音楽たちが
まるで簡単で粗雑な代物のように聞こえるかもしれませんが、そういったことを述べているのではありません。
私自身ヒップホップもアンビエントやインダストリアルなども多少は聴きますが、
要するにその「音」それ自体に情熱を感じるかということなのです。形骸化したサウンドにはそれが欠落します。

こうなると最早オカルトチックな言い方になってしまいますが、そうした音の「熱量」を自分なりの感性で
見抜いていく力というものが、審美眼ということになると思います。
丸パクリでも大ネタ使いでも良いのです。そういうことではなく、
その音を聞いた時に、「この音は煌めいている」と感じるか、それだけだと思います。

現代音楽などは例外として、理論で音楽が生み出されることはありません。
歴史やジャンルが音楽を生み出すものでもありません。
(マイルスが、自分の音楽をカテゴライズされることに憤りを感じていたこと、
ジャンル分けがいかに無意味であるかを批判していることからも明らかです。)

しかし、よきリスナーとして研鑽を積んでいき、感性を磨いて行くためには、
もう少し、音楽の色々な部分を「丁寧に」味わって、気になるがままにルーツを辿ったり、比較したりしながら、
「自分なりの音楽観・感性」を持っていくことが、
今後の邦楽が先細りしていかないためにも、ブラックミュージック偏重が一時の熱病で終わらないためにも、
大切な部分だと考えています。

つまり時代を時には時代を遡りながら、その縦や横のつながりを感じながら音楽を聴いていくことで、
より楽しめるようになっていくことができると思うのです。
音楽を楽しむ、音楽で震えるという経験から、
もう一歩進んで、音楽を深く味わう、深く楽しむという精神で、今年一年も頑張って参りたい訳でございます。 
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  1. 2016/01/11(月) 15:03:38|
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コメント

相互リンク申請ありがとうございます。

Systematic Chaos様

こんばんは。
『永久音楽blog』のvuoy(@mantako)です。
この度は相互リンクの申請ありがとうございます。
早速貴ブログへのリンクを設定させていただきましたので、改めてよろしくお願いいたします。

また、今回の記事、とても興味深く拝読させていただきました。

昨今の邦楽ロックを俯瞰できているわけではないのですが、注目のバンドとして紹介されるものが、確かに総じてクラブミュージック的な側面の強い音楽性であることについては不思議に思っておりました。

そして、彼らの音にブラックミュージック的な「リズムへの希求」が(本当の意味では)宿っていないことも、感覚的にではありますが感じているところです。
コードやフレーズ一つ見れば洗練されているように感じるものも少なくはないのですが。

個人的にふと思ったのはやはり本記事の意見と同様に「テクスチュア(音響/音色)」偏重傾向や「リテラシー不足」が(大きな)問題の一つとしてあるのかな、ということです。
(前者については「雰囲気」と言い換えても良いのかもしれません。)

本来であればメロディ/ハーモニー/リズムといった3大要素ががっぷりと組み合った上で初めて現れる心地良い/かっこいい/クールな…要は「良い」雰囲気を、それを現出させる要素の分析なしに真似しようとしているという気がするのです。

そこに関して言えば、90年代あたりからのいわゆる「ポスト・ロック」的な音楽の隆盛により、ロックにおいても「テクスチュアに着目すること」が面白いことであると認識されたことが、時代を経ることにより自家中毒を起こし始めている、ととるのが一番近いのかもしれません。

本来であればオルタナティヴな要素であったはずの「テクスチュアへの着目」が、オルタナティヴ(または、ロックにおける新規の要素)であったがゆえに「そこさえ押さえていればOK」という誤った感覚が生まれつつある、あるいは生まれてしまった。

仰るとおり、この問題をクリアするためには後者の「リテラシー」を身につけていくしかありません。
「良いリスナー」が「良いミュージシャン」であるとは限りませんが、「良いミュージシャン」は必ず「良いリスナー」だと思います。
単に幅広く聴けばいい、ということではなく、やはり熱意を持って音楽に耳を傾け、できれば食わず嫌いせずに色々なものに手を伸ばしていく、という姿勢こそが、ミュージシャン自身や、彼らとその作品を受け取って評価する我々リスナーに求められるべきものなのかな、と。

考えがまとまっていない状態でだらだらと書いてしまいましたが、自分でも改めて考えたい問題です。
また近々twitterなどでつぶやくかもしれません(笑)

なにはともあれ、これからもよろしくお願い致します。
  1. 2016/01/20(水) 21:24:42 |
  2. URL |
  3. vuoy #yUSOTJDM
  4. [ 編集 ]

Re: 相互リンク申請ありがとうございます。

vuoy(@mantako)様

いつもお世話になっております。
ますは相互リンクの件、ありがとうございます。

そしてこんなパーソナルな考えを述べるだけの記事に丁寧にコメント下さって、本当にありがとうございます。

やはり餅は餅屋じゃないですけど、一つのジャンルに新たな参入者が増えてくると、
良い意味でも変化は起きていくんですが、様はその変化の仕方が、
僕にとっては気に入らないことも多いんですよね

それは正に、vuoyさんの仰る通り
①テクスチュア(音響/音色)偏重傾向
②リテラシー不足の部分
があると思います。

ポストロックや音響系の音楽に関しては自分はあまりに無知なので多くは述べませんが、
要は、
「自分の大好きな音楽が、他人に『適当に』物まねされて踏みにじられたような気がする」
(こんなこと大きな声では絶対に!言えないのでコメント欄だけにしておきますけど!)
っていうのが正直な僕の悔しいような、切ないような気持ちなんだと思います。

つまり、僕は年を取って感受性に柔軟性が無くなって来たということなのかもしれない、
と気づいて、今戦慄しています。

でもそれは、世代感覚、自分の大切な価値観、審美眼の基礎となるものが、
ようやくおぼろげながら固まってきたということなのでもあると思うのです。
要は、大切な、守りたい音楽の思い出や思想が固まったということなんでしょうね。

従って、ブラックミュージックにせよシティポップやAORにせよ、
自分が思う自分の感性を伝えていけるように努力を続けていきたいと思っています。

散漫な返事で申し訳ないです。
  1. 2016/01/20(水) 22:36:33 |
  2. URL |
  3. Systematic Chaos #-
  4. [ 編集 ]

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Author:Systematic Chaos
独断と偏見により、お気に入りのCDを紹介して行きます。
医学部医学科の大学生として臨床医となるべく勉強しています。
山下達郎ファンクラブ
TATSURO MANIA会員。
水樹奈々ファンクラブ
S.C. Nana Net 会員。
上坂すみれファンクラブ
コルホーズの玉ねぎ畑 会員。
初心者ですが宜しくお願いします。
好きなジャンル:
1. AOR, MOR, ソフトロック
2. R&B,ファンク, モータウン,
ニュージャックスウィング,
フィラデルフィアソウル, シカゴソウル,
ブルーアイドソウル
3. ポップス、Jポップ
渋谷系、ニューミュージック
4. プログレッシブロック
5. ハードロック, へヴィメタル,
プログレッシブメタル, スラッシュメタル,
メロディックデスメタル,ブラックメタル
6. ジャズ,フュージョン,
ハードフュージョン, アシッドジャズ,
ハード・バップ, ジャズファンク,
ジャズロック
7. ジャジーヒップホップ,
オルタナティブヒップホップ
8. エモ, スクリーモ
9. ハウス, アシッドハウス,ディスコ

ライブラリは50,000曲ほどです。
ヘッドフォンはAKGのQ701、Audio TechnicaのATH-ESW9、
イヤフォンはShure-SE425を使っています。
iPod ClassicにTEAC-HAp50またはATH-PHA31i(ポータブルヘッドフォンアンプ)を挿して聴いています。
ブログとして記事を書くことを通じて
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相当趣味が偏ってるということを
痛感しています。
これから沢山の音楽に触れ、勉強していきたいです。
たまに医学関連の記事や日々の雑感を書いております。
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